軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆雲上院礼香

目的地に到着した礼香は車を降り、七海と話しながら建物の入り口へ向かっていた。

「ここまで来ると、彼らの目的地も見当が付きますね」

「うん。十中八九、結界だろうね」

追跡の結果、井和倉慶二は北海道に向かっていることが分かった。

しかも、進行方向から予測される行き先は、未踏破エリア。

周囲には何もない場所のため、ほぼ確定といって問題ない状態だ。

「何をするつもりか分かりませんが、脱獄犯が同行している時点で褒められるような内容ではないことは確かです」

「だね。けど、私たちが結界に行くには、協会で許可を取らないといけないけど、通るかな」

現在、結界周辺には霊術師の見張りが駐在している。

そのため、無許可での接近は、あらぬ誤解と混乱を生む恐れがあった。

礼香たちはそのことを懸念し、事情を話して侵入許可を得ようと霊術師協会へ訪れていた。

「結界が目的ではなく、脱獄犯の追跡が目的ですし、その辺りの事情を話せば何とかなるかもしれません。駄目だった場合は、画像などを提出して警察に動いてもらいましょう」

「一応、進入禁止エリアだからね。無断で行くと問題だし、仕方ないか」

「別に、わたくしたち自らが捕らえる必要はないのです。要は捕まってくれさえすればよいのですから」

「それもそうだね。じゃあ、ちゃっちゃと行きますか」

相手は元十家。抵抗されることを考えると、礼香たちが現地に向かった方が余計な被害を出さずに済むかもしれない。

しかし、こちらの目的は真緒の出所日を確定させること。

とにかく、井和倉が捕まりさえすれば、それでいい。

捕縛方法や誰が事に当たるかについては、こだわりはなかった。

むしろ、その過程で問題行動を起こす方が後で面倒になる。

そのため、侵入が許可されない場合は、全てを警察に任せることを決める。

意見のすり合わせを終えた礼香と七海は、霊術師協会の内部に足を踏み入れた。

中に入ってみると、妙に騒がしかった。

更に、こちらが名乗って事情を話したいと告げると、大混乱になる。

「どうしたのでしょう。思っていたのと違う反応なのですが」

「あ、なんか偉そうな人が来たよ」

予想外の状態に驚いていると、代表者と思われる人物が近づいてきた。

以前、未踏破エリアへ行く依頼を担当した者とは違う人物だ。

男の顔は険しく、歓迎するような雰囲気は微塵もない。

「まさか、わざわざこちらに顔を出すとはな。我々の情報収集能力を侮ったようだな」

「なんのことでしょう」

男の言葉に何一つ思い当たることがなく、首を傾げる礼香。

「君たちに関する情報提供があった。兎与田七海が十家の地位を手に入れるため、脱獄犯と結託して結界を破壊し、中の妖怪を倒して手柄を得ようとしているとな」

「むしろ、その脱獄犯を追って、ここまで来たのですが」

真逆の事を言われ、困惑する。

それに加え、脱獄犯の事が情報に含まれていることに疑問を覚えた。

「やたら詳しい情報提供だね。もしかして、こっちの追跡がバレていて、妨害されたのかな」

と、七海が声を潜めて予想を話す。

未だ脱獄犯の事は報道されていない。つまり、知っている者が限られている。

七海の言う通り、井和倉と行動を共にする者たちが流した情報と考えると、納得できる部分が多々あった。

ただし、妨害目的という部分に関しては、礼香の見解は違った。

「妨害というより、かく乱が目的でしょう。あちらは、我々が追跡していることすら気づいていないはず。単純に自分たちから目を逸らすような情報をバラ撒いているのでしょう」

