軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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なんで私が二人いるの!?

……いや、正確には私じゃないけど。

マンガ版の九白真緒にそっくりな顔をした女の子が、四谷真理と一緒にいるのだ。

なんとも不思議な光景である。

私が混乱している間に、眼前の集団は険悪な雰囲気になっていた。

というか、日高さんが混乱している。

完全な言いがかりだし、どう対応していいか困っているようだ。

これは、止めに入った方がいいよね。

そう思った私は、レイちゃんたちと顔を見合わせ、眼前のグループに突入した。

◆日高千夏

私は日高千夏。

平凡な家の出身だけど、特待生制度の試験を受けて煌爛学園高等部に合格した。

受験理由は、学費の免除と在学中と卒業後も得られる様々な特典目当てだ。

煌爛学園は、普通の学校と比べるとお金がかかる。

しかし、特待生となれば、その辺りのことは気にしなくてよくなる。

特待生特典で、在学中にかかる費用が全て免除されるのだ。

教科書や制服はもちろんの事、有料施設の使用料、食堂、クラブ活動で使用する道具類、となんでも無料支給&無料で使い放題。

サポートも手厚く、卒業後も支援を受けることが可能となっている。

と言った感じで、特待生になると色々とお得なのだ。

――だけど、私はそういったことを全て知らなかった。

そのため、中学卒業後の進路に煌爛学園は入れていなかった。

だけど、煌爛学園を受験する友人が、特典について力説してきて、一緒に受験しないかと誘ってきたのだ。

当時は、それほど興味があったわけではなかったので、返事は保留にしていた。

そんな中、元々進学先に選んでいた学校が、急に生徒の募集を取りやめてしまった。

なんでも、ここ最近に起きた北海道での出来事に関連して、経営陣がダメージを受け、学校運営から撤退。

在校生の卒業と同時に閉校することが決定したという。

というわけで、進路変更を余儀なくされてしまった。

その結果、新たな進路として煌爛学園を選択。

対策期間が短かったので不安だったが、なんとか合格できた。

しかし、誘ってくれた友人は不合格。

そのことで険悪な雰囲気になるような関係ではなかったが、知り合いが誰もいない状態となってしまった。

――という流れである。

そして、入学式当日を迎えて登校してみると、自分が生活してきた世界と、あまりに雰囲気が違って戸惑いを覚えた。

周りはお金持ちばかりだし、上手くやっていけるかちょっと不安になってきた。

でも、特待生枠で合格したのは、自分だけではない。

だから、同じ特待生枠の人たちと仲良くやっていけばいいだろう。

そう考えていたのだが、朝一番から色々な目に遭ってしまった。

――まず、猫を助けた。

いきなり煌爛学園とは関係のないことだが、自分にとっては大事件だ。

登校中、私の眼前で猫が道路に飛び出して、立ち止まった。

猫の視線の先には走行中の乗用車。あと数秒で轢かれてしまうような状態だった。

いつもの私なら、固まって動けないような状況だ。

しかし、今日に限って絶好のタイミングというか、行けるという確信があったので、車の前に飛び出してしまった。

自分でも、なんて危ないことをしたんだと思うが、体が勝手に動いてしまったのだ。

それでも、無傷で猫を助け出し、車も事故を起こすこともなく、私自身も怪我を負うこともなかった。普段ならありえない、三重に幸運な展開となったのである。

そして、その車に乗っていたのが、同じ学校の生徒だった。

その時は、運転手の方と、その男子生徒に叱られてしまった。

自分でも危ないことをしたという自覚があったので、平身低頭で謝罪。

もう二度としないと誓い、猛省した。

そんな状態で登校し、テストの結果を見に行くと、自分が一位となっていて驚く。

テスト中は調子がよく、かなりの手ごたえを感じていたが、まさか一位とは……。

そこでまた、猫の一件の男子生徒と再会してしまう。

どうやら彼は二位だったらしい。

ちょっと独特な性格の男の子だったけど、悪い人ではなさそう。

そう思ったら、今度は別の人に詰め寄られてしまった。

もしかして、さっきの男の子、すごい名家の人なのだろうか。

銀髪の女の子をリーダーにした三人組に、よく分からない理由で責められてしまう。

「貴方、特待生枠で入ったのですよね。掲示板にも、そう書いてありますし」

「はい」

「それなら、もう少し立場をわきまえなさい」

これは謝った方がいいのだろうか。

でも、何て謝ればいいの?

