軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

156.こん棒探し②

翌朝、俺・・・いや、俺達は目の前の光景に絶句した。

「・・・えーっと。取り合えずこれは良いこん棒じゃねえか。ついている腕からオーガのだな」

ジロウ達が拾ってきたこん棒を手に取り、マジマジと眺める。たまに素振りして重さや感触を確かめてみるが、文句はない。こいつがこれからの俺のメイン武器だ。

「おい、ベイル!見ないふりしてんじゃねえ!」

「よーし、ジロウ、サブロウ、シロウ、お前らは良い子だ。ほらー。わしゃわしゃー!ゴブ一も良い子だ。よしよし。お前ら頑張ってくれたおかけで、俺のメイン武器探しは終わりだ。それじゃあ、街に帰るか」

「おーい。ベイルさーん。流石に気付かないふりは無理がありますよー。ジロウ達も頑張って集めたんですよ」

・・・・・言われて見ればそうか。そうだな。頑張ったジロウ達に各こん棒について評価は伝えておこう。

「あー、このこん棒はゴブリンが使ってたやつか。これはちょーっと細すぎて使えねえ。こいつはオークのかあ、これも結構古そうだから、すぐに壊れそうだ。これは・・・ちょっと大きい単眼ゴブリンのこん棒だな。流石に大きすぎるぞー。それでこの木は・・・何だ?普通の木か?これ切ってこん棒作れって事?」

分かってる。ニシア。分かっているよ。気付いてねえわけねえだろ。でも見ない振りしたいんだよ。察しろ!俺を見るな!

「お前、この腕のでかさで単眼ゴブリンは流石に無理あるだろ」

「この腕、結構ごつ目の人ぐらいありますね。・・・・肘から先だけで・・・」

「お前ら!やめろ!おかしなこと言うな!こいつはちょっと大きい単眼ゴブリンの腕だ!それでいいじゃねえか。俺達が何も言わなきゃこの話はここで終わりだ!」

「いや駄目だ。こいつはお前が始めた物語だろ」

「俺じゃねえよ!始めたのはジロウ達だ!トレオンも昨日俺がそこでぐっすり寝てたの知っているだろ!俺は関係ねえよ!」

「そうだ!てめえイビキがうるせえんだよ!もっと静かに寝ろ!」

「えっと。話を戻していいですか?取り合えずこの肘から先しかない腕って、恐らくサイクロプスのものだと思うんですけど。どうですか?私の名推理」

「名推理じゃねえよ!こいつはちょっと大きい単眼ゴブリンの腕だって言ってるだろ!」

「見りゃあ誰だってサイクロプスの腕って分かるだろ!どこが名推理だ!」

おっと、2人と意見が別れちまった。俺は単眼ゴブリン、2人はサイクロプスと言い張っている。このままじゃ話し合いは平行線のままだ。

・・・・・

いや、俺も単眼ゴブリンって言い張るのはちょっと無理かなーとは思っている。思っているけど、そうしておこうぜ。サイクロプスって話になると、まーた、貴族が出てくるような大騒ぎになるじゃん。そもそも腕しかねえし。

「なあ、ジロウ。こいつの本体はどうしたんだ?」

「・・・・・」

トレオンが優しくジロウに話しかけるが、顔を背けて明後日の方を向く。

「おい、ベイル。こいつ態度悪いぞ」

「トレオンが嫌われているだけだろ」

「それでは、私が。ゴブ一、こいつの本体はどこかなー?・・・・・」

今度はニシアがゴブ一に話しかけるが、顔を近づけ、下からねめつけるようにニシアの顔をジロジロ見た後は、地面に唾をペッと吐いてその場を離れていく。その姿は正にチンピラであり、コーバスの連中と瓜二つ。

・・・・うーん、連中の悪い影響受けてるなあ。このままじゃチンピラゴブリンが爆誕しちまう。今度ゴドリックとよく話をしよう。

「飼い主の駄目な所を真似しちゃってますね」

「だな、こいつらベイルそっくりだ・・・って褒めてねえんだけど」

ふざけた事言うトレオン達に文句言おうとしたら、その前にジロウ達が尻尾振りながらトレオンの周りをグルグル周り始めた。トレオンが言うように今のは褒めてねえぞ。

「お!そうだ!お前ら、ベイルがこいつの本体はどこだろうって言っているんだけど、知っているか?」

「ワン!!」

「おい!ふざけんなよ、トレオン!俺はそんな事言ってねえだろ!俺をダシにしてジロウ達を使うな!」

「クゥーン」

「大丈夫だ、ベイルは喜んでくれる。何て言ってもサイクロプスは金になるからな!」

「ワン!ワン!」

「お!案内してくれるみたいだ。俺、ちょっとジロウについて行ってくるわ!」

そう言い残してトレオンとジロウは森の奥に消えて行った。

ええー。何であんな簡単に靡くんだ?さっきまでのトレオンへの塩対応どこ行ったよ。いや、ジロウ達が俺を喜ばそうとしてくれるのは分かっている。分かってはいるが、俺が金で喜ぶとジロウ達にも思われているのはどうなんだ?確かに貰ったら嬉しいけどさ。

