軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

死と生と

「逝った、か」

刃の半ばで折れた刀を見おろし、感慨深そうに呟くオボロ。

その周囲には状態異常を解除され反動で気絶したダークコボルドが山のように横たわっていた。しかしそれは全体のほんの数パーセント程だろう。

圧倒的な実力を誇るオボロではあったが、数的不利は確実にオボロを消耗させていた。殺さずの縛りも大きい。

故に、ダークコボルド達の牙は着実にオボロへと届きつつあった。

そんなダークコボルド達をニヒルに笑いながら、オボロは高らかに宣言をあげる。

「我が命など、所詮は泡沫。この身も主殿より授かりし、仮そめの器なりっ。主殿のため、この血の一滴まで捧げるは誉れ! いざっ!」

その宣言は、状態異常中のダークコボルドたちにも感じさせる物があったのか、戦場の空気がどこかしら、変わる。

とはいえ、偉大なるお方よりの下知がある。ダークコボルドたちは、その程度で留まることなどあり得なかった。

ゆえに、黒き津波となり、オボロを呑み込もうと再び迫り始める。

──ふ、こんなときに我が思い出すのが、主殿ではなくて、マドカとはな。我も随分と弱くなったものだ。

短かくはあったが、緑川円とともに過ごした時間は、戦いしか知らないオボロにとってはかけがえの無い物だったのだ。その思い出が灯火のように胸の奥を暖めている。

オボロは、迫り来るダークコボルド達を迎え撃たんと無手で構えながら、不甲斐ない自分自身を自嘲気味に笑う。

死をも受け入れ、全てを主へと捧げる覚悟をしながらも、心まで捧げられない自身の弱さへの、嗤いだった。

そんなオボロとダークコボルド達が今まさに接触する、その時だった。

空から一筋の風が、戦場をそよがせる。

その風は白と黒のマーブル模様をしていた。

死を運ぶそれは、オボロを守るようにその周囲で、渦巻く。

圧倒的な死の気配に、流石のダークコボルドたちも怯んだようすで、その進撃を止める。その牙がオボロへと襲いかかるのが、阻止される。

「──来たか。遅いぞ、クロ!」

「だいぶ苦戦されたようですね、オボロ」

「抜かせっ。殺して良いのであれば、我とて、こんなものではないわっ」

空と地から、互いに憎まれ口を叩き合う二人。

しかしそれはどこか楽しそうですらあった。

「お主だとて、その鎌で、殺さずにやれるのか」

「流石にそこまでは制御出来ません。けれど、これなら」

そういって宙に浮いたまま、ダークコボルド達を睥睨し、鎌を持つのとは反対の手で、一度自らの腹を優しく撫でるクロ。そしてその手からを、高々と天へと掲げる。

その掲げた片手の指先から、何かがゆっくりと現れ始める。まず現れたのは、赤子のように小さな頭のようだ。そのまま、ずるりと体が、手足が、現世へと顕現する。

ミニマムサイズの人影が一つ、世界へと産み出されたのだ。

その産まれたものは、全てが小さなサイズに縮尺された、クロ自身と、瓜二つの姿をしていた。

そのクロの腹部では、取り込んだ新聞紙ソードが感応するように蠢いている。

神に等しきユウトの力を自らの胎に宿し、おのが複製を自ら生み出したクロのその姿は、まるで処女受胎をした聖母のような神々しさを放っていた。

産み出されしその子は、どうやらワケミタマドローンがミニマムサイズのクロの姿をとり、受肉したもののようだった。

死を運ぶ鎌とは対称的に、そのミニクロとでも言うべき存在は、圧倒的な生の気配に満ちて、空を遊ぶように舞っている。

そしてまた一人、ミニクロがクロの指先より生まれでてくる。

激しく蠢き続けるクロの胎。

また一人。

また一人。

やがてその生まれ出る速度が、いつの間にか指数関数的に増加していく。

空が、ミニクロで、埋め尽くされていった。