軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第307話 テイム1

砦の周辺を警戒していると、砦の中からアイクたち南門のメンバーが眼鏡っ子先輩以外全員、計7名出てきた。もう6時前のようだ。

あれ? みんなで南門に行ったら、休憩とかどうするんだ?

「おはようございます、アイク兄。24時間体制だから交代制にはしないのですか?」

「おはよう。最初だけ全員で行くことにしたんだ。今コロネの先端は閉じてはいるが、コロネの中にはかなりの量の火喰い狼がいるはずだからな。コロネの中にいる火喰い狼を倒し終わったら、ライナー、ブラム、ブラッド、コディの4名は砦に戻ってもらう。4人は少し大変かもしれないが安全第一だからな」

聞いた俺がバカだった。普通に考えればその通りだな。

「では、後でバロンとミネルバにも行ってもらいます。4人が戻ってしまうと3人しかいなくなってしまうのでちょっと不安かなと。コロネの中だけではなく周囲の警戒も必要なので。いいか? バロン?」

俺の言葉にバロンが頷くとアイクが

「そいつは助かる! 何かあればバロンの土魔法でコロネに蓋もできるしな! じゃあ俺たちは先に行っているからバロン、よろしくな!」

アイクがそう言って他の者たちを連れて南門に向かう。

その中のアリスだけ呼び止め、ハグをしながら

「アリス、みんなの事をよろしく頼むな」

俺の言葉にアリスが嬉しそうに返事をし、お願いをしてきた。

「はい! もし今日頑張れたらご褒美に私が先輩の上に乗って寝てもいいですか? カレン先輩がとても幸せそうな顔をしていたので私もしてみたくなって」

アリスの言葉に俺ではない別の者が答える。

「しょうがないなぁ……じゃあ今日頑張ったらアリスがマルスの上でいいよ」

答えたのは今砦から出てきたミーシャだった。アリスは俺の返事を待たずして

「ありがとうございます! では頑張ってきますので、先輩たちも気を付けてくださいね!」

満面の笑みでアリスはアイクたちの列に向かって走っていった。

アリスの後姿を見届けていると、ミーシャの後にクラリスとカレン、そしてミネルバが砦の中から外に出てきた。ミネルバを見たバロンが

「ミネルバ聞いてくれ! B-の火喰い狼を俺1人で倒せるようになったぞ! これで俺もB級冒険者になれるかもしれない!」

バロンが少年の様な笑顔でミネルバに言うと、ミネルバも嬉しそうに

「おめでとう! あとでご褒美あげちゃうから期待しててね!」

なぁみんな? ここまでの会話だったらいいカップルの会話に聞こえるよな? だがここでしっかりとみんなの期待に応えるのが勇者だ。

「ああ! じゃあ今日はもう少し多めに蝋を……慣れてきたら……」

「バロン、ミネルバ、2人は今日南門を頼む」

みんなの期待に応えるのはここまででいいだろう。2人に俺が南門に行って欲しいというとすぐに2人が頷き、南門へ向かった。

「さて! 俺たちも行こう! サーシャ先生、先生はここでいざという時の為に待機してもらえますか? ここが襲われたりした時に誰か起きていた方がいいと思うので」

拠点が襲われたら大変だからな。幸いミックとビャッコはもうかなり寝ているはずだから何かあったら2人を起こしてもらえばいいしな。

俺の言葉に納得したようでサーシャは頷き、砦の警戒にあたってくれた。

サーシャを残し、俺とクラリス、エリー、カレン、ミーシャの5人で西門の方へ向かう。

西門に向かう途中に何体か火喰い狼と出くわし、カレンにテイムしてもらおうと思ったのだが、なかなかテイム出来ず、テイムする前に倒してしまうのを何度か繰り返した。

「テイムってなかなか出来ないのね。そういえば思い出したわ。何日も徹夜してはぐれ……」

そこまで言うとクラリスは恥ずかしそうに言葉を濁してしまった。もしかしたらゲームが好きだった事を隠したいのかもしれない。

ようやく火喰い狼が腹を見せたのは1時間経った頃だった。

「カレン、まずは名前をつけてくれ」

昨日と同じようにカレンに名前を付けてもらうと案の定2号という名前が付けられた。

そしてゆっくりとカレンが近づくと火喰い狼はお座りの体勢を取る。

「2号! まずはそこで私がよしと言うまでお座りしてなさい!」

カレンの指示に従い2号はカレンの方を向いてお座りをしている。

案外賢いのかもしれない。

「カレン、2号を少し遠くまで走らせてからカレンの所に戻ってきてもらえるように指示を出してくれないか? 遠くまで行ったらテイムが解除されてしまうかもしれないしな」

カレンは俺の言葉に頷き2号を遠くまで走らせてカレンの近くに戻らせるが、テイムは解除されていなかった。あと解除されそうなのは時間経過か?

