軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆九白圭

私は 九白圭(クシロ ケイ) 。

私には娘がいる。娘の名は、 九白真緒(クシロ マオ) 。とても可愛い。

だが、娘は少し変だ。そう思い始めたのは、とある言葉がきっかけだった。

初めてちゃんと発した言葉が〈勝ち確〉。

それまで、うまく発音できずに、ミャーミャー(ママ)や、ピャーピャ(パパ)と言っていた娘が、次の瞬間急に「これは勝ち確」とか、とても正確で明瞭な発音で言う位には変なのである。

私はそんな言葉を娘の前で使った覚えがない。

一体、どこで聞いたのだろう。テレビの音が聞こえたのだろうか?

そんな出来事を境に、娘の行動は少しずつ変になっていった。

急に前転したと思えば、こちらの方を様子見てニヤッとドヤ顔になる。

時折、物思いにふけりながら口元を手で隠し「モヒョヒョ」と、怪しげな笑い方をする。

鏡に向かって真剣な表情で語り掛ける。

おもちゃに全く興味を示さない。

やたら物陰に隠れて、大人の会話を盗み聞こうとする。

方角や、左右を理解している。

妙にたどたどしい言葉遣いなのに、会話が完璧に成立する。

箸やペンを正しく持てる。それなのに、スプーンとフォークはうまく使えない。

などなど……数え上げるときりがない。

中には、泣かない、駄々をこねないなど、育児に助かる部分もあったりする。

もちろん、どこかに異常があるわけでもない。

むしろ頭が良いのだろう。親バカと言われるかもしれないが、そう感じた。

変、というひと言で片付くレベルではあるし、そういった部分も我が娘であるというフィルターを通せば全てが愛おしく、可愛いのである。

そんな娘が一番興味を示したのはテレビだった。

リビングに辿り着けるようになってからは、ずっと居座るようになった。

ニュースだろうが、バラエティだろうが、なんでも真剣な眼差しで観賞する。

こちらが親切心で子供向け番組にチャンネルを変えると、異常に嫌がったが……。

時代劇やドラマは娘には難しいらしく、眉根を寄せて見ていたのが、なんとも可愛らしかった。

様々なテレビ番組の中で、娘が一番興味を示したのは、意外にもスポーツだった。

その時、たまたまチャンネルをザッピングしており、フォーゲートの中継をしばらく見た。

すると娘が、興奮の余り奇声を発したのだ。

娘よ、「う゛おおおおおおぉぉっっっっ!?」という低音ボイスは女の子としてどうかと思うよ。

その日を境に娘の興味は、テレビから霊術へと変わった。

といっても、その程度だ。ちょっと変な娘の興味の対象が変わっただけである。

そんな日々を過ごすうちに、娘はすくすくと成長。そして幼稚園に行く年頃となった。

だが、妻と話し合った結果、幼稚園には通わせず、家庭教師を雇うことにした。

なぜそうしたかというと、娘の頭が良すぎるためだ。

このまま幼稚園に通わせても、周囲と馴染めずに浮いてしまうだろうという結論に至ったのだ。

元々は、私立小学校の受験へ向けて、そういった子が多く通う幼稚園に行かせる予定だった。

だが、中には幼稚園に通わせず、家庭教師を付ける家もあると聞く。

うちもそうした方がいいだろうと判断したわけだ。

だが、その頃になると、ひとつの問題が起きていた。

娘のおねだりだ。

娘は霊術に憧れるあまり、霊薬を飲みたいと言い出したのだ。

霊薬――、その薬を飲むことにより霊気が発現し、霊術を扱えるようになるという。

今まで、わがままらしい事を一切してこなかった娘のおねだりだ。

正直言えば、叶えてやりたい。

ただ、霊薬には色々と問題があるため、即断できなかった。

問題の一つは値段だ。

霊薬は一つ三万円。しかも、一つでは意味が無い。

半年間飲み続けなければならない。つまり、三万円×半年だ。

といっても、その程度の金額ならば問題はない。

この歳の娘のわがままを叶えるにしては、少し高額であるというだけだ。

本当の問題は、味と再挑戦が出来ないという部分である。

霊薬は液状であり、強烈に不味い。

私自身は飲んだことがない。

霊術にも大して興味はない。

そんな人間が笑い話のネタや、日常会話で例えに使うほど不味い。

深夜のバラエティ番組で罰ゲームに使われたりするくらいだ。

そんな霊薬を半年間飲み続けなければならない。

一日でも飲まない日があれば失敗となる。

そして、一度でも失敗すると、それで終わり。

もう一度、半年間飲み続けたとしても効果はない。

二度と霊術を使えるようにはならないのだ。

果たして、幼稚園に通おうとする年齢の娘に、そういったことを話して理解させることができるのだろうか。

私は家族会議の場を設け、娘に丁寧に話して聞かせた。

すると、娘は私の話をちゃんと理解した。内容を吟味し、検討して見せた。

普段から会話がしっかりと成立していると感じていたのは間違いではなかったのだ。

だが、説明を理解しても娘の意志は揺らがなかった。

霊薬を飲みたいという。その目にはしっかりとした決心と覚悟が宿っているように見えた。

ギラギラとし、熱く燃えている。一体、何がそこまで、この子を突き動かすのか。

こんな姿を見せられては、私の方が納得するしかない。

霊術が使えなくても、将来が不利になるわけでもない。

実際、私も妻も、霊術など使えはしないが、とても幸せに暮らしている。

なるべく失敗しないように、フォローはするつもりだが、それでも駄目だった時は慰めてあげればいいだろう。

霊薬を飲み続けるのであれば、幼稚園に通わない選択をしたのは、案外良かったかもしれない。

今は娘の決断を尊重し、目一杯応援しようじゃないか。