軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

163.幻の芸人一座①

「おい聞いたか?よくわかんねえ爺が例の依頼無事達成した証明書持ってきたんだって」

「何だ?よく分かんねえ爺って?爺はジジイだろ?」

「いや、それが何か空飛ぶ爺らしくてよ」

「空?またかよ。空飛ぶの流行ってんのか?」

「まあ、最近よく出るから流行ってんじゃねえの?」

「だったら俺にもその流行りにのせろよ。空の飛び方教えてくれ」

「いや、そっちよりも依頼無事達成したって方が大事だろ?」

「おお。例のウイスキーの依頼か?アレって騙されたんじゃねえの?」

「いやどうも騙しじゃなかったらしい。大量の樽が運び込まれたから、多分今日あたり配られるはずだ」

周りの連中の話に聞き耳立てながら俺はニヤリと笑う。竜共は俺の依頼をしっかり聞いてくれたらしい。赤竜のジジイが組合に来た時は、俺まだ宿で寝てたから持ってきた事は後で噂で知ったんだ。

今頃は、俺達を騙そうとしたクソ貴族は悔しがっているだろう。いやあ酒が美味いぜ。

「筆頭が一人ジェリーしながら、ニヤついてるんだけど」

「やめとけ。筆頭に関わるなって言われてんだろ」

よーし。そんな事言ってる奴は誰だ?ぶん殴ってやらねえとな。

そう思って動こうとする前に組合長が姿を見せた。また何か発表するみたいだ。多分さっきから話題に上がっている追加報酬の件だろう。

「今から何か発表があるみたいだね」

そんな事を言いながら俺の机に座ってきたのはモレリア。いいタイミングで来たな。

「よお。モレリア。丁度良い所で戻ってきやがったな」

「僕だけじゃないよ。ゲレロもトレオンも来たみたいだね」

言われて見れば、ジョッキ片手にこっちに歩いてくる、人相悪そうなハゲとチンピラが見える。

「お前らもいいタイミングで来たな。今から発表があるみたいだぞ」

「みんな話している追加報酬の件だろ?」

「俺は娼館で、樽が大量に運ばれるのを見たって聞いたな」

「依頼達成の紙を持った赤髪のお爺さんが来たのは昨日だよ。それなのに今日ウイスキーが届くのはおかしくない?」

言われて見ればそうだな。こんな早い訳がねえ。少なくとも領都に報告行って、ウイスキー準備してもらって運ぶ必要がある。それだけでも結構な日数かかるのに、たった1日で届くっておかしくねえ?竜共?・・・いや、あいつらが意味無く助ける訳ねえよな。

・・・・・

俺が分かっても分からなくてもウイスキーは届いているみたいだし、貰えるんならどうでもいいか。

「別にどうでもいいんだよ。俺らが考えても意味ねえ。くれるってんなら貰って飲んでおしまい。後の謎は全部組合長が解いてくれるさ」

「ええー。気にならない?なんか怖くない?」

「だったら、モレリアの分のウイスキーは俺が貰っておいてやるよ」

「何でそうなるのさ。あげる訳ないでしょう」

「ああ!お前ら黙れ!今から始まるぞ」

チッ!トレオン邪魔!今の会話で上手い事行けば、モレリアからウイスキー巻き上げられたかもしれなかったのによお。でも、まあ黙らねえと組合長から強制的に黙らされるからな。続きは終わってからにしよう。

「てめえら!この間の露払いの依頼ご苦労だった。領主様も旧ボートレット領都まで無傷で辿り着いたと報告があった!そして今日追加報酬のウイスキーが届いた!これから追加報酬の支払いを行う。各パーティのリーダーはリリーの前に並べ」

