軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第231話 旧友

あれ……? どうしてまたここに……? 起きるとまたバックヤードで寝かされていた。確かクラリスに起こされてメイド喫茶手伝ってって言われて……メイド服を着てから接客をしようとしたら金髪の……

「おねえちゃーん……大丈夫……?」

私が起きたことに気づいたのかアリスがバックヤードの中に入ってきた。アリスは私の隣に座り、寝ていた私をゆっくり起こしてくれた。

「え、ええ……久しぶりね。アリス。大きくなったわね。もう完全に私と同じ……いやそれ以上になってしまったわね」

アリスの胸は私よりも大きくなっていた。

「えへへ。毎日先輩たちに特訓してもらっているからね」

え!? 毎日!? 毎日特訓って……それに聞き捨てならないのが た(・) ち(・) ってどういう事よ! アリスはマルス一筋じゃなかったの!? いつからそんなビッチになったのよ!

「お姉ちゃん。今からマルス先輩が来るからしっかり心の準備をしてね。また倒れられちゃうと困るから……」

ちょ……さっきの話をもっと聞きたかったけど久しぶりにマルスに会えるのね。あとまた倒れちゃうって何? 私はマルスに何かされて倒れたの? は……もしかしてマルスが変な魔法を唱えて私にいたずらをしたのかしら!?

「マルス先輩! お願いします!」

アリスが扉の方に向かって言うと金髪超絶キラキライケメンが扉を開けて目の前に現れた。心臓が破裂しそうなくらいバクバクしているのが分かる。

「マルス先輩! ストップ!」

アリスが超絶キラキライケメンを扉の前で止めた。止めてくれなかったら気を失ってしまったかもしれない。それにしてもマルスがここまで成長しているとは……審美眼で鑑定してもSのままだったけど明らかに前よりも美男子になっていることは間違いない。

すると扉の向こうから女性の声がした。

「マルス、お昼休憩に行ってくるから着替えたいの。少しどいてくれる? それともマルスが着替えさせてくれる?」

赤い縁の眼鏡をかけた美女がバックヤードに入ってくるとマルスを私の方に押してきた。

「わっ! 義姉さん! ちょっと待って……」

マルスが押されて態勢を崩すと私の方に押しかかってきた。私は咄嗟に上体を倒し腕で顔を覆って仰向けになって目を瞑った。

『ドン!』

私の顔のすぐ近くにマルスの手が勢いよく突く音が聞こえた。だけど私にはなんの重さも感じない……何とうまく躱してくれたようね……全くこの体に傷がついたらドミニクが悲しむじゃない。目を開けようとすると私の隣にいたアリスが大きな声で

「目を開けちゃダメ!」

叫ぶがもう遅かった。目を開くとマルスの顔が私の顔からもう何センチという所まできていた。私の顔の両脇にはマルスの手が……マルスは腕立て伏せの体勢で私に覆いかぶさっていた。

息遣いが聞こえるしマルスの爽やかな息の香りがする。それにマルスからも相変わらずいい匂いがする。これが有名な床ドンなのね……そしてマルスと至近距離で目が合った気がした……

☆☆☆

なんとかソフィアを押しつぶさないで済んだ。

「大丈夫か? ソフィア……?」

ソフィアを見ると……俺と目が合った瞬間に気絶した。

「アリス! もしかしたらソフィアは俺をよけるために頭を打ったのかもしれない!」

俺が慌ててアリスに言うとアリスはソフィアの胸を触りながら

「いえ……多分違うので大丈夫です……頭にダメージというよりもハートにダメージを与えたのかもしれません」

ハートにダメージ? 誰がそんなことをしたんだ?

「ほら、速くどいて」

眼鏡っ子先輩がメイド服を脱ぎ俺の頭にかぶせてくる。本当に俺の目の前で着替えるつもりらしい。つもりというか脱いでいるという事はもう着替えているのであろう。

「エーディン先輩! さすがにマルス先輩の前で脱ぐのは!」

「エーディン先輩じゃないでしょ!? お義姉さん!? 分かった?」

眼鏡っ子先輩の言葉にアリスはとても嬉しそうに「はい!」と答えた。仕方ない……このままメイド服を頭にかぶされたままにしておくか。少しして着替え終わったっぽい眼鏡っ子先輩が

「どう? 私の脱ぎたてほやほやのメイド服を堪能できた? もう取っていい? もしも気に入ったのであればそのままでもいいけど?」

そうか……着替えを覗かないようにする為にもメイド服をかぶされたままにしていたが、見方によってはずっと堪能しているとも捉えられるのか……

だがメイド服を頭から取ればどうせ痴漢だなんだと言ってくるのであろう。この状況になった瞬間に俺は完全に詰んでいたのか……

結局そのあとも眼鏡っ子先輩の言葉攻めを受け続けた。アリスはもう眼鏡っ子先輩の傀儡のようになっていたので俺のフォローはしてくれない。

よっぽど義姉と呼べという言葉が嬉しかったのだろう。

ようやく兄嫁からのいじめから解放されメイド喫茶に戻ると、リーガン公爵が凄い勢いで妖精の聖水を作っていた。

リーガン公爵もしっかりとメイド服を着ている。見惚れてしまうくらいめちゃくちゃ似合っていた。

クラリスの姿はなかったので昼休憩に行ったのかもしれない。ドミニクはどこに行ったのだろうか? 警備しながら話したいことがあったし、出来ればメイド喫茶を手伝ってくれればと思ったのだが……

