軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆九白真緒

特訓の結果、レイちゃんが無事自転車に乗れるようになった。

出発予定日に間に合ったのは、レイちゃん自身の努力の賜物である。

というわけで、私たち以外誰もいない道路で快適に自転車を進めていく。

全員、基礎霊術の身体強化と系統術式の強化術を併用しているため、高い速度を維持している。

ナナちゃんは五属性だから木属性の強化術が使え、私とレイちゃんは一属性ながらも全系統の術式が使えるという強みを活かしたパワープレイである。

前に車が走っていれば追い抜いているところだ。

普通の公道でここまでの速度を出せば問題になりそうだが、ここは誰もいない未踏破エリア。

交通事故や、人身事故の心配は無用。速度にこだわる必要はない。

何年も放置されていたとはいえ、舗装された道を走っているのだから、遠慮なく飛ばしていく。

そんな速度を維持しているため、路上で妖怪と遭遇しても逃げ切りに成功している。

妖怪は途中まで追って来るけど、追いつけないと分かると追走を諦める。

道路周辺は見晴らしが良いせいか、妖怪の住処となるような場所ではない。

そのため、群れとの遭遇は心配しなくてよさそうだ。

前回北海道へ訪れたときは、妖怪の密集エリアを狙うポイントに建てられた拠点に行ったため、凄まじい数の妖怪と遭遇することとなった。

今回は、妖怪のせん滅が目的ではないため、あの時ほどの規模や頻度で妖怪と戦うことはなさそうである。

そもそも、現在の速度を維持していれば、路上以外にいる妖怪がこちらに気づいたとしても、その頃には十分に距離が開いた状態になっている。

そのお陰か、走行の妨げになる様なものには今のところ遭遇していない。

快走を続ける私たちの後方には、私が作り出した探査霊体のガスマスク集団が荷物を背負った状態で走ってついてきている。

知らない人が見たら、何かの訓練か新人研修を装ったパワハラの現場と勘違いしそうだ。

車が使えればこんなことにはならなかったのだが、駄目だと言われたのだからしょうがないよね。

以前、レイちゃんのお祖母さんに会いに行った際に前線での戦闘を経験したが、霊術ではなく銃で応戦している人もいた。

それなのに、霊術師以外は立ち入り禁止と強く言われるということは、相当危険な場所なのかもしれない。

正直、五属性としての立場が不安定なナナちゃんに対する嫌がらせの一つじゃないのかと勘ぐってしまうけど……。

ちなみに今回行う調査は、指定されたエリアの映像を記録するだけ。

複雑なことは一切しない。

今現在の未踏破エリアの状況がざっくり分かればいいそうなので、詳細な調査は求められていない。

指定された住宅街を高所から大まかに撮影するのが基本となる。

無人となった住宅街には妖怪が棲み着いているため、近づくと戦闘になってしまう。

今回は偵察、調査寄りの依頼のため、戦闘に発展しそうな行動はしなくて良いことになっている。

そして、撮影依頼には道路も含まれていた。

丁度、指定された道に到着したので、一旦自転車を止めて記録端末をハンドルに接続。

走行風景を撮影する。気分はサイクリング系の動画投稿者だ。

記録媒体と充電用バッテリーは大量に持ってきているので、気楽に撮影できる。

「風が気持ちいいですわね」

と、楽しげに自転車を漕ぐレイちゃん。

今回の調査は天候に恵まれ快晴。週間予報でも雨の心配は無い。

時折、太陽が厚い雲に隠れて気温が落ち着き、涼しい微風がたまに吹く。

サイクリングするには絶好のコンディションとなっていた。

そんな中、ナナちゃんの調子が悪い。

体調を崩しているわけではないのだが、明らかにいつもと雰囲気が違うのだ。

表情が沈んで、元気がない。

前回、北海道へ行った時も同じような状態になっていたが、原因は同じなのだろうか。

大丈夫かと確認すると、問題ないと返ってくる。

何か、悩み事でもあるのだろうか。

そんな状態でありながらも、私たちは軽めの休憩を挟みながら走行を続け、一日目に予定していた目的地を突破。

翌日の昼に到着予定だったエリアまで進んだところで野営を行うことにする。

調子が悪いナナちゃんは疲れたらしいので少し横になってもらう。

その間に色々と準備していこう。