「よっしゃー!」

「ほら!リーダーさっさと並べ!」

「おっせえんだよ!リーダー!ベイルとトラス見てみろ!あいつらもう並んでいるぞ。少しはあいつら見習え!・・・・・いや、やっぱり見習わなくていいや」

「あいつらソロだから樽3つ貰えるんだぜ、ズルくねえか?」

ズルくはねえだろ。これはそういう依頼だってのに。けど、こういう事はよく言われるからな。その時の対応はこう。

「だったら普段からお前もソロでやってみろ!出来ねえんだったら文句言うんじゃねえよ!小物くせえぞ!」

「ぐうううううう!!ちくしょー!!」

ハハハ、正論でぶん殴るのは気分がいいぜ。今日のウイスキーもまた極上の味がするだろうな。・・・おっと、涎が・・・。

「はあー。何でそうやっていつも憎まれ口叩くんですか?」

呆れたように受付に座るリリーが言ってくるが、それは違う。今のは醜い嫉妬心を出したこいつらが悪いんだ。

「こいつらの心が醜いからだ。俺はそれを映す鏡。だからこいつらの自業自得だ」

「それならベイルさんを映す鏡は・・・いえ、いいです。それでは報酬をお配りします。選択肢としては3つ。持って帰るか、組合に預けておくか、そのまま売り払うかです。どうしますか?」

「ソロで宿暮らしの俺が持って帰るなんてない、更に売るなんてもっての他だ!当然組合に預けて飲みたい時に飲む一択だ!」

宿に置いておいたら、ここのハイエナ共が俺の不在時に盗みに来るだろうからな。そう宣言してリリーに手続きをしてもらい、樽のある所まで歩くと、

「チッ!まさかそっちで動くとは思ってなかったぜ。だが、次はねえ」

・・・・・??でかい独り言が聞こえてきたので、ふと見ると組合長が俺の方を見ていた。後ろのトラスに言っているのかな?と思ってトラスを先に行かせると、トラス君を目で追わない。明らか俺の方見ている。あ!アウグだ!ちょっと視線遮ってくれ!

「ベイル、お前近えよ!寄ってくんじゃねえ!」

歩幅を合わせて3番目のアウグと歩くと、目でしっかりアウグを追ってくる。ピタッと俺だけ止まると、組合長の視線はアウグを追わず、俺を見ている。

・・・・・

ええええ??組合長、今の独り言俺に言ったの?何で?俺何かした?してないよな?まさか絡んで俺からウイスキー奪おうとか考えてる?流石に今回は奪われる訳にはいかねえぞ。こういう時は目を合わせないように小動物になったつもりで小さく生きていこう。

「ははは!ウイスキーが美味え!あれ?君たちエールなの?何で?今日ウイスキー貰ったのに何で飲んでないの?」

「おい!この鬱陶しいのどうにかしろペコー」

「ふざけんな、ハイーシャがどうにかしろ!」

やっぱりパーティ組んでいる連中は駄目だな。こういう時に素早く判断できねえから動きが遅い。まずはパーティメンバーが集まってからじゃないと何も決まらねえ。だから、こうやって俺が飲むウイスキーを羨ましそうに見るはめになるんだ。

大声で色んな奴らに絡みながら飲むと、みんなの突き刺す視線がスパイスになってウイスキーが更に美味え。それにムカついて殴りかかってきたアウグやヒビット達馬鹿どもは、今や床の模様だ。既にゲレロは俺の手のウチで、シリトラはパーティメンバーとハウスに樽持って帰った。残った連中じゃ俺に挑んでも勝てねえのを悟っているんだろう。ペコーやハイーシャのように、俺が煽っても拳を震わせつつ我慢している姿が余計に酒を美味くする。

「分かってはいたけど、お前性格悪すぎだろ」

「流石にアウグ達が可哀そうだろ」

「うるせえ!殴りかかってくる方が悪いんだ!」

「その原因作った方が悪いと、流石の僕も思うけどなあ」

「おう、何だ何だ?俺が悪いってか?だったらお前らにはもうウイスキーやらねえぞ」

・・・・

「まあ、挑発に乗る方が悪いな」

「アウグ達の自業自得だ」

「やっぱり暴力は駄目だよね」

ふん、こいつらもウイスキーの前には意見を簡単に翻す。ウイスキー様は偉大だ。

こいつらは流石に俺の事をよく知っているから、力じゃなくて搦め手でウイスキー勝負してきて勝ったから飲ませている。ゲレロはジェリー勝負。俺は『待った』3回まで使えるハンデ付きだったけど、あっさり負けた。ゲレロには最近マジで勝てねえ。トレオンはコイントスの裏表勝負。俺が投げたから負けても文句は言えなかった。モレリアとは・・・あれ?こいつ何で飲んでるの?勝負すらしてねえよな?っていうかシリトラこいつも一緒に連れて帰れよ。

