軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第315話 リムルガルド城下町

2032年1月23日6時

「ブラ! コディ! 私たちが戻るまでよろしくね!」

「おう! 姐さんが戻ってくるまで寝ないでずっとここにいるから安心してくれ! ここにいる奴らは俺が守ってやる!」

「俺もアイク様の言う事をしっかりと守るから、絶対に無事に戻ってきてくれ!」

いつもはクラリスにメロメロな2人だが、今日は真剣な表情でクラリスの無事を祈っている。

「マルス! 何かあったらすぐに戻ってくるんだぞ!? 決して無理はするなよ!?」

「先輩! 頑張ってください!」

アイクとアリスの言葉に手を挙げて応えるとスザクが

「では行くぞ! アイク! 俺たちが潜ってから1時間くらいは警戒をしておいてくれ! 今回は偵察がメインだ! 魔物を引き連れて戻ってくる可能性もある! 頼りにしているぞ!」

「お任せください! ご武運を!」

スザクの後を追って俺たちもコロネの中に入り、テリトリーの目の前、つまりリムルガルド城下町南門の前でスザクが立ち止まると

「これから突入するが2列になって突入する! 呼ばれた者は左から順に門の前に並べ! ミック、俺、マルス、エリー、ビャッコ! この5名が最初に街に入るメンバーだ! そしてその後ろにレッカ、カレン、クラリス、ミーシャ、サーシャ! だ! 最初に入る5名は扇形に広がり10mか20mくらい前に出て周囲の敵を倒すことに集中しろ! 最初の5人が前に出ないと後衛のメンバーが危険に晒される可能性がある! そして絶対に後ろに火喰い狼を通すな! 後衛の者たちは最初に入った者たちの10秒後に入れ! とにかく自分の前にいる人の所まで走れ!」

みんな一緒に突入するという手もあるかもしれないが、カレンやサーシャが突入した瞬間目の前に火喰い狼がいたらまずいから、この作戦がいいのだろうが、俺としてはクラリスだけは最初から俺と一緒に突入した方がいいかなとも思った。後から来る強みもあるからなんとも言えないが。

ミックの後ろにレッカ、スザクの後ろにカレン、俺の後ろにクラリス、エリーの後ろにミーシャ、ビャッコの後ろにサーシャがそれぞれ並ぶ。

ミックとレッカは入ったら西に向かって走り、スザクとカレンは北西、俺とクラリスが北、エリーとミーシャが北東、ビャッコとサーシャが東だ。

「クラリス! クラリスがこのパーティのキーマンだ! とにかくマルスを目指せ! そして範囲回復魔法を唱えろ! いいな!?」

「はい! 頑張ります!」

クラリスがじっと俺を見ながら言うとスザクがカウントを始める。

「よし! 行くぞ! 3・2・1……」

自分の中でカウントをして0になった瞬間テリトリーの中に足を踏み入れる。

目の前に広がるのは街というにはあまりにも酷いものだった。地震で崩れたかのような建物の残骸や瓦礫が広がり、至る所で火が燃え上がっている。燃えている理由は当然火喰い狼によるものだ。建っている廃墟は煤まみれで今にも崩れ落ちそうだ。

そしてこの街を火喰い狼は互いに肩をぶつけながら徘徊している。それほどまでに火喰い狼の数は多かった。ただどう見ても東側よりも西側の方が火喰い狼の数が多い。そして俺たちを見つけた火喰い狼は威嚇をするように火の玉を吐き出してくる。

そのほかにも異様な光景が広がるが、まずは自分の役目を忠実にこなすことが優先だ!

「みんな! 行くぞ!」

スザクが俺たち4人に向かって叫ぶと北西の方に走り、火喰い狼たちの群れに突っ込んでいく。俺も 風纏衣(シルフィード) を展開させ、トルネードではなくウィンドカッターを北側にいる火喰い狼の群れにがむしゃらに飛ばしながら走り、火喰い狼の群れに突っ込む。トルネードみたいな目立つ魔法だと気づいていない火喰い狼たちまで一気に来てしまうと思ったからだ。

雷鳴剣と水精霊の剣で火喰い狼を斬っていく。火の玉での攻撃は 風纏衣(シルフィード) で減衰させて敢えて食らう事にした。剣で斬ってもいいのだが、火の玉を斬るよりかは火喰い狼を斬る事に専念し、HPはクラリスが来た時にラブラブヒールで一緒に回復してしまおうと思ったのだ。

あまり余裕はないがどうしても俺の右後方で戦っているエリーの事が気になり、エリーの方を見ると、エリーはギリギリで火の玉を躱しながら少しずつ火喰い狼の数を減らすが、オーガの時のように群れの中に入る事は出来ずにいる。火耐性装備をしているにしてもやはりこの火の玉攻撃はきついらしいが1つだけ嬉しい誤算があった。

