軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

跳んで跳んで跳んで

イサイサに抱きつかれたまま、落下を続ける加藤。

その隣ではワケミタマドローンが追随している。

地表が遠くなったことで、ようやく先程までの激音が遠退いていた。

「これ、いつまで落ちるんだよーっ!?」

「そろそろみたい。加藤ならできるよ。加藤は意外とできる子だよ? ほら、愛してあげる」

ユニークスキル、博愛を発動するイサイサ。

加藤も自らのユニークスキル、空白を発動させると、時と空間を穿つ状態にした短槍を足元へと向ける。

「え、どうやって止めるんだ!」

「落ち着いて、加藤。時間と空間を断続的にちょっとずつ戻すだけ。落下エネルギーを時間と空間の狭間に逃がせばいいの」

「なる、ほど?」

下に向けた加藤の短槍の刃先から、白い光が広がる。

優しい色合いのそれが、加藤達の体を包み込んでいく。

「そう、いいよ。保存則には反するけどエントロピーは増大することだから、簡単でしょ?」

励ますように続けるイサイサ。

次の瞬間だった。

落下する光に包まれた加藤姿が二重映しのようになる。

落下中の加藤達と、その僅かコンマ数秒前の時間に位置していた場所の加藤達の姿。

それが二重映しのように一瞬だけ同時に世界に存在する。

時間と空間の跳躍。

その事象を連続して発動していく加藤。同じ時空間を、超短時間で連続して繰り返していく。

そんな二人のちょうどすぐ下には、縦穴の終着地点があった。

時間と空間を断続して巻き戻すことで、ついに二人の落下速度は完全にゼロへと至る。

それは世界の理に、新たな突破口が開かれた瞬間だった。

しかしそんなことを気にした様子もなく、数十センチ下の床に着地する加藤。

最期に、少しよろけてしまったのは、ご愛敬といったところだろう。

「で、できた……」

「ね、加藤は意外とできる子でしょ?」

「ああ……イサイサもありがとう。ただ、意外とってのはひどくないか?」

「そうなの?」

「──いや、いいです」

諦めたように認めると、よいしょっと、抱きついたままのイサイサを下ろす加藤。

「そうだ! イサイサはよく無事だったな。大丈夫なのか?」

「偉大なるお方からの下知のこと?」

「そうそれ。他のダークコボルドたちは、なんか激昂状態になってただろ」

「たぶん私は偉大なるお方からお名前を授かった時に、群れから離脱してたからだと思う。それに……」

珍しく良い淀むイサイサ。

「それに、なんだ?」

優しく続きを促す加藤。イサイサが話したそうだと思ったのだ。

「私は偉大なるお方の僕だけど、ユシのお姉ちゃんだから──」

照れたようにそう告げるイサイサ。

「そうか……弟のことは、助けてやりたいよな。良い姉だ」

「うん──。ね、そろそろ、いこ。もう、この先だと思うの」

「おう、いくか」

ユウトが向かったであろう先を見つめる加藤とイサイサ。

二人は手をとり、そちらへと向かって歩き出すのだった。