軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第257話 辱め

2031年11月29日

今日もカレンとミーシャに挟まれて起きる。

クラリスは俺が寝た後にエリーがいる部屋に戻ったようだ。

部屋を出る時に部屋の前を警備しているリーガン騎士団員に、いつものセリフを言って自室に戻った。中に入るとアイクはすでにストレッチをしていた。

「おはようございます。今日のストレッチはここでやりますか?」

「ああ、ストレッチだけだったらここでも出来るからな。マルスが筋トレルームに行くのであれば俺も一緒に行くが?」

「いえ、僕も今日はここでストレッチをします。アイク兄にクラリスの新魔法の事を教えたいので」

一昨日は上半身、昨日は下半身の筋トレをやったから今日は筋トレをしない日だ。

ストレッチをしながらクラリスの合体魔法を教えると

「さすがクラリスだな! 今度是非見せて欲しい!」

アイクは合体魔法という言葉にも、ラブラブヒールと言う言葉にも反応せずにただただクラリスを褒めていた。

アイクと久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしてから食堂に行くとすでにヘロヘロに疲れ果てていたコディとブラッドが先に朝食を取っていた。

「おはよう、2人共早いんだな」

アイクが2人に話しかけるとブラッドが

「なんで2人は来なかったんだよ!? 俺とコディでずっと頑張って筋トレルームで汗を流していたのに……バロン誘っても来ないし……」

「昨日のマルスを見て魔法使いでも鍛えなきゃいけないと思って、凄い筋肉痛だったけど無理してやったのにそういう時に限ってサボりやがって……」

ブラッドとコディがそれぞれ不満をぶちまける。

2人に筋トレを2日やったら1日休むことを伝えるともっと早く教えてくれと言われてしまった。

どちらにせよ2人共やる気になったので良しとしよう。

女性陣も少し遅れて、みんな朝食を食べているとスザクたちが食堂に入ってきた。

「マルス、もしかしたらだが、今日の試合なくなるかもしれない」

「え!? どういうことですか?」

「これは結構信用できる情報だと思うのだが、昨日のマルスとエルシスの対戦を見た相手が相当ブルっているらしくてな。なんでもせっかく頑張って入手した装備が破壊されるのが嫌らしいんだ。絶対にマルスに勝てるという自信があるのであればとにかく、俺は今日の対戦相手の気持ちがわかるな」

もしもエルシスと再戦する時の為にと思って竜骨棒を破壊したのは正解だったな。

今日もスザクたちと一緒にコロシアムに向かい、中に入るとガラガラの観客席でカストロ公爵とエルシスが激しく言い合っているのが見えた。

かなり揉めているようだが、反対側にいるので何を言っているのかは分からない。

「あれはきっとレオナがエルシスをバッサリ切った抗議だろうな。昨日レオナ側がクラウン公爵家に対して賠償と婚約破棄を求めたそうだ。

クラウン公爵家側は賠償には応じるが、婚約破棄はエルシスがA級冒険者になれなかった時だけだと抵抗しているらしいが……昨日マルスが竜骨棒を破壊してしまったからな。

当然マルスには勝てないだろうし、ゲンブ戦もきついのではないか? 竜骨棒さえあればゲンブの鉄壁とも思われる防御を打ち破る事が出来たかもしれないが……」

なんかエルシスが少しだけ可哀想になってきたな。

好きな女性が自分を一生懸命ハメようとしているなんて夢にも思わないだろうな……俺がクラリスに裏切られるようなものだからな。

少し様子を見ていると2人が反対側に居る俺らに気づいたようでエルシスがコロシアムを左回りに歩いてくると、カストロ公爵は右回りに俺たちの方へやってくる。

当然スザクはエルシスの方に向かい、エルシスを止める。

一方のカストロ公爵を止める者はいない。あっさりと俺たちの所に来るとエルシスに聞こえるように大きな声で

「 初(・) め(・) ま(・) し(・) て(・) 。 私はカストロ公爵家当主レオナ・バルサモです。昨日の試合は見事でした。 これからも精進するように」

こんなこと言われてしまったら俺もそれに乗っかるしかない。

「挨拶が遅れて申し訳ございません。僕はバルクス王国ブライアント伯爵家次男マルス・ブライアントと申します。お褒めのお言葉を頂き大変うれしく思います」

片膝をつき改めてレオナに自己紹介をした。

ちなみに昨日もコロシアム内で2、3回話をしているが、あの時はすぐにカストロ公爵が立ち去ってしまったので、俺とカストロ公爵に面識がある事を知っている者は少ないだろう。

