軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第399話 土王

俺の質問にポロンは夢と答えた。

夢を見るだと? もしかしたら予知夢みたいなものか?

「どういうことですか? 僕は夢自体あまり見ないのですが?」

「……そうか。オイラの魔法をあらかじめ予想しているような動きだったからお前もと思っただけだ」

ポロンの口ぶりからするに、やはりポロンは予知夢のようなものを見ているのか。

「ポロン! 今ならまだ間に合う! 矛を収めて話し合おう!」

必死になってビラキシル侯爵が説得するが、ポロンは 頭(かぶり) をかぶる。

「侯爵。オイラの見る夢は必ず当たる。そして話し合いなんかで解決できることではない! オイラを止めたくば、殺すことだ!」

ポロンがそう言い放つと、ポロンの右手に魔力が流れていく。

「ビラキシル侯爵! 魔法がきます! 一旦ポロンを無力化しましょう!」

夢の事は気になるが、今はそんなことを言っていられない。ビラキシル侯爵に進言すると、ビラキシル侯爵も覚悟を決めたようだ。

「……分かった! コンザ! マルスは下がれ! ポロンは私が止める!」

さすがに絶対に負けられない戦いで1対1をさせることなんてできるわけがない。

「ビラキシル侯爵! ここは僕も一緒に戦わせてください!」

しかし俺の提案にビラキシル侯爵は首を振る。

「ダメだ! 1対1でやる! 安心しろ! 私はポロンとの模擬戦で一度も負けた事がない。もうこんなことを考えるのがバカらしいと骨の髄まで思い知らせないと、また同じようなことを起こすかもしれない!」

ビラキシル侯爵の言葉にコンザも続く。

「マルス、ビラキシル侯爵の仰るとおりだ。このヘルメスの街で一番強いのは間違いなくビラキシル侯爵だ。1対1であれば負けることはないはずだ!」

確かにビラキシル侯爵やコンザの言うことも分かるが、もしもビラキシル侯爵が負けて殺されるようなことが起こると、和解の道が絶たれ、アイクの顔に泥を塗ることになる。

それにせっかく狸族が揉めてくれているのに、ビラキシル侯爵が負けると結束してしまうかもしれない。そうなるとここにいるクラリスやエリーの身にも危険が迫ってしまう。

それだけは絶対に避けなければならない。

俺はビラキシル侯爵の言葉に頷くわけでもなく、少し後ろに下がった。

ビラキシル侯爵とコンザが言うように、勝てるのであれば手は出さない。しかし細心の注意を払い、もしも危ない状況に陥ったら2人には悪いが参戦する。

俺が下がると、ポロンの右手から魔法が放たれる。

「 土弾(アースバレット) !」

「ファイア!」

ポロンが 土弾(アースバレット) を放つと、ビラキシル侯爵はファイアで 土弾(アースバレット) を焼き尽くすが、ビラキシル侯爵の表情が曇る。

「 土弾(アースバレット) の威力が上がっている!? 今まであれば、私のファイアが 土弾(アースバレット) を飲み込み、ポロンの下まで届く勢いなのだが……それに発現速度も心なしか速い気が……」

「確かに……いつもであれば、威力で押されたポロンが 石砦(ストーンフォートレス) に籠って負けていましたが……」

コンザもポロンの 土弾(アースバレット) の威力に驚いている。

どういうことかと思い、2人を鑑定してみる。

【名前】フォル・クラマ

【称号】呪術王

【身分】魔族(妖狐族)・ビラキシル侯爵家当主

【状態】良好

【年齢】158

【レベル】70

【HP】201/201

【MP】899/904

【筋力】95

【敏捷】102

【魔力】135

【器用】122

【耐久】108

【運】1

【特殊能力】体術(Lv6/D)

【特殊能力】呪術(Lv8/B)

【特殊能力】火魔法(Lv9/B)

【特殊能力】風魔法(Lv6/C)

これがビラキシル侯爵のステータスだ。魔力はほぼ俺と同じくらい。そしてポロンはと言うと。

【名前】ポロン・マラカス

【称号】土王

【身分】魔族(妖狸族)・平民

【状態】-

【年齢】54

【レベル】65

【HP】198/198

【MP】822/862

【筋力】88

【敏捷】102

【魔力】118

【器用】120

【耐久】78

【運】1

【特殊能力】体術(Lv5/C)

【特殊能力】呪術(Lv6/C)

【特殊能力】土魔法(Lv10/A)

ちょっと意外だったのが、ポロンって平民なのか。妖狸族はビラキシル侯爵になり得る存在と聞いていたから、てっきり貴族かと思っていたのだが……。

【状態】も少し気になった。良好ではないということか。

ステータスの方はというと、ビラキシル侯爵より全て劣っているが、互角以上にビラキシル侯爵と魔法戦を繰り広げられるのは、土魔法のレベルが上がったか、【土王】の称号を得たか、もしくはその両方かだろう。

