軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第260話 相性

「 氷城(アイスキャッスル) 」

試合開始の合図と共にゲンブが氷城を発現させる。普段話すときはトロい癖に魔法の詠唱は速いのな。

皆が 氷砦(アイスフォートレス) の上位互換と言っていたのでただ大きくなるだけかと思ったが全然違った。氷砦はかまくらの形をしていただけだったが、氷城は氷で出来た城というか要塞のような形をしており、立体的で趣がある……ように感じる。

あまりにも氷城が立派だったので少し見惚れてしまい、一方的に攻撃を受ける形となってしまった。 氷弾(アイスバレット) が氷城の様々な場所、角度から放たれる。

未来視(ビジョン) を展開し、様々な角度から飛んでくる氷弾を雷鳴剣で斬ったり弾いたりするが、氷弾の威力が予想以上で逆に雷鳴剣が弾き飛ばされそうになる。これは悠長に受けていられないな……このほかに土魔法での攻撃もされるとなると捌ききれなくなるかもしれない。俺からも攻撃をしなければ……

氷弾を雷鳴剣で捌きつつ左手を体の前に突き出し魔法を唱える。

「ファイアストーム!」

夜空を巨大な炎の竜巻が照らし、そのまま氷城を襲う。

その間にも氷弾が発射されるが、暴風により俺を狙っていても明後日の方に飛んでいく。

ファイアストームに覆われて氷城の溶ける音がコロシアム中に響き渡るが、ファイアストームの中の氷城のシルエットはあまり変わらなかった。

だが確実に溶けている。そしてゲンブからの魔法攻撃も激しくなる。

氷弾では意味が無いと悟ったゲンブは土魔法を中心に攻めてくるようになった。

地震? 地鳴り? 系の魔法を使ってくるかと思ったのだが、地面から槍が出てくるストーンスピアを中心に攻めてきた。

まぁ地震系の魔法は氷弾を当てやすくするのが目的で氷弾がどこに飛んでいくか分からない今はあまり効果的ではないのかもしれないな。

それに今地震を起こしたら、熱で溶けている氷城が倒壊する可能性があるしな。

このままでも勝てると思うのだが、あまりにも時間が掛かり過ぎるので、ウィンドカッターでファイアストームに覆われている氷城を攻撃し、傷をつけることにした。

ウィンドカッターで傷をつけた氷城の一部が炎の力で溶け、脆くなったところを強烈な風の力で吹っ飛ばしていく。ウィンドカッターを使い始めてからファイアストーム越しに見える氷城のシルエットがどんどん崩れているのが分かる。

5分も経たないうちにゲンブのHPが減り始めた。ファイアストームが氷城を飲み込んでようやくゲンブまで届いたのだ。

すぐにファイアストームを解き風魔法で熱風を飛ばし、 未来視(ビジョン) を展開してからゲンブの下へ走る。

途中で土魔法で攻撃や妨害をしてきたが、水魔法に比べると威力が弱いので簡単にゲンブの下に辿り着く。するとすぐに手に持っていた盾を地面に投げ捨て、ゲンブが両手を挙げた。

ファイアストームのダメージがあるからか、俺に負けたからか分からないが、ゲンブの顔色はあまり優れていなかった。

「…………おまえ、魔法使いだったのか。剣聖とだけ聞いていたから油断を……いや、万全でかかっても無理か。とにかく俺の負けだ」

この言葉を聞いたスザクが

「勝者! マルス!」

叫ぶと貴賓室にいた面々がコロシアムに降りてきた。

ミーシャなんか喜びすぎて飛び跳ねるように走ってきたので、スカートの下から水色の神聖な物がチラチラ見えてしまっている。コディとブラッドは俺と一緒に釘付けになっている。

「ゲンブ! 大丈夫か?」

シールズ公爵がゲンブに駆け寄ると、ゲンブはゆっくりとシールズ公爵の方を向き頷きながら

「…………強すぎた。それだけです」

頭を垂れたながらゲンブが答えた。

「リーガン公爵、ゲンブにヒールをかけてやってくれないか? 明日までダメージが残ってしまうと困る。頼む!」

「当然です。ゲンブが万全の状態でエルシスと戦うために今戦っているのですから。それにこのままにしておくと後でレオナに何と言われるか……マルス、 あ(・) な(・) た(・) に(・) 任(・) せ(・) ま(・) す(・) 」

シールズ公爵の言葉にリーガン公爵が答える。俺に任せるというのは、俺、クラリス、アリスの誰かがヒールを唱えろという事だろう。言ってみれば誰を神聖魔法使いとして世に公表するか俺が決めろという事だ。

