軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

157.こん棒探し③

「ベイル!てめえ!何度騒ぎ起こせば気が済むんだ!」

急ぎニシアが街に報告に行って、翌日やって来たのは我らが組合長。これで事件は一件落着だと安心したのも束の間、何故か着いた途端、組合長は走ってきて俺の首を絞めつけてきた。

「ぐええええ。お、俺じゃないです。始めたのはトレオンです。俺は巻き込まれただけ・・・」

「ベイル!嘘吐くんじゃねえ!ジロウ達は俺とニシアの言う事聞かねえだろ。全部お前がやった事だ!俺達を巻き込むな!」

トレオン君はあっさりと俺を裏切りやがった。こいつとはもう友達でも何でもねえ。今度こいつをボールにしてジロウ達とサッカーしてやる!

「ニシアから報告聞いているから嘘はいらねえんだよ!お前は今度はコーバスで一体何がしたいんだ!」

「な、何もやりたくないです。あ、敢えて言えば酒飲みてえ・・・グハッ!!」

真面目に答えたのに組合長にぶん殴られた。何でええ?気絶はしなかったから手加減してくれたみたいだけど、それでも痛いもんは痛い。

「分かっちゃいたが、真面目に答えるつもりはねえみたいだな」

「真面目に答えたつもりだけど??今度はコーバス??組合長は何言ってるんですか?」

「惚ける気か!だったら教えてやる!てめえのせいで今王都は大騒動だ!始まりはお前とカルガーが人攫いの拠点を見つけた事だ!」

・・・・・・

ええっと。説明されてようやく理解した。取り合えず俺達が人攫いの巣を見つけた事が、大騒動の始まりだったらしい。・・・・・いや、何でそんな芋づる式に悪い連中が釣りあげられるの?偶然だって言ってんのに、お前の狙いは何だ!とか詰め寄ってくる組合長。狙いなんてねえよ!そんなの狙って出来る奴がいたら見てみてえわ!

そして、よく分かんねえけど貴族も捕まったらしいから、全てカルガーに擦り付けておいて正解だったわ。あの時カルガーに擦り付けた俺を褒めてやりたいぜ。っていうか人攫いの巣なんて終わった話だからすっかり忘れてたぜ。

「取り合えずサイクロプスの死体まで案内しろ」

説明している最中に怒りが湧いてきたのか、もう一発組合長に殴られた後は、首根っこ掴まれてサイクロプスの死体まで道案内だ。面倒くせえ。

「ハハハハハ、お前まーた組合長に怒られてやんの!」

「ああ?アウグが何でここにいるんだよ」

「緊急依頼だ。サイクロプスの死体運びのな。俺らはその護衛」

鬱陶しい事にアウグ達まで一緒に来てやがるが、3級はそれだけで他は2級ばっかりだ。まあ、死体運びだけだしな。

「やっぱり、あるよなあー。報告が嘘ならどれだけ良かったか。嫌だなー」

サイクロプスの死体を見た組合長が手を頭に当てて軽く振る。

「そんなに嫌なら見なかった事にしましょうよ!今日俺達はここにいなかった。今日の事は忘れろー。忘れろーワスレロー!はい!忘れた!・・・グベエ」

催眠術かける感じで組合長に提案したけど、拳で却下されたよ。暴力反対!

「それでベイル。このサイクロプスはどうすんだ?お前が討伐した事にするのか?」

「いや、流石にこいつはジロウ達が倒して、俺は何一つしてないですからね。それで報酬寄越せとか、そんなアウグみたいに腫れ上がった面の皮してないですよ」

「おい!ベイル!てめえ俺に喧嘩売ってんのか!大体、アシッドスライムで何一つ貢献してねえのに、報酬貰おうとしてたベイルの方が図々しだろ!」

「ああ、嫌だ。いつまでも過去の事をウダウダと、小せえ、小せえ。俺みたいにどーんと報酬も手柄もいらねえぐらい言えねえのか?ああ?」

「よーし、てめえ今言った事忘れんなよ!今回サイクロプス倒したのにベイルは全く関係ないからな!金も手柄も無しって事だな」

・・・・・・

「えーっと、金だけはちょーだい?」

「ふざけんな!てめえたった今なんて言った!もうひっくり返すのかよ」

「バカヤロー!てめえらだけ金貰えるなんてズルいじゃねえか!俺にもくれよ。手柄は要らねえからいいだろ!」

「うるせええ!てめえら黙ってろ!まずはこれを組合に運べ!話はその後だ!」

「そうだ、組合長。俺らの拠点にあったヘンな魔物の木ですけど、ゴドリックにお土産で持って行っていいですか?珍しい魔物みたいなんで、ゴドリック喜ぶと思うんですよ」

「『スイングツリー』か。珍しいが別に危険な魔物じゃねえ。持って行ってもいいが、ちゃんと塀の中で飼うなら許可してやる」

許可貰えたーって事で、スイングツリーをズリズリ引き摺りながら、組合長たちと街に戻った。途中北村によって、スイングツリーは塀の中に投げ込んでおいたから大丈夫だろう。

そして今からお待ちかねの報酬ターイム!

