軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第384話 イセリア大陸

2032年5月28日 10時

「では行って参ります」

「ああ、頼んだぞ」

グランザムの北門でアイクたちと別れ、俺とクラリス、エリー、ブラッド、コディ、そして姫の6人でまずは人魔橋へ向かう。

クラリスやエリーがいるので馬車で向かいたかったのだが、イセリア大陸は道が整備されていないので馬車移動は出来ないとの事。

先頭をブラッド、コディの2人に歩いてもらい、その後ろに左からクラリス、姫、エリー、そして最後尾が俺の順だ。

「姐さん! カバンは俺に!」

「いや今日は俺だよな!?」

いつものやり取りが始まると事情を知らない姫が2人に話しかける。

「なんじゃ!? お主ら!? 荷物を持ちたいのであれば人魔橋のビートル伯爵領の関所に妾の荷物があるから持たせてやるぞ!」

「なんで関所に姫の荷物があるのですか?」

「グランザムに来るのにわざわざヘルメスまで戻ってられんからの。関所にいたビートル騎士団を芭蕉扇で追っ払って妾たちが使っておったのじゃ」

姫が悪びれた様子もなく俺の質問に答える。

分かってはいたがビートル騎士団は為す術なしか……これはどうにかしないとまずいよな。時間があればブレアと一緒にイルグシア迷宮のボス部屋に潜ってみるか。

「ブラ、コディ。気持ちは嬉しいけど今日は自分で持つから2人は姫のカバンを持ってあげて」

ブラッドとコディが何度クラリスの荷物を持つと言ってもクラリスは頑なに固辞し、せっかくクラリスの荷物を持てると思っていた2人は揃って首を前に垂れる。

そんなこんなで北東に向かって歩く事2時間。ようやく人魔橋が見えてきた。

「え? こ、これが……人魔橋……?」

「ええ……私も初めて見たけど……こんなに大きい橋初めて見た……それに石畳……よね……きれい……」

「……」

「す、スゲェな……噂には聞いていたが、ここまで凄いものだとは思いもしなかった」

その光景に思わず声を漏らすと、クラリスも目を輝かせながら感想を述べる。エリーもその光景にただただ見入っており、思わずブラッドも視線をクラリスから人魔橋に向ける。

「凄いだろ!? 人魔橋は全長1km以上あって幅が50m以上もあるんだ! クラリスの言ったようにこの橋は一部を除いてほとんどが石で作られている! それにあの橋塔を見ろよ! ここからだと霧がかかっていて見えないが、イセリア大陸側にもあるんだぞ!? どうだ? カッコいいだろう!? 橋も橋塔も含めて大昔に全部魔法で作ったらしいんだ!」

俺たちが人魔橋に 瞠目(どうもく) しているとコディが得意げに説明してくる。

コディの言った橋塔というのは人魔橋の入口と中央にそびえ立つ、高さ20mくらいの塔の事だ。コディが言うにはイセリア大陸側にもあるというのだが、ここからだと霧がかかっていて見えない。

橋塔の1階部分の中央はくりぬかれており、そのまま通行することができるようだ。夢の国にあるあの有名な城をイメージしてくれれば分かりやすいと思う。

海の底まで届いているであろう橋脚も大きく、これなら人魔橋が落ちるという事もないだろう。

全部魔法で作ったという事は相当な人員と時間を割いたというのは容易に窺い知れる。2、3年では完成させる事なんてできないはずだ。

「ああ、本当に凄いな……今までこんな橋見たこともない」

「そうね。ずっとこれを見ていられるわ」

俺とクラリスが素直に感想を述べると、コディはどこか誇らしげだった。

ビートル伯爵領側の橋塔まで着くと姫がコディを連れて橋塔の中に入っていく。どうやらここに姫の荷物があるようで、荷物持ちとしてコディが任命されたのだ。

ここに荷物があるという事はこの橋塔が関所代わりになっているのだろう。さっき姫は関所に荷物を置いてきたと言っていたからな。

当然俺も一緒に中に入り姫を警備しようとしたのだが、姫に拒否されてしまったので1階部分で待つことにした。

サーチを使って一応安全を確認したし、エリーも特に問題ないと言っていたから大丈夫だろう。

「マルス、3人分の荷物なんて重いだろ? 俺がどれか持ってやるよ」

姫とコディを待っている間にブラッドが話しかけてくる。

実は先ほどクラリスのカバン争奪戦で行われて両者敗北となった後、俺がクラリスのカバンを持ったのだ。最初は俺もクラリスに断られたのだが、何かあった時の為に弓使いのクラリスには両手を空けておいて欲しいと言うと納得してくれたのだ。背中に背負っても弓を引く時に邪魔になるしね。

まぁ本当の理由は俺もブラッドやコディと同様にただ持ちたいだけなのだが、それは心に秘めておいた。

「ありがとうブラッド。気持ちだけ受け取っておく」

丁重に断ったところで姫とコディが戻ってきた。コディは姫のカバンと思わしきものを持っていたが、思いのほか荷物は少なかった。

「随分早かったですね。荷物も少なそうですし……もう大丈夫なのですか!?」

「もちろんじゃ! いらぬものは全てコディに燃やさせた。荷物になるだけだからのう。それはさておき、お主らはイセリア大陸には来た事あるか? ここを通る以外にもイセリア大陸には行けるからの」

橋を通る以外にも手段はあるのか。まぁ普通に考えれば船だよな。ビッチ先輩も西方諸島に帰りたいけど船が出ないと言っていたからこっちの世界に船がある事は分かっている。

「僕はありません」

「私もないわ」

「……ない……」

「俺も初めてだぜ!」

「そうか……では色々驚く事もあるじゃろうがよろしく頼むのじゃ。ちなみにじゃがあの霧は常時発生しておる。不思議と霧の中に入れば視界を妨げられる事はほぼないと思ってよいのじゃ。それとイセリア大陸側の橋塔には警備員はおらぬ。警備する必要がなかったからの……ただ最近になって行方不明者や攫われたりやら物騒な事が多いから警備をした方がいいという風潮にはなってきておるのじゃ」

「分かりました。あと1つ聞きたいのですが、あの霧の中は臭いとかないですよね? ちょっとトラウマがあるので……」

どうしても霧と聞くと不浄王を思い出してしまう。それにイセリア大陸にかかっているのは白くないのだ……黒くもないがちょうど中間……グレーの様な色をしているから気になってしまうのだ。

「それは心配ないのじゃ。匂いはせぬぞ」

良かった。もしもあの匂いがしたら引き返すことも真剣に考えなければならないところだった……あ、でもクラリスがいるからもしかしたら残念なのか? 匂いを理由に堂々とクラリスの媚香を嗅げるからな。

姫が俺の質問に答えると、イセリア大陸に向かって人魔橋を歩き始める。

順調に橋を進み、中央の橋塔を過ぎ、霧の中に入るとイセリア大陸側の橋塔がはっきりと視認できた。姫の言うように霧の中では視界が通るようだ。

魔物がたくさんいると聞いていたからイセリア大陸側の橋塔は相当ボロボロになっているかと思いきや中央大陸側とほぼ変わらなかった。

そしてイセリア大陸側の橋塔を無事に通り抜けると、そこには草木1つ生えていないグレーの世界が広がっていた。