軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第300話 急襲

2032年1月18日1時

0時過ぎに起きていた俺はクラリスとエリーを始め、婚約者たちの寝顔を見ながらずっと考え事をしていた。

寝る前にクラリスが言った言葉をだ。

ジオルグと謁見している時、彫りの深いイケメンの報告を聞いて正直俺はホッとしていた。

何故かって? もしも俺たちが何も知らずにリムルガルド城下町に潜り、 迷宮飽和(ラビリンス) 直前の……アルメリアのキラーアントの巣窟のような状態の場所に足を踏み入れたらどうなっていたと思う?

もちろん警戒をして迷宮には入るが、まさか 迷宮飽和(ラビリンス) 直前のような状況になっているとは夢にも思わない。もしかしたら俺たちは壊滅的なダメージを……下手をすれば婚約者たちの誰かが死んでいた可能性すらある。

だから俺はホッとしてしまったのだ。犠牲になるのが俺たちじゃなくて良かったと。

だがクラリスは違う。リムルガルド城下町に潜った者たちの事を心配していた。もしも可能であれば今からでも助けに行きたいという気持ちも読み取れた。

クラリスの事を無謀と思う者もいるだろう。だがそのおかげでミーシャというかけがえのない存在が救われたのも事実だ。あの時の俺はまだミーシャと知り合う前だったとはいえ見捨てようとしていたからな。

そのため今回の様なクラリスの気持ちを読み取れてしまうと、自分と比較して少しだが自己嫌悪に陥ってしまう。

まぁ俺の場合はいくら考えても優先順位、つまり絶対に守るべきは婚約者で次に家族という順位は変わらないんだが。

寝ているクラリスの頬にキスをすると無意識なのか、クラリスが俺に抱き着いてきたので、そのぬくもりを感じながら再度目を閉じた。

2032年1月18日6時

「スザク様! 只今参りました!」

予定通り6時に約束の場所に到着すると、すでにスザクとビャッコ、それにレッカは待ち合わせ場所で俺たちを待っていた。

「よし、では行くぞ! 道中でリムルガルド城下町の事を教える」

速足でリムルガルド城下町まで向かいながらスザクが説明をしてくれた。

やはりリムルガルド城下町の西門と東門は塞がれており、魔物が出てくるのは南門だけだろうとの事だ。

そして火喰い狼なのだが、思った以上に厄介という事が分かった。

火喰い狼の口から吐く炎は、魔法ではないらしい。だからMP枯渇とかはなく、こちらに襲い掛かりながら火を放ってくるとの事だ。

そしてもしもこちらが火魔法を唱えて火喰い狼に火魔法を喰われてしまった場合、火喰い狼はパワーアップするらしいのだ。

だから火喰い狼がいる場合は火魔法を使うなと口を酸っぱくして言われた。

スザクから説明を受けながら小走りで東に向かっているとブラッドが

「おいおい……あれはなんだ? 急に出てきたぞ?」

進行方向を指しながら言うと、その先には先程まで真っ青な青空が広がっていたのだが、そこにもくもくと黒煙が渦を巻いて我先にと天を目指していた。黒煙の発生場所はみんなも分かるよな。野営地だ!

「ちっ! 今から班に分かれて行動する! 俺とビャッコとレッカはスザク班として、マルス、アイク、クラリス、エリーはマルス班として、サーシャ班とカレン班は昨日言った通りだ! 絶対1人で行動するな! 行くぞ!」

スザクは俺たちに指示を出した後、飛ぶように駆け出してくとスザクを追うようにビャッコとレッカも続き、そのあとに俺たちマルス班が続く。

サーチを展開しながら煙を吐いている野営地に近づくと、野営地の方からは叫び声や怒声と共に、獣たちの雄たけびも聞こえてくる。

「……マルス!……魔物30匹くらい……テントの中にも……」

エリーが魔物の気配を感じたのか俺に報告してくる。ちょうど俺のサーチにもそのくらいの数の魔物と思しきものが引っ掛かった。それにまだリムルガルド城下町の方からこちらに向かってきているのが分かる。

テントが並ぶ野営地にスザクたちが駆けいり、俺も続くと、どこに逃げていいのか分からない煌びやかな鎧を纏った3人の貴族たちが俺たちの所に駆け寄ってきた。

「遅いぞ! 何をやっている! 早く我らを……」

そこまで言うと貴族はその場に倒れこんだ。スザクが迷うことなく掌底を貴族の顎に叩き込んだのだ。それを見ていた別の貴族たちは信じられないというような目でスザクを見ている。