綾小路君に返事を返して、ごめんなさい、とかだろうか……。

適当に言うと、もっと責められそうだし、困った……。

そんな風に考え込んでいると、別の人が割って入ってきた。

「その辺りでやめておきなさい。見苦しいですよ」

そう言ったのは、金色の縦巻き髪が眩しい女の子。

黒い洋扇を持ち、優雅な雰囲気を漂わせている。

大声で叫んだわけでもないのに、凄く声が通る。

たった一声で、周囲が注目し静寂が訪れた。

だけど、指摘された銀髪の女の子の方は、黙っていられなかったようだ。

「なんですって! これはこちらの問題です! 貴方は黙っていなさい!」

「そうよ、そうよ」

「無関係な人は、お引き取り願えますか!」

と、リーダーっぽい銀髪の子から順番に反応し、金髪の子へ突っかかっていく。

……凄いな。

私だけじゃなく、気に入らないと判断したら誰に対しても攻撃的だ。

どうしよう、私のせいで止めにはいった金髪の女の子まで、酷いことを言われてしまった。

ここは私が謝って場を収めるしか……。

そんな風に考えている間に、周囲の雰囲気が一変する。

何が変わったかうまく言葉で説明できないけど、急に張り詰めたような空気になったのだ。

一体どうしたのだろうと不思議に感じて辺りの様子を窺うと、その理由が分かった。

私たちの周りにいた人たちの顔ぶれが変わっていたのだ。

はっきりと全員の顔を覚えていたわけではないが、明らかに違う。

私が詰め寄られた時に、周りで傍観していた人たちがいなくなっている。

気が付かないうちに、全員入れ替わっていたのだ。

その入れ替わった生徒たちが、無言で三人を囲みだした。

「レイカ様に対し、何という物言い……」

「……どういうつもりなの」

「許されない振る舞いですね」

全員が、何やらブツブツと呟きながら、敵意むき出しで三人を睨む。

……こ、怖い。

そう感じたのは、女子三人も同じだったようだ。

お互いの肩を掴むようにして身を寄せ合い、後退る。

そんな空気に耐えかねたのか、銀髪の女子が口を開いた。

「な……、なんなのよ! 私に文句でもあるっていうの!」

「だから、そのような態度は、この学校の生徒として相応しくないと申し上げているのです。今すぐ改めなさい」

という、静かだけど通る声で言った金髪の女の子の言葉に、周りにいた全員が無言で首肯する。

人数が人数なだけに、すごい圧だ。

「キィイイッ! 今日はこの位にしておいてあげるわ! いくわよ!」

「「は、はい」」

そう言うと、三人は囲んだ生徒を押しのけて逃げて行った。

……一体なんだったんだろう。

今日が入学初日なので、この学校の勝手に付いていけない。

そう思っていると、金髪の子が話しかけてきた。

「大丈夫でしたか?」

「あ、ありがとうございます」

私は、すぐさまお礼を言った。この人のお陰で、なんとか切り抜けられた。

もし私一人だったら、今頃どうなっていただろう……。

「あのような態度は褒められたものではありません。もっと慎みを持つべきです」

やれやれと言った風に、酷くがっかりとした顔で溜息をつく金髪の女の子。

その言葉に、周囲の生徒たちが静かに首肯し、同意する。

やっぱり、この人たち全員知り合い同士なのかな?

