軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第308話 心変わり

2032年1月19日18時

砦に戻るとちょうど南門のメンバーも入れ替わるところだったので、アイク、バロン、クロムと一緒に風呂に入る。大きい風呂を作るとこうやって裸の付き合いが出来るからいいよな。

南門の事を聞くとやはりコロネの中は火喰い狼で溢れかえっており、バロンとミネルバがついて来てくれて助かったとアイクにずっと感謝された。

バロン、コディ、そして遅れて合流した眼鏡っ子先輩のストーンスピアはコロネの中の火喰い狼にとても有効だったようで、3人もいい経験値稼ぎができたようだ。

風呂から上がり食事の支度をして女性陣を待ってもなかなか出てこなかった。

まぁ【暁】の女性全員で風呂に入っているからな。またクラリスのクラリスがクラリスというので盛り上がっているのだろう。想像しただけでも相棒が起きてくる。

女性陣が出てきたのは19時を少し過ぎた頃であった。

「ごめんね。ちょっと色々あって遅くなって……」

クラリスは急いできたのかまだ髪の毛が濡れていた。色々と言うのが凄い気になったが聞いてはダメな気がしたので聞かなかった。

早速みんなでご飯を食べるとまず口を開いたのはサーシャだった。

「私が砦の周辺を警戒している時にスザク様から伝言を預かっているわ。周辺の魔物を退治したらリムルガルド城下町に突入するから準備だけはしておいてくれとの事よ。1月25日くらいにはとの事で、突入メンバーはこれから決めると仰っていたわ」

サーシャの言葉に全員の表情が引き締まる。

「あくまでも俺の意見なんだが、アイク様は突入メンバーに入らず、こっちに残って欲しいな。ライナー先生やブラム先生に臆せず指示を出せるのは【暁】ではアイク様かマルス、サーシャ先生くらいだろうからな」

バロンがアイクに向かって言うとアリスも

「私もバロン先輩と同じ意見です! 義兄さんはブラとコディにも慕われていますから一番適任かと思います! 義兄さんがいるだけで安心できます!」

そう言うと、ミネルバも2人と同じようにアイクを手放しで褒め称える。さすがカリスマだ。

「2人ともありがとう。でもこれはスザク様がお決めになる事だからな。俺たちはスザク様の命令に全力で応えられるように常に体調を万全にしなければな。今日は早く寝てなるべく今戦っている者たちの援護に早く行けるようにもう寝よう」

20時とかなり早い時間だが、しっかりと3階の設備でMPを枯渇寸前にまでしてから寝室に向かう。今日は2つの貯水タンクを3階に作った。

なぜ2つかって? クラリスとミーシャの聖水を他の男たちに浴びて欲しくないのだ。聖水を浴びるのであれば俺だけと決めている。

今後クラリスとミーシャの2人はMP枯渇をさせる時、女性用の方の貯水タンクに水を貯めるように伝え、寝室に入った。

2032年1月20日0時

俺の胸の上で幸せそうに寝ているアリスを起こさないように部屋を出る。

まず向かったのは昨日カレンがテイムした3号の狼小屋だ。スザクたちには実験をしているからこの火喰い狼には手を出さないでくれと頼んであったので、まだ3号はそこに居た。

3号を鑑定するとまだテイムは持続されているので、カレンが寝ていても効果は継続されるらしい。毒や麻痺、感電のようにステータス異常系は時間経過によって状態が解除されるから、もしかしたら解除されているかもしれないと思ったが、寝ても解除はされないらしい。尤もこれはまだまだ経過を観察する必要があるが……

女性陣が起きるまでスザクたちと一緒に砦の周囲の光に集まる火喰い狼を一緒に倒すことにした。

5時に日が昇り始めるとクラリス、エリー、カレン、ミーシャの4人が俺を探しに砦の外に出てきた。

「マルス、どうする? 私たちはもう準備できているけど?」

クラリスが俺に聞いてくると、隣にいたスザクが

「もしも可能であればお前たち5人で西門の近くまで行ってもらえないか? 着いたらカレンが頭上にフレアボム……いやフレアを放ってくれれば俺も向かう。西門の状態を正確に知りたい」

