軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……勝った。これは――――――――勝ち確!」

力強いガッツポーズと共に、私は呟いた。

喜びの余り、反射的に勝利宣言をしてしまうのも無理は無い。

私には前世の記憶があったのだ。

といっても、知識と精神が定着したのは、つい最近。

それまでは、もやもやとした日々を過ごしていた。

多分、脳の成長との兼ね合いだろう。

――しかし、それも昨日までの話。

今は幼児が知るはずもない知識を思い出せる。

思考、精神状態も幼子とは程遠い。

多少、幼い身体に精神が引っ張られるけど……。

例えるなら、コスプレしてるとそのキャラクターの気分になったり、役者が役の感情に入り込む感じに近い。

ただ、――前世の自分については何も思い出せない。

どこの誰だったのか。どういった生い立ちだったのか。どの位生きたのか。

何一つだ。今世の名は真緒と知ったが、前世の名は思い出せない。

だけど、それらを覚えていたら、今の自分とのギャップに苦しむ材料になりかねない。

覚えていないのは、ある意味プラスかもね。

まあ、それだけの知識を持った状態で再スタートができるというのは、中々に美味しいもの。

そして前世の知識があるということにプラスして、転生した家庭環境が素晴らしかった。

どうやら我が家、九白家はかなり裕福なようだ。

まだ小さい体のせいで、家の間取りを全て把握した訳ではない。

それなのに広さを存分に体感。家具類も一目で高価だと分かる。

更に、お手伝いさんがいた。

――これは金持ち。間違いない。

そして、夫婦仲が良好。

両親共に、少し癖があって変なところはあるが、ケンカしているところを見た事がない。

父は穏やかな雰囲気を漂わせ、母は切れ長の目がかっこいい。

動物に例えるなら、父は狐、母は鮫といったところか。

シルエットが細長く、リラックスすると目を細める癖がある父。

ガッチリとした体格で、笑うと見える鋭利でギザギザした歯が印象的な母。

性格は随分違うが、いつも仲が良さそうである。

前世の知識あり。

金持ちの家に生まれた。

両親の仲が良い。

これだけ揃っていれば、無意識に勝ち確と言ってしまうのも仕方がない。

ムフフッ、ついニヤけてしまう。堪えたせいで、変な笑い声になっちゃった。

なるべく平静を装わねば。……我慢、我慢だ。

とはいえ、油断は禁物。

知識があるといっても、それは凡人のもの。

いや……、それより劣る可能性もある。

神童プレイで無双できるのは小さい間だけ。歳を重ねるとボロが出る。

最終的には伸び代がなくなって、急降下待ったなしだ。

だからこそ、目立たないように心がけねば。

なるべく無難に攻めていこう。

そう心に決めながら、ふらついた振りをして転ぶ。

フフ、これで歩き慣れていないアピールも万全だ。

私は、ただの幼児。

なんの変哲もない、ただの幼児。

鏡を見て、自分にそう言い聞かせる。

そのまま食事中も演技は続行。

もったいないけど、食べ物をコロンと落とす。

スプーンとフォークの扱い、まだまだ慣れていませんよっと……。

私の完璧な演技に、両親も騙されているに違いない。ムフフッ。

無意識に緩んだ頬を整えながら、ざっくりとこれからの行動について考える。

とりあえず、小学校に通う頃から、先のところを予習していくかな。

小学校で中学校、中学校で高校。

といった感じなら、勉強熱心な子くらいに思われるだけで済む。

前世の知識があると疑われることもないだろう。

そうすれば、かなり余裕を持って様々な事に臨めるはず。

――――と、考えていたが、予定を急遽変更。

手のひらクルクルで申し訳ない。

多少は頭のいい子、聞き分けのいい子を演じ、両親にアピールしていくことにした。

それには大きな理由がある。

意識がハッキリして、この数週間で気付いたこと、それは――。

私は、ただ転生したわけではなかったということ。

――――どうやらここは…………、異世界のようだ。

話されている言葉は日本語。