その証拠に今でもポロンは互角、もしかしたらそれ以上にビラキシル侯爵と戦っている。

「 土弾(アースバレット) !」

「 土弾(アースバレット) !」

「 土弾(アースバレット) !」

「フレ……ファイア!」

「ファイア!」

「ファイア!」

どうやらビラキシル侯爵はフレアを放ちたいようだが、ポロンの 土弾(アースバレット) の発現速度が速いため、ファイアよりも発現速度が遅いフレアを撃てずにいる。

「大丈夫。このまま耐え凌げれば、MP差できっとビラキシル侯爵が勝つ……」

コンザが自分に言い聞かせるように、小さな声で呟く。確かにこのまま凌げればチャンスはあるかもしれないが、ビラキシル侯爵とポロンの表情を見るとそんな悠長なことは言っていられなそうだ。

どこか余裕を感じさせるポロンと、必死になって 土弾(アースバレット) をファイアで燃やしているビラキシル侯爵。俺もコンザと祈るように見ていたが、悪い予感というのは当たるもので、膠着状態は長くは続かなかった。

ポロンがビラキシル侯爵との距離を縮めながら 土弾(アースバレット) を唱え始めたのだ。

「っ!?」

土弾(アースバレット) の発現速度はそのままに、距離を詰めるポロンに対し、ビラキシル侯爵は驚きながらもその場で必死にファイアを唱え続けるが、2人の距離が縮まるにつれて発現速度の速いポロンが優勢になり、徐々にビラキシル侯爵の魔法の発現が追い付かなくなる。

「なんで歩きながら魔法が放てるんだ!?」

コンザもビラキシル侯爵同様、歩きながら 土弾(アースバレット) を放つポロンを見て、細い目をパチクリさせている。

もうこのあたりが限界か……そう思い雷鳴剣に手を伸ばし、 未来視(ビジョン) を発現させ、ビラキシル侯爵のもとへ駆け寄ろうとすると、ポロンから俺に向かってある魔法が放たれる未来が視えた。

何だこの魔法は? 咄嗟に氷紋剣も抜き、いつでも刀身から盾を作る準備をする。

「 石扇弾(ストーンブラスト) !」

ポロンから放たれた 石扇弾(ストーンブラスト) という魔法は、 石弾(ストーンショット) よりも小さな石の弾が扇状に発射され、散らばりながら飛んでくる。

事前に視えていた俺は、氷紋剣の刀身から氷の盾を作るが、何発かは氷の盾を貫通してきた。幸いなことに威力は完全に死んでいた為、ダメージを受けずに済んだが、この魔法はヤバいな。

しかしながら 石扇弾(ストーンブラスト) の範囲にギリギリ入っていたビラキシル侯爵は、石の弾に左肩を撃ち抜かれてしまっていた。

「コンザさん! ビラキシル侯爵と一緒に後ろに下がってください! ここは僕が引き受けます!」

コンザは俺の後ろにいたため、幸いにも無傷だったが、ビラキシル侯爵を助けるのに躊躇している。なぜなら助けるということはビラキシル侯爵とポロンの戦いはポロンに軍配が上がったということになってしまうからだ。

「コンザさん! 命あっての物種です! 早く!」

もう一度急かすとようやくコンザが、負傷している左肩を右手で押さえているビラキシル侯爵の下へ走り出す。

「……コンザ、やめろ……まだ私は負けて……」

ビラキシル侯爵はそう言うが、コンザは俺の指示に従い、ビラキシル侯爵を担ぎ、後方へと下がろうとする。

するとポロンが2人に対してまた 石扇弾(ストーンブラスト) を放つ。

「逃がすか! 石扇弾(ストーンブラスト) 」

予め 未来視(ビジョン) で視ていたので、すぐに2人の前に立ち、 石扇弾(ストーンブラスト) が扇状に広がる前に風魔法ですべて撃ち落とす。

「ウィンドインパルス!」

「なっ!? オイラの 石扇弾(ストーンブラスト) を!?」

ポロンはそう言いながらも俺に向かって 土弾(アースバレット) を連射してくる。

「 土弾(アースバレット) !」

「 土弾(アースバレット) !」

「 土弾(アースバレット) !」

それを雷鳴剣で切り払うと、ポロンの目が丸くなる。

「魔法だけでなく、剣もそこまで使えるだと!?」

「申し訳ないですが、ビラキシル侯爵の代わりに僕が相手になります。ビラキシル侯爵と戦って消耗していると思いますが、僕もポコラスさんと戦っているので条件は五分ということで」

本当は3対1で戦いたかったが仕方ない。ヒールでビラキシル侯爵を回復させて一緒に戦うというのも考えたが、さきほどの 石扇弾(ストーンブラスト) のような範囲魔法を撃たれるとビラキシル侯爵たちまで庇わないといけないため、1対1の方がいいと思ったのだ。

すると俺の言葉にポロンが反応する。

「まぁいい。オイラも本気出させてもらう!」

そう 言(・) い(・) な(・) が(・) ら(・) ポロンが 土弾(アースバレット) を放ってきた。