軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

165.幻の芸人一座③

「お前ら組合員は、組合の外で暴れるなっていつも言っているだろ!ジークも!お前らパーティリーダーも!この4馬鹿はしっかり躾しておけっていつも言ってるだろ!俺の知る限り今回は過去最悪の騒動だ!こいつら一体何がしたいんだよ!」

この街の兵士長トゥリオはすんごい怒ってんなあ。このキレ具合からして兵士達も、メッチャ怒ってそうだ。ティッチがいなくて良かった。

「檻の中からこんにちは!どうも今回ベイル一座を立ち上げた座長のベイルです!」

「ジーク、こいつ処刑してもいいか?」

あれー?場を和ませる為に、敢えて道化を演じているんだけど?芸人だけに。

「暴れるこいつをお前らだけで処刑できるなら構わんぞ」

「少しは構いましょうよ。流石にこれで処刑はベイルが可哀そうですよ」

「流石シリトラ母ちゃん!背は小さくても心はでっかいぜ」

「・・・・かばう気が無くなりました。処刑に賛成です」

今、褒めたつもりなんだけどなあ。女心は難しい。

「取り合えず、意味は分からんが、どうしてこうなったかは分かった。他の連中からの話でも、先に手を出したのは、見物していた一般客と組合員達だってのは、複数の証言が得られた」

「俺達が一般人に先に手を出すわけねえだろ!俺の言った通りじゃねえか!ほら、さっさと俺達を檻から出せよ!」

「なあ、ジーク、こいつは何でこんなに態度がでかいんだ?」

「頭の悪さに比例してんだよ」

「・・・そうか、なら納得だ」

「おい、どういう意味だ?俺は常に思慮深く、慎ましやかに生きているんだぜ」

「取り合えず、こいつらから手を出してない事は分かったが、今回の騒ぎの元凶だからな。しばらく牢屋に閉じ込めておくぞ」

おーい、無視しないでくれえー。

「ずっと閉じ込めておいてくれ」

組合長、ちょっとした喧嘩で終身刑は酷くない?

「それは俺達の負担がデカすぎるし、善良な犯罪者がこいつらから悪い影響受けそうだ。一応、先に手を出していない事を考慮しても10日は牢屋に入れておく。ただし早めに釈放して欲しければ、残り日数×1万ジェリーの罰金で牢屋からだしてやる」

「シリトラー!依頼に僕は必要でしょう?」

「そうですね。でも、モレリアが出てくるまでは軽い依頼を受けておきますから、十分反省してください」

「ええええ??シリトラー!ちょっと待って!行かないで!・・・・あーあ、本当に行っちゃった。まーたシリトラ怒らせちゃった」

シリトラが姿を消した途端、さっきまでの悲痛な様子が無くなり、いつもの普通の様子に戻るモレリア。こいつ今の悲痛な叫びとか演技かよ。

「おい、クワロ。すぐに返すから10万貸してくれ」

「分かった、けど俺も今は手持ちがそこまでないからな。10日程待ってくれ。準備して持ってくる」

「おい!ふざけんなよ!それじゃ意味ねえだろ!貯金しているから金はある。すぐ返せるって言ってんだろ!おい!クワロー!クワロー!」

ゲレロも見捨てられたみたいだな。ざまあー。

「リーダー・・・あれ?いねえ?どこ行った?」

トレオンは、交渉すら無く見捨てられたみたいだ。馬鹿が!こういうのは普段からの信頼関係が大事なんだ。その点、俺を見ろ!

「組合長・・・・」

「ああ!?」

「・・・・・いえ、何でもないっす」

よく考えればこいつらの衣装で金使って一万も持って無いんだった。流石に組合長の信頼に甘える訳にはいかねえ。金の切れ目が縁の切れ目って言うしな。仕方ねえ、たった10日牢屋でゴロゴロしていればいいだけだ。我慢するか。