「系統術式の強化術を併用したのが効いたね。予定距離を大幅に上回っちゃったよ」

「これなら、休憩にしっかりと時間を使えますわね」

体に負担もなく、良いペースを維持できている。

追い立てられるように出発するのは体に良くないからね。

そんなことを話しながら、テントを設営する。

そして、お香を炊く。

このお香は薄消香といって、妖怪の察知を阻害してくれる優れものなのだ。

といっても、効果が限定的でお高いため、普段使いされるような物ではない。

平たく言えば、絶妙に効果が低い上に超高級品なのだ。

素材も希少なため、滅多なことでは使われないレアアイテムとなっている。

だけど、今回は依頼を受けるにあたって、霊術師協会から支給してもらえた。

これを使わないと昼夜問わず、厳重に見張りを立てないといけなくなるので、大助かりである。

そんな感じで一通りの設営が終わったので、料理の準備に入る。

一応初日だけは日持ちしない物もクーラーボックスに入れて持ってきているので、今日はちゃんと料理する。

持ち込み食材が無くなれば、レトルト食品やカップ麺が主軸になるだろう。

折り畳みのテーブルを展開し、まな板と包丁で食材をカット。

と、言いたいところだが、あらかじめカットした物を持ち込んである。

こいつをカセットコンロの上に置いた片手鍋に放り込んでいけば、それなりの料理が出来上がる寸法である。

初日しか使わないのなら、そもそも料理をしないことにして、調理道具を持ってこないという手もある。

が、手持ちの食料が無くなって、食材を現地調達する事態も想定すると、持ってきておいた方が安心なのだ。

今回の依頼は達成までにそれなりの日数が掛かる。

そうなると、何かトラブルが起きる可能性も否定できない。

だから準備はしっかりしておくべきと考えた。

「マオちゃんはお料理もできますのね」

「簡単なものだけね。レイちゃんも出来るんじゃないの?」

「いつかはお料理教室に通うことになると思いますが、今はまだ習っていませんわ」

と、料理をしながら話していると、ナナちゃんが起きてきた。

「……いい匂いがする」

「起きて来て大丈夫?」

気分がすぐれない様子だったが、もう平気なのだろうか。

「うん、もう平気。私の依頼なのに頼りっきりでごめんね」

「もし体調がすぐれないのであれば、引き返しますか? 今ならすぐに戻れますし」

レイちゃんが心配そうに声をかける。

「ううん。具合が悪いわけじゃないの。なんていうか……」

ナナちゃんは、言葉を探してしばらく考え込んでから続ける。

「勘が鈍るというか、なんというか……。前に北海道に来た時も同じような感じになったんだよね」

「そういえば、あの時も調子が悪そうでしたわね」

レイちゃんが、当時を思い出しながら呟く。

それは私も感じた。

なんというか、別の事に気を取られているような感じで、注意が散漫になっていた。

「うん。変な感じなんだよね。今回の方が違和感が強いの」

調子の悪い原因が分からず、曇った顔で考え込むナナちゃん。

こういう時は気分転換でリフレッシュするのが一番だ。

「まあ、そういう時はお風呂に入ってサッパリするといいよ」

そう言って、あらかじめ準備しておいた浴槽を指さす。

土属性の私にかかれば、風呂場を作ることなど朝飯前なのである。

「え、いつの間に」

「水はナナちゃんの霊術頼みだけどね。調子が悪くて難しいなら、私の霊術で砂風呂にしてもいいけど、どうする?」

「気疲れみたいなものだから、大丈夫。むしろ霊術使って、ちょっと発散した方がいいかも」

「じゃあ、先にお風呂にして、そのあと夕食にしよっか」

「いいですわね!」

というわけで、入浴を楽しんだ後で夕食をとった。

その後は、少しでも疲れを取るために、早々にテントで就寝する。

今回の依頼中、周囲の見張りは私の探査霊体に任せていく。

そのため、誰かが交代で起きるようなことはしない。

全員朝まで、しっかりと寝ていくスタイルだ。

ナナちゃんは、浴槽にお湯を溜めるのに霊術を使い、しっかりと風呂に浸かったことが効いたのか、速攻で寝てしまった。

逆に、レイちゃんは初めてのキャンプでワクワクが収まらず、なかなか寝付けられずにいたが、しばらく経つと寝息が聞こえてきた。

そのことを確認した私も翌日に疲れを残さないため、早々に寝た。