すると少し警戒感を解いたミーシャが

「あとは私たちが2号をどうやって識別するかだね。雰囲気でなんとなく分かるけど絶対かと言われたら自信が無いし……私のハンカチをリボン代わりにして……」

そう言ってハンカチを握りながら2号に近づくと、いきなり2号がミーシャに火を吐きながら襲い掛かった。

「「ミーシャ!」」

あまりもの咄嗟の出来事だったので、叫ぶと同時にウィンドカッターを2号に無意識に放っており、2号はもう真っ二つになっている。

そして俺のウィンドカッターで真っ二つにしたところにクラリスのアイスランスが通り過ぎていく。クラリスも俺と一緒に叫び、すぐにアイスランスを発現させていた。

「大丈夫か!? ミーシャ!?」

いきなり襲われたミーシャは尻もちをついていたが、2号に噛みつかれる前に俺がウィンドカッターで殺していた為、大事には至らなかったが、足に火傷をしていた。

すぐにハイヒールを唱えミーシャの火傷を治すと、カレンが

「ごめんなさい……しっかりテイム出来ていたはずのに……どうして?」

尻もちをついているミーシャの所まで走ってきて謝ると、ミーシャが

「私の方こそごめん。不用意に近づいちゃったからもしかしたら2号がビックリしたのかもしれないね。それにしても怖かった……ちびったかと思ったよ」

あくまでも明るく振舞うが、体が震えているのをハイヒールで足を治している時に分かっていた為、ミーシャを体の震えが止まるまで抱きしめた。マルス先生の出番なんてもう一生ない方がいい。

「ありがとう、マルス。もう大丈夫だよ。それに次からはしっかりと警戒するから安心して」

震えが止まったミーシャが俺の肩に手を置き俺を離そうとするが、再度強く抱きしめ、

「ミーシャの言う通りいくらテイム出来ていたとはいえ油断は禁物だ。何せ相手は魔物だから何が起こるか分からない。今俺は無意識に2号を殺してしまったが、後悔はしていない。何よりもみんなが大事だからな」

俺の言葉にみんなが頷き、改めて火喰い狼を探すと、今度はすぐにテイムが成功した。

カレンがすぐに3号と名前を付けると今度はゆっくりと俺が3号に近づく……すると当然のように3号は俺に襲い掛かってきた。

すぐにクラリスからアイスランスが飛んでくるが、俺がそれをウィンドで弾き、

「みんなもうちょっと待ってくれ! カレン! やめるように命令してくれ!」

「3号やめなさい! その場で伏せ!」

カレンの言葉に3号が即座に従い、その場で伏せた。

そのあとクラリスとエリーが近くに寄っても3号は2人に襲い掛かってきた。

「なんとなくだけど分かってきたな。恐らくだがテイムした魔物は俺たち人間に懐いたわけではなく、あくまでもカレンにだけ懐いたという訳だ。カレンが人間は味方、魔物は敵と言っても襲い掛かってくるから、これは諦めた方がいいかもしれないが、近づかない限りは襲い掛かってくることはないみたいだ。恐らく火柱の届く距離、5~6mくらいで襲い掛かってくると思ったほうが良いな。だが先ほども言ったように油断はするなよ」

俺の言葉にクラリスが

「普通テイムしたら、仲間になって嬉しそうに馬車に駆けこんでいくものではないの?」

と独り言を呟く。間違いなくクラリスも俺と同じことを考えていただろう。

そして問題点はまだまだあった。

まず火喰い狼は無意識に火を吐いてしまう。だからいくら火魔法使いのカレンといえども迂闊には近づけないのだ。

あと命令しない限り、3号は火喰い狼に襲い掛かったりしない。そしてそれは火喰い狼の方も同じで、3号から攻撃を仕掛けない限り、火喰い狼側からも3号に攻撃を仕掛けることは無かった。

結局この日はずっと検証をしていただけで18時になってしまい、犬小屋ならぬ狼小屋を土魔法で作り、出られないようにして、スザクたちと見張りを交代した。