住んでいる国も日本。

家具や服も、前世とさして変わりなし。

時代も同一だと思ってしまうほどに、違和感なし。

とにかく、周囲が現代テイストに溢れていた。

それに加えて私自身が小さくて、行動できる範囲が狭すぎた為、気付くのが遅れた。

――きっかけは、テレビである。

少しずつ行動範囲を広げた結果、リビングで過ごすことが増えたのでテレビに辿り着けた。

そして、視聴中に自分の知識とのズレを感じたのだ。

初めは、ちょっとした違和感。

なんだこの人たち、やたら髪染めてるな、というものだった。

我が家は全員、黒髪。お手伝いさんは濃い茶髪。

と、周囲が無難な色だっただけに驚いた。

テレビの中は我が家とは真逆に、色とりどりだったのだ。

緑やら紫、赤、青、黄と何でもござれ。

髪染めが流行を超えて常識として定着したのかと思った。

だけど、高齢のじーちゃん、ばーちゃんまでカラフル。

赤ん坊まで色とりどりなら、地毛だよね。

ま、まあ、様々な髪色に溢れる世界ってだけなら、ちょっとしたスパイス程度。

全然問題ない。

と、思っていたら、次は時代劇。

金髪のサムライが刀をかざすとビームが出て、悪人が骨を見せながら痺れるシーンに鉢合わせる。

んん? 何ともファンタジー色が濃い時代劇。

かなり攻めたドラマだな、と思っていたが、時代劇の全てがそんな感じ。

刑事ドラマのアクションシーンも、手から火を出して犯人をぶっ飛ばしていた。

ここまでなら、フィクションの作品は全てそういう過剰な演出が流行している、とギリギリ言えたかもしれない。

トドメとなったのは、スポーツ中継だった。

――中継、つまり画像を加工できない。

どんな映像が映っていても、それは本物という事になる。

私がたまたま見たその番組は、前世では存在しない競技をやっていた。

なんというか、ゴルフのようなものだ。

軽く見た感じ、ゴルフグラウンドのような場所で、バレーボールほどの球を打ち、打数を競うといった感じのルール。

ここまでなら……、まあ、そういうスポーツなんだな、で終わる話だ。

が、異常なのは打法だった。

選手は武器を振り、そこからビームを発射。それを球に当てて、打ち出していたのだ。

私は驚きの余り、開いた口が塞がらなかった。多分、変な声も出ていたと思う。

両親に尋ねた結果、それが霊術だということが分かった。

――そう、どうやら私は、ただの日本に前世の記憶を持って生まれ変わったわけではなく、霊術というものが存在する異世界の日本に転生したようなのだ。

それからというもの、私は霊術に魅了された。

だって、どうみても魔法なのだ。それが現代日本で使われている。

なんとも心躍る話ではないか。

初めは単純な好奇心だけだったが、次第に自分も霊術を使ってみたいという気持ちがフツフツと湧いてくる。

そうなってくると、ただの子供の振りなどしていられない。

多少有能さをアピールし、霊術を学ばせてもいいんじゃないか、と思わせるよう誘導したい。

そこで、まずは情報収集から始めてみた。

テレビで霊術がらみの放送があれば、ビタッと張り付く。

新聞、本、家の中にある霊術が記載されているものには全て目を通した。

結果、判明した事実は残酷だった。

霊術は、誰でも使えるわけではないということ。

生まれながらに使えるのは、限られた者。

霊術は特定の血族のみに受け継がれている能力――――、ということだった。

私は霊術など使えない。いや、気付いていないだけかもしれない。

そう思って、両親にも聞いてみたが、二人とも使えないことが分かった。

つまり、今の私は霊術が使えないという事だ。

数日前までの私なら、立ち直れないほど落ち込んでいただろう。

だが、今は違う。

ここ数日の調査で、私はあることを発見したからだ。

なんと、抜け道が存在するのである。

それは霊薬と言われる薬の存在。

その薬を飲めば、霊術が使えるようになる……、らしい。

多少ハードルは上がるが、その薬さえ手に入れば、私も霊術が使えるという訳である。

これは良い子にして、おねだりするしかない!