軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第284話 誕生日

2032年1月1日 3時

かすかな重みと、爽やかな青リンゴの様な匂いで目を覚ますと、俺に重なるようにミーシャが寝ていた。

俺の両脇腹をミーシャの太ももが挟んでおり、両腕は俺の首に回され、控えめな双丘でもしっかりと感じられるくらい密着していた。

整った顔が俺の耳元にあるため、寝息がかかってくすぐったい。

俺の左腕はカレンを抱き寄せていた。

そして俺の右手の甲には誰かの唇の感触がする。ミーシャ、カレン、エリーは俺の視界に収まっているから必然的にクラリスしかいない。

どうしてこんなに密着しているのかと考えてみたら、4人用のベッドに5人が寝ているのだ。男1人女4人とはいえ、かなり狭くなってしまうからミーシャが俺の上で寝たのかもしれない。

しばらくこの状況を堪能していると耳元で

「……マルス……好き……でも……ごめん……小さくて……おっぱ……」

最後の言葉を言う前にミーシャの口を塞ぐとミーシャは幸せそうな顔をして寝息を立て始めた。

え? 両手塞がっているのにどうやって口を塞ぐのかって? 当然キスしかないだろう?

結局みんなが起きるまで俺はずっとこの状態で過ごした。3時間もだ。

4人の中で最初に起きたのは俺の腹の上に跨っていたミーシャだ。

跨ったまま上体を少し起こし、仰向けになっている俺の唇にミーシャの唇が重なる。

「おはよう、マルス。プレゼントにはならないかもしれないけど、今のが私からの誕生日プレゼントだよ」

珍しく少し照れた表情でミーシャがいうものだからとても愛おしくなってしまい、俺も少し上体を起こし、クラリスとカレンに包まれていた両腕をミーシャの背中に回し、ミーシャを引き寄せ俺からキスをもう一度した。

「ありがとう、ミーシャ。すごく嬉しいよ」

俺の言葉にミーシャがより照れて赤くなる。こんなミーシャは久しぶり……いや初めて見たかもしれない。

「お2人さん? 私も混ぜてもらっていいかしら?」

もしかしたら俺が腕を引き抜いた時に起きてしまったのかもしれない。

左側から声が聞こえるとミーシャはまた上体を起こし、今までミーシャの顔があったところ、つまり俺の顔にゆっくりとカレンの顔が近づいてくる。

カレンの赤く長い髪の毛が俺とカレンのキスをみんなから隠すように幕をする。

「マルス、おはよう。そして誕生日おめでとう」

カレンからも最高のプレゼントをもらい満足しているとクラリスも起きたようで

「ま、マルス、おはよう。私ちょっとお風呂に入りたいから先に起きてるね。カレン、お湯加減の調整をお願い」

クラリスの言葉にカレンが従い、部屋から出て行ったのでエリーを起こすと、エリーはいつも通り俺の首筋に顔を埋めてくる。

「じゃあ、クラリスが出てくるまでに朝食の準備を終わらせよう」

部屋を出るとすでにアイクが起きており、筋トレが終わり風呂から上がってきたところだったので一緒に朝食の準備をする。

まぁ準備と言っても携帯食を少し炙って並べる程度なんだけどね。

クラリスは相変わらずの長湯でいつもは先に食べてしまう事も多いのだが、今日はクラリスを待つことにした。今日はクラリスの誕生日でもあるからね。

クラリスを待っている間にレベルが上がっていたエリーの鑑定をすると

【名前】エリー・レオ

【称号】-

【身分】獣人族(獅子族)・レオ準女爵家当主

【状態】良好

【年齢】11歳

【レベル】45(+1)

【HP】139/139

【MP】119/119

【筋力】92(+1)

【敏捷】116(+2)

【魔力】26

【器用】34

【耐久】74(+1)

【運】10

【固有能力】音魔法(Lv2/C)

【特殊能力】体術(Lv8/B)

【特殊能力】短剣術(Lv8/C)

【特殊能力】風魔法(Lv3/G)

