軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第230話 制服

2031年11月3日 10時

「いらっしゃいませー」

「いらっしゃいませー」

メイド服を着た女性たちがおもてなしをする。朝9時にオープンしたのだが即満席。時間制限は去年の半分の15分で入場料は去年の2倍の銀貨2枚。それでも長蛇の列を作っている。

去年は抽選券方式だったが、残念殿下のせいでその方式は取らず、今年はただひたすら並んでもらう事にしたのだ。

だが去年に比べればマシだという客が多い。去年は何回抽選しても当選しなかったという人が何人もいた。アリスはどれだけの豪運を持っていたんだよ……

そしてここを訪れる男たち全員が聖水を注文する。2種類注文する者は少なかったが必ずどちらかは絶対に注文していた。クラリスとミーシャを商業的に利用したら冒険者なんて目じゃないくらいの利益が出そうなんだが……

俺はというと今はエリーと一緒にメイド喫茶の入り口で警備しながら、メイド喫茶に入場する女性たちと握手をしている。

エリーは誰とも握手はしないが俺の隣にいる事でご機嫌となっており、そのご機嫌な表情を見た男性客が喜んでいた。

そして俺とエリーは燕尾服やメイド服ではなく制服を着ている。何故かと言うとそのような服を着ていざ何かあった時に対処が出来ないからだ。

特にメイド服を着たエリーが立ち回ると絶対に男性視線を独り占めしてしまうだろう? メイド服を着ている時は絶対にショートパンツを履いてはダメだとクラリスとミーシャに口酸っぱく言われているからな。

基本は俺が外にいてアイクとバロンが中心となり女性客をもてなす。Bクラスの男子生徒も頑張って客の女性たちをもてなそうとするが、やはり人気はアイクとバロンに集中した。

もうお昼も近いからそろそろローテーションで休憩と思ったときにそいつは現れた。

俺の視界のかなり先には白い服に金色の刺繍が入った2年Sクラスの制服がちらっと見えたのだ。

顔は人に隠れてしまって見えなかったが、確実に2年Sクラスの制服だ。今Sクラスの生徒は全員メイド喫茶の中にいる。もうそこにいるのは黒髪の人攫いしかいないのである。

「エリー、怪しい奴を見かけた。俺が行ってくるからエリーはここで待機してくれ」

「……私も行く! ……マルスだけ……危険……ダメ!」

エリーは自分も行くと言ってきたが、ここの警備もあるから絶対に残るように強く言ってなんとか説得した。

エリーに伝えてからメイド喫茶内のクラリス達にもハンドサインを送った。警戒しろと。クラリスたちは笑顔を絶やすことなく俺のサインに頷いた。

俺はすぐにSクラスの制服を着た者の所に走った。するとそいつは俺が気づいた事が分かったのか、一目散に逃げた。ここで逃がすと後で誰かが危険な目にあってしまう。

俺は必死になってそいつを追いかける。

ここは特に人が多いから逃げようにもなかなか逃げる事が出来ないらしい。それに逃げる時も人にぶつかったりせず逃げようとしているから簡単に追いつくことが出来た。そいつの左手を掴んで

「貴様! 何者だ! こっちを向け!」

大声で叫ぶと男がばつが悪そうに振り向いた。

「や、やぁ……久しぶり……」

俺はその男の顔を見ると混乱してしまった。え……? なんで……? なんでお前がここに……? 男がまだ何かを言おうとしたのだが、俺は思わずその男に抱き着いてしまった。

「ちょ……マルス……みんなが見ているぞ……」

男は困ったような声で俺に言った。

「ドミニク! なんでここにいるんだ? そしてなんで逃げたんだ? 俺は2年Sクラスの制服を着た悪い奴かと思ったぞ!」

Sクラスの制服を着ていたのはドミニクだった。

「教皇様がリスター祭に行って来いと言ってくれたからソフィアと一緒に来たんだ。逃げたのは追われたから条件反射的にというのと驚かせたかったから逃げたんだ……」

「す、すまなかった……それにしても制服を着て来るとは……」

ドミニクとの抱擁を解くとドミニクが

「この制服を着ていれば入場料が無料になるかもと思ってソフィアと一緒に制服を着てきたんだが、この制服のせいで学校に入るのに時間がかかってしまって……」

「どういうことだ? 普通に入れたんじゃないのか?」

「それがここの学校のセキュリティはとんでもなくてな……何故部外者が2年と1年のSクラスの制服を着ているんだと門兵に止められてしまってな。

もちろん俺の事を覚えてくれている門兵もいたのだが、確認が取れないと中には入れられないと言われて、さっきライナー先生が門まで来てくれてようやく学校に入れたんだ。メイド喫茶に一番乗りしてみんなを驚かせようと思ったんだが……」