「気を取り直して、10日間暇だから、今日の反省会するぞ!」

「お前のそういう切り替えの早さはマジで尊敬するよ」

「そこで反省会って発想が出てくるのが凄えよ」

「流石、ベイルだね」

「なあ、ジーク、こいつマジで何なんだ?馬鹿なのか大物なのか?」

「あー、知らねえ。俺に聞くな!もう終わったんなら俺は戻るぞ。後はお前らでどうにかしろよ」

組合員とトゥリオの言い合いは無視して、俺は早速反省会を始める。

「まずはトレオン。お前、最初から全力出し過ぎ!メリハリが全くねえ!最初3個ぐらいから始めて、そこからどんどん数を増やしていくんだ。そしてたまにわざと失敗して場を盛り上げろ。そうして最終的には10個全部出来て、笑顔でフィニッシュだ」

「わざと失敗するのか?下手だって笑われるだろ?」

「ピエロは笑われるのが仕事だ!ビビってんじゃねえ!」

「いや、ビビりはしないけどよお・・・多分俺、もうちょっと数増やせるぞ?」

「馬鹿が!さっきも言っただろ!最初から全力出すなって!10個もジャグリングできる奴は、そうそういねえが、いない訳じゃねえ!多分トレオンがジャグラーとして有名になれば、真似する奴も出てくるはずだ」

「いや、そっちで有名になるつもりはねえんだけど?」

「そうなるとどっちが腕が上か、勝負になるだろう。そこでトレオンの本領発揮だ。今まで10個しかできないと勘違いしてた所に15個とかやってみろ!客が沸くぜ!」

「俺の話聞いている?・・・ってベイルはそういう所は、何で先までしっかり考えてんだ?普段からよく考えろよ」

「次はゲレロだな。お前の盾積み芸は地味なのは分かってただろ。積めたらすぐに次に行かず、もう少し観客に魅せるように気をつけろ。一つ積めたら、観客に拍手を促すとか、盾の周りをスキップで回り、嬉しさを表現するんだ。最初の方は盾も余っているから、観客から一人選んで実際にやってもらって、盾積み芸の難しさを体験してもらうのもありだな」

「だから、ベイルは普段からそれぐらい考えて行動しろよ」

「最後モレリア。モレリアも最初から全力出し過ぎ、お前の芸に失敗はないから、最後が10本指で色変えになるように途中の流れを、事前に決めておくんだ。しかも毎回同じパターンじゃなくて、その日によって途中の流れを変えるのも必要だ。その辺はもう少し考えてやっていこう」

「う、うん。分かった」

そこからは兵士に頼んで、道具返してもらって檻の中で各自練習だ。そうして練習していると、いきなりトレオンが呼ばれた。

「おい、トレオン。お前の罰金が払われたから、出ろ!」

「え?マジで?リーダーが払ってくれたのか?何で?」

「トレオン!しっかり言われた所を練習しておけよ」

戸惑いながら牢屋から出るトレオンに、注意だけはしておく。10日後すぐに合わせをやって、ボロボロになった俺達の衣装が直り次第2回目の公演だって伝えてはある。

そうすると次はゲレロが呼ばれた。

「おいおい、マジか。急な依頼でも受けたのか?」

「依頼があってもちゃんと練習はしていろよ!」

トレオンと同じように戸惑うゲレロにも、同じように注意しておく。いいなあ、俺も出して欲しいな。

そのすぐあとはモレリアだ。シリトラが迎えに来た。なんだかんだシリトラは優しいからな。こういう時、ソロの俺は誰も助けてくれねえから辛い所だ。

「モレリアもちゃんと練習しておけよ!」

シリトラと何かぼそぼそ話しているモレリアにも、同じように注意しておく。

「・・・・ああ、うん。分かった。それじゃあ、ベイル、元気でね」

「ああ?俺が10日程度、牢屋にいて病気になるとでも思ってんのか?そっちこそサボらねえで練習しろよ」

「ふふふ、分かったよ」

牢屋から出ていくモレリアは、軽く笑いながら返事をし姿を消した。当然だけど牢屋に誰もいなくなっちまったな。

・・・・

さーて、この後は流れ的に組合長かリリーが俺を呼びに来てくれるはずだ。

「おい、ベイル!10日経ったぞ、釈放だ!出ろ!」

・・・・

結局誰も俺を迎えに来なかった。何でだよ!!

