軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第361話 怪しい男

「ねぇ? アンタらはいつもそうやってくっついて歩いているのかい?」

「そうだよ? でもヒルダさんとマチルダさんだってリュートさんにべったりとくっついて歩いてるじゃん。ゴンやカールがリュートさんの事を羨ましがっていたよ?」

「いや、アタイたちは一種のパフォーマンスというかなんというか……」

ヒルダの質問にミーシャが答えると、ヒルダが返答に困ってしまった。パフォーマンス? どういうことだ?

「俺たちはな。敢えてこうやっているんだ。救窮院出身者でもA級冒険者にさえなればこういう事が出来るんだぞってな。尤も俺たちが救窮院出身者と知っている者がいないかもしれないがな。まぁ今ゆっくり歩いているのはどこかの鬼教官がみっちりしごいてくれたおかげでゆっくりとしか歩けねぇってのが本音なんだがな。ってかどんどん痛くなってきやがる。次からはちったぁ加減しろよな」

リュートが笑い飛ばしながら答えてくれたが

「なんでそんなパフォーマンスをするのですか?」

気になったので思わず聞くと

「もう知っているかもしれねぇが救窮院出身者は道を踏み外す者が多いからな。盗賊や山賊はもちろん闇ギルドに堕ちる者もいるくらいだ。だけど俺たちのように頑張ればこうやって堂々と歩くことが出来るんだぞというのを少しでも広めたくてな」

という事はこの3人はビジネスパートナーでそういう関係じゃないのか? いやまさかな。ただこんな事を聞くとデリカシーがないと思われるのでやめておいた。俺の気持ちをよそにヒルダがリュートの言葉に続ける。

「アタイたちはクエストを受けて遠征する時は必ず現地の救窮院に寄付をするんだよ。A級冒険者はこんなにも儲かるんだぞって見せつけるようにね。もう道を踏み外す者を見たくないからねぇ……」

ヒルダの言葉に今度はリュートが付け加えるが、その表情はどこか痛々しい。

「そうだな。クエストの討伐対象が盗賊団で、いざその盗賊団の拠点を潰しに行った時、その盗賊団が同じ釜の飯を食った救窮院出身者という時があってな。今でも忘れねぇがあの時は……」

リュートがそこまで言うと声を詰まらせて目を伏せる。ヒルダもマチルダも同じように目を伏せてしまった。恐らく捕えただけであればこんなリアクションはしないと思うから殺したんだろうな。

確かに討伐対象が、自分の知っている者、俺で言えばゴンやカールであれば一生のトラウマものになりそうだな。

その時俺は戦う事が出来るのだろうか?

「マルス……あまり考えすぎないで」

クラリスが小さな声で俺の耳元で囁く。まぁたらればを考えたらキリがないからな。

この空気を嫌ってかミーシャが

「私はマルスの事が好きだからこうやって一緒にいるんだよ。だから学校にいるよりもクエストを受けていたいんだよね」

屈託のない笑顔をリュートに向けると

「お、おう……でもどうしてクエストを受けていたいんだ?」

咄嗟にリュートがミーシャから目を背けてから聞く。こいつミーシャの笑顔にやられたな。

「え? だってクエスト中はマルスとずっと一緒に居られるじゃん。やっぱり寝る時にマルスが一緒というのは安心感が違うよ。たまに変な所を触られるけど、それを含めて全部好き。エリリンもそう思うでしょ?」

ミーシャはまだラブエールの時の事を言っているのか……

「……うん……マルス一緒……安心……」

エリーが答えると更にカレン、アリスが続く。

「そうよね。マルスの腕に抱かれて寝られるのは最高よね」

「はい! いい匂いもしますし!」

クラリスだけはこの話題に加わらず恥ずかしそうに俺の右手を握って下を向きながら歩いている。

「そ、そうか……5人を一度に……羨ましい限りだな」

一瞬リュートが俺を睨んだような気がしたがまぁこれは仕方ない事だろう。

冒険者ギルドまでもう少しという所まで来ると、リュートの足が痙攣し始め、

「マルス、すまねぇ。ちょっと今日はもう限界だ。ヒルダとマチルダに肩をかりて歩くのがやっとだったが、それすら出来そうにねぇ。今日はこのまま宿に戻らせてもらいたいんだが?」

