軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第317話 勝利の撤退

マルスの言葉に緊張感はあったが、悲壮感はなかった。マルスは何をやるつもりだ?

クラリスとエリーを引き連れてマルスが西門の方に走っていくのを俺はただただ見送るだけだった。

「お兄様、マルスの本気を是非見てください。きっととんでもない魔法を使うと思いますよ」

カレンが俺の隣に来て言うと、サーシャとミーシャも俺の近くに寄ってきて

「きっとマルスはあの魔の森の魔物を一掃したと思われる魔法を使うのかもしれないわね。あの時はテリトリーの中で放った魔法の振動がテリトリーの外にまで伝わってきて驚いたけど、どういった魔法かついに見ることが出来るのね」

「エリリンの言葉だけど、本気のマルスは光るからね。絶対にマルスは光るつもりだよ」

カレンと同様に2人も夢見る少女のように目を輝かせながらマルスの方を見ている。

数分が経つとマルスと一緒に走っていったエリーが必死になってこっちに戻ってくる。

「……良かった……みんな……耳塞げって……」

エリーが息を切らせながらみんなにマルスの言葉を伝える。耳を塞ぐ? ますますどんな魔法か見当がつかない。もしかしてフレアボムの上位互換の魔法……いやマルスはそこまで火魔法が得意ではないから違うな。だとしたら土魔法しかない気がするが……

そう思った時だった。

マルスが何かを叫ぶと同時に金色の光に包まれマルスの先に金色の大きな竜巻が発現した。

金色の竜巻は轟音と共に火喰い狼たちを飲み込んでいく。その衝撃は遠く離れた俺たちが立つ地面を揺らし、その音はこんなに離れているにも関わらずフレアボムを近くで爆発させた時よりも心臓を響かせた。そして金色の竜巻から伸びる無数の光が離れた火喰い狼たちに襲い掛かると轟音と共に火喰い狼たちが焼け焦げる。

マルスとクラリスに襲い掛かっていた火喰い狼は、気絶したのか分からないが、轟音と共に地面に倒れこんだ。それをクラリスが風魔法で金色の竜巻の中に放り込むと一瞬で火喰い狼は消滅した。

10秒程経ち金色の竜巻は収束すると、金色の竜巻が発生していた跡にはもう何も残っていなかった。運よく生き延びた火喰い狼は恐れをなして、金色の竜巻が発生した地点から北の方、つまりリムルガルド城の方へ逃げていく。西門周辺のボス部屋の付近にいたおびただしい数の火喰い狼は全て消滅しており、魔石に変わっていた。

金色の竜巻が消滅しても俺の心臓は今まで聞いたこともないような音をまだ立てている。これはあの衝撃や轟音だけが原因ではない事は分かっていた。間違いない……認めたくはないが恐怖心だ。ここまでの恐怖心を植え付けられたのは初めてだ。

他の者たちもきっとそうだろう。辺りを見回すとミックとビャッコ、そしてレッカは声も出せずにただ茫然としている。

対照的にエリーとカレンとミーシャは手放しでマルスの事を称えている。そうか3人はマルスに恐怖心を抱くという事はないのか。それだけマルスの事を信頼しているという事だろう。3人は俺たちとは全く別の反応だったが、この行動が俺を安心させた。

カレンがいる限りマルスはフレスバルド家の敵に回る事はない。情けない事にA級冒険者である俺が、つい最近12歳になったばかりのマルスに対してこう思ってしまったのだ。

いや俺だけではないはずだ。ビャッコも呆然としながらもきっとホッとしているであろう。エリーがマルスの婚約者であればマルスが獣人の敵に回る事はないだろうからな。そんなことを思ってしまうほど今の魔法は衝撃的だった。

そしてミックは今どう思っているのか? もしもバルクス王国に忠誠心があるのであれば必ずマルスの事をバルクス国王やジオルグに言うだろう。その時はマルスを巡る争いになるかもしれん。