「なあ、リリー酷くない?俺はずっとお前が来るの待ってたんだぜ」

「忙しいので、意味分からない事で絡んでこないで下さい」

釈放後はその足で組合に向かい、リリーに軽く愚痴を言うが、今日は忙しいみたいだ。相変わらず凄い速さで書類を処理して相手をしてもらえない。

「はあー。冷たいなあ。仕方ねえ、それじゃあ、モレリアとトレオン、ゲレロはどこにいるか分かるか?・・・あれ?そう言えば今日人少なくねえ?」

リリーにモレリア達の事を聞きながら組合を見渡すと、いつもなら依頼に行かずに、ダラダラしている駄目組合員がもっといるのに、今日は全くいねえ。何か真面目な顔で話をしている連中だけ。珍しい事もあるもんだ。

・・・・・

俺がそう聞くと、リリーは不思議そうな表情で書類から顔をあげ、しばらく俺を見つめる。そうして何か思い当たったのかポンと手を叩くと口を開いた。

「ああ、そうか。ベイルさん牢屋にいたから知らないんですね。もうすぐ戦争が始まります。その為、かなりの人がコーバスから移籍しました。今、ベイルさんが聞いたモレリアさん達3人も、既にコーバスから離れました」

「・・・・は?」

「え?リリー、今『戦争』って言った?マジで?そんな話聞いた事ねえぞ」

「前から噂はありましたよ」

いやー、聞いてねえよ。あったのそんな噂?

「この国の隣にあるディリングは知っていますよね?」

「いや、知らねえ」

「あるんですよ。そしてそのディリングを挟んだ隣に、ソルメートという国があって、少し前までその国が戦争していて、ソルメートをディリングが手伝っていました。ですが、そのソルメートが負けてしまったんです」

ふむふむ、世界情勢って奴だな。そんな話どこで聞けば教えてもらえるんだ?

「そして次はディリングと戦争になるんですが、ソルメートを手伝っていたせいで、ディリングの兵力はボロボロ。という訳でこの国・・・というより、メーバ、ハルツール、ハスリアの3国に救援要請が来たので、それに応える形で戦争になります」

「何でわざわざ助けるんだ?隣の国とかほっとけばいいじゃねえか」

「それだとディリングは確実に負けるそうです。そうなると、次は今言った3国のどれか、もしくは同時に戦争となります。領土で戦争になれば土地が荒れます。だからその前にディリングで叩いておきたいという3国の意向があるようです。あとは、そのディリングには過去に何度も3国に戦争を仕掛けてきましたから、今のうちに少しでもこちらが有利に立ちたいとか、国の上の方でも色々考えがあるんだと思います」

まあ、お偉いさんには色々考えがあるんだろう。俺には関係ねえや。コーバスで戦争が終わるのを、のんびり酒飲みながら待つだけだ。

「移籍した奴らは何しに行ったんだ?」

「それは戦争に参加する為、故郷を守る為、理由は色々あります」

そうか。って事はモレリア達も何かしらの理由で街を離れたのか。そうすると戦争が終わるまで、戻ってこねえだろうな。・・・いや、もしかして巻き込まれるのが嫌で逃げ出したとか?

「ベイルさんはどうするつもりですか?」

「俺?俺は今の所、コーバスから離れる予定はねえ。もし戦争でこの街が襲われるとかなったら逃げ出すけどな」

「そうなった時点で・・・というより今の時点で安全な国はどこにもありませんよ。メーバ、ハルツール、ハスリア、ディリング以外、私が知る周辺の国は滅ぼされてます」

「おい、おい、そいつはまた絶望的な状況じゃねえか。この周辺全てを統一間近って事か?その敵の名前は?どこの大帝国になったつもりだその国は?」

「もともとかなり遠くにあった国なので、私も最近まで知りませんでしたが、サンクガラートという名前の国です」

・・・・・・

「・・・・・・は?今、敵国の名前何て言った?」

「サンクガラートです。降伏は認めず、戦争に負ければ身分関係なく奴隷にされる・・・最低最悪な噂しか流れてこない野盗のような国だそうです」

・・・・

「・・・・あー・・・・なるほど」