軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

195

◆日高千夏

最近、ちょっと困ったことになってしまった。

きっかけは、テスト結果だ。

少し前に、実力テストが行われた。この学校は点数上位の者を掲示する習慣がある。

結果は、私が一位。二位は、また綾小路君だった。

そのことがきっかけで、綾小路君と話す機会が増えた。

彼は、ちょっと我が強い部分があるが面白い人だ。

成績が同じくらいなので、勉強の話も盛り上がる。

どちらの視点から見ても、競争相手として最良なのだ。

そんなわけで、お互いに冗談を言い合えるくらいの間柄になった。

――その頃から、異変が起きた。

私物がなくなり始めたのだ。

初めは、自分がうっかりしていたからだと思っていた。

だけど、あまりに頻度が高い。

直前までの記憶があるのに、目を離した隙になくなってしまう。

日を重ねるごとに、無くなる物のサイズが大きくなっていく。

初めは、ペンや消しゴムと言った文房具類。

そこから、上履きやノートに変化した。

自分がどこかに置き忘れたわけではない。

どう考えでも、こちらの隙を突いて誰かが持ち出しているのだ。

これは、綾小路君に相談すべきだろうか。

正直こういうことを話すべきか躊躇してしまう。

クラスに女子の友人がいれば、相談したのだが、いない。

このクラスに女子の特待生は自分しかいなかったためだ。

同じ境遇の人なら話も合ったと思うのだが、一般入学やエスカレーター式で入学した人はお金持ちばかり。どうしても、話が合わなかった。

そのせいもあって、うまく友達を作ることができなかったのだ。

中には声をかけてくれる子もいたけど気後れしてしまって、うまくコミュニケーションが取れないでいた。

そして、このクラスには入学式でひと悶着あった瀬荷城さんがいる。

彼女はあの日、雲上院さんに立ち居振る舞いについて指摘されたが、一切変化していない。

そのせいもあって、クラスメイトは、綾小路君と関わると面倒になると分かっているせいか、瀬荷城さんや綾小路君と距離を置いている。

そして、私は綾小路君と仲が良いため、敬遠対象にカテゴライズされていた。

そういったこともあって、身近に気軽に相談できる相手がいないのだ。

――私物の紛失は誰がやったか分からない。

疑いたくはないが、クラスメイトの可能性もある。

こんな時、頭に浮かぶのは雲上院さんだ。

入学式の時、困ったことがあればいつでも頼って欲しいと、彼女が言ってくれたことを思い出す。

だけど、雲上院さんは違うクラス。

その上、いつも沢山の人に囲まれていて、とてもじゃないが話しかけられる雰囲気ではない。

雲上院さんは、学年に関係なく沢山の人に慕われている。

そのため、周囲に人が絶えることがない。

それに加えて、入学前からの知り合いと思しき人たちが、いつも周りにいる。

そんな元々あるグループに、新参者一人で突入して話しかけるのは勇気がいるのだ。

そういうことを察してか、たまに雲上院さんから声をかけてくださることがある。

千載一遇のチャンスなのだが、そう意識してしまうと緊張してしまう。

結果、上ずった声で、最低限の事しか言えずに終わってしまうのがパターンとなっていた。

雲上院さんの振る舞いから、私をグループに引き入れようとしてくれていることが窺える。

周りの人たちも、それを察して気さくに声をかけてくれる。とっても優しい人たちなのだ。

そんな雲上院さんたちに相談していいものか、余計に気を遣わせるのでは……。

などと考えて何もできないでいるうちに、教科書までなくなってしまった。

他の物は替えが利くが、教科書はまずい。

初めに配布されたものは特待生枠で無料になったが、二度目からは違う。

もし、見つからなければ、買う必要がある。

ここの教科書はどれも高額なので、かなりの出費になってしまう。どうしよう……。

と思ったら、気づいた綾小路君が見せてくれた。

机を引き寄せ、自分の教科書を私が見やすいように配置してくれる。

「まったく、頭が良いのにおっちょこちょいな奴だな」、などと言われてしまう。

そして、一冊の教科書を二人で見て授業を受ける。

自然と距離が近くなってドキドキしてしまった。

その日は、綾小路君のお陰でなんとかなった。

だけど、明日からどうしたらいいか分からない。

これは考えをまとめて、教師に相談すべきだろうと覚悟を決めた時、それは起きた

下校時、下駄箱を開けたら大きな布袋が入っていたのだ。

恐る恐る取り出して、袋を開けてみる。

すると、無くなった物が丁寧に整理されて入っていた。

確認してみると、この数日で紛失した物が全てあった。

買い直さなければいけないと考えていただけに、ほっとする。

でも、これは一体どういうことなんだろう……。

誰かが一時的に借りて、用が済んだから戻してくれた、というわけでもないと思うけど……。

◆兎与田七海

七海は戦慄していた。

最近、真緒の奇行が留まるところを知らない。

礼香がいないところで怪しい動きを連発するのだ。

そのことに気づけたのは、以前より一緒に行動する機会が増えたためだった。

――この学校に入学してから、明らかにおかしい。

まるで、中学で初めて会った時を想起させるほどのクレイジーっぷりだった。

わけの分からない言い訳を付けては壁に張り付いたり、全てのクラスのロッカーを開けてまわったりする。

終いには男子トイレにまで入ろうとした。

今は誰もいないから大丈夫と言うが、何が大丈夫なのだろうか。

そんな中、クラスで席替えが行われた。初めは出席番号順だったが、授業が本格化する前に変わることになったのだ。

結果、七海は窓際の一番後ろの席となった。

思い返してみると、この席を引く確率が異常に高い。

まるで自分の指定席の様だ。

そして、前の席が真緒になった。

礼香は席が離れたので、悔しそうにしていた。

金を積んで席順をどうにかしようとした時は本気で止めた。

普段はお淑やかで気品溢れる令嬢という感じなのに、真緒の側に行こうとする時だけ狂信者のようになってしまうのは、何とかならないのだろうか。

席替えが終わると、通常授業が始まった。特に何の変哲もない授業風景だ。

同じ席ばかり座っているせいか、中学となんら変わらない景色に見えてしまう。

……のはずだったのに、突如、異物感を覚える。

その原因は、前の席にあった。

――真緒だ。

明らかに動きがおかしい。絶対に授業を受けていない。

早弁だろうか、何かゴソゴソしている。

注意深く見ると、机の中が照明をつけたように明るい。

もしかして、携帯端末かゲーム?

(ふうん、結構まじめそうに見えたけど、こういうサボり方もするんだ)

真緒の意外な一面を知って、驚く。

後で礼香に言って困らせてやろうかな、などと思いながら、教師に気づかれないようにしつつ、身を乗り出して真緒の席を覗き込んだ。

「は?」

――すると、そこには異質な光景が広がっていた。