「情けないねぇ……でもスクワットをやってないアタイでさえキツイから、申し訳ないけどアタイも戻るよ。しっかりとリュートのマッサージもしてやらないとねぇ」

「……」

まぁいきなりあのメニューをやれば当然だよな。それにまずはリーガン公爵や【流刃】を除いて俺たちだけで話をした方がいいと思ったので、そのまま【流刃】には帰ってもらう事にした。

「分かりました。今日はミックさんと会って都合のいい日を聞くくらいだと思うので大丈夫です。お大事にしてください」

リュートは手を挙げて俺の言葉に応え、そのまま近くの宿の中に消えていく。

3人を見送った後すぐに冒険者ギルドに入り中の様子を窺うがミックはいなかった。

「あのー、今日はミックさん来ていませんでしたか?」

ミックを知らないギルド職員なんていないと思いこのような質問をすると

「2、3時間前に、そこに居らっしゃいましたけど、何やらとても怪しい人が声をかけると2人で外に出て行かれました」

知っていたのは良かったのだが怪しい人と一緒に外に出ただと? 気になるな。

ギルド職員にお礼を言い、ここに居る冒険者たちにミックの事を聞いたが、みんなここに来た時点でミックはいなかったと口を揃えて言う。有力な情報を得られないまま冒険者ギルドを後にすると

「ねぇマルス? どうするの? ミックさんを探しにでも行く?」

「うーん……そうだな。怪しい人というのも気になるから探しに行こう。本当は分かれて行動したほうがいいと思うのだけれども、いくらこの平和なリーガンでも何が起こるか分からないからみんな一緒に行動しようと思うがいいか?」

クラリスの質問に答え、みんなに聞くと全員嬉しそうに頷く。

まぁ女性陣はその美貌の為、常に衆人環視の中に曝されているので、ナンパやストーカーという行為を受ける可能性はあるが、大きな事件にあう可能性は低いと思っている。それでも怪しい人というのが怖いから念のためだ。

先ほどまでクラリスとエリーが俺の両隣にいたが、今度はミーシャとカレンが隣に来て、クラリスとエリーの2人は周囲を見渡しながら当てもないまま彷徨う。

「マルス? この辺を警備しているリーガン騎士団の者にでも聞けばいいのではないかしら? きっと彼らなら見ていると思うわよ?」

確かにカレンのいうとおりだな。街の巡回しながら警備をしているリーガン騎士団であれば見ている可能性が高い……と思って聞いてみたらリーガン騎士団の者たちはミックという人物を知っている者は近くにいなかった。

それでもめげずにミックを探しながら街を巡回しているリーガン騎士団の者に聞きまわると、ようやくミックの事を知っていて、見かけたという人に出会えた。

「リーガンの街の西門の方へ歩いて行ったな」

「ありがとうございます!」

俺が頭を下げるとカレン以外の者が全員頭を下げたので、カレンも慌てて頭を下げる。まぁ公爵家の次女が騎士団員に頭を下げる事なんて一度もないはずだからな。

「誰なんだろうね。怪しい人って。ミックさん変な事件に巻き込まれていなければいいけど」

ミーシャがミックを心配しながら言うと

「そうですね……でもミックさんであれば何かに巻き込まれても自力で解決できそうですし」

「そうね。それに長い事A級冒険者をやっていたミックさんであれば色々な経験をしているはずだから大丈夫よ」

アリスの言葉にクラリスも続く。

この調子でずっとミックの事を話しながら西門へ歩いて行くと、西門の前ですぐに誰かと一緒にいるミックを見つけることが出来た。

一緒に居る者はギルド職員のいうように明らかに怪しいオーラを放っている。だがなんだろうか、このどこか懐かしく、憎みたいけど憎みきれないような感覚は……

2人に近づくとその怪しいオーラを出している男がこちらの方を向く。その顔にみんなが驚き、ミーシャが思わずその者に向かって声をかける。

「ダメーズ!? どうして!?」

ミックと一緒に居たのはダメーズだった。