「それで、私が出しに使われたってわけね……。頑張って結界を延命したのに、酷い言われようだよ」

「………………まさか、本当に結界を壊そうとしているのでしょうか」

拡散された偽情報。

礼香はその中の、結界を破壊して封じられた妖怪を倒すという内容が気になった。

「元十家でしょ? 高位霊術師なんだから、そんな馬鹿な事、いくらなんでもしないでしょ」

と、七海は楽観的かつ、軽い調子で否定する。

「それでは、何をしに結界まで……」

礼香は、脱獄犯と同行者の目的が気になった。

未踏破エリアは逃走先としては不適切。完全な行き止まりだ。

潜伏して生活するにしても、面倒ごとが多い。

わざわざそんな所に隠れ住むより、海外に行った方が快適な生活を送れる。

しかも、目的地が結界のあるエリアだった。そんな所に何をしに行くというのか。

「あれ……、やっぱり壊そうとしている?」

ここで七海も脱獄犯たちの行動の不自然さに疑問を覚えたようだった。

そう、あの場所では結界を壊すくらいしか、やることがないのだ。

つまり、偽情報と同じ様に、中に閉じ込められた妖怪を倒して、手柄を上げようと考えているのでは……。

「まずいですね」

「まずいね」

が、そこで七海が何かに気が付いたように呟く。

「でも、あの結界は玄宮のものだから、簡単には壊せないはず。それこそ玄宮の力を使わないと、どうにもならないと思うけど……」

「ふむ……。ということは、一緒に移動している者の中に、玄宮家の人間が混じっていると考えるべきかもしれませんわね」

「そうなるか~……」

「最悪の場合は……」

顔を見合わせた七海と礼香は、事の重大さに気づいた。

「何をコソコソ話している。君たちの魂胆は分かっているんだ。残念だったな、未踏破エリアへの立ち入りは許可しない」

五属性でありながら、微妙な立場である七海が突然北海道に現れたことにより、流されたデマに妙な説得力が出てしまったようだ。

結果、偽情報を信じた協会責任者は、こちらの行動を予測して未踏破エリアへの進入を禁じた。

だが、まだ打つ手はある――。

「許可はしなくてよいので、結界の調査に行っていただけませんか」

「そうそう。脱獄犯がいるから捕まえて欲しいんだけど」

――そう、別に礼香たちが現地に行く必要はないのだ。

誰でもいいから、結界のある場所へ調査に向かってもらえば、それでいい。

そうすれば、脱獄犯を捕まえることも叶う。

「ふん、白々しいことを。一旦、君たちを拘束し、事情を聞かせてもらう」

しかし、協会責任者は、こちらの話を聞こうとしなかった。

男が手を上げたのを合図に、施設警備員が礼香たちを包囲した。

「ねえ、まずくない? 私たちが足止め食らったうえに、誰も結界に行かないって」

「一番望まない展開ですね。ですが、これ以上丁寧に説明しても理解してもらえるか、怪しいですわね」

「あんまりゆっくりしているのも、まずそうなんだよね……」

「ええ。想定外ですが、強行突破するしかありませんね」

調べた情報から逆算すると、井和倉たちが結界に着いていてもおかしくない。

何をするつもりか、早急に調べる必要がある。

包囲に隙を見出した礼香は、七海に視線で合図を送った。

七海が首肯を返したのを確認と同時に、全力で駆ける。

二人は包囲を押しのけつつ、施設外へ通じる扉へ向かう。

「待て!」

背後で協会責任者の声が聞こえるも、気にせず走り抜ける

が、出入り口を抜けて外に出たところで、多数の霊術師に包囲されてしまった

――強制的に立ち止まることになった礼香は考えた。

この状態で振り切っても、妨害されながら追跡されてしまう

それでは現地にたどり着くまでに時間がかかってしまうだろう。

最短時間で結界へ行くには、追手を押さえ込んでおく必要がある。

そして現地に到着後、結界に何かあった場合、それに対応できるのは七海だけ――。

ならば、やるべき事は一つしかないだろう。

「ナナちゃん、わたくしでは結界に干渉できません。ですから、ここはわたくしが引き付けます。後から追いかけますので、先に行ってください」

「……っ、分かった」

七海が同意した瞬間、包囲を割るようにして車がねじ込まれ、助手席のドアが開く。

兎与田が運転する車だった

「乗れ!」

その言葉に反応して、七海が駆ける。

そして、そのまま車に飛び乗った。

ドアが閉まると同時に、車は強烈なエンジン音を発し急発進した。

「くそっ、追え!」

協会責任者の指示が響き渡る。

霊術師たちが、声に反応し車の方を見る。

が、その声に反応したのは霊術師たちだけではなかった。

礼香は、すぐさま跳躍し前宙。包囲を飛び越える。

そして、車が走り去った場所に着地。霊術師たちがいる後方へ振り返る。

「残念ですが、そうはさせません」

霊装の洋扇を向け、立ちはだかる。

「ふん、お前ひとりで何ができる」

協会責任者がそう言い放った瞬間、黒服たちが礼香の側に集う。

先頭に立つのは後藤だ。

「いえ、お嬢様一人ではありません」

後藤の言葉が合図となり、黒服たちが展開。

霊術師対、雲上院家の護衛という構図が出来上がった。

とはいえ、雲上院家の護衛は少数。圧倒的な人数差があった。

「構うな。相手は少数だ。さっさと拘束しろ!」

協会責任者の指示が飛び、霊術師たちが動く。

それに応じ、雲上院家の護衛も対抗する動きを開始。

お互いが総力を挙げて衝突する形となってしまう。

結果、礼香がこの場に訪れた理由とは真逆の展開と迎えることとなってしまった。