軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第383話 自供

「どういう事じゃ!? なぜ父上を殺すのじゃ!?」

連れてこられたポンゴに対し姫が歩み寄りながら問い詰めるが、それをコディが後ろから姫のお腹辺りに両手を回し、近づくのを止める。

「姫! いくら拘束されているからと言って近づくのはやめて下さい!」

「うるさい! 離せ!」

「ヒメリ、気持ちは分かるが少し落ち着け。ポンゴ、俺の質問に答えろ。今日はカレンの質問にしか答えないというのは認めない。もしもそのような態度を取るのであれば 百獄刑(ロンド) だ」

アイクが姫を制すると、納得いかないようだが姫が大人しくなる。一方のポンゴはというと 百獄刑(ロンド) というワードを聞くと震え出す。

「ではポンゴ、最初の質問だ。最近ビートル騎士団だけでなく、至る所でかなりの人数が消息不明となっている。それについて何か知っているか?」

「いや、それは知らない。というか知っていたらこちらにも情報を分けて欲しいくらいだ。姫やドグマたちなら知っていると思うが、魔族側でも行方不明者が出ているが、その魔族の中に狸族も含まれる」

「ビートル騎士団の行方不明者も知らないという事か?」

ポンゴの答えに納得がいかないらしく、アイクが改めて聞きなおすがポンゴは首を縦に振るだけだった。

「嘘だと思ったら死ぬまで 百獄刑(ロンド) よ!?」

カレンの言葉に脂汗を流しながら

「う、嘘じゃないです! 信じてください!」

と必死にポンゴが訴える。やはりポンゴにとってカレンは 天敵(トラウマ) らしく言葉遣いが明らかに変わる。まぁこれは嘘じゃないな。

「分かった。では次の質問だ。ビラキシル侯爵を謀殺してからビートル伯爵を殺そうとしていたのは本当か?」

「……本当だ」

姫がまた何かを言おうとするが、アイクに睨まれると口を 噤(つぐ) む。

「ビラキシル侯爵というのはそれなりに強いんだよな? その強い人物を欠いた状態でグランザムと戦おうとしていたのか? グランザムと戦うという事はザルカム王国と戦うという事になるんだぞ?」

「……ああ。その辺も全て理解したうえでの事だ」

「ザルカム王国と戦っても勝算があったと?」

「もちろんだ。カミラ魔公爵が力を貸してくれると約束してくれていたからな。カミラ魔公爵は吸血族だけでなく他の魔族や街も率いている、それにポロンがザルカム王国に内通者がいるとも言っていた。その内通者のおかげでザルカム王国からグランザムへの支援は行われないともな」

ここでカミラ魔公爵という言葉が出るのか。ザルカム王国の内通者というのはディクソン辺境伯だろう。ディクソン辺境伯の騎士団がビートル伯爵領を包囲しているから情報も王都まで伝わらないという事だろう。

「カミラ魔公爵というのは誰だ!? そしてポロンというのも」

「カミラ魔公爵というのは吸血族の族長であり、今は魔族に魔王がいないから魔族のトップの1人だ。ポロンというのは三巨頭の1人で妖狸、狸族の若き族長だ」

「吸血族だと!? ザルカム王国の内通者というのは誰だ?」

「それは聞かされていない。ポコラスも知らないと言っていたからポロンしか知らないはずだ。ポコラスというのも三巨頭の1人で怪狸族の族長だ」

アイクも恐らくディクソン辺境伯が怪しいとは思っているだろうが、念のために聞いたようだ。それにしてもポンゴは内通者を知らないのか……

「分かった。ではなぜヒメリを殺そうとした? 先ほど捕えた5名から聞いたが、ヒメリを殺す予定などなかったと聞いたが? 独断か?」

「……独断……ではない……が、殺せる機会があれば殺そうと思っていた程度だ。もしもあの場にお前たちがいなければ絶対に動かなかった。ビートル騎士団程度では姫を殺すどころか芭蕉扇を扇がれて近づく事すら出来ないからな。あの場で動いたのはお前たちが姫よりも強く、俺よりも弱いと判断したから動いたのだ。お前たちが姫やドグマたちを殺した事にして、その弔い合戦をしようとしただけだ」

なんとしても戦争を起こしたかったという訳か。

「では俺からは最後の質問だ。ビートル伯爵とビラキシル侯爵を殺そうとしている理由は?」

「……俺たち狸族にとっての目的は、あくまでもビラキシル侯爵が狸族以外の者に殺されたと思わせる事だ。ビラキシル侯爵が死ねば妖狸のポロンがヘルメスの街の領主になる可能性が高いからな」

「どういうことだ? ビラキシル侯爵が死ねばヒメリが領主だろ?」

「ビラキシル侯爵というのは妖狐か妖狸がなる。どちらもいない時は一番強い者がなる。そしてどちらもいた時は妖狐がなると決まっているのだが、姫はまだ成人前だ。その時はポロンが摂政としてヘルメスの街を実質的に治める。姫にヘルメスの街を治める事は無理だからな。それはここにいる魔族の全員、そして姫自身も分かっているはずだ」

