軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

化け物鯨の撃退と新たな出会い

「やるぞ、少年。今後の生活の為に」

地上に戻ることが出来たが、パナメラの闘争心も戻ってきてしまっていた。パナメラからすると魔獣を相手に逃げることしか出来なかったと思っているのかもしれない。

個人的にはもうそろそろ無人島から脱出したいのだが、この海域に化け物鯨がいるのは確かにマズいかもしれない。

「……まぁ、しかたないですね。それじゃあ、本気の編成を組みましょうか」

「ほう?」

本気を出すと宣言したところ、パナメラが興味深そうにこちらに振り返った。そもそも、楽観的に考えすぎてすぐに救援が来ると思っていたから、ログハウスの防衛もしっかりしていなかった。

なので、海岸線と砂浜がすべてカバーできるようにバリスタを設置する。パナメラが森で魔獣を討伐してくれていて助かった。ついでに二本しか作れないが鉄の矢も作成しておく。そして、急ぎで大きめのアルテの人形も作る。武器は二メートルにも達する大剣だ。

「これで、アルテの人形が最前線で戦い、バリスタで援護することが出来ます。そして、とどめにパナメラさんが魔術を……」

「なるほど……しかし、少年……」

バリスタを作ってアルテの人形を作るところもジッと見守ってくれていたパナメラだったが、作戦を伝えると何ともいえない複雑な表情が返ってきた。

そして、何も見えない平和な海を指差す。

「……あの大型魔獣はもう海に戻ってしまったぞ」

「な、なんと……!? いつの間に……!?」

大袈裟に驚きながら返事をする。それにパナメラは肩を落としながら項垂れた。

「……はぁ。仕方あるまい。どうせ、少年のことだ。確実に勝てる状況でないなら戦わないということだろう? わざと時間をかけたな?」

「え? そ、そんなことはないですよー?」

鋭いパナメラの指摘に、思わずどもりながら否定する。だが、パナメラが無言で目を細めて見つめてくるので、すぐに折れる。

「すみません。出来心で……」

「……仕方ない。私の尻を撫でまわしたことは許してやろう」

「触ってませんが!?」

何を思ったのか。パナメラは再び痴漢冤罪事件を蒸し返してきた。偏向報道どころではない。嘘、大袈裟、紛らわしい発言である。

ぷりぷりしながらパナメラに文句を言うと、肩を揺すって笑っていた。

「はっはっは! 冗談だ、冗談!」

「もう!」

悪ガキがそのまま大人になったようなパナメラに頬を膨らませて文句を言う。

その時、アルテが海を見て声を上げた。

「あ、あの……」

「ん?」

「何かあったか?」

アルテの声を聞き、すぐに海に目を向けた。脅威が去ったばかりということもあり、僕もパナメラもまだ緊張感が解けずにいたようだ。反射的に海に目を向け、化け物鯨の姿を探していた。

すると、本当に少し沖で顔を出す化け物鯨の姿があった。

「……本当にデカいな」

「化け物ですよ、化け物」

二人でそんな感想を漏らす。しかし、それにアルテが首を左右に振った。

「あ、そ、その……あの魔獣の向かう先に、何か、いるような気がして」

どうやら、見てほしいのは化け物鯨の方ではなかったようだ。

「え?」

アルテの言葉を聞き、目を細めて化け物鯨の前を見つめる。数百メートルは離れていても化け物鯨は巨大で目に入りすぎるくらいだが、その先に何がいるかはよく分からなかった。いや、水面スレスレを何かが泳いでいるのは分かる。

「……髪?」

「ふむ、アプカルルに見えないか?」

時折きらめくのは明るい金髪か。ティルとパナメラの言葉を聞き、ようやく化け物鯨から逃げている存在が人の形をしていると理解出来た。

しかし、アプカルルの髪色は全て青っぽい色合いだった気がする。あの金髪はアプカルルのイメージとはズレがあった。

「……どちらにせよ。助けた方が良いだろう」

「そうですね。それでは、少し沖にいるのでバリスタと魔術で注意を引きましょう。アルテ? もしあれが陸に上がってきたら人形で動きを止めてほしいんだけど、大丈夫?」

「い、いけます!」

その場で化け物鯨への対処を考え、アルテにも確認する。つい先ほど死にかけた為トラウマになっていないかと思ったが、アルテは力強く返事をした。

「あ、あの、私も何か……」

そんな中、ティルが恐る恐る参加を申し出てくる。それならと、最強の斧を作って渡した。

「ティルはバリスタを撃つ僕を守ってね。これがあれば大丈夫。超最強伝説級のウッドブロックバトルアックスだよ」

「は、はい……って、ヴァン様ぁ……!」

重量級の斧を両手に持ち、ティルが涙目になる。冗談だったのだが、悲しそうだったのでバリスタを教えてみようかと思い直した。

「冗談だよ。後で、僕と一緒にバリスタを練習しようね。もしかしたら、こういうことがまたあるかもしれないし」

「は、はい……!」

ティルが機嫌を直して笑顔になったのを確認して、パナメラに声を掛ける。

「パナメラさんが攻撃できる範囲に移動するまで、バリスタで攻撃して注意を引きます。良いですか?」

「ああ、問題ない」

「それでは、魔獣討伐といきましょうか」

皆に振り返ってそう告げると、三人はそれぞれ返事をして動き出したのだった。