作品タイトル不明
クロ5
そのクロの振るった「死を運ぶ鎌」の一振りがもたらした結果は、あまりに圧倒的だった。
鎌の振られた軌跡にそって生まれた、一筋の白と黒の光り。
黒1ダンジョンに存在し、ユウトに恭順しない命という命が、その一筋の光で、全て刈り取られていく。
庭に蔓延った植物型レアモンスターたち。
その葉の影に潜む、あだむや、いぶですら対応に苦慮するランクの虫型レアモンスターたち。
そして暗がりから虎視眈々と力のおこぼれを狙っていたレイス系のレアモンスターたち。
クロにより生み出された一筋の光が触れるそばから、その全てが、腐りはて、崩れ落ち、消滅していく。
その一筋の光は、実は、ユウトが月を穿ったマーブルエフェクトと呼んでいる物の劣化版に過ぎなかった。
しかし劣化版であるがゆえの利点もあった。
ユウトより授けられた新聞紙ソードの力を取り込み、死を運ぶ鎌を自らの名で縛り、さらには数多のワケミタマドローン群の処理能力を総動員することで、クロは黒1ダンジョンの支配領域下限定ではあるが、それを完全に操ることに成功していたのだ。
クロのそれは、自身の力に無自覚かつ持ち得る力が巨大過ぎて大雑把にしか発現できないユウトとは、対極的な力の使い方であった。
しかしそのお陰で、ベランダで育てられている霊草や英霊草などの家庭菜園の植物たちだけは、マーブルエフェクトの対象外とされ、からくもその命を永らえることとなる。
それはユウトが大事に育てている物を傷つけるなど、もってのほかという、クロの矜持。
そしてその矜持が、クロの戦闘における能力を、かつてない高みへと誘うこととなったのだ。
ユウトを除く、あらゆるものを超越する『力』──神の残滓、その一雫と言い換えてもよいほどの力を、完全なる制御下において運用しうるという領域へと、一歩踏み出したクロ。
大鎌を振り終え、ユウトの自宅とその周辺の全ての害虫を倒し終えたクロはゆっくりと空を見上げ呟く。
「ユウト様が月を穿たれて生まれた猶予も、残り僅かのようですね。私も、 征(ゆ) かねば」
輪となった月の光に、目を細めるクロ。
クロの周囲を取り囲む、ワケミタマドローンのうちの二つが、そんなクロの足元へと飛来する。
クロは左右の足を、それぞれワケミタマドローンを踏むように乗せる。
それだけでクロの体は大地から離れる。
空を飛ぶのに黒雪だるま化していたのが嘘のように、クロは二体のワケミタマドローンに乗り、軽やかに空へと舞い上がると、ユウトを追って虹の地平へと飛び去っていくのだった。