軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166.サンクガラートという国

『なるほど』とか納得したかのようにリリーに言ったけど、内心めっちゃ驚いてるよ!ただ『野盗のような国』が凄いイメージピッタリだったから、そっちで驚きを打ち消された形だ。

そもそも俺の故郷からここまでめっちゃ遠いだろ。あの国から結構遠くまで逃げてきたし、数は知らないけど、結構な国が間にあったんじゃねえの?それを全部滅ぼした?嘘だろ?

あの国の騎士団は訓練なんてほとんどしねえから、クソ弱くてゴミの方がマシレベルの強さだ。逆にずる賢い事考えさせたら、マジで頭おかしいレベルで凄い事考えつくけどな。

そして平民の兵士は、そりゃあ消耗品よ。少しでも強さが貴族の目につけば、死ぬまで馬車馬の如く働かされて、無理難題押し付けられるから、強さがある一定レベル以上の兵士は全員死んでいるはずだ。だって貴族達は、どう無理難題押し付けたら死ぬかで賭け始めるからな。

あとは噂だとあの国は周りの国から、かなり嫌われていたらしい。大本営発表では鎖国しているって話だが、実際は商人すらほとんど寄り付かないそうだ。そりゃあ、他国の商人の物は早い者勝ちってクソ文化があるからな。基本、貴族に賄賂送って守ってもらわなきゃ、他国の商人はまともに商売すら出来ねえ。

国同士については、俺は詳しい事は知らねえが、他国の使者の髑髏を飾ってある部屋があるのは知っている。後は周辺国が攻め込まないのは、勝っても統治する労力を考えたら大きなマイナスだからって聞いた。確かに平民でさえクソ野郎しかいない故郷を統治するには相当な労力が必要だろう。そう考えると、現在進行形で統治している上の連中は有能って事か?いや、よく分かんねえ。

他にも色々あるが、これだけでも他国へ侵略したって言われると疑問が浮かぶ。自国の戦力はゴミだし、助けてくれる国は絶対いないからな。

「その国はそんなに強いのか?」

「装備がかなり豪華だという話は聞いています」

もう少しリリーに話を聞くと、敵は結構な数の竜装備を持っているらしい。多分、それほとんど俺が故郷で倒したやつ!

「それだけで連戦連勝で勝ちまくれるもんなのか?」

装備なんてクソでも投げたり、火を付けたりすれば、脱ぐからそこを狙えばイケるだろう。

「やはり最初は敵の装備に目がいっていたが、最近入って来た情報だと、サンクガラートって国はマジでヤバい。考え方が狂っている。人の命を何とも思ってねえ国だってのがよく分かる」

「組合長・・・」

リリーと話をしていると、たまたま通りかかった組合長が話に入って来た。そう言えばリリーも忙しいんじゃねえの?

「あの国は負けたら身分関係なく奴隷扱いされるって話は聞いただろ」

「はい。聞きました」

まあ、それぐらいは故郷ならするだろう。更に言わせてもらえば、全員処刑してない分優しいなって思う所だ。故郷も何か考え方が変わったのかな?

「文字通り全員奴隷にするんだよ、あの国は!範囲型の隷属契約魔道具なんて頭のおかしいもんをあの国は持っているらしい」

「そ、そんなものが・・・」

あー、あれ完成していたのか・・・。故郷にいた時に魔道具開発の同僚達(全員故人)が理論だけは考えてた魔道具だ。俺が逃げ出す時は開発が始まっていたけど、考えた奴らは無実の罪で処刑されたから、絶対失敗すると思ってた。

ちなみに変身型仮面の基礎を考えたのもそいつらだ。俺はそれを教えてもらっただけ。マスク型への改良も、そいつらからの講義を受けたのをヒントに考えたものだからな。

そしてみんなあまりに頭が良すぎるから、貴族が、そいつらの脳みそどうなっているか見たいとか言い出して、首チョンパならぬ頭チョンパされたんだ。マジで故郷の貴族は狂ってる。

「それで文字通り全員を奴隷にした後は、そいつらに木の棒持たせて最前線で戦わせるんだ」

「えーー。それってかなりの人数が死にますよ」

「そうだ、けど頑張って生き残れば、次に滅ぼされて奴隷となった連中が最前線で戦うから、死ぬ可能性は下がる」

要するに肉の壁作戦か。しかも誇張でもなくあの国は本気でやっているんだ。人の命なんて何も考えちゃいねえ。少しは変わったか?と思ったけど、やっぱり故郷は何も変わってねえや。

「だから最初の方に負けた国の連中はかなりの地位になっているし、ここ最近じゃ危ない目にも遭ってないだろう」

「そうすると、私達、連合軍が最初に相手をするのは・・・」

「ソルメートの連中だろう。しかも更に狂っている事に一般人でも女、子供、老人だろうと関係なく最前線に出される。嘘か本当かは知らんが、歩ければ戦いに投入するという噂がある」