これはもう最初から【黎明】の中で決めていたことだった。

「アリス、ゲンブにヒールを頼む」

俺の言葉に頷くとアリスがゲンブに近づきヒールを唱える。

コディからは「嘘だろ? アリスが神聖魔法を……?」と小さく呟く声が聞こえた。

何度もヒールを唱えてゲンブはすっかり良くなったらしく、顔色も良くなったように見えた。

「シールズ公爵、今日の所はもう遅いのでまた明日にしましょう。マルスのファイアストームを見た冒険者たちが恐らくコロシアムの外に来ているでしょう。私たちと一緒にコロシアムを出るのは良くないので裏口から先に出てもらってもよろしいですか?」

シールズ公爵はリーガン公爵の言葉に頷きゲンブと【黒壁】のメンバーと思われる者を連れてコロシアムの裏口から出て行った。

「さて、マルス、よくやりました! これで明日A級冒険者になれます。ですが最後に1つやっておいて欲しいことがあるのですがよろしいですか?」

「ありがとうございます。僕にできる事であればなんなりと」

「このファイアストームで焦げたり土魔法でボコボコになってしまったコロシアムを修復してほしいのですが……さすがに今から私たちがやっても明日までには間に合わないと思うので……疲れているとは思いますがやって頂けますか?」

たしかに怪獣大戦争が起きた後のようだもんな。コロシアムでファイアストームを使うもんじゃないな……

「分かりました。では修復してから戻りますので、リーガン公爵たちは先に戻っていてください。バロン、義姉さん。申し訳ないけど手伝ってください」

リーガン公爵は俺の言葉に頷き騎士団を連れてフレスバルド公爵とセレアンス公爵と一緒に正門の方から出ていった。ちなみにスザク、ビャッコ、ヒュージは残ってくれている。

バロンも俺と一緒に修復作業を手伝ってくれると言ってくれたが眼鏡っ子先輩は

「じゃあマルスにはお礼に何をしてもらおうかなぁ。あっ! 今度マッサージでもしてもらおうかしら?」

美女をマッサージするのは大歓迎なのだが、眼鏡っ子先輩だけは遠慮したい……後で根も葉もないことを言われる可能性が大いにあるからだ。

聞かなかったことにしてコロシアムの修復作業を始める。

「マルス、まずはおめでとう。お前本当にMPお化けだな。あれだけの魔法を使っておいてまだこれだけのことができるんだから。それにアリスが神聖魔法使いだなんて思わなかった。このパーティに足りない物なんてないな」

コディが素直に称賛してくれる。

「ありがとう。コディも良かったら手伝ってくれ。早く終わらせて帰ろう」

コディの他にスザクも手伝ってくれたのですぐに修復作業を終わりコロシアムの外に出るとかなりの冒険者が集まっていた。

「おい、あれA級冒険者のスザク様だよな?」

「さっきのファイアストームはスザク様か」

「スザク様だったら納得だ」

やはりファイアストームで目立ち過ぎたのかもしれない。ファイアストームを誰が放ったのかで話題になっていたが、スザクがいるおかげで助かった。

ミーシャとブラッドが外で祝勝会をやりたがっていたが、もう時間も時間だしかなり注目を浴びてしまっている。また明日やる事にして今日は宿に戻る事にした。

宿に戻るとスザクに

「マルス、ここに来た当初はこのままリムルガルドに行く予定だったのだが、俺とビャッコは円卓会議がどうなるか気になるので一旦リーガンに戻ろうと思う。その辺りの事を明日しっかり話そう。今日はおめでとう。ゆっくり休め」

スザクたちと別れ軽食を取ったあと、俺はアイクと2人で自室に戻った。

クラリスたちが俺のマッサージをしたいと言ってくれたのだが、珍しくアイクが2人で話がしたいと言ってきたのだ。

「マルス、まずは本当におめでとう。そして悪かったな。クラリスたちが誘ってくれていたのに」

「ありがとうございます。クラリスたちにはまた明日祝ってもらうので大丈夫ですよ。それよりどうしたのですか?」

「ああ、マルス、正直に答えて欲しい。俺も来年A級冒険者試験を受けようと思っていたのだが、少し自信を無くしてしまってな。俺には何が足りない? いや全て足りない事は分かっているのだが、何を優先して鍛えるべきか迷ってしまってな」

「足りない物ですか……生意気なことを言うかもしれませんが、アイク兄はこのままでいいと思います。エルシスのように攻撃に特化したり、ゲンブのように防御に特化したりするのもいいかもしれませんが、難敵と当たった場合、機転を利かせにくいですからね。ただどっちかに振るというのであればやはり攻撃かと……」

「そうだよな……やはり攻撃の方をもっと強くしないとな……明日からまた気を引き締めて今まで以上に頑張らないとな」

アイクはもうこれ以上訓練をしてはダメだと思うのだが……その後も話をしながらMPを枯渇させてベッドに横になる。

2人の天使の残り香に包まれながら明日を迎えることにした。