のはずだったんだが・・・・

「ゴドリックが王都から戻ってこねえと、報酬どうするか決められねえ。それまでお預けだ」

むうう。とんだ肩透かしだ。取り合えずゴドリックが戻ってきたら、俺がどれだけジロウ達の面倒見たかアピールして、報酬をたくさん分けてもらおう。手柄?そいつは全部ゴドリックに押し付ける。これで俺は金だけゲットできるはず。完璧な作戦だ!ハハハハハ。

◇少し前のとある日のコーバスの街道

「ゴブ一じゃねえか!一緒にいるのはジロウか?いやー。分かんねえ。何でベイル達は見分けがつくんだ?」

「アウグ見ろ。首の布の所に4が書いてあるからこいつはシロウだ」

「そう言えば、分かんなかったら布見ろって言われてたな。そいつはまあいいとして、ゴブ一達今日も大量だな」

シロウの背中には見慣れない装備をした組合員が4人、意識を失い運ばれている。そして一人だけ手枷を嵌められてゴブ一に引かれている組合員がいる。ジロウ達を連れ去ろうとして返り討ちに遭う他所の街の組合員は珍しくないので、この5人もそれなのだろうとアウグ達は判断した。

「しかし毎回何でゴブ一は尻尾と耳つけるんだ?手枷と口枷だけでいいだろう」

引かれている組合員は動物の耳が装着され、それは口枷に繋がっている。尻尾は本来であればそこから伸びた足枷を嵌めるのだが、そうすると、歩けなくなるので、今は足枷はブラブラと揺れている。

「ベイルはこの状態を『中途半端な摩訶不思議組合員』とか言ってたけど、詳しく聞く気にもならなかったぜ」

「聞かねえほうがいいだろう。どうせ何も考えてねえよ。それよりもこいつだ。どこのどいつだ?」

そう言ってアウグ達はゴブ一に引かれている組合員に近づき、下から睨みつけるように顔を近づける。他の仲間はパシ、パシっと武器を手に当てたり、武器で肩をトントン叩いたりしている。その様子をゴブ一はただ黙って見つめている。

「サールドの4級かよ。隣領から処刑か奴隷落ちになりにくるとは、ご苦労なこった」

ゴブ一もシロウも貴族紋の布を身に着けているから、攻撃を加えれば貴族に喧嘩を売った事になる。この為、わざわざコーバスまで来たのに、返り討ちにあったこの組合員達は、処刑か奴隷落ち確定となる。

「おい、ゴブ一。こいつらから財布奪ったか?」

「ギャギャ!!」

アウグの問いにゴブ一が奪った財布を取り出したのを見て、アウグが嫌らしく笑う。

「ゴブ一はまだまだ甘いな。組合員ってのは万が一の為に財布は分けている奴が多い。で、ここからは俺の経験則だが、こいつは分けてる奴だ。おい!てめえちょっとジャンプしろ!」

手枷を嵌められた組合員を、アウグは軽く蹴りつけてジャンプするように命令する。

組合員はアウグの命令に素直に従いジャンプすると、チャリと音が鳴る。

「ゴブ一聞こえたか?こうやって見つけるんだ。ほらよ。こいつはお前のものだ」

組合員の体を漁って見つけたもう一つの財布を、アウグはゴブ一に投げて渡す。

「今度から見逃すなよ。こういうのはベイルは怒るからな」

「だな。あいつは金が大好きでたまらねえからな。俺らもだけどな!ぎゃははは」

下品に笑うアウグ達を観察するかのように、黙ってジッっと見ているゴブ一であった。

「おい。てめえら、ベイルがまた騒ぎ起こした 。そして手柄を譲るのは王都と同じ手だ。恐らくコーバスでも何か起こるぞ。しっかり警戒してろよ」

「その前に、組合長、リーダーは戻ってこねえのか?」

話を聞いていたトレオンが手を挙げて質問する。その質問にジークは首を振って答える。

「王都でクラン4つが消えたからな。ロッシュはしばらく王都で活動する事になったから戻ってくるのをあてにするな。ただ、落ち着けば戻ってくるから、それまでは他の連中には上手く誤魔化しておけ。元々あいつはあんまり組合に姿を見せねえから出来るだろ」

