軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10

明日は小学校の入学式だ。

霊気を圧縮して霊核を大きくする毎日を送っていたら、いつの間にかそんな日を迎えてしまった。

通う学校は、お金持ちが通う私立の学校。小学校なのに制服があるタイプの学校だ。

そういう学校は、小、中、高がエスカレーター式の一貫校の場合が多いようだが、私が受験したのは小学校のみのタイプ。

受験対策はバッチリ。無事合格できた。

そこまでは予定通りといえば、予定通りの展開。

私もお金持ちの一人娘。学校もそういうところに行くだろうと予想がつく。

――だけど、そこから先がおかしいことになった。

入学式を前日に控え、母がテストをすると言い出したのだ。

やったのは普通のペーパーテスト。小学校低学年なら簡単に解けるような内容だった。

特に神童扱いされたいわけでもないので、全問正解にならないように解答を調整。

無難な回答を心がける。

今天才と思われても、後々ボロが出るし、いいことなんてないからね。

学年トップでもなければクラスで一番でもない。

だけど、自宅学習の頻度を増やそうと判断されるラインは突破。

そのくらいの結果をイメージして仕上げましたよ。

「よし、合格だ。行くぞ」

と、テストの採点を終えた母が言う。

――どういうこと? と聞く間もなく、車に乗せられ移動。

「合格って何?」

と、車中で尋ねれば、「授業免除ってことだ」と返って来る。

ますます分からない。その後も質問を重ねるが、はぐらかされてしまう。

車で数時間移動し、海に到着。そこで小船に乗って、沖に出る。

そんな経路で到着したのは無人島。

「なんでこんなところに……」

質問のアンサーが得られないままに、砂浜に立つ私。

視線の先では、小船が島から離れていくのが見えた。

「今日から、ここでキャンプだ」

「どういうことなの、母さん? 入学式とかは?」

ちなみに母はママ、お母様と呼ぶと嫌がるため、母さん呼びに落ち着いた。

父はパパ呼びが気に入っていたらしいが、小学校に入るし、そろそろ替え時だと思ったんだよね。

って、話が逸れた。

なんで小学校にも行かずに島でキャンプを……。

「この無人島で野外の生活に慣れてもらう。対岸まで泳げる距離じゃないから、逃げようとするなよ」

ふむふむ、ここは無人島なのか。

四方は海。逃走できないように物理的に閉じ込めた、と。

「なんでぇ……?」

あまりに唐突な展開。まあ、自然が綺麗な場所でのキャンプと思えばいいか……。

――いや、待て。いいのか本当に!?

入学式は!?

…………

そんなこんなで、キャンプ生活が始まった。

今まで体験したことのない環境で寝起きし、普段味わえない料理に舌鼓を打つ。

ただのお嬢様なら、環境の変化に取り乱して泣き叫んでいたかもしれない。

でも、私にとってはただの楽しいキャンプライフ。

道具もあるし、食材も持ち込んでいるので、快適。

ついでに言えば、静かな環境で霊気圧縮も出来て、ありがたい。

などと思っていられたのは、初めの三日ほどだった。

三日目の朝、母は私を置いて帰って行った。

まあ、食料などは十分にあったので、生活する分には問題ない。

けど、こんな小さな子を置き去りにするかね。

一応、初めの三日間で色々レクチャーしてくれたけど、いきなりが過ぎるよ。

などと思いながら、もしゃもしゃとパンを食べたり、水を飲んだり、霊気を圧縮する日々。

いやあ、誰も居ないから霊気の圧縮がはかどるはかどる。

とにかく圧縮が楽しくて仕方が無いのだ。

初めのころは、砂粒程度の大きさを作り出すのにも一苦労していた。

だけど、塵も積もれば山となる。少しずつでも大きくなれば、霊気の量も増えてくる。

それを実感できたのは、湯気のようだった霊気の質感が水に変わった瞬間だろうか。

あの時は、喜びもひとしおだった。

そして、のめり込んでいるもう一つの理由が、限界が無いという事を知ってしまったためだ。

数年前のある日、横伸ばしに拡張していた霊核がとうとう私の宇宙の端に到達した。

なんせ、宇宙のような空間は、私をかたどった境界線の内側に存在している。

胴部分は案外短いのだ。だからいつかは端に到達する。

端に辿り着いたらどうなるか気になった私は、霊核を棒状にして横伸ばしにし続けた。

そして境界に霊核が接触した瞬間、それは起きた。

なんと宇宙が広がったのだ。いや、広がったというか、認識が変わったというべきか。

私が境界と認識していたものは、仮の境界みたいなものだったのだ。

自分が認識できる範囲を固定するようなものだったので、いくらでも広げたり縮めたりすることができたというわけ。つまり好き放題できるってことだ。

限界がないと知った私は、大喜び。霊気を圧縮する熱が更に高まった。

そんな中での、今日のキャンプ。誰にも邪魔されない環境。

これは……、気兼ねなくじっとしていられる!

私はひたすら動かず、圧縮を続けた。

それから五日後、お迎えが来た。

どうやら帰った振りをして、遠くから見守ってくれていたらしい。

母は、私の堂に入った生活に大満足。

え、落ち着きぶりが大人顔負け?

いや、じっと圧縮していただけなんですけど……。

「これなら、先に進めて大丈夫だな」と、一人納得して深く頷く母。

フフ、嫌な予感しかしないんですけど……?