軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆雲上院礼香

礼香たちが現地に到着した時には、全てが終わっていた。

周囲の惨状に驚く柱の当主たちを放置し、礼香は七海と兎与田から報告を受けた。

現状を理解し、時間を稼ぐ必要があることを即座に把握する。

考えを巡らせた礼香は、柱の当主たちを拘束されていた者たちのところへ案内した。

そして、その場に現地監視員などの関係者を召喚。

どういったことが起きたのか、順に説明してもらうことで時間的猶予を作りだす。

結果、複数の証拠の準備を整えることに成功。

それらを確認してもらった後、結界へと向かった。

「この気配……、まさしく妖王。なんと禍々しい殺気か」

「ああ。結界内部の空間を歪めて閉じ込めたという話は本当だったようだ」

龍宮清正と虎宮楓は、結界を実際に見て畏怖の声を漏らす。

「当時の人は掃討戦でこんなものと戦っていたのか? とてもじゃないが信じられないのじゃ……」

未花は、中に閉じ込められた存在の強大さに驚き、言葉を失っていた。

どうやら、結界越しでも内部の存在が妖王ということに疑問を持っていない様子。

理解を得られたと判断した礼香は、皆を監視小屋まで帰し、話を進めていく。

「皆さん、ご理解いただけましたか。事の顛末は、先程ご説明したとおりです」

「記録した映像もあったし、録音された音声もあった。信じるに足る情報といえよう」

礼香の言葉を聞き、龍宮清正が深く頷く。

事情説明を行った際、柱の当主たちには映像や音声も確認してもらった。

事前に七海や兎与田に持たせた小型カメラや録音機材で記録したものだ。

それにより、この場でどういったことが起きていたのか、誤解なく把握してもらえたのである。

ただし、結界を塞いだ際に霊獣が現れたこと。

七海と霊獣が契約したことは、伏せておいた。

結界内で起きたことは、こちらにとって都合の良い部分だけ話した。

具体的には、七海が侵入者を撃退。しかし、その時にひびが入った。

結界から黒煙が出たが、結界が発光して自然と塞がったと説明したのだ。

その場にいた者たちは、七海以外全員気絶していたため、誰も報告内容に対し疑問を覚えなかった。

そうしないと、問題が複雑化すると思ったためだ。

礼香がそのことに思い至った瞬間、阿吽の呼吸で後藤が察知。

現地監視員の話で時間稼ぎをしている間に、該当部分を超速で編集してくれたのである。

「ご理解いただけたようで何よりです」

「当然じゃ。わらわの友人が悪事に手を染めるなど、ありえんのじゃ」

という未花の援護射撃が駄目押しとなる。

龍宮清正と虎宮楓の二人は、礼香たちに対する態度を軟化。

話を聞く姿勢を見せ、頭ごなしに否定するようなことは無くなっていた。

そんな二人であったが、納得できないことがあるのか、表情が硬い。

険しい顔で腕組みしていた龍宮清正と虎宮楓が口を開く。

「しかし、なぜこのようなことを……」

「妖王を、あの程度の戦力で倒せると思ったということなのか……?」

二人が気になっていたこと。

それは、なぜ玄宮勝邦と井和倉慶二が結界を破壊しようとしたのか、という一点だ。

そもそも、結界の中に妖王が閉じ込められていると報告したのは、玄宮勝邦自身。

その張本人がなぜ、このような行動に出たのか。

二人は、そのことについて散々話し合っていたが、ついに答えを出せなかった。

そんな二人の会話が耳に入ったのか、意識を取り戻した玄宮勝邦が顔を上げる。

「し、知らなかったんだ! 結界の大きさから、少し強い妖怪が封じ込められているだけだと思ったんだ」

と、必死な様子でまくし立てる玄宮勝邦。

しかし、その弁明を聞いた当主三人は、益々困惑の表情となる。

「いや、対面すれば気配で分かるだろう」

という龍宮清正の言葉に、虎宮楓と未花が視線で同意する。

それに加え、礼香、七海、兎与田も同様に頷く。

この場にいる大多数の者が、結界内部の異常性に気づいていた。

「…………まさか、本当に分からなかったのか?」

龍宮清正は、不正解と分かっていてその言葉を口にするかのように、躊躇いに躊躇いを重ねて聞いた。

「……………」

龍宮清正の問いかけに、玄宮勝邦は無言。

だが、その顔は悔しさがにじみ出ており、言葉がなくとも表情で答えを察することができてしまった。

「つまり、強い妖怪が封じ込められていると勘違いし、妖王が封じ込められていると嘘をついた、と。そして、井和倉を連れて、結界を壊しに来た……」

虎宮楓が、ここまでの経緯を簡潔にまとめて呟く。

「それで、誰にも見られずに強い妖怪を倒せば、妖王を倒したことにできると思ったわけじゃな」

と、未花が虎宮楓の後を継ぎ、玄宮勝邦の思惑を予測する。

それと同時に、三人の当主が玄宮勝邦を見つめ、視線で問いかけた。

当の玄宮勝邦は俯いて押し黙ったままだった。反論しないところを見ると、正解で間違いないのだろう。

「……当主の実力がこのレベルとなると、家そのものが相当弱体化しているということになるのう」

という未花の呟きを聞いた龍宮清正と虎宮楓は、盛大に顔をしかめた。

高位霊術師であれば出来て当然のことができない。

霊力が高くても、経験が著しく不足している。

そんな者がお飾りとしてではなく、本当の意味で一族の長を務めているという事実。

三人の当主は、今更ながらに玄宮家の現状と深刻さを理解したようだった。

そのことを皆が察し、周囲が重苦しい空気に支配される中、背後で誰かが声を上げた。

「ふん、あの程度の気配で臆するなどありえん。俺の実力であれば問題ない」

そう言い切ったのは、井和倉慶二だった。

「あの……非常に申し上げにくいのですが、霊力差がある四属性の先生に完全敗北した貴方では、結界の中の妖怪を倒すことは、どうあがいても不可能ですわ」

礼香は井和倉慶二の言葉を否定し、客観的な意見を述べた。

「言いにくいって言ってるわりに全部言ってるのじゃ……」

「いえ、これでも言葉は選んだつもりなのですが……。端的に、貴方はかなり弱いと言えば済むところを、迂遠な表現を使って傷つけないように苦心したのですよ?」

心外に感じた礼香は、未花の言葉に反論した。

全部は言っていない。なるべく最低限の表現にとどめたつもりだったのだ。

「貴様ぁっ!」

しかし、礼香の言葉を聞いた井和倉慶二が暴れ出す。

挑発されたと勘違いしたのかもしれない。

井和倉慶二は拘束状態のまま、礼香へ向けて駆け出した。

礼香は、すぐさま体を反転、攻勢に移ろうとする。

だが、それを見て龍宮清正と虎宮楓が即座に反応。井和倉慶二に体当たりを敢行した。

二人は井和倉に覆いかぶさり、体重を使って完全に動きを封じ込めた。

「おい、やめろ! やめておくんだ、本当に!」

「大人しくしろ! これ以上迷惑をかけるんじゃない」

「二人とも必死なのじゃ……」

龍宮清正と虎宮楓の二人が、なりふり構わず制止する姿を見て、未花が呟く。

「当たり前だろう! 結界の側で、彼女に暴れられたら、どうなるか分からん」

「そうだぞ。もし壊れたらどうするんだ!」

「あ……、はい」

思いのほか当たりが強い二人に対し、未花が面食らって短く返事を返す。

当の礼香は、そんな三人の様子を見ても、特に何も感じなかった。