作品タイトル不明
第320話 突入
2032年1月24日8時
「これからリムルガルド城下町の西門へ行き、塞いでいる壁の中心付近5mくらいを消滅させる。もし火喰い狼が溢れてくるようであれば倒す。昨日マルスの魔法を見た火喰い狼が襲ってくるとは思えんが、相手は魔物だ。もう忘れて襲ってくるかもしれない。
それに俺たちが去った後にボス部屋から吐き出された火喰い狼は、マルスのサンダーストームの事を知らないからこいつらは絶対に襲ってくるし、まだ中にはかなりの数の火喰い狼がいると思われる。けっして油断はしないように。できれば今日中にボス部屋を攻略したいので、ボス部屋突入メンバーはMPの消費を抑えるように。特にマルスとクラリスは範囲回復魔法のみ使う様に心がけてくれ。昨日と同じで2人は常に一緒にいるように!」
「「はい!」」
俺とクラリスが声を揃えてスザクに応えると、スザクが西門でのフォーメーションを周知してから出発する。
久しぶりにクラリスと一緒に行動できるブラッドとコディがどうにかしてクラリスの近くに来ようとしているのだが、クラリスの左側には俺がおり、クラリスを囲むようにしてライナー、ブラム、サーシャの3人がクラリスに近づこうとする2人をそれとなく阻む。
そんな2人にクラリスが
「ブラ、コディ、昨日のマルスの雷魔法の件は誰にも言ってはダメよ? もしも誰かに喋ったら絶対に口を利かないし、目も合わせないからね!」
「おう! 姐さん任せておけ! 絶対に言わねぇ! 男に二言はないぜ!」
「俺は絶対にクラリスに嫌われるようなことはしないから安心しろ!」
2人はクラリスに話しかけてもらって嬉しいのか興奮気味に話す。これで2人から情報が漏れることは無いはずだ。
西門の前に着くと早速先ほど言われたスザクのフォーメーション通りの配置につく。
俺は西門の正面、ミックとライナーの後ろで待機だ。2人が西門から出てきた火喰い狼の火を斬ったり、相殺する役目を担い、もし2人がきつかったら俺も参加するというのがスザクからの命令だ。
当然クラリスは俺の右隣におり、俺にもたれかかるように身を預けている。そして周囲の警戒を命令されているエリーも俺の左隣におり、エリーもクラリス同様に俺に身を預けているが、しっかりと周囲の警戒は忘れていない。
「では塞いでいる壁の中心辺りを消滅させます!」
みんなが自分の持ち場に着いたのを確認してから、西門を塞いでいる雷のマークの壁の中心部分を消滅させる。
西門を塞いでいた壁の中心部分を消滅させると、案の定勢いよくライナーとミックを目掛けて火喰い狼が続々と西門から現れて走って来るが、入り口を囲うように布陣していたアイクたちが火喰い狼をライナーたちの所まで辿り着かせない。
あっという間に火喰い狼の死体の山が築かれるが、それを必死にブラッドとコディ、そしてビャッコの3人がある場所へ投げ込む。
ある場所と言うのは西門の近くに掘った大きな穴だ。そして穴に向かってハチマルが白い火柱を吐き続ける。いってみればここは魔物焼却場だ。前に西門で火喰い狼たちと戦った時、死体処理に苦労したのだが、今回はハチマルの白い火があるから問題ない。俺やカレンの火魔法よりもハチマルの白い炎の方が、火耐性のある火喰い狼はよく燃えるようだ。
もう何分もずっと同じことを繰り返しており、たまにダメージを受ける者がいるが、アリスのヒールで間に合っていた。しかしバロンだけは な(・) ぜ(・) か(・) 火の玉を受けてもなかなかアリスのヒールを受け入れない。
その様子を横目に俺はずっとミックを見ていた。ミックもそれに気づいたようで、火喰い狼の火の玉を双竜棒の青い方の魔石で相殺しながら俺に話しかけてくる。
「なんだ? 両隣に絶世の美女がいるのにもしかしたら俺に興味でも湧いたのか?」
「……はい……あ! 違いますよ!? ミックさんの棒捌きに見惚れてしまっただけで、変な意味はありませんから!?」
俺が必死になって否定するとミックよりも両隣の天使がホッとした様子で
「良かった……マルスがそっちの趣味も持っていたらどうしようかと思っちゃった……」
クラリスがボソッと言うとエリーも
「……マルス……信じてた……マルス女大好き……」
いつかも同じような事を言われたことがあるが、なんか褒められていない気がするのは俺だけだろうか?
