軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見知った顔と奈落と

「な、なんだっ!」

大穴ダンジョンの入り口、魂の簒奪者たる巨大な赤ん坊達が無理やり大地にこじ開けた場所を加藤が通り過ぎて、地下へと潜りかけた時だった。

周囲を絶え間ない爆音が埋め尽くす。

一つ一つが、耳をろうさんばかりの巨大な音の波。それが無数に、そして同時に、さらに立て続けに生じている。

まるで豪雨の、雨粒が大地に叩きつけられた音一つが、ナパーム弾の炸裂音になったかのような、爆音の大合唱だった。

実際、加藤があげた自分自身の驚きの声ですら、耳に届かない程の激音。

立っているのも、辛いほどだ。

加藤の周囲をワケミタマドローンが心配そうに旋回する。

そして、加藤が思わず座り込みかけた時だった。その肩に、誰かの手がかけられる。

ぎりぎりと首を回して加藤がそちらを見ると、そこには見知った顔があった。

(イサイサっ! 無事だったのか!)

再びあげた加藤の驚きの声は、やはり誰にも届かない。

イサイサは、加藤に一つ頷くと、もふもふのお手手で、下を指差す。

下へ潜ろうと言うことなのだろう。

加藤が頷きかえすと、イサイサは加藤の手を取り、大穴ダンジョンを進み始める。直ぐに傾斜がきつくなる。

地表が遠くなることで、僅かだが激音が遠退く。とはいえ、会話するにはまだまだ困難なほどだ。

そうやって進むと、直ぐに道が途絶える。そして二人の目の前には垂直の縦穴が広がる。

加藤の顔を見て、縦穴の下を、ついで加藤の槍と自分自身を順に指差すイサイサ。

縦穴を恐る恐る覗き込んでいた加藤は、そのイサイサのジェスチャーを理解する。

絶望に顔を染めて天を仰ぐ加藤。

とはいえ洞窟の天井しか見えないが。

諦めた様子で加藤は片手をイサイサに伸ばす。

イサイサは楽しそうに加藤に抱きつくと、その首に手を回す。

加藤は誰にも聞こえないため息をつくと、覚悟を決めた様子でまるで奈落へと続いていそうな目の前の縦穴に、ぴょんと飛び込むのだった。