軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆玄宮勝邦

勝邦は結界の調査を終え、東京へ帰還した。

調査中、家の仕事を任せていた最側近の鶴見に事の顛末を報告する。

「霊獣はいなかった。が、収穫もあった。件の結界は妖王ではなく、強力な個体が封じられているものだと分かった。しかし、私は中に封じられているものを妖王と偽って報告した」

「それは……」

鶴見が何かを言いかけたが、手で制する。

一体なぜそんな事を、と続けたかったのだろう。顔にそう書いてあった。

勝邦は鶴見の疑問を解消すべく、その答えを語って聞かせた。

「我々だけで結界を解き、中の妖怪を倒す。そして妖王を倒したと報告してしまうのだ」

「……なるほど、霊獣と契約するに相応しい実力を有している証明にするのですね」

勝邦の説明を聞き、鶴見が深く頷く。

いつものことながら、理解が早い。

「そういうことだ。霊獣が見つからないのであれば、見つかった時に誰が契約するに相応しいかを明確にしておけばよい。そのために、あの結界を利用させてもらう」

「かしこまりました。それで……、結界内の妖怪は、どの程度の強さなのでしょうか」

鶴見が妖怪討伐をする前提で、必要な戦力を尋ねてくる。

それに対し、己で判断して準備を進めろと言いたいところだが、そうもいかない。

こればかりは実際に結界を目にした者でないと予測が難しいからだ。

勝邦は、しばらく黙考し言葉を選ぶ。

「……それが問題だ。結界の大きさから逆算すると、かなり強力な個体が封じられていると予想できる。現在の玄宮家の戦力では、いささか不安が残る。少し心許ないな」

玄宮家の主流派は、一族の中でも戦闘に特化した者の集まりだった。

その主流派は掃討戦に参加した後、全員行方不明となってしまった。

そのため、現在の玄宮家は戦力が少ない上に、実力で見劣りする者の集団と化していた。

そういった事実を客観的に見ることができた勝邦からすると、既存戦力に不安を覚えたのだ。

一応、分散して現地に向かえば、途中で妖怪の群れに襲われることなく、全戦力を投入できるだろう。

が、現状、動かせる人数が極端に少ない。

そんな状態で挑んで勝てる妖怪かどうか……。判断が難しいところだった。

こちらの懸念を察したのか、鶴見が口を開く。

「どこかと共闘しますか」

「それでは駄目だ。十家に援助を求めると、我々の純粋な功績にならない。それに妖王が封じられていないことが露見してしまう」

偽物を倒して、妖王を倒したと喧伝するのが目的なのだ。

そうなると、十家に協力を仰ぐことはできない。

結界内の妖怪の正体に気づかれるわけにはいかなかった。

「では、フリーの霊術師を雇いますか」

「それも足が付く。後で追及される恐れがある。だが、戦力不足は否めん。補充は必須だ。できれば、こちらの功績ということで独占したい。雇った相手には前衛に立ってもらって主力となってもらうつもりだが、十家への事情説明では補助に努めたということにしたい」

という勝邦の言葉を聞き、鶴見が難しい顔になる。

「そんな条件を飲む者を見つけられるでしょうか……」

「その通りだな……。改めて言葉にしてみると、こちらに都合が良すぎる。見つかったとしても、それなりの人数を揃えるには、金と時間がかかる」

「難問ですね」

「うむ……」

霊術師を大量に雇えば、人や金の動きで周囲に情報が漏れてしまう。

しかし、戦力拡充を渋ると、妖怪討伐で苦戦する恐れがある。

なんとかならないだろうか……。

できれば、結界を実際に見た者の数が少ない今の内に決着を付けておきたい。

なるべく早い段階で自分の地位を確固たるものにしておきたいのだ。

最良なのは、秘密裏に雇った相手が何一つ口外しない上に、腕が立つ者であることなのだが……。

「収容施設に服役中の元十家である井和倉慶二に頼んではどうでしょう。そうですね……、脱獄の手引きをすることを交換条件にすれば、話を聞くかもしれません」

「なるほど、それでいくか。受刑者なら脱獄後は逃走して潜伏するから証言できない。雇う相手としては最良かもしれん」

収容施設の結界維持と警備は玄宮の担当。

つまり、なんとでもなる。受刑者を外に出すことなど容易い。

脱獄されてしまった不手際も、元十家が相手だったと言えば、それほど問題にはならない。

それ以外の受刑者を脱獄させなければ、施設側の責任ではなく、元十家である井和倉の実力が並外れたものだったから仕方がなかった、という方向で落ち着くはずだ。

考えをまとめた勝邦は口を開く。

「外に出した後は、海外への逃亡も助力し、確実に隠蔽してしまえばよいか。そうすれば、協力者の存在が表に出ることはなくなり、我々だけで討伐したということにできるな」

これは案外、良い計画かもしれない。

「はい。事を起こす前に根回しをしておけば、それほど荒れることもないでしょう。ただし、井和倉を脱獄させた後は、捜査範囲が広がる前に、なるべく早く妖怪を倒す必要があります」

「うむ。精鋭を揃えておく必要があるな」

話し合いの結果、おおよその計画が完成した。

と、ここで、最近浮上した別の懸念点を話しておく。

「それともう一つ、問題が起きた」

「問題、ですか?」

「うむ。新たな当主候補となりえる者が見つかったのだ。名は兎与田七海。苗字は違うが、五属性であり、玄宮の術式を感知できる」

「そ、そのような者が一体どこから……」

「現段階で、玄宮の一族である可能性は極めて高いと思われる。兎与田七海は子供。傀儡として実権を握ろうとする者が現れる可能性がある」

「それは、確かに問題ですね」

勝邦の見立てを聞き、鶴見の顔が曇る。

だが、この問題の対処は、それほど難しくはない。

「幸い、私が一番に発見し、まだ誰も気付いておらん。今の内に……、まあ、その、なんだ。私が霊獣と滞りなく契約できる状況を構築しておけ」

「……承知いたしました」

こちらの言外の意味を察し、鶴見がうやうやしく頭を下げた。