軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第316話 轟雷閃金嵐

「……マルス! こっち……大丈夫!」

エリーの周囲の火喰い狼も完全に倒しきり俺の所にやってくると、ビャッコも俺の近くにいるスザクの所に報告に来る。ここから見る限り東の方にはもう火喰い狼は見えない。まぁ街自体が相当広いから絶対に居ないかと言われれば自信はないが。

エリーとビャッコの連携もピッタリ息の合ったものだった。

エリーが逃げ回りビャッコのアダマンクローの一撃で火喰い狼たちを屠る。ただそれだけなのだが、バンザイアタックともとれるビャッコの特攻はこれぞ獣人といわんばかりの戦い方であった。まぁこの戦い方は俺とクラリスを信用しての戦い方だと思うが。そして俺たち北側も襲ってくる火喰い狼はもうほとんどいなくなったのでスザクに指示を仰ぐ。

「スザク様! どういたしましょうか? 北側の方の火喰い狼も襲ってくる個体はほぼいません。あとは西側だけとなりますが?」

街の中心部付近から北側にかけて1000体を軽く超える火喰い狼がいるのだが、さっきからこちらの様子を窺っているだけで襲ってくる気配はなかった。しかしそれ以上に西門付近にはぎっしりと火喰い狼が詰まっている。きっと中心部や北側、西側の火喰い狼は大狼に統率をされているのであろう。俺もスザクに指示を仰ぐとスザクが

「まさかこれほどまでの火喰い狼がいるとは思わなかったが、それ以上にこれほど倒せるとは思ってもみなかった……先ほどまでは撤退しようと思っていたのだが……マルスとクラリスの余力はどれくらいある?」

「僕とクラリスはまだまだ大丈夫です!」

スザクの言葉に俺が答える。クラリスはラブラブヒールを相当唱えているのでMPが半分以下になっているが、それはラブエールでMPを譲渡すればいいだけだし、俺はというとMPもたいして減っていない。雷魔法と 未来視(ビジョン) さえ使わなければ、今の俺の最大MPからするとそこまで気にする必要もない。

それになにより、何度もクラリスが俺に抱きついてくれるので気力MAXなのだ。

「分かった! これから南門西側の火喰い狼を倒す! ビャッコとエリーはマルスがいた北側を抑えておいてくれ! カレンはハチマルと一緒に2人の援護をしながら南門周辺の警戒を! マルスとクラリスは一旦南門まで下がり、ミックたちを援護しつつ戦線を上げてくれ! その際サーシャには下がってもらい危なそうなところをいつでも援護できるようにと伝えてくれ!」

南門に行く前にクラリスを後ろから抱きしめラブエールを唱える。俺からはMPを譲渡し、その間俺はクラリスのうなじからクラリス成分を体内に取り込む。心ゆくまで堪能出来ないのが残念だが、それはリムルガルド城下町の攻略が終わってからのご褒美という事にしよう。

クラリスの肩に手を置き俺から引き離すとクラリスが俺の方を振り返り、少し切なそうな顔をしたのは多分俺の勘違いや願望だけではないと思う……いやそうであってくれ。

クラリスのMPが回復したのを確認してから南門に向かい、まずは戦況を確認するとミックが火喰い狼の火の玉を 双竜棒(ダブルドラゴン) で相殺し、その間レッカが 火精霊(サラマンダー) 三節棍で、ミーシャはウィンドカッターで、サーシャは弓矢でそれぞれ攻撃しており、苦戦している様子は全くなかった。

「スザク様からの伝令ですが、僕とクラリスが西側に参戦してサーシャ先生が下がって危なそうなところを援護するようにとの事です!」

夢中で弓を引いているサーシャに声をかけると、サーシャは頷きすぐに後ろに下がる。

俺の声が聞こえたのか

「マルス……もう私無理……マルスの……頂戴」

ミーシャが俺にもたれかかりながら言ってくる。すぐに何を言っているのか分かったが、いくらMPが枯渇しそうできついとはいえさすがに言い方が……そう思いながらミーシャを正面から抱きしめてラブエールを唱えるとすぐに火喰い狼に対してウィンドカッターを撃ちまくる。

暴走エルフを横目にすぐにミックの隣に行き、火喰い狼に二刀流で斬りかかるとミックが

「助かる! こいつらが突撃してきてくれれば倒せるのだが、距離を取って火の玉攻撃をされるとどうしようもなくてな。火喰い狼に魔弾を撃つのは少しもったいなくて躊躇ってしまってこのざまだ。まぁ撃ったとしてもこの数相手では大して変わらなかっただろうが……」

確かに火喰い狼相手に最大MPの低いミックが魔弾を撃つのはもったいないよな。戦線を上げられないにしてもミックのおかげで近くの者たちはみんな無事だ。俺がミックになったとしても同じ行動をするだろう。だが俺が来たことによってミックも攻撃に意識を割り振ることが出来るようになり、あっという間にスザクと同じラインまで来ることができた。これで中心角が90度の扇形のような陣形が作れた。

もう俺がいなくてもミック、レッカ、ミーシャの3人で西側の戦線を維持できそうだったのですぐ近くにいるスザクの所に行くと俺とクラリスがスザクのいた北西部分を任されスザクが下がる。

スザクのミリオンダガーを飛ばすのも 魔法の弓矢(マジックアロー) と同じでMPを消費するから温存の為と全体の指揮を執るための最善の策だろう。

中心角90度、半径20mくらいの扇形の隊列はスザクの命令により少し変更され、西側からレッカ、ミック、クラリス、俺、ミーシャ、エリー、ビャッコとなっている。今は南門の前にはスザクが戦況を見つめ、カレン、サーシャが鞭と弓で俺たちを援護しながらこの陣形を維持している。もちろんハチマルも白い火の玉を吐きながら参戦してくれている。