え? 貴族って世襲制じゃないのか? と思っていたが、そういえばセレアンス公爵家も同じという事に気付いた。セレアンス公爵家も金獅子が生まれれば金獅子がセレアンス公爵になると言っていたからな。獣人や魔族は人族とは違う文化があるという事か。

「要は権力が欲しいだけでクーデターを起こそうと? そしてビートル伯爵はただただそれに巻き込まれただけという事か?」

「……少なくとも俺はそう思っている……が、ポロンはビートル伯爵を殺すのも必須だと思っている節があるようにも見受けられたが……」

アイクの言葉にポンゴは頷きながら答えた。真相を知っているのは三巨頭の1人で妖狸のポロンだけという事だな。

「ポンゴに何か聞きたい事はあるか?」

「父上は無事か!?」

質問を終えたアイクが俺たちに聞くとすぐに姫がポンゴに問いかける。

「……計画はあくまでも戦争中にビラキシル侯爵が命を落とすという事だったが……俺と連絡が取れなくなったポロンがどのような行動を取るかは分からない……が、ビラキシル侯爵もバカじゃない。恐らく俺たちの行動にうすうす気づいている。だが正確には把握できないから念のため姫にグランザムとの交渉役を任せ、ヘルメスの街から逃がしたのだろう」

「そうか! どおりで! 姫が交渉役なんてどう考えてもこじれるだけでおかしいと思ったんだ!」

コディが全て納得したように頷く。それはコディだけではなくドグマたちもだ。こうまで言われる姫って一体……

「そうか……父上は知っておるのかもしれないのじゃな……」

コディやドグマの反応を気にする様子もなく姫はポンゴの言葉に少し胸をなでおろす。

「ヘルメスの街の住民で狸族に味方する者たちはいるのか?」

今度はコディが質問すると

「いない……だから俺たちも行動を起こすのに慎重になっている。狐族対狸族であれば間違いなく狸族が勝つだろう。人数差も10倍くらいあるしな。だがコディやドグマたちは俺たちが狐族と戦ったら全員狐族の味方をするだろう? さすがにヘルメスの街の住民対狸族では万が一にも勝機はないからな」

「確かに……」

ポンゴの答えにコディが唸る。狐族って狸族の10分の1しかいないのか。

狸族は古狸族が約100名、怪狸族が約100名、妖狸族が1名の計200名と言っていたから狐族は20名くらいか。

さらにポンゴとコディが問答を続ける。

「狐族に加担する理由の1つに姫がいるからというのは明白だ。だから俺とポコラスは姫を殺せる機会があれば窺っていたというのもある」

「という事は姫を殺そうと企てていたのはポンゴとポコラスだけという事か? ポロンは関わっていないと?」

「そうだ。ポロンに言うと反対されるかもしれないからな。反対されたうえで行動に移すと和が乱れるかもしれないから、何も相談はしていない」

「確かにそうだよな。ポロンが姫を傷つけるなんて考えられない……というよりもあのポロンがクーデター? 姫の事が好きでビラキシル侯爵の事も慕っていたポロンが? ポロンを焚きつけたのはお前らか!?」

「たしかに俺とポコラスはポロンに狸族がもっとヘルメスの街の支配階級に食い込むべきだとは常々言ってきた。時には今回のようにクーデターを起こすべきだとも……だから焚きつけたのは俺たちかもしれないが……」

コディの質問にポンゴの歯切れが悪くなる。コディの話からするとポロンはクーデターを起こすような思想の持ち主ではなかったというのか。

その後も次々にポンゴに質問をし、ポンゴは全てを答える。本当は俺も聞きたいことがあったのだが、この場で聞けない事だったので見送った。今度誰もいない時に聞いてみよう。

皆も気が済むまで質問をし、夜も大分更けてきたのでもうそろそろ寝ようという時に姫がコディに命令する。

「コディ! 朝一番でヘルメスの街に向かう! コディも一緒に来るのじゃ! ドグマたちもじゃぞ!? このことを早く父上に知らせねば!」

「分かりました! アイク様、もしもの時のためにマルスも一緒に連れて行ってもよろしいでしょうか?」

「……分かった。だがドグマたちはここに置いていってくれ。魔族の事を知っている者が必要だからな。あとマルスが行くという事は……」

アイクが答え、俺に視線を送った後にクラリスとエリーに向けると

「私も行きます!」

「……当然!」

2人は間髪入れずに答える。カレンたちもクラリスとエリーに続こうとしたところにアイクが先に口を開く。

「分かった。だがカレン、ミーシャ、アリス。お前たちは俺と一緒にここに残ってくれ。ビートル伯爵も狙われているかもしれないし、ザルカム王国には内通者がいるとの事だ。この街の守りも考えないといけない。いいな?」

3人はアイクに止められ渋々頷く。

「アイク! 俺はコディと一緒に行くぞ! 姐さんも行くんだから文句はねぇよな!?」

「……まぁいいだろう。マルス、みんなを……ビラキシル侯爵を頼む」

「分かりました! 解決したらビラキシル侯爵をグランザムにお越しいただき、今度こそビートル伯爵との会談を成功させましょう!」

「ああ。頼りにしている。ではみんな! 明日に備えてもう寝よう!」

アイクの言葉に従いそれぞれ寝室に戻り明日へ向けて体を休めることにした。