俺たちはスザクの提案に乗り、5人と1匹で西門へと向かう。

火喰い狼が出現するとなるべくカレンの鞭でダメージを与え、3号に止めを刺させる。

カレンに鞭攻撃をしてもらう理由はもう1体テイム出来るのかと、3号に止めを刺させるのはパワーレベリングの為だ。

何匹、何十匹と鞭で攻撃してもテイムすることは出来なかった。

もう1体テイムするのは難しいのかもしれない。

しかし3号に関してはかなりレベルが上がっており、HPがかなり減っていた。

「これほど私の命令に素直に聞いてくれるのを見ると少なくとも3号に対してだけは負の感情は無くなってくるわね。まだ近づかれると少し怖いけど……」

カレンは少しだけ表情を柔らかくして言った。これはいい心境の変化なのだろうか? 今ならこの前と同じ言葉を言っても、違った結果になると思ったので、あえて俺は具体的な事は言わずにこう言った。

「カレン、3号のHPがだいぶ減っているな。火魔法を喰わせれば回復するんじゃないか? あの群れを倒したらもう1度試してみないか?」

「そうね……今回はフレアボムではなくフレア……いえ、ファイアボールを浮かべてそれを食べてもらうのはどうかしら? フレアでも3号が死んでしまう可能性がありそうだし……」

うん。思った通りのいい答えだ。

「よし、じゃあそれで行こう! みんな、またカレンの鞭攻撃を中心にやるぞ!」

みんなが頷き、先ほどまでと同じようにカレンの鞭攻撃を中心に火喰い狼の群を攻撃するがやはりなかなかテイムすることが出来ない。

そしてこの現状にカレンが少しムキになったのか、火喰い狼の火の玉攻撃を敢えて避けずに、鞭で火の玉を消しながら火喰い狼を攻撃しようとしたのだが、それが失敗しカレンの鞭を握る右手に少しだけ火の玉が掠ってしまった。

「あつっ!」

カレンが少し顔を歪ませたので、俺は即座にカレンの隣に行き、ハイヒールを唱えると、カレンが火喰い狼の群の方を見て

「3号! ダメ! 戻って!」

と叫ぶ。俺もカレンの視線の先を見ると火喰い狼の群れに3号が突っ込んでおり、いくらレベルが上がっていてもHPが10しかなかった3号は火喰い狼に返り討ちにあい噛み殺されてしまった。

「どうして3号はカレンに命令されてもいないのに攻撃しに行ったんだろう?」

火喰い狼の群を倒した後にミーシャが疑問を口にすると

「主人のカレンがダメージを受けたからではないかしら?」

クラリスの言葉にカレンも頷き

「私もそう思うわ。あのくらいの火で私がどうにかなると思っていたのかしら……」

自分の気持ちを悟られないように少し悪態をつきながら言う。

これはあくまでも俺の憶測なのだが、カレンは3号が死んで少しでも自分の心が痛んでいる事が信じられないのであろう。先ほど負の感情がなくなってきたと言っていたが、もう少し心を許していたのかもしれない。

「カレン、今日はテイムの事を忘れて取り敢えず西門へ行こう」

俺の言葉にほんの少しだけ感情的になり、

「そんな気を使わなくてもいいわ。魔物が死んだだけなのよ。今日もこれから……」

カレンがそこまで言うとカレンの唇を強引に奪い

「これは俺からのお願いなんだがダメか?」

「ずるいわよ……マルスにこんな事をされたら嫌だって言えないじゃない。分かったわよ。今日はテイムをやめて心を……」

カレンはそこまで言うと少しホッとした表情をし、1人で西門の方へ歩いて行く。そして後ろを振り向かずに

「ほら、早く行くわよ。スザクお兄様が首を長くして待っているわ」

俺たち4人は次の火喰い狼が出るまでの少しの間だけ、カレンの小さい背中を見ながら歩いた。決してカレンの前に出ないように。