1時間もすると火喰い狼が出てこなくなったので西門を塞ぐ壁を全て消滅させ、リムルガルド城下町へ突入する準備を整える。その時にアリスが俺に近寄ってきて
「マルス先輩! どうでしたか私の戦い方は!?」
「ああ。凄かった。ダメージをたくさん与えられるようになっているから、MP回復量も相当高くなっているな。アリスにラブエールを唱える機会が減ってしまうのは悲しいけどな」
素直な気持ちを伝えると
「あ……ラブエールの事すっかり忘れていました……私だけしてもらえない……」
アリスが残念そうに下を向いたのでクラリスがフォローをする。
「アリス、だったらその分マルスに後でご褒美を貰えばいいのよ。みんながラブエールを唱えてもらった分だけ抱きしめてもらうとか」
「いいんですか? 私だけそんなにしてもらって?」
アリスは俺に聞かずにクラリスに聞くとクラリスは当然のように頷いた。まぁそういう所の俺の所有権はクラリスが持っているからな。
しかし本当にアリスは強くなった。
【名前】アリス・キャロル
【称号】-
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】10歳
【レベル】35(+3)
【HP】69/69
【MP】184/194
【筋力】46(+5)
【敏捷】55(+6)
【魔力】50(+6)
【器用】49(+5)
【耐久】46(+5)
【運】20
【特殊能力】細剣術(Lv7/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv4/C)
【装備】聖銀のレイピア
【装備】戦姫の法衣
【装備】偽装の腕輪
今までは装備のおかげで脅威度B-の魔物を倒せていたかもしれないが、今は堂々と戦えるだけのステータスを身につけている。
そして見逃せない成長をした者がいる。今バロンとクロムの2人と一緒に楽しそうに話をしている女の子だ。
【名前】ミネルバ・ゼビウス
【称号】-
【身分】人族・ゼビウス子爵家長女
【状態】良好
【年齢】11歳
【レベル】34(+2)
【HP】51/51
【MP】245/301
【筋力】31(+3)
【敏捷】33(+3)
【魔力】51(+3)
【器用】58(+6)
【耐久】29(+2)
【運】1
【特殊能力】剣術(Lv3/E)
【特殊能力】鞭術(Lv1/G)(New)
【特殊能力】鎖術(Lv5/C)
【特殊能力】火魔法(Lv5/D)
【特殊能力】水魔法(Lv5/D)
【装備】銀の剣
【装備】水精霊の杖
【装備】シルバーチェーン
【装備】魔法の法衣
【装備】マジカルブーツ
この器用値の上がり方、それに最近鞭を使っているのを見たことがないのだが、なぜか鞭術を覚えている。もしかしたらバロン専用の鞭術か? この子は一体どこを目指しているのだろうか?
「よし! 今からリムルガルド城下町に突入する! 今から呼ぶメンバーは左から並んでくれ! ミック、ビャッコ、エリー、マルス、クラリス、アイク、ライナー、そして俺だ! 10秒後に呼ばれなかった者たちは突入して来い! ボス部屋から火喰い狼が吐きだされているからボス部屋周辺は気をつけろよ!?」
ミネルバを鑑定しているとスザクから突入の指示があったので、クラリスとエリーと一緒に突入準備をする。
「では行くぞ! 3・2・1」
この前と同じように自分で0をカウントしてからリムルガルド城下町西門に突入すると予想外に火喰い狼の姿は少なかった。
全然いないという訳ではないが、赤大狼、大狼の姿はなく火喰い狼が20、30匹遠くに見えるくらいで西門付近にはもう既にいなかった。
後から来るメンバーを待ちリムルガルド城下町内をみんなで散策しながら火喰い狼を倒しに回ったのだが、1匹だけは土魔法で檻を作り、生かしたまま閉じ込め、出られないようした。
理由はもしここにいる火喰い狼たちを倒しきってしまったら1時間後に一定数リポップしてくると思ったらからだ。ここは迷宮だからな。ボス部屋に入っている時に赤大狼がリポップしてきたらかなり危険だからな。
「それにしても酷いわね。火喰い狼のせいで街がこんなになってしまうなんて……」
クラリスが呟くとそれを聞いていたミックが
「これは火喰い狼のせいじゃない。火喰い狼たちがここに巣くう前からここはこうだ。バルクス王国とザルカム王国の戦争が原因だな」
俺たちにそう言うと、クロムだけ下を向いてしまう。まぁクロムの親のバルクス国王のせいでもあるからな。ここにクロムがいなければミックにどうしてバルクス王国がザルカム王国やリスター連合国に戦争を仕掛けるのか聞きたかったが、これ以上仲間を傷つけるのは趣味じゃない。クロムがいない時を見計らって聞いてみよう。
1時間くらいリムルガルド城下町の西側を警戒していたが火喰い狼はもういなく、この辺の安全を確認できたのでスザクがボス部屋の突入を決意する。
「これからボス部屋に突入する! メンバーは先に話したとおりだ! 準備はいいか!?」
スザクがこう言うと、カレン、ミーシャ、アリスが俺の所に寄ってきてそれぞれと抱擁を交わす。
「絶対に無事で帰ってきなさいよね! お兄様をよろしくね!」
「クラリスとエリーの顔ばかり見ていちゃダメだからね! ボスを倒してからだよ!」
「今回の私のご褒美は、みんなの無事でお願いします!」
抱擁する時、3人の体が少しだけ震えているのが分かる。3人とも分かっているのだ。B-の魔物が雑魚として出てくるような場所だ。そこのボスという事はかなりの強さだろうという事を。
「マルス! お前なら絶対にやれる! 頑張ってこい!」
アイクの言葉に押されるように血の様な真っ赤な建物の前に立つと
「マルス、お前に頼る場面も多いかもしれないが、よろしく頼む」
スザクがそう言い、ボス部屋の扉をゆっくりと開け部屋の中に入る。
クラリス、エリーと手を繋いでスザク、ミック、ビャッコの後に続き部屋に入るとボス部屋の扉が閉まり、俺たちの前には予想だにしない光景が広がった。