あー……不審者が出たと門兵に言われてライナーが向かったのか……門兵が休学の事情とかを知らされている訳がないだろうし……ドミニクと話をしていると

「ドミニク! なんで列から離れているの!? また最後尾から並びなおしじゃない! もうお昼だからこの行列では今日中にみんなと会えない……」

白色に銀色の刺繍が入った制服を着た紫色の髪の毛をした女性が両手に串焼きを持ちながらドミニクに対して文句を言おうとしたらしいが俺を見てその女性はフリーズした。

「ソフィア! 久しぶりだな!」

ソフィアに声をかけるがソフィアはフリーズしたままだ。それどころか両手に持っていた串を手から離してしまった。

俺とドミニクが心配になりソフィアの所まで行くが相変わらず何の反応もない。

俺がソフィアの肩を叩き「ソフィア、ソフィア」と呼びかけると意識を取り戻したが俺を見てすぐに卒倒してしまった。

鑑定しても特に異常は見られなかったため、ドミニクにソフィアをおぶってもらってメイド喫茶まで3人で歩いた。

エリーは険しい顔をして警備していたようだが、俺とドミニクを見てホッとしたのか警戒をすぐに解いた。

そしてエリーの隣にはアイクもいたがエリーと同様に安心した表情を見せ、メイド喫茶の中に問題ないというハンドサインを出しながら入っていった。

「エリー! 久しぶり! 相変わらずそうだな!」

ドミニクがメイド喫茶の入り口にいるエリーに話しかけると

「……うん……ドミニク……元気そうでなにより……ソフィア?……どうした?……具合が悪い?」

なんかエリーのこういう言葉って初めて聞いた気がする。

「いや、多分疲れたんだろう。そのうち起きるさ」

俺とドミニクがメイド喫茶の中に入るとSクラスの女性陣はみんな驚いていた。

本来であればもう昼休みを順番に取っているはずだったのだが、警戒しろという合図でみんな残っていたらしい。

ドミニクを見たクラリスは目に涙を浮かべている。アリスも目に涙を浮かべていたがドミニクにおぶられているソフィアを見ると、少し心配そうな表情を見せた。だが今は接客中だから誰もドミニクに対して声をかけることは出来ない。

「ドミニク、すまないがバックヤードで待っていてくれないか? これから順番に休憩をするから後で一緒に飯でも食べよう」

俺の言葉にドミニクが頷くとエリーが俺の所にやってきて

「……私……警備する……マルス休憩……」

と言ってくれた。アイクとバロンにも声をかけたのだが、この2人はお腹がいっぱいで休憩はいらないと言う。

客としてきた女性たちが手作り料理を持ってきて2人に振舞っていたのだ。料理と言っても冷めてもいいような物ばかりで2人は満足そうに食べていた。

2人は今日の営業が終わったらゆっくりとドミニクと話そうという事でそのままメイド喫茶に残って接客を続ける。

女性陣はというとミーシャはもうMP枯渇寸前だったので休ませるためにも一緒に連れて行くことにした。

ドミニクがいるからアリスにも声をかけるとアリスは嬉しそうに頷き、ソフィアはバックヤードで横にさせておいた。そのうち目覚めるだろう。

今回はBクラスもいるから、クラリスとミーシャ以外はかなり自由に休憩時間を取れるのがいいところだ。

ちなみにBクラスの男子は全員休憩なんかいらないと言っている。こんなに女性たちと話す機会があるのだから休憩なんてもったいないとの事だ。

4人でリスター祭の出店で食べ物を買い、そこら辺のフードコートのような所に腰を下ろす。

「まさかドミニクに会えると思わなかったよ」

腰を掛けていつものようにご飯を口いっぱいに頬張りながらミーシャが言うとアリスも

「来るなら先に知らせてくれればいいのに。ドミニクも姉さんもいじわるなんだから」

「すまないな。驚かせたかったんだ。だけどもっと早くリーガンに到着する予定だったんだ。本当は11月1日くらいに着くはずだったんだが、何故かカエサル公爵領に入れなくてな……遠回りしてきたら今日になってしまったんだ。それにしてもアリスはまた随分大人っぽくなったな。もう成人と言っても誰も疑わないんじゃないか?」

ドミニクがアリスの体を頭の先からつま先までじっくり見ていると、アリスが「変態」と言って恥ずかしがっていた。

やはりカエサル公爵領は厳戒態勢か……後でドミニクにも事情を説明してやらないとな。

それにしてもドミニクも強くなったな。ウピオルに止めを刺したときにレベルが上がっていたのは確認したのだが、ステータスはしっかりと見ていなかったからな。

【名前】ドミニク・アウグス

【称号】-

【身分】人族・アウグス準男爵家当主

【状態】良好

【年齢】11歳

【レベル】33

【HP】87/87

【MP】67/67

【筋力】53

【敏捷】49

【魔力】25

【器用】32

【耐久】53

【運】5

【特殊能力】剣術(Lv8/C)

【特殊能力】風魔法(Lv3/E)

【装備】クレラント

【装備】聖騎士の盾

【装備】聖騎士の鎧

【装備】守護の指輪

2つ名はブラックナイトだったはずなんだが、今はホワイトナイトだろうな。

白を基調とした聖騎士装備にクレラントというどこかの物語の主人公か!ってくらい決まっていた。

剣術もレベル8に上がっていた。バロンは剣術レベルは7だからついに抜かしたな。才能はバロンの方が上なのだが、バロンは鎖術や魔法の練習をしているのに対してドミニクは剣一筋だから仕方ない。

もっと話したかったが警備の事もあるからすぐに戻る事にした。

俺達が戻るとメイド服を着た紫色の髪の毛の女の子が出迎えてくれた……が俺の顔を見るとまた倒れてしまった。