作品タイトル不明
第229話 反応
ライナーが慌てて学食に入ってくると俺とアイクの2人を指名した。
ライナーの様子はただ事では無かったため俺とアイクは何も聞かずに急いで校長室に向かう。
校長室に入るとリーガン公爵の目は充血しており、頬には涙が流れた跡があった。
「どうかなされたのですか?」
最近アイクはリーガン公爵に対しての警戒心が無くなったようだ。心配そうにアイクがリーガン公爵に尋ねると
「ガスターが死んだようです……カエサル公爵からの早馬がつい先ほど届きまして……」
俺とアイクはびっくりして顔を見合わせた。
「どうして!? それに何故カエサル公爵から報告があったのですか? ガスターはザルカム王国に居たのではないですか?」
「ええ……ガスターはザルカム王国に居たはずです……なぜカエサル公爵がガスターの死体を発見したかと言うと……送り届けられたそうです……誰からかは不明とは言っておりましたが恐らく……ミリオルド公爵だと思います。ガスターにはミリオルド公爵を中心に諜報活動してもらっておりましたから……」
俺の質問にリーガン公爵が答える。ミリオルド公爵と言うのはA級冒険者を倒せるくらいの実力者なのか? まぁミリオルド公爵自身が倒す必要はないか……ただ本人であれ、周辺の者であれA級冒険者を殺せる実力がある者がいるという事は確かだ。
あとはカエサル公爵にどうしてガスターの死体が送り届けられたのか? だが、これは本人から直接聞くらしい。
「セレアンス公爵領にいるフレスバルド騎士団がカエサル公爵を護衛してリスター祭の期間中にリスター帝国学校にやってきます。
マルスとアイク、あなた達【暁】【紅蓮】はリスター祭中はこの学校の警備をしてもらいたいのです。
例年通りリーガン騎士団や先生方にも警備をさせますが、ガスターの件もあるので協力の方お願いします。
もちろんメイド喫茶や闘技大会には参加してください。あなた達はこのリスター帝国学校の顔なのですから」
ん? メイド喫茶、闘技大会もやって警備もするのか? 流石にそこまではやりきれないと思うが……
「警備と言っても全体を警備する必要はありません。闘技場とメイド喫茶付近を警戒してくれれば十分です。恐らくこの2か所に人が集まる事は必至だと思いますが……ライナー、ブラム、サーシャもマルスの指揮系統に組み込みます。どうですか? やってくれますか?」
「分かりました。ちなみにカエサル公爵を警護してくるのはなぜフレスバルド騎士団なのですか? カエサル公爵の騎士団は何をしているんですか?」
疑問に思った事を聞くと
「カエサル騎士団はザルカム王国の侵攻に備えると書いてありました。ですがザルカム王国がリスター連合国に攻めてくるのは考えられません。国ではなくミリオルド公爵が何らかのアクションを起こしてくるかもしれないと思っているのかもしれません。そこら辺の事情も会ってから聞こうと思いますが、カエサル公爵はミリオルド公爵と袂を分かったと私は考えております」
確かにドアーホがここにいるのにザルカム王国が攻めてくるわけないよな……まぁドアーホにどれだけの人質としての価値があるかは分からないが……
「いつカエサル公爵はリスター帝国学校に着くのですか?」
「恐らく11月5日前後だと思われます」
今から3日後か……
「ガスターがリーガン公爵から何かしらのクエストを受けていると世間は知っている物なのですか?」
「……12公爵家の中でリーガンとフレスバルドがガスターにクエストを出す傾向が高いと他の貴族たちは思っているのではないでしょうか。情報が洩れている事はないと思いますが、ガスターが動いて結果的に得をするのはいつも決まってリーガンとフレスバルドですから……」
その辺の事情を知っているものであれば報復行為は来るかもしれないという事か……
「教えて頂きありがとうございます。最後に……少し関係ない話になってしまうのですが……」
俺がメイド喫茶の聖水の件を話すと
「なんと! 1杯で銀貨1枚ですか!? ……分かりました! 私も時間がある時は聖水を作りに行きましょう!」
リーガン公爵自ら? そういえば去年もリーガン公爵自らジェットコースターを操っていたな。
「ありがとうございます。それでは僕たちはこれで……」
目の色……いや目の形がドルマークになっているリーガン公爵に告げて俺たちは校長室を出た。ガスターの死もきれいさっぱり忘れてしまったかのようだ。
俺とアイクは校長室を出るとアイクが2人で少し話がしたいという事で誰もいない2年Sクラスの教室に向かった。
「マルス、ガスターってどのくらい強かったんだ? 去年やられた時は手も足も出ない感じだったがこの前エリーはガスターよりも強いとマルスが言っていただろう? あれは本当なのか?」
「闇討ちとかなんでもありであればガスターの方が強いと思いますが、真正面から1対1で戦うのであればエリーの方が強いと思います。ガスターの戦闘スタイルはどう考えても正攻法で戦うスタイルではないと思うので」
俺の言葉にアイクは納得したようだ。
「最後にマルスはガスターをやったのはミリオルド公爵だと思うか?」
「……ミリオルド公爵という人物を良く知らないので何とも言えませんが、可能性は高いと思っております」
アイクはまた頷いた。
「僕からもいいですか? 闘技大会中にドアーホ殿下とケビンも闘技場の中にいますよね? その際は2人を絶対に見失わないようにしてください。特にケビンに関してはかなり注意深く見守って頂けると……」
「ああ……そうだな……分かった。もしかしたら2人にはメイド喫茶に行ってもらうかもしれない。選手控室よりもメイド喫茶の方が安全な気がするからな……」
俺もそれを考えてはいたのだが、あの2人が客をもてなすことが出来るだろうか? 特にドアーホは去年のリスター祭のメイド喫茶で派手にやらかした張本人だぞ?