「まあ、出来るけどよ。それまではニシアが外を見張るのか?」

トレオンの問いにまたジークは首を振って答える。

「ロッシュからの指示だ。これからは今まで手薄だった商業ギルドを調べる。その為のニシアだ。トレオン達は引き続き、賭場と街の噂、職人から情報を集めろ。これまでの情報から『ドルーフおじさん』の関係者は街の中に潜伏している可能性が高い」

「ふむ。まあ、そうじゃなあ」

「異論はない」

「という事は私が期待されているって事ですね」

ジークの言葉に頷く三人だが、トレオンだけは首を振った。

「その前にニシアはベイルに慣れろ。あいつのハチャメチャな行動も計算のうちだと考えて行動しろ・・・・俺も出来てねえけど・・・・大体よー。ベイルは本当に考えて行動してんのか?一緒にいると行き当たりばったりの行動にしか見えねえぞ」

・・・・・

トレオンの言葉に何とも言えない顔をする面々。

「お前らに言っておいてアレだけど、実は俺もあんまりベイルが怪しいとは思えねえんだ。いや!怪しい!あの馬鹿力は怪しいぞ。けど、そこ以外は、あいつは貴族嫌いの意地汚い普通の組合員なんだ。王都の事も少し前なら、『あいつは大人しく出来ねえのか?』で終わっていただろう。ロッシュがいない今なら言えるが、正直俺も少し迷っている。サイクロプスの件でベイルと話してみたが、やっぱりこいつ何も考えてねえんじゃねえ?って思う言動の数々だ。ロッシュみたいにそれすら演技だなんて思えなくなっちまった」

ジークの言葉に全員が押し黙る。来たばかりのニシア以外は組合長の意見に同意する所があるんだろう、眉間に皺を寄せて考えている。

「じゃが、怪しいのも事実じゃ」

「ユルビルの言う事も尤もだ。組合長、この件で見極めるのはどうだ?これで大騒ぎがあればベイルはクロ、無ければシロとする」

マーティンからの提案を受けて、頭を抱えてしばらく考えていたジークだったが、

「取り合えず今はベイルはクロとして行動しろ。この迷いこそベイルの狙いかもしれねえ。明らかにシロ臭くても誘いかもしれねえから、全員警戒を緩めるな!他で騒ぎがあってもベイルは必ず見張っておけ!王都の二の舞になる」

「それと、ベイルがアーリット達のクラン名に反応したのは組合長はどう考えておる?」

「『黒竜の主』か・・・そこなんだよ。そこがまた分からねえ。何であそこで反応した?マーティンは分かるか?」

「分からん。ベイルの考えは本当に読めん」

「マーティン教官でもですか・・・・」

「ニシア、今は同じ任務を請け負う仲間じゃ、教官はやめじゃ」

「分かりました。ユル・・・ビルさん」

「アレも本当は考え無しで反応したとか・・・いや、取り合えず、この件で考えるのやめようぜ。また議論が戻っちまう。さっきも言ったようにこれからの騒ぎでベイルがシロかクロか判断しようぜ」

「はあー。またコーバスか」

このクソ忙しい時に緊急で届けられたダンオムからの手紙なんて読むんじゃなかった。またコーバスがやらかした。

今度はサイクロプスかあー。

・・・・・

いや、サイクロプスって何だ!サイクロプスって!それはクランで相手する魔物だろ!何でコーバスで倒してるんだ!っていうよりジロウ達・・・我がクライムズ家の紋章の装着を許可したウルフ達で倒したってどういう事だ?貴族としては嬉しい限りだが、それは平時の事、こんな忙しい時にそんな大事を起こされても対応出来ん!!

「サイクロプスとはまた凄いですね」

「フフフ、流石はコーバスですわ」

・・・・

マークテックの反応は分かるが、ティガレット嬢の含みのある言い方は何だ?何か知っているのか?