俺はメイド喫茶の前で警備しているエリーの所にすぐ向かった。かなり休憩時間を取ってしまったからエリーもお腹が空いているだろう。エリーの所に行くとクラリスがエリーと一緒に居た。

「あ、ようやく戻ってきた。マルス、私たち寮に戻ってご飯食べるね。エリーが私の作ったご飯がいいって言うから」

「……うん……ご飯……行ってくる……」

「ああ、ゆっくりしてきてくれ」

最近エリーはずっとクラリスの手料理を求めている。クラリスの料理はおいしいからな。しばらくメイド喫茶周辺を警戒していると闘技場の方から大歓声が聞こえてきた。少しするとクロムが闘技場から走ってきて

「マルス先輩! ブラッドとガル先輩が負けてしまいました! ですからアイク先輩を借りにきました!」

なんと!? ガルとブラッドが負けた? 俺が頷くとクロムはメイド喫茶の中に入っていき、アイクにガルとブラッドが負けた事を伝えるとアイクは嬉しそうに闘技場に走って向かっていった。

俺も行きたいけど流石に持ち場を抜けるわけにはいかない。

「おい、4人抜いた奴がいるらしいぞ!?」

「あのメンバーを抜ける奴なんているのか?」

「見に行こうぜ」

「誰だろう? もしかしたらカッコいい人かもしれないね?」

メイド喫茶に並んでいた人たちが闘技大会の噂を聞いて

闘技場の中に流れ込んでいく。

「ねぇ誰なの? 5人目まで辿り着いたのは?」

カレンがメイド服姿のまま俺に聞いてきた。

「分からない。ガル先輩とブラッドを倒したらしい。さすがに俺はここから離れるわけにはいかないしね。俺は後でアイク兄に聞くつもりだけどどうしても気になるのであれば見に行ってみてもいいんじゃないか? フレスバルド家にとっては4人抜ける人材であれば見ておきたいだろう?」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて行ってくるわね」

カレンはメイド服のまま闘技場に向かった。闘技場付近は中に入りたい者たちで長蛇の列ができていたがカレンが鞭を地面に叩きつけながら歩くと列を成していた者たちが綺麗に道を開けた。お前はモーゼか?

そして当然のように並んでいた者たちの真ん中を歩く。

俺がカレンの後姿を見送っているとクラリスとエリーが大勢の男たちを連れて戻ってきた。どうやら2人を見た男たちがぞろぞろ尾けて来たらしい。

「なんかいっぱい連れてきたようだけど……」

「うん……でもさっきよりも行列が少なくなっているからリーガン公爵的には万々歳じゃないかしら……?」

まぁ確かにそうだな……この行列に並んで15分で1人20,000円だもんな……リーガン公爵の笑いは止まらないよな……俺とクラリスが話しているとミーシャが来て

「クラリス、リーガン公爵が早く戻って来いだって……クラリスの聖水が欲しいってお客さんがかなりいるらしくて……」

「わ、分かった……すぐ行くね。じゃあまたね。マルス」

クラリスはミーシャに連れられてメイド喫茶の中に入っていく……良かった……俺は剣聖で火魔法しか使えないことにしておいて。

もしも俺が火魔法ではなくて水魔法が使えるとみんなに言っていたら、今頃リーガン公爵に蛇口のように扱われていたかもしれない。

クラリスがメイド喫茶に入っていくとすぐにまた闘技場から大歓声が沸いた。しばらくするとアイクとカレン、そしてドミニクが一緒に戻ってきた。

「ドミニクだったわよ……4人抜きしたの……」

カレンがガッカリしながら言うと

「なんでそんなにガッカリするんだよ? もっと祝ってくれてもいいじゃないか? 連戦でガル先輩とブラッドに勝てるとは思ってもみなかったんだぞ?」

「まぁいいじゃないか。ドミニクは本当に強くなっていたから驚いたぞ。さてドミニクも服を着替えてメイド喫茶を手伝ってくれ」

アイクがドミニクとカレンの2人を宥めながら言った。もう完全にドミニクとソフィアは復学したような扱いだ。

まぁ人手はいくらあってもいいからな。それにリーガン公爵も儲かるのであればOKするだろう。腕利きが近くにいるというのは心強いしな。

3人がワイワイ話しながらメイド喫茶の中に入っていくのを見届けながらエリーと一緒に警備を始めた。