ミーシャもウィンドカッターではなく攻撃手段を槍にしMP消費を抑えているのでこの陣形はとても省エネだ。MPをセーブしながらしばらくの間は火喰い狼を倒せていたのだが、ある時を境に急に火喰い狼が俺たちに襲ってこなくなった。

「スザク様、どういたしましょうか? まだまだ西門付近や北側にはたくさんの火喰い狼がいますが……」

「ああ……できれば西門付近の火喰い狼をもっと減らしたいところだが、さすがにこれ以上は無理か……南門を閉じて西門の壁を壊し、西門の入り口で我々全員が迎え撃った方がいいとは思うのだが、あの数に大狼が何匹もいると考えるとかなりきつそうだな」

俺とスザクの会話にエリーがミーシャと隊列を入れ替えて話しかけてくる。

「……マルス……変なのが北側から来た……大狼と同じ大きさ……でも赤い……あいつ来てから……狼来なくなった」

俺の目でははっきりと見えないがエリーからは見えているらしい。

「その上、大狼の上位個体らしき魔物もいるというのか……俺たちが少しずつ前進して戦っても急に一斉攻撃とかされるとかなり危険かもしれんな。俺とレッカ、そしてカレンがフレアボムを撃てるだけ撃って撤退と言うのが現実的か?……いやもしも上位個体がフレアボムを喰えるようだったらかなり危険か……」

エリーの報告を聞いたスザクが1人で考え込んでしまっている。

「スザク様……1つ僕に考えがあるのですがよろしいでしょうか?」

俺も考えがない訳では無かった。いやあの西門にいる大量の火喰い狼を見た時からやってみたいという事はあった。正直迷ったが提案をした。

「なんだ? 言って見ろ」

「はい。僕とクラリス、そしてエリーの3人であの群れの近くまで行ってもよろしいでしょうか? その際、ここに居るメンバーは全員この場から離れないようにして欲しいのです。絶対に僕たちには近づかないようにして欲しいのですが……」

スザクが怪訝な表情で、

「いくらマルスでも却下だ。お前を失う訳にはいかない。俺たちも近くまで行っていいのであれば少しは近づいてもいいが……」

「スザク様、僕が使える一番威力の高い魔法は広範囲魔法なのですが、敵味方関係なく襲います。僕の魔法が直撃した場合ここにいる者で無事なのはクラリスだけでしょう。エリーも耐性はありますが、なんらかの後遺症が残る可能性もあります。だからエリーを連れて行くのも途中までである程度の所で戻ってもらいます」

怪訝な表情から驚きの表情に変わったスザクが、

「マルスの最大火力の魔法? ファイアストームではないのか?」

「いえ、違います。威力は見てから確認をして頂きたいです。何かあったらすぐに逃げ帰ってきます。僕とクラリス、エリーの3人であれば、もしも失敗しても逃げて帰ってくることが出来ます。どうかよろしくお願いします!」

何故俺が雷魔法と言わなかったのかというと、リーガン公爵のように雷魔法は危険という認識を持っていた場合、説得するのが困難だと思ったからだ。

スザクが悩んでいるところに火喰い狼も来なくて暇になっていたミックが

「スザク、やらせてみていいんじゃないか? 失敗してもマルスなら風魔法で火喰い狼を抑えるのはわけないだろう」

ミックの言葉にスザクも踏ん切りがついたらしく

「分かった。だが絶対に無理はするなよ」

ようやくスザクの許可が得られたので、早速クラリスとエリーを呼び作戦を話すと2人共すんなりと分かってくれた。もしかしたら2人もこの絵を思い浮かべていたのかもしれない。

「2人共! 今話した通りだ! エリーは俺が赤い狼を認識したら戻ってくれ! クラリスは俺が魔法を唱えている間、俺を攻撃してくる火喰い狼を頼む! ではいくぞ!」

俺の掛け声と共に3人で西門を目指して走る。幸いな事に火喰い狼たちは全くその場から動かなかった。もしかしたらギリギリまで引き付けて囲んで倒そうと思っているのかもしれない。

「マルス! あそこ!」

エリーが赤い狼の位置を指すとようやく俺も認識することができた。どうやらボス部屋の赤い色と同化してしまって見えなかったらしい。

「ナイスエリー! もう認識できたから下がってくれ!」

エリーはすぐに踵を返し、走ってきたスピードよりも速い速度でみんなの所に戻っていった。そしてすぐに赤い狼を鑑定すると

【名前】-

【称号】-

【種族】火喰い赤大狼

【脅威】A-

【状態】良好

【年齢】1歳

【レベル】5

【HP】210/210

【MP】6/6

【筋力】102

【敏捷】98

【魔力】3

【器用】57

【耐久】100

【運】1

【詳細】火無効

相当強い……フレアボムで突っ込まなくて正解だったな。火を喰われて強くなるだけだったかもしれない。

俺が鑑定すると赤大狼が前足を地面に叩きつけ、周囲の火喰い狼たちが一斉に襲い掛かってくる。もうここまでくれば射程圏内だ。クラリスがウィンドで襲い掛かってくる火喰い狼を押し戻すと

「クラリス! 耳には気をつけろよ! あと俺たちに寄ってくる火喰い狼たちを頼む!」

クラリスが頷き俺の前に立ち、必死になってウィンドを放つ。

珍しく汗をかいているクラリスを見ながら両手を天に掲げ、赤大狼を目掛けて俺の最強魔法を解き放った。