軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お祭り

カマキリ駆除に追われた日の夕方、俺は電車を乗り継ぎ、遠出をしていた。

「約束の時間、ギリギリ……。もう来てるかな」

「よ、ユウト。遅いぞ」

後ろから早川の声。ぽんっと肩を叩かれる。

「ああ、すまん。でも一応、まだ約束の時間前……」

振り返ると、浴衣姿の早川がいた。萩と夕顔柄の浴衣はとても女性的な繊細さで、なぜかいつもより数段、早川が大人びて見えた。

「うん、どうした?」

「──いや、浴衣、似合ってるなって」

「ふふ。そう? ありがとう。さあ、まだ花火まで少し時間あるし、出店でも見てこ」

「おお」

夕方のうっすらと暗くなり始めた雰囲気。行き交う人々の多さとその熱気に少し気圧されながらも、俺は早川と一緒に喧騒へと飛び込み、出店を見て回る。

数軒の出店を冷やかした後だった。

「あー」

祭りの出店で時たまある、プラスチック製のお面を売っている店の前で足を止める早川。

その視線はとあるお面に釘付けだった。

「早川、そのキャラ好きだったよな。買ったら?」

「うーん。さすがに、ちょっと子供っぽいでしょ」

恥ずかしそうに呟く早川。でもその熱い視線はそう言いながらも、お面に注がれ続けている。

早川の視線は、パクックマのお面に注がれていた。パクックマはたしか『どこかで見たようなクマ』がモチーフのキャラで、女性を中心になかなか人気のキャラだ。時たま早川もパクックマの小物を身に着けているのを見たことがあったので、好きなんだろうなと思っていた。

「すいません、そのパクックマのお面、二枚ください」

「はいよ。1800円ね」

「え、ユウト……」

俺は一枚をお面が頭の横にくるように自分でつけると、もう一枚を早川に渡す。

「……ありがと」

なぜかぎゅっとお面を抱き締めて、それでも嬉しそうにお礼をいう早川。

──あれ、早川はつけない、だと!? これ、俺一人がつけてるのはけっこう恥ずかしいんだが。

「あ、そろそろ花火が始まるよ。いこ、ユウト」

「お、おう」

すっかりお面を外すタイミングを逸して、引っ込みがつかなくなった俺はそのまま早川に手を引かれて歩きだす。

その時だった。スマホのアラームが鳴り出す。

何台ものスマホから一斉に響くそれは、緊急避難を呼び掛けるアラーム。

ダンジョンのスタンピードを告げる音色だった。