それは東側を担当していたビャッコが、徐々にエリーに近づいていたのだ。元々東側の火喰い狼の数は多くないというのも理由の1つだが、どう見てもビャッコはエリーの近くの火喰い狼のヘイトを自身に向けようとしている。

そのためビャッコはかなりのダメージを受けているが、元々HPが高くて耐久値も高い。いくら獣人は火が苦手と言えどもまだ耐えきれるはずだ。

セレアンス公爵の命令なのか、ビャッコ自身の意志なのかは分からないがこれは俺にとってとてもありがたかった。

突入から10秒が経ちもうそろそろクラリスたち後衛が入ってこようかという時だった。一瞬後ろを振り返るとミックが西の方に走り出せずに南門付近で戦っている姿が見えた。当初の予想では火喰い狼が均等にいるはずだったのだが、あまりにも火喰い狼が西側に多かったのでミックは自分の後ろに火喰い狼を通さないように止めているのが精一杯のようだ。だが不思議なことにHPはあまり減っている様子はない。どうやら 双竜棒(ダブルドラゴン) の青い魔石の方で火喰い狼の火に触れると、火が蒸発するようだ。

華麗なる棒捌きでダメージを食らってはいないが、防御に専念して倒すことが出来ないというところか。

スザクも思ったより進めていない。むしろ最初に突撃した位置よりも徐々に下がっており、周囲を見たり、指示を出したりする余裕なんて全く無さそうだ。スザクが下がってしまうと俺の左後方から火喰い狼が襲い掛かってくるので、俺も少し下がらざるを得なかった。

そしてクラリスたちが突入してきた時だった。突入と同時にサーシャの声が俺の後ろからした。

「クラリスはそのままマルスの所へ! 私とミーシャはエリーとビャッコ様の所には行かず、ミックの援護を! カレンはスザク様をよろしく!」

入ってきた瞬間、サーシャは状況を見極めたようで指示を出した。

「「「はい!」」」

クラリスとカレン、そしてミーシャの声が聞こえると俺の周囲の火喰い狼が 魔法の弓矢(マジックアロー) による攻撃を受け、すぐに「マルス!」という声が聞こえたので、俺は剣を下ろした。

勢いよく後ろからクラリスが抱き着いて来てすぐにラブラブヒールを唱える。そしてその際少し火傷をしていた俺の首筋にクラリスの唇が触れるとあっという間に火傷跡が完治した。

「クラリス! 取り敢えず少し戦線を下げよう! スザク様のラインまで下げてとにかくスザク様の援護だ! 本当は俺がミックさんの所に行きたいのだが俺とクラリスはここから離れるわけにはいかない! 俺は前方の敵とスザク様の方の火喰い狼を対処するから、クラリスは前方の敵とエリーの方を対処してくれ! エリーも聞こえていたらなるべくクラリスとビャッコ様と連携を取る様に!」

ゆっくりと戦線を下げながら俺は左側、つまりスザクの方の敵を中心に倒していく。だいぶ東側の敵を倒しきれたのか、クラリスの 魔法の弓矢(マジックアロー) は北側の火喰い狼だけを狙う様になっていた。

「マルス! エリーの周辺の火喰い狼はだいぶ少なくなったから私が北側の火喰い狼を倒すからマルスはスザク様の方だけを集中して!」

クラリスがラブラブヒールを唱えながら俺に言ってくる。

「分かった! スザク様の方の火喰い狼もだいぶ減ってきている! 問題はミックさんの所だが……」

そう言って南門の方を見ると、ミックとレッカが壁役となり、ミーシャとサーシャでウィンドカッターを使って火喰い狼を倒していた。相変わらず前に出れてはいないが、先ほどよりかは状況落ち着いている。

「マルス! よくやった! まさかこれほどになっているとは……1年前とは大違いだ! 今回は偵察メインだ! いつでも撤退できるようにしておけ! そしてあれを見ろ!」

スザクの近くまで下がるとスザクがミリオンダガーを飛ばしながら話しかけてきた。俺もスザクの視線の先の存在には気が付いていた。

このリムルガルド城下町に異質な建物が1つあった。それは西門前にあり、面積は東京タワーの敷地くらい、高さは10mくらいだ。色は血のように真っ赤で次々とその建物から火喰い狼が吐きだされている。火喰い狼はどうやらこの赤い建物から出てきているらしい。そしてこの色には見覚えがある。ボス部屋の色だ。

だが俺はそれよりも気になる物があった。

それは俺たちやこの街、そして赤い建物をずっと見下しているようだった。

黒い城壁と魔力のカーテンに包まれたその城はとても禍々しいが、どこかで俺たちを待ち望んでいるかのようだった。