作品タイトル不明
クロ4
「──ユウト、様」
恍惚とした吐息と共に、ユウトの名を呼ぶクロ。
その手にした新聞紙ソードを逆手に構え、反対の手を、優しく添える。その周囲を見届けるように無数のワケミタマドローン群が取り囲む。
クロはその場で恭しく正座の姿勢をとる。次の瞬間、逆手に構えた新聞紙ソードをゆっくりと自身の腹部へと近づけていく。
「っあ……」
新聞紙ソードの先端が、クロの腹部へと触れる。
それだけでお腹の部分の服が裂け、クロの白い肌が大きく露出する。
それは、時代錯誤だが、まるでの切腹をするかのような仕草。
クロの腹部の服を割いた新聞紙ソードの先端は、止まらない。
ゆっくりと焦らすように、新聞紙ソードの先端がクロの腹部へと触れると、そのまま白い肌にめり込んでいく。
「ああ──ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様ユウト様──」
許しを乞うように。
恋い焦がれる相手に、届かぬ思いを告げるかのように。
新聞紙ソードが肌にめり込んでいく間、何度も何度も、ユウトの名を呼ぶクロ。
時に甘く、時に苦しく悶えるように告げられるユウトの名。
それを唱え続けるクロ本人にとっては、まさに至福の音色となって黒1ダンジョンへと満ちていく。
「っ! あ、あ、ぁ──いま、再び。おひとつ、にぃ……」
そうして最後は、一息だった。
一気に、根本まで潜り込んだ新聞紙ソード。クロの手を離れ、そのまま自らの意思があるかのように。そのすべてが、クロの体内へと入り込む。
不思議なことに、クロの背中からは新聞紙ソードの先端がまろび出てしまう、ということにはなっていなかった。
さらに、新聞紙ソードの全長をすべて体内へと滑り込ませた後のクロの腹部の肌も、つるんとしていて、とても滑らかだった。
そこには、新聞紙ソードが通ったはずの穴どころか、傷ひとつ、ない。
「はぁ……はぁー……んっ……」
顔を上気させ、荒い息を吐きながら、クロは大地に横たわる死を運ぶ鎌を手をすると、立ち上がろうと試みる。
「んっ、ぁ……」
完全に立ち上がった瞬間、かくかくと生まれたての小鹿のように膝を震わせるクロ。とっさに鎌の石突きを大地に突き立て、自身の体を支える。
「──これは、流石に、激しいです……」
反対の手を、裂けたままの服の隙間から滑り込ませ、自身の腹部に添えるクロ。
そこで荒ぶる何かを、なだめるように優しく慈しむように撫でていく。
「──なすべき務めを、果たさねば──」
優しく体内に宿るそれを撫でたまま、クロはきっと庭に蔓延るレアモンスターたちを見回す。
そして無造作に、手にした死を運ぶ鎌をさっと一振りするのだった。