「ティガレット嬢・・・いや、ティーはコーバスを何か知っているのかい?」

「大した事ではありませんわ、お義父様。一度コーバスを訪れた事を思い出しただけです。あそこはアーリット達を鍛えた街ですから、中々ユニークな方々がいましたの」

そう言うと、思い出したのかフフフと口に手を当てて笑う。

ユニークねえ。ダンオムからの報告では組合長のジークがいなくなれば、途端に街を占領して、ならず者国家を立ち上げそうな連中ばかりと聞いている。まあ、ある意味ユニークだな。

取り合えず今は、ボートレット派閥が消えて、ようやく同盟国と歩調を合わせる事が決まった。ボートレットがハスリアとハルツールより先に、ディリングへの救援を出すべきと言い張っていたのも、今なら分かる。あいつはディリングとズブズブの関係だった。

そうしてようやく王都の方が落ち着いたので、今度は陛下より今回の褒賞として与えられた旧ボートレット領の対応だ。本当ならサファガリア家に与えられるはずだったが、サファガリア伯が殺され、自領の立て直しを優先するとの事でこちらに回ってきた。

噂では新サファガリア伯となったティーの兄と陛下との間で話し合いの場が設けられたらしい。そして裏でティーが暗躍していたとの噂もな!もう彼女が旧ボートレット領を統治すれば良いんじゃないかな?

取り合えず先にダンオムの報告か。色々気になるが、今はコーバスに拘っている場合ではない。息子に任せよう。

「コーバスについては、マークテックが対応・・・」

「お義父様!私が!コーバスなら一度訪れた街ですし私が対応したいですわ」

・・・・何で?アーリット達はもういないよ。ああ、聞いていないだけで、他にも馴染の人でもいるのか。けれども流石にあの街をティーに任せる訳にはいかない。あの街は私でも手に余るからな。

「お義父様!判断するのは少しお待ちください!お義父様は今度、旧ボートレット領に向かわれますよね?それに先んじてコーバス組合員に旧ボートレット領都までの道中の露払いを行わせては如何でしょうか?」

「露払い?」

「聞けば、旧ボートレット領内の治安は最悪。貴族だろうが襲う輩もいるそうです。そんな状況なので、騎士団がお義父様を守ってくれると言っても、道中襲われたら到着まで時間がかかります。更に騎士団はお義父様が旧ボートレット領都に滞在中の護衛もあります。道中で疲弊させるのは得策とは言えません」

うむ。確かにティーの言う事は尤もだ。騎士団は私を守るために命を懸けるのが仕事だが、出来れば死んでほしくはない。

「そこでコーバスです。治安最悪の旧ボートレット領に、今や我が国最低最悪と言われるコーバス組合員を解き放つのです!恐らく野盗如きコーバス組合員が根絶やしにしてくれるでしょう」

うーん。ティーの言う通りにすれば、確かに根絶やしにはしてくれそうだ。けど、それ以上のトラブルが起きそうな気がする。

「そう言えば、縄張りの問題はどうするつもりだ?組合員は縄張りにうるさいと聞くぞ」

「護衛依頼の道中等で野盗と遭遇した場合は、討伐しても良いとアーリット達から聞きましたの。それなら、たまたまコーバスの組合員が遭遇して倒しても問題ありませんわ。まあ、コーバスにはちょっと鼻が効く番犬がいますけど・・・ホホホ」

要するにゴドリックが飼っているウルフ?を使えと・・。それはいいが、流石に縄張りの件は色々苦情がありそうだが・・・・

「後はコーバスの組合長のジークに頼めば問題ありませんわ。泣く子でさえ殴りつけるコーバス組合員をまとめているんですもの、他の組合との調整なんてジークにとっては大した問題にはなりませんわ。こちらは報酬さえしっかり出せれば問題ありません」

「だが、連中が真面目に働いてくれると思うか?」

「ジークが組合長の間は問題ないとカルガー達からも聞きましたの。コーバスの組合員は、報酬に納得して依頼を受けたら、真面目に働くように躾されているそうです」

躾って・・・犬かな?いやコーバス組合員は犬より躾けるのが大変そうだ。

「父上。コーバスについては、ティーに任せてみてもいいのでは?」

おっと、そう言えばマークテックにコーバスを任せようと思っていたのに、いつの間にかティーとの話になっていた。けど、ここまで来たらティーに任せてみてもいいか。何やら考えがあるみたいだし。

「分かった。ティーにコーバスの事は任せる。マークテックは何かあればフォローするように。それでティーはコーバスに向かうのか?」

「いいえ、私は領都から指示を出します」

うん?行かないのか?話の流れ的に向かうと思ったが、意外だ。

「フフフ、あのお方との約束ですもの。『三猿』ですので、私がコーバスに向かう訳にはいきませんの。『三樽』で私のメッセージに気付いてもらえるでしょうか?・・・いいえ、あの方なら、きっと気付いて依頼を受けてくれますわ。あの方が受けてくれるなら、お義父様も安心ですわね」

何が楽しいのか、口元を押さえてブツブツ呟くティーに少し不安が残るが、今はボートレット領に向かうのが優先だ。