「今みたいなやつに構う必要はない! もしも付きまとってくるようであれば今俺がやったように気絶させて構わん! 責任はフレスバルド侯爵の俺が全て取る! サーシャ班は悪いが逃げてくる者たちや俺たちが張り倒した貴族たちの誘導や回収を頼む! カレン班はサーシャ班の援護を頼む! マルスたちはジオルグの所に行け! 俺たちは野営地の東側でここに向かってくる火喰い狼を倒す!」

スザクの言葉に返事はしないが、すぐにブラムが先ほどスザクに張り倒された貴族を抱えて近くのテントの中に担ぎ込むと、サーシャが唖然としている貴族たちに

「ほら! あなた達もボケっとしていないでこのテントの中に入って! 土魔法でしっかり周りを囲むから! それとも気絶したいの!?」

と怒鳴ると、残った貴族の2人のうちの1人が

「貴様! 我々を誰だと……」

今度はライナーに意識を刈り取られる。それを見ていたクロムが

「お前! もう俺たちの手を煩わせるな! 自力でテントの中へ入れ! これは命令だ!」

残った1人の貴族に向かって叫ぶ。

その貴族はクロムがここに居ることに驚いている様子だったが、クロムの指示に従いテントの中に入る。しかしどこか貴族の目はクロムを睨んでいるようだった。

「サーシャ先生! カレン! この辺に最低でも5体の魔物がいる! これからも増える可能性があるから十分に気をつけろよ!」

この場をサーシャ班とカレン班に任せて、すぐ近くのジオルグの張っているテントへ向かうと、テントの前には大勢の貴族が集まっており、貴族たちの中心にはジオルグが、その貴族の周りを騎士や冒険者が囲み、息を吐くたびに口から火を吹く魔物と交戦していた。

魔物の数は10体と少なかったが、冒険者や騎士たちは完全に押されており、重傷者も出ていたが、この辺り西側のテントからは火が上がっていない。火が上がっているのはリムルガルド城下町により近い東側のテントだった。

「みんな注意しろ! ステータスは低いかもしれないが、やはり火での攻撃は厄介だ! クラリスは 魔法の弓矢(マジックアロー) で攻撃を! アイク兄、エリーは冒険者と交戦している火喰い狼を倒してくれ! 俺はこちらに向かってきている火喰い狼を倒す!」

火喰い狼を鑑定するとやはりステータス自体はC+のダイアウルフよりも器用値が高いだけで他はそれ以下だった。

【名前】-

【称号】-

【種族】火喰い狼

【脅威】B-

【状態】良好

【年齢】1歳

【レベル】3

【HP】50/50

【MP】6/6

【筋力】30

【敏捷】42

【魔力】3

【器用】41

【耐久】28

【運】1

【詳細】火属性耐性

俺の指示に従い、アイクとエリーは交戦している火喰い狼を後ろから次々と殺すが、何匹かアイクとエリーに反応し、2人に向かって細い火柱を吐いた。

エリーはうまく風のブーツの効果で空を駆け上がり、なんとか躱すことが出来たが、アイクは躱しきれず、火喰い狼の口から吐き出す火柱をまともに受けてしまった。

「アイク兄!」

アイクの方に走りながらウィンドカッターでアイクに対して火を吐いていた火喰い狼を倒す。

「大丈夫ですか!? アイク兄!」

「俺は大丈夫だ。少し火傷したくらいの軽傷だと思う。なんせ俺の防具は最も尊敬するものがくれた 火幻獣の鎧(イフリートメイル) だぞ? それに俺はそんなやわな鍛え方をしていないからな!」

と親指を立てながら大丈夫アピールをしてくる。

ステータスを確認すると状態異常にもなってないしHPも145/150だったのでまぁそこまで心配するまででもなかった。

どうやら火喰い狼には火の玉のようなものを吐く攻撃と、火柱を出し続ける攻撃があるらしい。

火の玉は避けやすいが射程が20mくらいはあり、火柱の方は射程が5mと短いが、当然火の玉よりは避けづらい。

前衛の戦い方を工夫しないとこれは厳しいかもしれない。

残りの火喰い狼を俺のウィンドカッターとクラリスの 魔法の弓矢(マジックアロー) で一掃すると、空中を駆け上がっていたエリーがスカートをなびかせながら俺の所に着地し、それに合わせて上を向いていた貴族や冒険者たち、そしてジオルグの視線も下がった。