作品タイトル不明
第319話 火喰い勇狼?
2032年1月24日1時
21時頃MP枯渇から回復して一旦は起きたのだが、クラリスとエリーの柔らかさと匂いを堪能していたらいつの間にか2度寝をしてしまったらしい。再び目を覚ますと2人を腕枕している格好だったので2人の頭の下から腕を引き抜こうとすると、クラリスが目を覚ましてしまった。
「ごめん、起こしちゃったか」
「ううん。少し前に起きていたから大丈夫よ。でももう少し寝てていい? 思ったよりも昨日のサンダーストームの影響があるのか、疲れちゃったみたいで……それにもっとマルスを感じていたいの……」
俺に照れている顔を見られるのが恥ずかしいのか、それともそうしたいのかは分からないが、俺の背中に手をまわし、その天使のような顔を俺の胸にうずめながらクラリスが言う。
「ああ。じゃあクラリスが眠りにつくまでここにいるよ」
「ありがとう。じゃあ……ぎゅうっと抱きしめて……」
クラリスのリクエストに応えると、すぐに俺を抱きしめるクラリスの力が抜けていった。クラリスを起こさないように今度こそ部屋を出ようとすると、カレンに抱かれていたハチマルが俺の足元に来てジャレてくる。同時にカレンも起きてしまったようだ。
「あら、おはようマルス。もうどこかに行くの?」
「おはようカレン。起こしてしまってすまない。ちょっと外に出ようかなと思っていたらハチマルが起きてしまって……」
「じゃあ私も付いて行っていいかしら?」
本当は肌や体の為にももう少し寝て欲しかったが、あまりにも言い過ぎると逆に気持ち悪いと言われるかもしれないと思ったので
「分かった。じゃあハチマルと一緒に1階にいるから、支度が出来たら来てくれ」
カレンにそう告げて俺はハチマルと一緒に1階に下りる。
「おはようございます」
1階に下りるとライナー、ブラム、ブラッド、コディ、クロムの5人が起きていたので挨拶をすると早速ブラッドがハチマルを可愛がる。
ブラッドもかなりハチマルが好きなようだ。
「おまえはいいよな。新入りのくせに姐さんたちと一緒に風呂に入れたり、寝られたりして。俺もお前に生まれ変わりたいぜ」
ブラッドがハチマルの頭と首を撫でながら言うと
「ぶ、ブラッド! 噛まれるかもしれないぞ!? 魔物だぞ!?」
コディはハチマルの事を怖がる……いやまだ警戒しており、ブラッドに対して注意するように言うと
「コディ、何言っているんだ? ハチマルを信用できないという事はカレンを信用できないという事だぞ? あの魅了眼に抵抗出来るやつなんてそうはいない」
ブラッドのくせになかなかいいことを言うじゃないか。まぁ普通であればコディのようにそう簡単に受け入れることなんてできないよな。
「そういえば今日は全員でリムルガルド城下町に突入とスザク様が仰っておりましたが、皆さんはまだ寝てなくてもいいのですか?」
俺の言葉にみんなを代表してライナーが
「俺たちも一汗かいたらまた寝るつもりだ。二刀流が掴めそうで掴めないからこれからブラッドとクロムに練習を付き合ってもらう。ちょうどクロムも剣術の訓練をしたいと言っていたしな。ブラッドとコディは念のためにここを見張るために起きたそうだ」
ブラッドとコディのこういう所は本当に助かる。完全に縁の下の力持ちだな。そんな2人に賢者様の呪いをかけている俺は……少し自己嫌悪に浸っているとカレンが2階から下りてきた。カレンの後ろにはアリスとサーシャの姿もあった。
下りてきた3人がみんなと挨拶を交わすと、アリスとサーシャはライナーたちと訓練をする流れになった。
俺とカレンとハチマルの3人はライナーたちとは訓練をせずにリムルガルド城下町の南門へ向かう。俺が外に出た目的は南門をもっと厳重に塞ぎたかったからだ。突破されることは無いとは思うが、あの程度では絶対とは言えないからな。
カレンにファイアボールを教わりながら南門へ向かう。ファイアボールを発現させて飛ばす事は簡単だったが、自分の周囲に留めておくのにかなり苦労した。だが30分もしないうちにある程度はコントロールできるようになると
「私が苦労して得た技術をすぐ出来るようになるなんて……いくらマルスが天才だとはいえ、さすがに火魔法に関しては嫉妬してしまうわ」