アイクと話し終えると俺たちは学食に戻った。もう昼の時間はとっくに過ぎているが、まだ俺たちを待ってくれている可能性があるからだ。
学食に戻ると【黎明】の女性陣と眼鏡っ子先輩だけ残っていた。他のメンバーは他クラスの催し物に行っているらしい。
ガスターの件を伝えると眼鏡っ子先輩は少し怖がっていた。アイクが眼鏡っ子先輩の肩を抱き寄せると眼鏡っ子先輩は安心したようにアイクに身を寄せた。
これを見ていたミーシャがわざと震えて怖がるように見せた。わざとと分かっていても俺が後ろから抱きしめてやるとエリーとカレンも同様に震え始めた。
当然1人ずつ丁寧に抱きしめる。役得役得。次に警備の件を伝えると
「……私……ずっと外にいる……メイド服着なくて済む……」
少しホッとしたように言う。よほどメイド服を着るのが嫌なのだろう。かなり似合っていると思うんだけどなぁ……
「……着て欲しい……?」
俺の残念そうな顔を見たのかエリーが俺に聞いてきた。
「あ、ああ……エリーのメイド服姿が見られないと思うと少し残念だなと思って……でもエリーが嫌なら無理に着る必要はないよ」
「……じゃあ……今度一緒に寝るとき……着る……」
これは素直に嬉しいな。
「ねぇ……私とミーシャはMP枯渇しちゃうと思うんだけど……」
クラリスが不安そうに聞いてきたので
「リーガン公爵もメイド喫茶で妖精の聖水を作ってくれると思う。もしもリーガン公爵がメイド喫茶に来てくれるのであれば、リーガン公爵を警備する人も一緒にくるはずだから安全だと思うんだけど……」
俺はここまで言って不安になってしまった。リーガン公爵が狙われる可能性が一番高いかもしれない……そのリーガン公爵がメイド喫茶にきたら……
「大丈夫、俺はメイド喫茶と闘技場付近から離れないようにするから」
この言葉を聞いてクラリスはホッとしたようだ。今年もリスター祭を満喫できないのは残念だがみんなの安全の方が大事だからな……するとアイクも
「もちろん俺も闘技場、メイド喫茶付近から離れないぞ?」
「俺もミネルバがメイド喫茶にいるから離れるわけない」
バロンもアイクにつられて言った。
メイド喫茶の方に行ってみるとBクラスの生徒達が全員揃っていた。
Bクラスの生徒達にはガスターの事は話さなかったが、危険かもしれないという事を伝えると
「マルス君!私を守って!」
「絶対にマルス君から離れないから!」
Bクラスの女性が大挙して押しかけてきた。クラリスたちが止めようとすると
「クラリス! 俺が守ってやる!」
「エリー! 喜んで俺はエリーの盾になる」
「ミーシャ最後にデートしよう!」
「カレン様! 一度でもいいから鞭でシバいてください!」
とクラスの男子が女性陣に押し寄せる。
俺は無抵抗で女子生徒を受け入れて押し倒されるが、女性陣は男子生徒を返り討ちにしていた。
最後にカレンにシバいてくれと言ったやつだけは本当に鞭でシバいてもらえてとても嬉しそうだった。鞭で打たれていたのはカールだった……