エルシスも今と同じようにスザクに阻まれていたからな。

スザクの方を見るとエルシスをコロシアムの観客席からちょうど追い出すところで、こちらの方は見ていない。それを知ってか知らずかカストロ公爵が小声で

「マルス君、後でお話ししましょう。悪いようにはしないから」

この言葉にクラリスとエリーが反応し、すぐに俺の隣に来るがこれはもしかしたらカストロ公爵の思惑通りの行動だったのかもしれない。

「あなた自己紹介をしなさい」

カストロ公爵の鋭い視線が俺からクラリスに移る。クラリスは少し驚いていたが

「リスター連合国ランパード子爵家長女クラリス・ランパードと申します。ここにいるマルスの婚約者でございます」

両手で制服のスカートの裾を軽く持ち上げてぎこちない作り笑いを浮かべると、カストロ公爵がとんでもない行動に出た。

「あなたマルスと同じ制服という事は11歳よね? 人族の11歳でこのスタイルという事はあなた……」

と言いながらなんとクラリスの胸を揉んだのだ。あまりもの突然の行動からなのかクラリスは

「っ!!!???」

声にならない声を出してただただ驚いていた。幸いカストロ公爵はすぐに手を放したがクラリスは顔を真っ赤にして自分の身を隠すようにしてカストロ公爵の方を見ている。

恐らくカストロ公爵はクラリスの体を見て神聖魔法使いと踏んだのだろう。

それにしても暴挙だし、羨ましい……というか許せなかった。俺が一番に堪能するはずだったのに! だってみんなも一番搾りが……不謹慎でした。ごめんなさい。

「クラリス、あなたにも話があります。きっと私の話はクラリスにとって、とても為になる事でしょう。先輩のアドバイスはしっかり聞くものよ?」

クラリスの目に少し涙が溜まっていたので、カストロ公爵からクラリスを守るために前に立つと、すぐにクラリスも俺の背中に隠れた。

「カストロ公爵、お戯れはこの辺までにしてください」

見かねたヒュージがカストロ公爵の暴走を止めにかかる。

「まぁいいでしょう。今回はサザーランド伯爵のおかげで色々なものが手に入りそうですからね。マルスとクラリスに関してはまた今度の機会にでもしましょう」

カストロ公爵はそう言い残し、ようやくこの場から去っていった。

「クラリス大丈夫か?」

本当は痛くなかったか? と聞こうとしたのだがなんか別の意味としてとらえられそうだったのでシンプルに聞くと

「ええ……大丈夫……どうやら私の事バレちゃったのかもしれないわね」

質問の意図に気づいているのかな? 俺は触られて大丈夫だったかと聞いたつもりだったんだが……

「マルス、もうそろそろ出番だろ? 選手控室に行ったほうが良い。もうカストロ公爵も来ないだろうから大丈夫だ」

ヒュージに言われて選手控室に向かうと控室に入る前に係の者に不戦勝を言い渡された。

予想はしていたのでそのまま漫画喫茶の様な部屋に入ると、次の試合もゲンブの不戦勝という事らしく、5分も選手控室に居なかった。

すぐに部屋から出て皆の下に戻ろうとするともう全員迎えに来ており、スザクに

「とにかく急いで宿に戻ろう。レオナとエルシスに見つかると面倒そうだ」

と言われ、急いで宿に戻った。恐らくスザクがいない時の事を誰かから聞いたのだろう。

宿に戻ると風呂に入らず、昼食までの間にマッサージを俺とアイクの部屋で受けた。風呂に入らなかったのは、筋トレ日でもなく、試合もしておらず、全く汗をかいていないからだ。部屋に来ているのは【黎明】の女子と眼鏡っ子先輩だ。当然エリーはもう俺の隣で寝ている。

「クラリス、本当に大丈夫か? その気持ちの面でも……」

「ん……? 大丈夫よ? 心配してくれてありがとう」

やっぱり俺の意図は伝わっていないのかもしれない……もっと直接的に言うべきかなと思っていたら

「大丈夫よ、クラリスは。初めてではないんだし……」

眼鏡っ子先輩が俺の意図に気づいて会話に入ってきた。

え? クラリス……初めてじゃない……? まさか……クラリス……

「私がマルス以外の人を選ぶわけないじゃない! お義姉さんも言い方に気を付けてください。マルスに変な誤解されてしまうじゃないですか!?」

いきなりクラリスがマッサージ中に大声を上げて眼鏡っ子先輩の言葉を遮る。でも初めてじゃないって……

「それはエリーよ! 女の子同士でたまにそういうノリになる事もあるの! 間違ってもマルスが思っているようなことは無いからね!」

良かった……俺もエリーなら納得できる。ただそこに俺も混ぜて欲しい……いや挟まれたい。『パシン』といういい音と共にクラリスに軽く頭を叩かれる。また心が読まれてしまったらしい。

「なぁクラリス? ちょっと見せてもらいたいものがあるんだが?」

俺とクラリスのコントが終わるとアイクがクラリスにお願いをした。

「はい。何をですか?」

「今日の朝にマルスから合体魔法ラブラブヒールというのをクラリスが習得したと聞いたんだが見せてもらえないだろうか?」

アイクの言葉に眼鏡っ子先輩が良い獲物を見つけたという顔をして興味津々でクラリスの方を見ている。

アイクは別に他意を持ってクラリスに言ったわけではない。そんなことはクラリスを含めて誰もが分かっている。だが眼鏡っ子先輩は絶対に違う。眼鏡っ子先輩はこういうネタでご飯を何杯も食べられる口だ。そしてここには昨日の夜散々クラリスを弄り続けていたミーシャもいる。

昼食の時間までひたすらクラリスは眼鏡っ子先輩とミーシャの口撃を耐えることとなった。