「モレリア、お前何で飲ん・・・」

「ほら、ベイル、お代わりだよ。今日は遠慮せずどんどん飲んでいいんだよ」

「馬鹿野郎!これは俺のウイスキーだ!遠慮なんかしねえ!ガンガン飲むに決まってんだろ!」

モレリアから渡されたジョッキをひったくる様に奪い、グビグビ飲む。いやあ、美味い。

「それで、てめえは・・・」

「そう言えば僕たちに何かお願いがあるんだって?」

「・・・あれ?あったか?・・・そう言えば何か頼もうと・・・そうだ!お前らは俺が見込んだ天才だ!俺と一緒に大道芸を極めよう!既に衣装も発注済だ」

「・・・・えっと、大道芸?」

「組合員だぞ俺ら?大道芸人目指してねえよ」

「衣装発注済みって・・・断られたらどうするつもりだったんだ?」

大丈夫だ、ゲレロには衣装はねえ。

「ゲレロは脱いでもらう方だから心配はいらねえ」

「おい、いきなり最大限の心配事が発生したんだけど大丈夫か」

「大丈夫だ。俺に任せておけば、何もかも上手くいく」

「いった試しがねえよな?」

うるせえ!今回の計画は完璧なんだよ!

「ゲレロ、どうせ碌でもねえ話だとは思うが、取り合えず聞くだけ聞いてみようぜ」

「そ、そうだな。こいつは何考えているか分からねえから、事前に話聞いとかないとな」

「あー、うん。ベイル関係はシリトラ壊れるからなあ・・・」

何、みんな小声でぶつぶつ言ってんだ?言いたい事があればはっきり言え!

「取り合えず衣装の準備が出来たら、また連絡する。それまでゲレロは、あの盾を積み上げる地味な芸の練習!トレオンはジャグリングだ!お手玉を10個は発注してあるから、それまで小石10個使って練習しておけ!モレリアは指先から出す魔力を更に大きくして、後ろの観客にもよく見えるように更に練習だ!」

「まあ、言っている事は普通だな」

「別に無茶しようとしている訳じゃないな」

「まあ、それぐらいなら、ウイスキー貰ったし協力してあげるよ」

よし、この反応ならこいつら協力してくれそうだ。これでダメだって言われたら、『ケツ拭かずアウグ』のメンバー加入も検討しなくちゃいけねえ。アウグの下半身丸出し芸は、流石に兵士に捕まる・・・使えても5回が限度だ。それ以上はアウグが街から追放か奴隷落ちだ。そう何回も使えねえ芸に頼るのは、後で俺達ベイル一座が困る。後は『排尿ハイーシャ』が候補だが、こいつも回数制限ある芸持ちだからな。出来れば加入は見送りたい所だ。後は『パンツ芸人トラス』か・・・トラスの芸はまだ時代が追い付いてない。もう少し時代が進んでからだな。トラスの加入は。

そして迎えたベイル一座旗揚げの日

「てめえら!そこで少しは反省してろ!ったく、組合の外で暴れんじゃねえよ」

「モレリア、一般人に手を出すのは駄目だって言ってるでしょう」

「ゲレロ、人を投げる時は周りをよく見ろと言っているだろ」

「はあー、何やっているのさ、トレオン」

鉄格子の向こうには各パーティリーダーと組合長という豪華面子。呆れたりキレたりしているが、その中で一番キレているのが、この街の兵士長トゥリオだった。

「お前ら組合員は組合の外で暴れるなっていつも言っているだろ!ジークも!お前らパーティリーダーも!この4馬鹿はしっかり躾しておけっていつも言ってるだろ!俺の知る限り今回は、組合員が起こした中でも過去最悪の騒動だ!こいつら一体何がしたいんだよ!」

・・・・・

えーっと、ベイル一座の旗揚げ?