ちょっと悔しそうな顔をしてカレンが俺に言う。俺もまさかこんな簡単に出来るとは思わなかった。【天賦】のおかげか器用値が高い事が原因かもしれない。それとファイアでは同じような事を何度か死の森に行く途中でやっているからな。右手でファイアボールを制御し、左手で鎖をじゃらじゃらさせながら南門の方まで歩くとカレンもファイアボールを発現させて、深夜の闇を照らす。
すると俺たちより少し前を歩いて周囲を警戒していたハチマルがカレンのファイアボールに向かって飛び掛かってくる。とっさにファイアボールを上空に飛ばし
「ハチマル、火魔法を食べたいのは分かるけど、食べてしまうと私たちと一緒に暮らすことは出来なくなる可能性があるわ。火魔法を食べるのはHPが減った時だけにしなさい」
カレンが敢えて口に出してハチマルに注意をすると、ハチマルは必死に何かをカレンに伝えようとじっと見つめているようだ。カレンもそれに気づきハチマルの心の声を聞くとどうやら読み取れたようだが
「えっ!? 火魔法を食べたいのではなくて、浴びたいですって!?」
俺の方を見ながらカレンはハチマルが何をしたいのか声に出す。
「ウォン!」
ハチマルもそうだと言わんばかりに返事をする。まさか……お前までバロンのように? いつバロンに毒されたんだ? するとカレンも同じことを考えていたようで
「ハチマル? バロンは特別な訓練されているから色々な事に耐えられるのよ? 普通はあんなことしないのよ? 常人では苦痛でしかないの。ハチマルが火喰い勇狼にならないためにも……」
「ウォウォン!」
ハチマルの言葉が分からない俺でもハチマルが必死にそうじゃないと言っているのが分かるくらい首を激しく横に振る。当然カレンもそうじゃないと言っているのが分かったのだろう。
「マルス、どうしたらいいかしら?」
カレンが困った顔をして俺に聞いてきたので
「絶対に食べないのであればハチマルを信じて好きにやらせてみないか? 何かあったら俺のヒールもあるし、カレンの火魔法を食わせれば回復するわけだし」
「分かったわ。マルスの言うとおりにするわ。もしも何かあったらサポートお願いね。ハチマル、あなたの頭上にファイアボールを発現させるから好きにしなさい」
カレンがそう言ってハチマルの頭上にファイアボールを発現させる。ハチマルは躊躇わずにそのファイアボールに向かってジャンプするとファイアボールが背中に着弾し、一瞬にしてハチマルの白い毛に炎が燃え広がる。カレンのファイアボールは赤かったのに、ハチマルを覆う炎はなぜか白かった。
「マルス! ヒールを……って……え? HPが減ってない? そしてMPが消費されている!? それにこの白い炎は……もしかしてハチマルの火魔法!?」
カレンの言うとおり、ハチマルのHPは減ってなく、その代わりにMPが減っていた。鑑定すると予想どおりの事が起きていた。
【名前】ハチマル
【称号】-
【種族】火喰い賢狼
【脅威】-
【状態】従魔(主人:カレン)
【年齢】1歳
【レベル】6(+1)
【HP】52/52
【MP】28/50
【筋力】17(+1)
【敏捷】63(+1)
【魔力】15
【器用】52
【耐久】14(+1)
【運】10
【特殊能力】火魔法(Lv1/B)(0→1)
【詳細】火耐性。人間の言葉を少し理解できる。
まずレベルが上がっているのは昨日リムルガルド城下町で火喰い狼を倒していたからだ。
そしてステータスを見るとやはり火魔法レベルが1に上がっていた。何より安心したのが火喰い賢狼のままだった。カレンの言うように勇狼に進化? したらどうしようかと思ったよ。
「凄い魔法ね。火を纏うから『 纏火(てんか) 』という名前でいいかしら? この白い炎は火喰い狼たちが嫌がるから相当有効かもしれないわね」
まだ暗闇を照らしているハチマルを見ながらカレンが言う。真っ白な炎に包まれている纏火状態のハチマルは、どこか幻想的でこの世の生き物とは思えなかった。
「良かったな、ハチマル。もしも今の纏火が失敗していたら、ハチバロと呼ばれているところだったぞ?」
俺の言葉を理解したのかハチマルは纏火状態を解いて、安心した表情を見せた。
その後南門に着いたが、特に変わった様子はなかった。念のために壁を補強してから砦に戻り、風呂に入ってから再びクラリスとエリーの間に挟まり、これからのために仮眠をとった。