軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

母と娘

大地を埋める、もふもふの黒い毛皮。

気絶した大量のダークコボルドたちで、まるで一面の絨毯のようになっていた。

すべてを貫かんとばかりに鋭い小さき鎌で、これをなしたミニクロ達。コロコロと楽しげに笑いながら、その姿が宙に消えるように溶けていく。

ワケミタマドローンが受肉した仮初の命であったミニクロ達の寿命はとても短いものだった。

溶けて消えていく娘たちを、クロはどこか寂しげに、しかし誇らしげに見つめている。

その一人一人を生涯忘れることの無いようにと、目に焼き付けていた。

そして黒き毛皮の大地と化した野に立つのは、数人となった。

クロにオボロ。

そして、名を持ち、ミニクロの豪雨のような鎌の嵐に耐えきった数名の混沌たち、だ。

「クロ様、オボロ様。僕の血族と配下たちを生かしたまま止めてくださったこと、感謝する」

あだむが、七武器の一である斧を構えたまま、恭しく告げる。

「あだむさん。そこまで理性を保たれているのでしたら、もう、止まられては?」

クロが優しげに告げる。

「クロ様。偉大なるお方の言葉は絶対なのです。それが例え偉大なるお方の本意でなくとも、いぶちゃんたちに、その言葉に抗うすべはございません」

いぶが同じ様に恭しく、しかしハルバードを大上段に構えた姿で応じる。

「忠犬とは難儀なものよ。せめて安らかな眠りを見せてやる」

オボロが無手のまま、両手を腰に当てている。

「忠犬、ですか。僕らには過ぎたるお言葉だ」

「ふ、ぬかせ」

オボロとあだむのやり取りを、大地に降り立ち、オボロの隣から横目で見るクロ。

「なんだ? クロ」

「いえ、様にならないな、と」

「放っておけ。こいつらなど武器なしで十分」

「そういう訳にもいかないでしょう。十分ボロボロですよ。仕方ありません」

はあ、とため息をつくと、大鎌の刃先を自らの腹に突き刺すクロ。

「おい、急になんだ!」

珍しく慌てるオボロ。

フーフーと、息荒く呼吸するクロはそれに答えることなく、自らの傷口に片手を突っ込む。

そして勢いよく腹から手を抜くクロ。

引きずり出されるように、その手は、一本の刀が握られていた。

「し、新聞紙、ソード、だったもの、です。オボロ、これを」

「なぜだっ! これは主殿からお主が……」

「──弱い、あなたなんて、見たくないんです、おかあさん」

そういって、刀を押し付けるようにオボロへと渡すクロ。

ふいっと顔を背けて小声で呟いた最期のクロの言葉は、オボロには聞こえなかったようだ。

オボロは、手にした刀を夢中で眺めている。

「……素晴らしい誂えだ。銘は?」

「──白羽」

「主殿の姓、か。この輝かく白き刃に、羽のような軽さ。まさに!」

嬉々として、白羽に見惚れるオボロ。

それを眺めるクロは呆れたようにも、自らを受肉させた存在が喜んでいることに、ほんの少しだけ嬉しそうにも、見えた。

「──待たせましたね、さて始めましょうか」

「いえ、良きものを見せていただきました。では、いざっ!」

クロが告げ、あだむが応える。

虹の地平での最期の戦いが始まった。