軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アプカルル?を救え

「で、では、いきます!」

「うむ、私も出るとしよう」

アルテが一言口にしてから人形を走らせると、パナメラも魔術を使いやすい場所へと移動を開始した。

「それでは、僕も……」

一番楽なポジションで申し訳ないが、そっとバリスタを操作して構える。確実に仕留められる距離ではないので、まずはウッドブロック製の矢だ。

「次の矢を準備しておきますね!」

やることの無いティルが予備の矢を両手に抱えてそう言った。

「ありがとう。助かるよ」

「はい!」

やる気のある返事が素晴らしい。バリスタで狙いを定めつつ、化け物鯨を目で追う。あの巨体に似合わず、動きは速い。いや、あれがもし小さな魚くらいの大きさなら移動距離は少ないのだろうが、大きすぎてものすごく速く感じる。

だが、バリスタで狙うのは楽である。

「……この辺!」

化け物鯨のほんの少し前方を狙い、発射。矢は風切り音と共に化け物鯨の後頭部辺りに当たった、筈である。大きすぎてどうなったのか分からない。だが、最低でも掠めたのは間違いないだろう。

「次の矢を準備しました!」

「わ、ありがとう! 早いね」

「えっへん」

褒めるとティルは得意げに胸を張った。すぐに調子に乗ってしまうティルが可愛い。その様子に笑っていると、アルテの人形も砂浜まで到達した。

「ま、魔獣の動きが変わりました!」

「あ、本当だ」

アルテの言葉に頷き、化け物鯨の動向を確認する。やはり攻撃が当たっていたのだろう。化け物鯨は身を捩って方向転換をする。攻撃してきた相手を探しているのかと思ったが、即座にこちらに顔を向けてきた。

「うわ、鋭い!」

一瞬でバレた為、すぐに次の矢を発射する。真っすぐに向かってくるなら、むしろ当てやすい。巨体のど真ん中目掛けて矢を発射した。バリスタの発射音と鋭く風を切る音が重なり、一気に矢は化け物鯨目掛けて飛んでいく。

しかし、化け物鯨はなんと頭を右に振るようにして身を捻り、矢を避けようとした。流石に巨体過ぎて胴体部分の端っこに命中したが、それでも軽傷だろう。

「やばいね、あれ……反射神経が良いなぁ」

「ヴァン様! 次の矢が準備出来ました!」

「おお、早いね!」

「お任せください!」

ティルとそんなやり取りをしている間に、化け物鯨は海から出て体半分が上陸を果たした。パナメラは少し離れた場所で魔術の準備をしているが、あの勢いは危険かもしれない。

「アルテ! 動きを止めれるかい!?」

「は、はい!」

アルテに尋ねると、即座に人形が剣を振りかぶった格好で地を蹴った。勢いよく化け物鯨に飛び込んでいき、人形は剣を振り抜く。

流石に矢よりも範囲が広く、速度も中々のものだ。この一撃を完全に避けることは流石に出来なかったのか、人形の剣は化け物鯨の口の端を切り裂いた。ヴァン君印の大剣の切れ味は勿論だが、あの化け物鯨はドラゴンほどの硬さはないらしい。

矢が二本掠め、人形の剣をその身に受けた化け物鯨は、身体を震わせて腹に響くほどの咆哮を上げた。純粋な怒りと殺気が咆哮から感じられ、思わず身が竦む。それはアルテやティルも同様で、息を呑んで固まってしまった。

その間に、化け物鯨は尾びれを地面に叩きつけて空を舞った。殆ど地震のような衝撃だ。それを見て、大型魔獣の脅威を改めて認識する。

仮に、普通の騎士団や詠唱に時間のかかる魔術師達が揃って戦えば、間違いなく死屍累々の惨状となるだろう。トリブートにあの化け物鯨が襲来したら町が崩壊するのは確定だ。最終的に討伐は出来るかもしれないが、それでも被害は甚大なものとなる。

だが、この場では違う。

簡単には倒れないアルテの人形が接近戦をこなし、遠距離からは城壁も打ち抜けるバリスタが矢を放つ。そして、最強の火の魔術師が控えているのだ。

「相手が悪かったな、魔獣よ! 炎槍(ファイアジャベリン) !」

背中しか見えなかったが、笑みを浮かべたパナメラの顔が目に浮かぶようだ。

化け物鯨が空に飛びあがったにもかかわらず、パナメラの魔術が発動し、巨大な炎の槍が化け物鯨に向かって放たれた。バリスタよりも速度は遅い。しかし、空中であれば回避することも出来ない。

化け物鯨の巨体が空中で激しく揺れ動き、火に包まれた。その状態で地面に落下すると、苦しそうに尾びれで地面を叩きながら転がった。普通の魔獣相手ならアルテの人形でトドメを刺してもらいたいが、相手はあの化け物鯨である。巨大な体でバタバタと動きながら暴れている為、まだパナメラの位置は危険な距離だ。

それは間近で見ているパナメラも感じている為、急ぎでこちらに避難してきていた。

それを横目に見ながら、アルテとティルに指示を出す。

「アルテ、人形で動きを止めて! ティル。悪いけど、鉄の槍の矢に変更をお願い!」

「は、はい!」

「分かりました!」

二人は僕の指示に、即座に動き出した。