【装備】カルンウェナン

【装備】ミスリル銀の短剣

【装備】 風の短剣(シルフダガー)

【装備】 戦乙女軽鎧(ヴァルキリーアーマー)

【装備】風のマント

【装備】風のブーツ

【装備】雷のアミュレット

【装備】偽装の腕輪

この可愛さでこれだけ強いと周りの男たちは自信を無くすよな。

みんなと話をしながら俺も自分の事を鑑定しようとした時にクラリスが風呂から上がってきた。

なんか今日のクラリスは後光がさしているように見える。

クラリスもテーブルに着き、ご飯をみんなで食べているとミーシャが

「なんかさ? マルスはもう完全にそこらの大人たちよりも大人びてきたよね? 昨日までのマルスともなんか違うような気がする。昨日までのマルスよりなんかこう……威厳? というか風格の様なものを感じるよ?」

ミーシャの言葉にエリーとカレン、そしてアイクまで頷く。

アイク、カレンはともかくエリーとミーシャは直感派なのでもしかしたら加齢したことで何か変化があったのかもしれない。

しかし変わったのは俺だけではないようで今度はカレンが

「でもクラリスも変わった気がするわ。なんか神々しい美しさになったというか、なんというか……もしかしたらあまりの美しさに逆に男が寄ってこないかもしれないわね」

確かに神々しいというのは分かる。さっき後光がさす感じと俺が思ったのと同じ感覚なのだろう。

だがブラッドとコディだけは絶対にクラリスからは離れられないだろうな。

もう完全にハートを何度も何度も射抜かれているからな。ある意味あいつら2人は犠牲者なのかもしれないな。

食事を終えると帰り支度をして安全地帯から出た。

今回は安全地帯で俺たちが使ったものは、ブラッドとコディが使用したもの以外全て燃やしておいた。

やっぱり女性陣が使ったものは誰かに使われたくないからな。

だが、ブラッドとコディの部屋と男湯だけは残しておいた。

ここは別にどう使われてもいいからな。

15時くらいにアルメリアの街に出るとミーシャが

「やっとお日様の下に出られた。迷宮もいいけどやっぱり外の方がいいね」

伸びをしながら言うと、カレンも

「そうね。マルスがいてくれると迷宮も快適だけど、やはり外の方がいいわね」

ミーシャに同意した。だがエリーは

「……マルスいればどこでも……」

と嬉しい事を言ってくれる。

しかしクラリスだけは何も言ってくれない。朝からいつもより口数が少ないのだ。

ミーシャがそれに気づき

「クラリス? 具合でも悪いの? なんか元気ないよね?」

心配そうにクラリスの事を気遣うと

「え? 何か言った? 私? え?」

クラリスは聞いてなかったのか、聞こえなかったのか分からないが、慌てていた。

いつもとは少し違う様子に流石に心配になってくる。

街の住民や冒険者たちの視線を一身に浴びて屋敷に戻ると執事のセボンたちと共にリーナが出迎えてくれた。

「マルスおにいちゃんお帰り!」

嬉しそうにリーナが飛びついてきたので両脇を持って抱き上げると

「リーナはもう8歳だから恥ずかしいよ」

そう言いながらも嬉しそうに抱きついてきた。

アイクはすぐに眼鏡っ子先輩の所に行き、ミーシャとカレンは2人でアルメリアの街に出る。

俺とクラリスとエリーの3人はリビングのような広間に行くと、そこにはマリアとカインがおり、エリーを見つけたカインがなんと走ってエリーの下まで駆け寄る。

どうやらカインは今までゆっくりと、それも10歩くらいしか歩けなかったのに急に走りだしたからマリアが驚いていた。

愛はパワーなんだなと改めて実感した。まぁカインの愛はかなり屈折しているとは思うがな。

エリーはカインから逃げ回り絶対にカインのお目当てのものを触らせない。

しかしカインも必死で絶対にあきらめない気持ちでエリーを追っかけまわす。

これはカインにとっては相当いい歩行訓練だろう。エリーからしてみればたまったものじゃないが、マリアにこのまま続けてと言われてしまったエリーは仕方なくカインの視界に収まるように逃げ回っている。