「すみません。先ほどの会話、立ち聞きするつもりはなかったのですが、聞こえてしまいました。日高さん、とおっしゃいましたか」

「は、はい」

「申し遅れました、わたくしは雲上院礼香」

雲上院礼香と名乗った金髪縦ロールの女の子は、綺麗なカーテシーで礼をとった。

ふわぁっ! か、かっこいい……。

凄く様になってるし、オーラが凄い。これぞ、お嬢様って感じだ。

ここで初めて、自分は煌爛学園に来たのだな、という強い実感が湧く。

「テスト結果が一番とは、素晴らしいです。その才能と努力を活かし、勉学に励んでください。もし、今回の様に困ったことがあれば、いつでもご相談くださいね。わたくしで助力できることであれば、お力になりますよ」

そう言って、微笑する。

その顔は、どの角度から見ても美しい彫刻のようだった。

う、うわあ……、こんな人がいるんだぁ。

私は素直に驚いた。こんな人こそ、この学校に相応しい人なんだと、反射的に思ってしまう。

「それでは皆さん、参りましょう」

という、雲上院さんの呼びかけを合図に、周りにいた人たちが退散していく。

す、すごい。あれが本物のお嬢様。

色んな要素が美しいし、恰好良い。

やっぱり、この学校は凄いなあ。

あんな人に話しかけられた上に、気にかけてもらってしまった。

雲上院さんが去って行く後ろ姿に見惚れていると、不意に声をかけられる。

「入学早々、災難だったね」

そう言ったのは、黒髪ストレートに鮫歯の女の子。

背が高くて、スラッとしている。

一言で言うと、顔が鋭い。

ちょっと怖い雰囲気かも。

そんな鮫歯の女の子が、私の肩にそっと手をのせて笑いかけてくる。

「え~っと……、レイちゃ……、いえ雲上院さんが、さっき言ったことは社交辞令じゃないから。本当に困ったら、いつでも声をかけてね。それ以外でも、普通に話しかけて大丈夫だから。もし気後れするようなら、私でも構わないし。私も雲上院さんも一年生だから、貴方と同い年なの。だから、気を使わなくても大丈夫だからね」

「は、はあ」

突然のことに、まともな返事を返せず、変な声が出てしまう。

うぅ、恥ずかしい。

「あ、ちなみに私は九白真緒。慣れない環境で大変かもしれないけど、頑張ってね」

と、笑顔で応援されてしまう。顔は怖いけどいい人だな。

同い年なのに、ちょっと年上のような雰囲気がある。

雲上院さんは洗練された雰囲気だったけど、九白さんはそれとも違う。

気さくな年上の人って感じがする。

ただ、見た目のせいで、雲上院さんとは違う意味で声がかけづらいけど……。

でも二人とも、いい人だな。

正直、ここは特殊な学校だから、入学前は不安を感じていた。

だけど、入学早々、親切そうな人と知り合うことができた。

と、そんな感じで、ほっこりと感傷に浸っていると、突然、強烈な威嚇声が響いた。

「ああ!? 何見てんだ、コラ」

声が聞こえた方を見ると、桃色髪の女の子が男子の襟首を掴んで睨んでいた。

「てめえ、誰にガンくれてんだ!」

「いや、かわいかったから、見惚れてただけで……」

「なんだ、口説いてんのか、おぉ?」

「いえ、そこまでじゃないです、ごめんなさい」

「チッ、ジロジロ見てくるんじゃねえよ!」

桃色髪の女の子はそう言うと、男子を突き放した。

こ、こわい。何あの人。絶対不良だよ。

桃色の髪で可愛い見た目なのに、ギャップが凄い。

あ、あの人には関わらないようにしよう……。

そんな風に考えていたら、桃色の髪の子が、雲上院さんたちと合流し、楽しそうに話し出す。

昔からの友達と言った雰囲気で、仲良さそうだ。

どういう面子なの……?

雲上院さんに、九白さんに、桃色髪の子。

全く違う性格と個性の持ち主に見えたのに、凄く仲が良さそうだ。

やっぱり、この学校は他とは違うなぁ。

私は、しみじみとそう思った。