作品タイトル不明
授業を終えて
終業のチャイムが鳴り、俺は帰ろうと教室を出る。
例え月に穴が空こうが、授業はみっちり行われたのだった。
早く終わったりしないかなー、と特に期待していた訳ではない。だが、全然変わらぬ日常に、ちょっとだけ拍子抜けしていた。
どちらかといえば逆に、例の大雨で休みがあった関係で、授業自体の進捗は遅れぎみのようだった。
補習があるかもしれませんと最後に言っていた先生の言葉で、帰りの教室はざわついていた。
「ユウト、もう帰り?」
教室を出たところで早川が話しかけてくると、そのまま俺の横に並ぶ。
「ああ。早川は?」
「私もー」
「授業、補習があるってね」
「ねー。憂うつだよー。そうだ、ユウト」
「うん?」
くるっと半回転して俺の前に回り込む早川。
こっちを見上げて軽く微笑んだ早川のその頬が少し赤い。
「ユウトの家にお邪魔させてもらったお礼にさ、今度はうち、来ない?」
「……お、何かご馳走してくれるのか」
上気したようにこちらを上目使いで見てくる早川の表情に、思わず一瞬口ごもってしまう。
しかし、そんなに違和感なく返事を出来たはずだ。たぶん。
「もちろん! 腕によりをかけますよー」
そういって腕まくりする仕草をする早川。
「それは、楽しみだな。いつがいい?」
「──今日、これからとか、どう?」
「あ、ああ。じゃあ──」
俺は早川の勢いにおされるように、何も考えられずに了解してしまう。
返事をしてから、頭のなかを無数の思考が飛び回るかのようだった。
──今日って、今日だよね? え、今からって、こと。俺の家で食べた食事のお礼に誘ってくれたんだよね、早川。でも、今日の今日で、さっき誘ったのにそんな準備とかしてるの? それともお礼にご馳走してくれるってのは建前と思っていいの?
「良かった! じゃ、いこうっ! ──ほら、早くー、ユウト」
「おう」
とととっと待ちきれない様子で廊下を駆けていく早川を、俺は慌てて追いかけるのだった。