軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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心当たりがなかったのか、留美が首を傾げた。

「そうだ、出所時期のことだ」

「ああ、そのことですか」

と、納得がいった風に俯く留美。

我々に比べて、娘の罪は軽い。

未成年ということも加味されたため、自分より早く出所するのだ。

そのこと自体は非常に喜ばしいことなのだが、問題もある。

現在、炎泉家の人間は、ほぼ全員が捕まってしまっている。

つまり、娘が出所した際、気軽に頼れる受け入れ先がないのだ。

「正直どの家に頼るべきか迷っている。最悪、権力争いに巻き込まれるかもしれん」

こちらの都合で娘を預かってもらうということは、借りとなる。

十家の地位をはく奪されたとはいえ、元第三位という肩書きには、まだそれなりの重さがある。

影響力が完全に消失したわけではない。

そこを突いて、色々な輩がすり寄ってくるのは明白。

逆に、相手側が何の思惑もなく受け入れると言ってくれたとしても、周囲の疑心暗鬼に巻き込まれて迷惑をかけるということにもなる。

そういった両方の意味から、相手を慎重に選ぶ必要があった。

「……それなら、一人で何とかします。下手な家に厄介になれば、その家に迷惑がかかりますから」

しばらく思案した後、留美がそう言った。

きっと、家のしがらみがない友人もいるのだろう。

だが、その家に力がなければ、呑み込まれてしまう。

「そうさせてしまうことになるかもしれない。すまない」

正直、娘を一人で住まわせるのは抵抗がある。

しかし、この問題を解決できる妙案が浮かぶことはなかった。

「気にしていません。お父様たちの刑期も短いのです。すぐに会えますし、あまり重くとらえないで下さい」

「すまない、苦労を掛ける。しかし、出所後はどうするか……。北海道へ行くことは決定だが、当てがない。着の身着のまま行っても、大した成果も出せん。折角、それなりの人数がいるのだから、それを活用して少しでも土地を取り戻したいところだが……」

これから先のやることが決まったとはいえ、問題は山積である。

北海道で活動するには、それなりの人数が必要になる。

それに加え、活動拠点、移動手段など、必要なものを数えればきりがない状態なのだが、どれにも当てがない。

資金はあれども、十家の地位はく奪という汚名がある状況では、人との繋がりを持つのが難しい。

果たして、自分たちに協力してくれる人間は、どれだけいるのだろうか。

「なら、うちに来ますか?」

と、唐突に背後から声をかけられる。

驚いて振り向くと、全身をガチガチに拘束された誰かが、後ろの席に座っていた。

え、誰? と、目を凝らす。

しばらくじっと見つめ、ようやくそれが九白真緒だと気づいた。

――九白真緒。

鳳宮未花の友人であり、我々が入手した霊鎧を消し飛ばした張本人の一人である。

とはいえ、彼女について知っているのはその位だ。

後は、フォーゲートの大会で娘たちのチームと優勝争いをしたことくらいか。

よく考えると、ほぼ接点がない。

そもそもなぜこんなところにいるんだ。

それに加えて、何なんだ、あの恰好は……。

ここは比較的罪の軽い者が収容される施設。

そんな施設内で、凶悪犯が抵抗しないようにするための拘束具を着用している。

ガチガチに拘束された九白真緒は、こちらの返事を待ちながら、平然とした表情で器用に体を動かして食事をしていた。

こうやってまじまじと見ると、非常に浮いた存在だ。

なのに、今の今まで全く気が付かなかった。

至近距離にいたのに存在感が薄く、人ではなく物が置かれていると錯覚していた。

こんなに特徴的な外見なのに、全く気が付かなかったのだ。

それにしてもおかしい。

彼女はこちらを捕まえた側の人間だ。

それがなぜ、全身を拘束されて、我々より待遇が悪そうな感じでここにいる。

改めて彼女を認識すると、蓮司の脳内に絶え間なく疑問が沸き起こり、混乱が増していく。

「まず確認させてくれ。なぜ、ここにいるんだ」

「……いや、……ちょっと」

声をかけてきた時の軽快な感じが霧散し、一気に胡散臭い感じで返答を濁してきた。

「『ちょっと』では、こんな所にいるはずがないのだが……」

法律を犯していないと入れない施設なんだが。

入場制限があるのだが。

気になって追及しようとした瞬間、留美が口を挟んできた。

「お父様、もしかすると、霊鎧を破壊したことで罪に問われたのでは」

「っ! それはすまないことをした。我々のせいでこんな……」

娘の言葉に、はっとなる。

霊鎧は失われた技術で作られた貴重なもの。

残されたのは一機のみ。

その状況を解決するため、解析して量産しようとしていた。

そんな貴重なものを壊したのだから、罪に問われて当然だ。

その引き金を引いてしまったのは、我々だ。

彼女は自分の身を守っただけなのに、そのせいでこんなことに……。

蓮司は強烈な罪悪感に見舞われ、即座に頭を下げた。

それに続いて、留美も頭を下げる。

「いえ、全然違いますよ。全く関係ないので、気にしないで大丈夫です」

しかし、九白真緒が軽い感じで否定した。

え、違うの? と、恐る恐る顔を上げて様子を窺う蓮司。

娘も疑問顔となっている。

「では、一体なぜ……」

拘束状況から見て、相当重い罪に問われていると思う。

言い方は悪いが、霊鎧の破壊であれば、それに見合った罪に思えた。

しかし、違うと言う。

となると、霊鎧の破壊と同等か、それ以上のことをやらかしたことになる。

そんな事、実行する方が難しい。

殺人などが該当するが、それなら収容施設が変わるはず。

短い時間しか接していないが、そういった暴力的行為を好んでするタイプには見えなかった。

一体何をすれば、こんなことになるんだ……。

「ええっと……。言うなって言われているので言えないんです」

九白真緒が、困り果てた顔で答える。

両目が不自然に動き、全身をそわそわさせている。

非常に挙動不審だ。

それにしても、口外禁止とは。

つまり、九白真緒の罪状を知った人間も罪になるということ……。

そんな公にできないような行為をしたということなのか……?

嫌な汗が首筋を伝う。蓮司は呼吸を整え、考えをまとめた。

折角、刑期が短くなったのだ。こんな日常会話で危ない橋を渡る必要はない。

これ以上深入りするのはよそう。そうしよう。

蓮司は危険を察知し、思考を切り替えた。

「そうか、分かった。これ以上は何も聞かないので安心してくれ」

と、言いつつ留美にアイコンタクトを送る。

娘も察したのか、首肯で応えてくれた。

目と目で通じ、言葉を使わなくとも『深入り禁物』という認識で一致する。

「あ~……、そ、それより、さっきの話なんですけど……。部長の出所後、うちに来ますか?」

露骨な話題の引き戻し。

深追いしないと決めた蓮司は、その問いかけに乗った。

「ありがたい話だが、構わないのか」

確か九白真緒は霊術師ではあるが、霊術師の家とは縁遠いはず。

娘からフォーゲートの大会が話題に上がった際に、そんな話をした記憶が薄っすらあった。

それが事実なら権力闘争とは無関係なので、受け入れ先としては非常にありがたい。

ただ、話を聞きつけてちょっかいを出してくる輩が現れる可能性があるので、その辺りはしっかりと説明しておく必要がある。

それでも問題ないというのであれば、助かる話だ。

「歓迎ですよ。今も北海道を攻略中で人手が欲しいので」

「何!? もう手を付けているのか」

次いで出た九白真緒の言葉に驚く。

まさか、もうそんな段階になっていたとは。