「マルス、ちょっと……お風呂入ってくるね?」

確かに迷宮から戻ってきたからお風呂に入りたいよな。クラリスの言葉に頷くと俺もひとっ風呂浴びようと男湯に入ると、そこには完全に精気を失ったブラッドとコディが浴槽の中でぼーっとしていた。

「おう、マルス……帰ってきたのか……俺も迷宮に残ればよかったな……もう絶対にライナー先生とは一緒に遊びになんか行かねぇ……それにクロの奴がもしああなってしまったらと思うと……」

「魔族の俺は特に珍しいらしくて……ブラッドが一緒にいこうなんて言ってこなければ、今頃俺はクラリスの荷物を持っていられたろうに……」

どうやらこの2人は相当なトラウマを抱えてしまったらしい。まぁ目覚めなくてよかったよ。

戦闘中、ブラッドとコディの攻撃? も警戒しないといけないとなると面倒だからな。

俺もゆっくりと風呂に入っているとコディのクラリスという言葉を皮切りに2人がいつものような元気を取り戻していた。

「姐さんのバッグは俺が持つんだ! お前は頼まれたことないだろう?」

「何言っているんだ! 行きはブラッドで帰りは俺ってクラリスは決めていたに違いない!」

トラウマ級の出来事を名前1つで治癒してしまうクラリスは本当に凄いよな。

「もう俺は出るが、お前たちはまだ出ないのか?」

しっかりと体を洗って浴槽で温まったので2人に聞くと、また2人は思い出してしまったようで

「なんか、ずっと風呂に入っていないと気が済まなくてな。特に顔は溺れない限りずっと浴槽の中に突っ込んでいたい……だってよぉ、俺とコディは……」

ブラッドが悪夢を語りだす気配がしたのですぐに風呂を出た。

想像もしたくないからな。夢に出てきたらもう怖くて寝ることが出来ないかもしれないだろう?

風呂から出るとちょうどバロンとミネルバの2人とすれ違った。

どうやら2人はアルメリアの街で買い物をしてきたらしいのだが、買ってきたものが見えてしまったので思わず聞いてしまった。

「なぁ? それ何に使うんだ?」

「これ? これはね、猿轡といって声を出させないために噛ませるのよ。この前【鬼哭】のメンバーたちを縛った時にもやったんだけど、もしも私たちが縛られて猿轡をかまされた場合でもしっかりと魔法が唱えられるように訓練するの。マルス君も一緒にやる?」

いや、使い方は知っていたのだが……やっぱりそっちか。そんなレアな状況なんて到底起こらないと思うが……

「い、いや、いい……ほどほどにな」

2人から逃げるようにその場を立ち去った。

その後ようやくカインから解放されたエリーと一緒に自室に戻ると部屋にはアリスが寝ており、専用の浴室からは物音がする。まだクラリスが風呂に入っているようだ。

一緒にベッドに横になれるように、エリーもクラリスのいる浴室に入ったので、俺は寝ているアリスの頭を撫でているとアリスが起きてしまった。

「ごめん、起こしちゃったか」

「いえ! お帰りなさい! なんかマルス先輩雰囲気変わりましたか?」

やはり俺はどこか変わったらしい。

「みんなから言われるけど、俺自身は何も変わってないつもりだ」

アリスは可愛くうなずき

「先輩、抱きしめてもらってもいいですか? みんながされているのを見ると羨ましくて」

アリスがベッドから起き上がってきたのでしっかりと抱き寄せるとアリスからは日本でいう石鹸の様ないい匂いが鼻腔をくすぐる。

そして抱き寄せたときに控えめに唇と唇が触れると

「誕生日おめでとうございます。これからもよろしくお願いしますね?」

少し不安そうにアリスが聞いてきたので何も言わずに強く抱きしめると、アリスは嬉しそうに俺に身を委ねてくれた。

30分くらいするとクラリスとエリーが風呂から上がり、エリーはすぐに俺の隣にダイブしてきたのだが、クラリスは心ここにあらずという感じで俺たちを見ていた。