軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第309話 崩落危機

2032年1月21日6時

「今日はビシバシテイムするわよ!」

スザクたちと交代し、サーシャ、バロン、ミネルバを砦に残し外に出ると、カレンが張り切って鞭を地面に叩きつけるが、どこか無理をしているように見える。

「でも西門前にいるかな? 昨日相当少なかったけど……」

ミーシャがぼそりとつぶやく。

そうなのだ。昨日3号が死んだ後にリムルガルド城下町の西門までたどり着いたのだが、火喰い狼は予想外に少なく10体くらいしかいなかった。

スザクにも来てもらい一緒に西門付近を見たが、そこまで魔物が多いわけでもなく、西門からも火喰い狼を湧かせておいた方が 迷宮飽和(ラビリンス) になりにくいのではないかという事で西門の修復をしなかった。

リムルガルド城下町に突入する前には塞ぐという事で話がまとまったのだが、結局西門を塞ぐ土魔法で作られた壁が自然に壊れたのか、故意に破壊されたのかは分からなかったが、火喰い狼が2体くらい通れるくらいしか壁に穴は空いていなかった。

そして西門の先は魔の森のテリトリーのようになっていて、外からはリムルガルド城下町の中の様子を窺うことが出来ない。

ちなみにスザクたち西側担当のメンバーは、18時から6時の間は西門までは行かず、火喰い狼を南門へ行かせないようにすることと、砦周辺の警備に重きを置いている。

ミーシャの言葉のすぐ後にエリーが

「……来た……3体……」

と言うと早速俺たちは昨日のようにカレンの鞭攻撃を中心に火喰い狼と戦闘を開始すると、カレンの1発目の鞭攻撃で火喰い狼が腹を見せた。

他の2体をいくら攻撃してもテイムは出来なかったので倒してから検証をする。

「まずは昨日の検証をしてみない? カレンが襲われたらテイムした4号が助けに来るかどうか」

クラリスの言葉にカレンが頷き

「そうね、じゃあマルス、私に少し攻撃してくれないかしら?」

驚いたことに俺を指名してきたので

「いや、俺は絶対に女性には手を上げない。ましてやカレンになんてもってのほかだ」

俺の言葉にカレンは満足したのか

「分かったわ。じゃあマルス、演技でいいから暴漢になって私を襲って。押し倒してキスをするくらいでいいから。私は悲鳴を上げるからもしも4号が私に向かって走ってきたら教えて頂戴。これくらいだったらいいでしょう?」

俺は頷くが、この提案にエリーが

「……これ……ご褒美?……」

と首をかしげるとミーシャも

「ただカレンがされたいだけじゃないの? 私もマルス相手だったらされたいもん」

エリーに同意する。

「まぁカレンの言うとおりにやってみましょう。もしもこれで4号がカレンを庇うような行動をするのであれば今後これくらいの行為も厳禁という事だから」

クラリスの言葉にエリーとミーシャも渋々納得すると、早速俺がカレンに襲い掛かる。

カレンの後頭部を強打しないように、後頭部を右手で抑えてゆっくりと押し倒すと、カレンが「キャー」という悲鳴を上げながら目を閉じる。唇を重ねる前に4号の方を見るが4号は全く反応をしていない。それはキスをした後も同じだった。

「やっぱりどう考えてもカレンは喜んでいたもん。今のキャーは悲鳴じゃなくてカッコいい人や憧れていた人が目の前に突然現れた時のキャーだよ。今度キスは無しでいいから他の人にやってもらおうよ?」

ミーシャが言うと

「絶対に嫌よ! もしもそんなことをしてきたらそういう事をできないように私が燃やしてやるわ!」

本当に嫌なのかミーシャを少し睨むようにカレンが言う。

「ミーシャ、俺もいくら演技とはいえ、カレンが他の男に覆いかぶさられるところを見たくないし、許せない。これはカレンだけではなくてミーシャも同じだ。分かってくれるよな?」