組合長、その噂本当だぜ。魔物相手でもそれやっているの見た事あるし。

「それって戦力になりませんよね?」

「戦力にはならないが、相手の動きを止める事は出来る。それが狙いだろう」

「無茶苦茶じゃないですか」

「無茶苦茶なんだよ。あの国は。だからここまで勢力を拡大してきたんだ」

うん、うん、故郷は相変わらず頭狂っているな。けど俺のせいじゃないしー。出来ればあの国とは関わりたくないからな。コーバスで大人しくしておこう。

「それだけ領土拡大して、こんなにどんどん攻め込んで大丈夫なんですか?。普通ある程度攻めたら、体勢立て直しとか兵站の見直しとかありますよね?」

「リリー、言っただろう。あの国は無茶苦茶だって。国を滅ぼしても略奪して放置だ。何せ民は全員奴隷にして戦争に送っているからな。統治する必要がねえ。まあ、3国まで滅ぼしたら流石にもう攻める所もねえから、どうするかは気になるが」

「噂以上にヤバい国ですね。出来ればディリングで勝ってくれないでしょうか」

リリーのその願いは多分みんなそう思っているぜ・・。

マジで人が減ったなあ。

人の少なくなった組合にまだまだ慣れないが、一人いつものように飲んでいると、珍しくアウグが俺の机に座った。

「よお、ベイル調子はどうだ?」

「別にいつも通りだよ。お前のその顔、あんまり上手くいってなさそうだな?」

「ああ、残った連中と組んだが、まだまだ効率が悪い。別にベイルに仲間になれって話じゃあねえぞ。ソロのお前は人がいなくなってどうかなって気になっただけだ」

「俺か?俺はいつも通りだよ。あえて言えば組合戻ってきても暇だってくらいだ」

そうなんだよ。ほとんどの組合員が移籍したらしくて今は半分⋯いや三分の一ちょいしかいねえから話し相手がほとんどいねえ。顔なじみで残ってるのはアウグの立ち上げたパーティとミーカとイーパが組んだパーティと、もう一つぐらいだ。

アウグの所はメンバーの半分以上が、故郷を守るために帰ったそうだ。ゲレロの所はクワロとゲレロの2人が抜けた。そしてモレリアの所が、モレリア、シリトラ、ミルシーが抜けた。だから今はその2パーティで組んでいる。そのミーカの所が、人も多いし現コーバス最強だろう。トレオンの所は全員移籍していなくなった。

「かあー、ベイルはいいなあ。俺達はまだ訓練が必要だぜ。こういう時はソロもいいけど、故郷同士でパーティ組むのもありだな」

「そんな組み方しているパーティあったか?」

「ペコーの所がそうだったはずだ。あいつら俺と同じディリング出身だから覚えている」

へえー、ペコー達は全員ディリング出身なのか、知らなかった。

「だったらアウグもペコー達と一緒に行けば良かったじゃねえか」

「ペコー達は見た目が人だからな。あの国は『混ざり者』が生きていくには辛いんだ」

そう言ってアウグが、袖を捲って腕を見せてくれる。腕にはいくつか鱗がついている。アウグは竜人の血が入っているんだろう。けど、こんなやつ珍しくねえ。モレリアとかシリトラなんて、もろにエルフの血が入っているのが分かるしな。シリトラは更に言えばドワーフか小人族の血が入っているんだろうってのは見た目からでも分かる背の小ささだ。

「基本『混ざり者』はバレたら奴隷扱いだ。だから俺はガキの頃は結構苦労したんだ。だから今更あの国を守りたいとは思わねえ。出来れば滅べばいいとすら思っている」

おお!俺と仲間!俺も故郷は滅べばいいと思っている。出来れば俺じゃなく他の奴の手でな!故郷の連中に恨まれると、何されるか分からなくて怖いからな。

「ハイーシャとかは?」

「ハイーシャはハルツールじゃねえか?あいつらのパーティ何人か、あの国の地方都市出身って聞いたぞ。後はヒビット達はハスリアだったはず」

「意外にコーバス出身って少ねえんだな?」

「そうだな。ミーカとイーパはこの街の近くの村出身って聞いたな」

アウグって何でこんなに人の出身地に詳しいんだ?俺全然知らねえんだけど?