様々な思いを巡らせていると、俺の隣にいたサーシャが

「スザク様、あれがマルスの本気の魔法、雷魔法です。マルスは四大魔法全て使える上に、神聖魔法と雷魔法を使えます。私自身も雷魔法は初めて見ましたが……」

「やはり……あれが雷魔法か……あまりの威力に術者もろとも無に帰す自爆魔法と聞いていたが……」

俺はこちらに向かって走ってくる2人を見ながらサーシャの言葉に頷いた。

マルス・ブライアント。もしかしたら【剣神】や今は亡き英雄 ラ(・) ー(・) ス(・) と同じレベルのS級冒険者になるのかもしれない。

☆☆☆

サンダーストームの威力は予想通り予想以上だった。

え? 何を言っているか意味が分からないって? それは仕方ない事だ。俺自身この結果に驚いている。

赤大狼と大狼、その周辺の火喰い狼くらいは倒せるかなと思っていたが、火喰い狼たちがあまりにも密集していたからもしれないが、雷が伝わり予想を上回る数を倒せた。多分500体以上は倒せたと思う。下手すれば1000体以上かもしれない。

これでボス部屋周辺の火喰い狼は一掃できたから、今であれば突入は可能だ。まぁ俺のMPが相当減ってしまったので、さすがに突入はしないだろうが。赤大狼と大狼を倒したこともありレベルも上がり、ステータスも相変わらず相当上がっていた。

【名前】マルス・ブライアント

【称号】雷神/剣王/風王/聖者/ゴブリン虐殺者

【身分】人族・ブライアント伯爵家次男

【状態】良好

【年齢】12歳

【レベル】48(+1)

【HP】137/137

【MP】1415/8345

【筋力】119(+2)

【敏捷】115(+2)

【魔力】133(+3)

【器用】111(+2)

【耐久】116(+2)

【運】30

【固有能力】天賦(LvMAX)

【固有能力】天眼(Lv10)

【固有能力】雷魔法(Lv10/S)

【特殊能力】剣術(Lv10/A)

【特殊能力】火魔法(Lv5/D)

【特殊能力】水魔法(Lv6/C)

【特殊能力】土魔法(Lv8/B)

【特殊能力】風魔法(Lv10/A)

【特殊能力】神聖魔法(Lv8/A)

【装備】雷鳴剣

【装備】 水精霊の剣(ウィンデーネソード)

【装備】鳴神の法衣

【装備】偽装の腕輪

【装備】守護の指輪

【装備】守護の指輪

自分のステータスを見ていると目の前のクラリスが急に倒れそうになったので、慌てて後ろから抱きかかえると

「ごめんなさい。ちょっと想像以上の威力や音、衝撃で今になって腰が抜けちゃったみたいで……もう大丈夫よ。マルスは何ともないの?」

クラリスはそう言って俺からすぐに離れようとするが、まだ完全には治っておらず少しふらついている。

「クラリス、無理はしないでくれ、しっかり俺に捕まって」

「うん、でももう大丈夫。ちょっと汗かいちゃったから……ね?」

そういうことか。俺もそうだがクラリスもかなり気にするからな。本当はクラリスのその匂いも好きなのだが、嫌われてしまうから素直に引き下がろう。

「分かった。きっと神聖魔法で治ると思うからヒールをかけてごらん」

クラリスが頷き自身にヒールをかけると普通に立てるようになっていた。

「よし、じゃあみんなの所へ戻ろう! 走るけどいいか?」

クラリスは頷くが、ここに来た時よりは俺との距離が開いている。まぁ仕方ないよな。一緒にみんなの所に走りながら戻るが、火喰い狼たちは完全に戦意を失っており、もう俺たちには向かってくる気配もないし、そもそも俺たちの周りにもいない。

みんなの近くまで走ると、エリー、カレン、ミーシャの3人が大喜びで駆け寄ってきてくれた。カレンの後をハチマルが付いてきたが少し怯えているようだったので、怖くないんだよとしゃがんで手をハチマルの前に差し出した。するとハチマルは俺の手を少し舐め、安心したのか俺の懐にすっぽり収まった。

「マルス、よくやった。色々話したいことはあるが南門を塞いで取り敢えず今日は砦に戻ってゆっくりしよう」

ハチマルのモフモフを楽しんでいると、スザクがしゃがんでいる俺に手を差し出してきたので、俺はその手を握り立ち上がり

「分かりました。早く砦に戻って風呂に入りたいので、早速行きましょう」

そのまま俺たちはリムルガルド城下町を後にした。