軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205

◆鷹羽アキラ

俺は、鷹羽アキラ。

鷹羽家の長男だ。

最近の俺には悩みがあった。

恋人の七海が週末に出稼ぎに行って、なかなか会えないのだ。

たまには休みの日に遊びに出掛けたりもしたい。

そう打ち明けると、妖怪討伐に一緒に来るかと誘われたので同行を決めた。

父親が一緒なので気まずいかと思ったが、今回は用事でいないらしい。

その代わりに同行者がいた。七海の友人である九白真緒だ。

なんでも、林間学校で迷惑をかけたから、その埋め合わせで来たそうだ。

七海が出稼ぎに赴いているのは、迷宮が確認された地域。

その地の迷宮を片っ端から攻略しているのだ。

迷宮内の妖怪を全滅させ、最下層にある狭間を破壊して破壊報酬を狙うとのこと。

少し前までは北海道で稼いでいたが、今はそれが主流になっているらしい。

北海道の妖怪の数が激減したため、美味しい狩場ではなくなったからだそうだ。

強行軍で全国を飛び回っていると聞いて驚いた。

そして今回は、迷宮が多数発見された地方へ向かうこととなった。

多分、俺の加勢を見込んで、荒稼ぎするつもりなのだろう。

――と思っていたら違った。

どうやら九白を酷使するつもりらしい。

確か彼女は一属性のはず。そんなことをさせて大丈夫なのか心配になる。

気になってそのことを尋ねると、見学するか、と言われた。

不安を覚えた俺は、その提案を受けることにした。

結果、初めは三人で迷宮へ向かうこととなった。

といっても俺と七海は手出ししない。

全て九白に任せるという。

「はあ、人使いが荒いんだから。こっちにも一応予定があるんだからね」

と、九白が愚痴っている。

それを聞いた七海は、胡散臭いものを見るような目で彼女を見た。

「どうせ、予定ってストーキングの事でしょ。たまには建設的なことに時間を使った方がいいよ。例えば、妖怪討伐とかね」

と、相手の言葉を適当にあしらうように言い返す。

というか、ストーキングって何だ。

まるで趣味の一環みたいな雰囲気で、その単語が出て来たが、聞き間違いじゃなければまずいと思うのだが……。

そんな風に考えていると、九白が迷宮を攻略すると言った。

どうやら準備が整ったようだ。といっても、手ぶらで私服姿のままなのだが……。

いくらなんでも、迷宮の事を舐めていないか。

まあ、あいつも素人じゃない。危険だと分かれば、装備を変更するだろう。

九白は、中に人は居るのかと七海に尋ねた。

七海はそれに対し、ここは協会から遠い不人気の迷宮だから誰もいない、という答えを返している。

が、それを聞いた俺は顔をしかめた。

迷宮に人気も不人気もない。そもそも、誰も入りたがらない。

迷宮というのは奥へ行けば行くほど、帰りに危険が増す場所。

誰も自ら進んで入ろうとする奴なんていない。

協会の指示で人里に妖怪が出てこないように定期的に駆除されているだけだ。

こんな場所に喜んで突入する奴なんて、七海位だろう。

そう考えると心配になってきた。

いくら七海が五属性霊術師とはいえ、危険ではないだろうか。

これからは、なるべく同行した方がいいかもしれない。

そんなことを考えていると、九白が、「それじゃあ、やるね」と気の抜けた声で言った。

次に、手を前に出して構えをとる。

すると次の瞬間、周囲の何もない場所から黒い何かが高速で生えてきた。

それらは一つ一つがビルの大きさになるまで伸び続け、壁状になって展開されていく。

結果、俺の立っていた場所が日陰となり、暗くなった。

なんだ、これは……。

え、霊装?

はは、七海は面白いことを言うな。そんなわけないじゃないか。

え、本当? そ、そうなのか?

そう思って事の行く末を見守っていると、九白が霊術を発動した。

俺の眼前に大量の兵隊がいきなり現れ、統率された動きで迷宮へ突入していく。

なんだ、あの霊術は……。

え、探査術?

いや、探査術はあんな感じじゃないだろ。

属性霊術で小動物型の探査ユニットを作る術だろ。

あんな、何百人もの兵隊を作る術じゃない。

え、霊装が大きいから規模も大きくなる。

それはそう。

あれが霊装だというなら、その通りだ。

で、この後どうなるんだ。

待つ? そ、そうか、待つのか。

そうだよな、一緒に突入する意味なんてないもんな。

そんな風に考えていると、九白がどこからともなく、キャンプギアを大量に取り出した。

そして、俺と七海にくつろぐよう勧めてくる。

お、おう……。

俺は言われるがまま、椅子に体を沈めた。

その間に、九白が携帯コンロで茶を沸かし始める。

ついで、卵、牛乳、ホットケーキミックスを取り出し、種を作ってホットケーキを焼きだした。

おい、俺たちは迷宮を攻略しに来たんじゃないのか。

え、今やってる? そうでした……。

しかも、術とは別の行動を取ることが訓練になると言う。

うん、そう言うなら、そうなんだろう……。

しばらくすると、辺りに茶の香ばしい香りと、ホットケーキの焼ける甘い匂いが漂いはじめた。

すると七海が、九白に「他の迷宮も全部この調子でやってよ」と言い出した。

おい、いくらなんでもそれは遠慮がなさすぎるだろ。

と思ったら、九白は軽い感じで「いいよ」と答えた。

おい、お前も安請け合いし過ぎだ。

こんな大規模霊術をポンポン使っていたら、霊気切れを引き起こして倒れるぞ。

え、霊気切れを起こさない体質。そんな体質聞いたことないぞ。

そもそも全力を出していないから、問題ない?

この規模の霊術を展開して全力じゃないっていうのか……。

わけが分からん。

呆気に取られていると、こちらに身を寄せてきた七海が小声で話しかけてきた。

「ねえ、マオちゃんの力で、妖王にどれくらいのダメージを与えられると思う?」

俺は一呼吸入れて落ち着いた後、なるべく客観視することを心掛けて考えた。

九白が言っていることが本当なのであれば、大打撃を与えられるのは間違いない。

「かなりのダメージを与えられるはずだ。いや……、それって凄いことなんじゃないのか?」

自分が言った言葉の内容に時間差で気付き、興奮を覚える。

――単独で妖王に痛烈な一撃を見舞える。

つまり、たった一人の霊術師の力で戦況を一変させることが可能だということだ。

しかし、俺の返答を聞いた七海の反応は薄かった。

どうしてそんなに冷静でいられるんだ。

そう思っていたら、俺たちの前に突然黒塗りのワゴンが現れた。