「新人裏試験の時に一応聞いてるからな」

そう言えばこいつら新人試験を、無償で喜んでやっている変態だったわ。

「トレオン達のパーティは、全員王都出身だから、多分王都にいるんじゃねえか?」

「俺はもう王都にはいかねえから、トレオンと今後会う事はねえな。さらばトレオン。安らかに眠れ!」

「いや、トレオン、死んでねえよ。後は『快適』と『全力』は領都かな?あそこの商人や組合員と仲いいし、元々メンバーのほとんどが領都出身だったはずだしな」

いやあ、こうやって改めて聞くと、コーバスの主力大分減ってんな。

「モレリア達は?」

「あいつらはハルツールじゃねえか?前にそこ出身だって聞いたぞ。ゲレロとクワロはハスリアだったはず。あの国は盾の扱いが上手い奴が多い国だ」

マジでアウグ何でも知っているな。こいつWIKIなの?アウィキさんなの?・・・アウィキって語呂感が悪いし、アウグの事だってすぐに分からねえから、この呼び方はなしだな。アウグーグル先生がいいな。

「そう言えば、戦争が始まるって言って、全然始まらねえんだけど?本当にやってんの?」

一応情報屋から聞いてるけど、今の所、動きはない。

「すぐに始まらねえよ。今は領主様の騎士団が王都に集まってる所なはずだ。ただ、もうそろそろだとは思うぜ」

「そんなのんびりしていて大丈夫かよ?隣の何とかって国が堕ちるぞ?」

「俺に言われてもなあ。滅べ!とかしか言えねえよ」

「おいおい、アウグ、何、物騒な事言ってんだ?一応ディリングは同盟国になったんだ。あんまり問題になりそうな事を言うな」

リリーと2人書類を抱えた組合長がタイミング良く通りかかり、アウグの不適切発言を注意する。この2人が揃って行動しているとなると、何か大きな案件がありそうだ。

「組合長。この国はディリングと同盟を結んだのか?」

「そうだ。ハスリアとハルツールも加えた4国同盟だ。詳しい契約は知らんが、今回かなりの譲歩をディリングから引き出せそうだと聞いている」

いやあ、2人には悪いが、そんな上の話とか全く興味湧かねえ。それよりも俺達の依頼の話だ。やっぱり組合員もだけど、商人達もかなり減って、依頼も激減している。さっさと今後どうなるかを聞く方が大事だ。

「組合長、そんな話よりも、依頼の話。フリー討伐依頼は無くならないですよね?」

「ああ、無くならないが、2級以上には2~3日後に強制依頼が入る予定だ。ベイルの嫌いな強制依頼だが、この国だけでなく全ての国の2級以上の組合員への依頼だから断る事も出来ない。我慢しろ」

「内容は?それによっては我慢しませんよ」

「護衛だ。この街で集めた物資を最前線へ運ぶから、その護衛になる」

「組合長、俺達も戦いに参加とかにはならねえよな?まあ、その時点で最悪な状況だろうけどな」

「戦いに参加したい連中は領都や王都に集められているから、戦う事は無え。って言いたいが無いとは言い切れねえ。アウグの心配通り、お前らが戦う事になった時点で、俺達同盟国の負けが確定だろうからな。ただ、この依頼を受けないって選択はお前らにはねえぞ。悪いがこの依頼はこの国だけじゃなくて、他の国の組合とも共通した依頼だからな。せめて俺から言えるのは、最悪戦う事になった時点で逃げろだ。そんな状況になれば国も組合も終わりだ。依頼がどうだとか言うつもりは無え」

組合長の様子から、国も組合も追いつめられている感じだなあ。

「おい、ベイルはどうすんだ?」

組合長とリリーが去った後、アウグがこれからどうするのか聞いてくる。俺にはもう選択肢がねえから答えは一つだ。

「その護衛任務受けるしかねえだろ」

強制依頼は好きじゃねえけど、全員強制なら仕方ねえ。あ?俺が故郷倒せ?そんな面倒な事やってられるかあ。あの国には極力関わりたくねえんだよ。

「ベイルなら領都や王都行って戦争に参加すると思ってたんだが?」

「アウグ、良く考えろ。そうやって軍の一部に組み込まれたら、上から命令され続けるんだぞ。強制されるのが嫌いな俺が耐えれるわけねえ。上官ぶん殴って終わりだ」

「終わらすなよ。・・・・けどまあベイルならそうなる未来しか見えねえな。お前に軍は似合わねえな。一人で好き勝手やっている方が一番マシか」

「へへへ、お褒めの言葉ありがとうよ」

「いや、褒めてねえよ。さて、付き合わせて悪かったな。今からミーカ達にも話聞きに行くが、ベイルも来るか?」

「行かねえ。聞いた所で俺には関係ねえから、興味がねえ」

そう言うと、アウグは呆れたように笑いながら、席を立った。そのついでに俺にエール奢ってくれた。アウグ、マジ良い奴。こんな良い奴を肥溜め系組合員とか言ってた奴は誰だ!