ミーシャが俺の言葉に頷き素直に「ごめんなさい」と言うと、ミーシャの緑色の髪の毛を撫でてご褒美のキスをした。まぁ俺にとってのご褒美でもあるんだけどね。

そのあとまた西門に向かって歩くが、途中カレンがダメージを受けても4号はカレンにダメージを負わせた火喰い狼に勝手に襲い掛かることはなかった。これでますます分からなくなってしまった。個体差かテイムをしている時間が関係しているのか……ただ1つ確信したのが、カレンは火喰い狼を1体しかテイムが出来ない事だ。

もう何度もチャレンジしているからこれは間違いないだろう。今のところはかもしれないが。

西門には昨日よりも少ない5体の火喰い狼しかいなかった。

「なんだやっぱり今日も楽勝じゃん!」

ミーシャがそう言って、5体の火喰い狼を倒し切り、4号を西門の近くに待機させ、俺たちは少し早めの昼食を取る事にした。

「そういえば4号って何か食べるのかな?」

「魔物であれば動物の肉やもしかしたら人肉かもしれないけど4号は……何を食べるのかしら?」

ミーシャの質問にカレンも首をかしげる。

確かに魔物、特にこの魔獣タイプは草食というよりは肉食というイメージだよな。

あと今のカレンの言葉で分かったが、もうカレンは4号を魔物とは捉えていない。魔物と4号を別扱いしているからな。

「4号であればカレンの火魔法は好んで食べそうな気がするわね。カレンが食べ終わったら4号に与えてみたら?」

「そうね。試してみる価値はありそうね。HPがあまり減っていないから慎重に4号に与えてみるわ」

クラリスの答えにカレンが同意した時だった。

エリーが何かに気づいたようで肉をかじりながら急に立ち上がると、4号も急に吠えだした。

「……何か……聞こえる……振動音?……」

俺には分からないがエリーは確かに聞こえるという。クラリス、カレン、ミーシャの3人も聞こえないようだが、それぞれ得物を構えて警戒にあたると、さらに4号が激しく吠えた時だった。

西門を塞ぐ壁の穴が突然広がると、大量の火喰い狼と一緒に穴からあきらかに大きい個体が1体出てきた。

振動音というのはこいつが壁に突撃していた音だったのか……何故そう思うのかというとこいつの体には土魔法で作った壁の瓦礫が付着していたからだ。

そしてこいつらは湧いて出てきた瞬間一斉に4号に襲い掛かり、4号は抵抗する暇すら与えられずに死んでしまった。

今までカレンがテイムした魔物から攻撃しない限り、襲ってくることは無かったのにどういうことだ? カレンが「戻れ」と言った時にはもう手遅れで、カレンが唇を噛んでいる。

「みんな! 明らかにこいつは他の奴とは違うぞ! 気をつけろ!」

【名前】-

【称号】-

【種族】火喰い大狼

【脅威】B

【状態】良好

【年齢】1歳

【レベル】1

【HP】105/105

【MP】6/6

【筋力】72

【敏捷】50

【魔力】3

【器用】58

【耐久】70

【運】1

【詳細】火耐性。

こいつ大きさもさることながら、一番の特徴は口から自然と溢れる火が大きいのだ。こいつの火攻撃は相当厄介かもしれない。

そしてそれ以上に厄介なことにこいつは西門の壁付近から動かない。そこに居られると風魔法で攻撃時に、俺がリムルガルド城下町の西門を塞ぐ土魔法の壁を壊してしまいそうな気がする。

「……マルス!……また音聞こえる!……」

エリーが慌てて俺に報告する。

やばい……穴が広がって西門を塞ぐ壁の強度が明らかに下がっている。壁全体にひびが入っており、このままではいずれ完全に壁が崩落してしまう。

「俺が突っ込みながら土魔法で壁を塞ぐ! クラリス、ミーシャは範囲攻撃系の魔法を使わないように! 少しの振動や風で壁が崩落するかもしれないからな! カレンは火魔法だけは使わないように! エリーは3人に魔物を近づかせないようにしてくれ!」

風纏衣(シルフィード) を展開させ、右手に雷鳴剣を持ち、火喰い狼の群れに突っ込んだ。