「なあ、ニシア。サイクロプスって出たら大騒ぎになる魔物だってのは知っているんだ。ただコーバスで出た事無いから、俺はその程度の認識だけど、他にも知っていたら教えてくれ」

トレオンが戻ってくるまで暇なので、サイクロプスについてニシアに話を振る。故郷じゃ何度も戦った事はあるが、コーバスではどういう魔物と認識されているか情報が少ないので、聞いておこう。

「サイクロプスは、ハスリアの国境に近い荒野とかで良く討伐依頼がありましたね。多分森にもいると思うんですが、木のない荒野の方が見通しがいいから、よく見つかるんでしょう。強さとしては竜より弱いけど、決して舐めてかかれる魔物ではないです。ただ、ブレスや魔法は無く、脅威は馬鹿力だけ、弱点もはっきりしているので、倒し方は確立されてます」

弱点って、聞かなくても分かる。あのでかい一つ目だろ。けど、すげえ価値があるらしくて、最初あの目を水魔法で打ち抜いて倒したら、滅茶苦茶怒られた。怒られて以降は風魔法で首チョンパだ。

「閃光玉で目くらましして、鎖を足に引っかけて転がし、手足を鎖で押さえつけてから首や太い血管のある場所を斬りつけて出血死狙いです」

「目玉を物理的に潰さねえの?」

「あんなモロに弱点に見えるだけあって、そう簡単に潰せません。少なくとも矢は全て弾かれて無理でした。倒れたサイクロプスの目に斧持ちが思いっきり振りかぶって攻撃するか、槍持ちが全体重乗せて攻撃しないと、潰せなかったですね。だから目くらましの方が手軽でかなり有効なんですよ」

よく考えたら、あんなデカい目だと、普通に過ごしていても木の枝が目に入ったりする事なんてしょっちゅうだな。そう考えると、固いのも納得だ。

「それにサイクロプスの魔石の次に価値があるのが目ですから、潰したら勿体ないですよ」

やっぱり、この国でも目は価値はあるのね。

そんな事を話していると、トレオンとジロウが戻ってきた。

「どうだった?もういなかっただろ。よーし、いなかったなら、もう用は無い帰ろうぜ」

「いや、死んでたぞ。こいつはやっぱり組合長案件だ」

あちゃ~。死んでいたか。しかも組合長案件って事は大騒ぎになるな。こうなりゃあ、ジロウ達がやっちゃいましたって言い張ろう。実際その通りだし、貴族が出てきたら飼い主のゴドリック先生にお任せすればいいや。だって、俺関係ねえし。

「なあ、腕が一本減ってないか?」

いきなりトレオンが青ざめた顔で俺の後ろを指差した。指差した先にはジロウ達が集めてきた、こん棒やそれにくっついていた手が転がっている。

「ああ?トレオンは何言ってんだ?デカい単眼ゴブリンの腕だろ、こいつはオーガの腕で、こいつはオークの・・・・・あれ?ゴブリンの腕が無いな。どこ行った?ニシアが食べたか?」

「食べる訳ないでしょう。ジロウ達が食べたんじゃないんですか?」

「誰か食べたのか?」

・・・・・

俺の質問に誰も返事しない。って事はジロウ達じゃねえ。でもゴブリンの腕がさっきまで在ったのは事実だ。あんな価値のねえもんをトレオン達が盗む理由もない。なのに腕が消えた。・・・・・・これは事件だ!

「ああ、分かりました。犯人はこいつです」

解決早えな。もうちょっと謎解きさせてくれよ。・・・ってニシアが指差しているのはジロウ達が持ってきた木だ。

「こいつは『スイングツリー』って魔物です」

「魔物?こいつが?ただの木にしか見えねえぞ?」

「そうですね。普段は木と変わらないです。ただ、地面からの栄養が少なくなると、この洞から泣き声みたいな音を出して、近づいてきた獲物に枝を振って攻撃してくるんです。で、倒した獲物を・・・あー、あった、あった。こういう風に根で吸収するんです。かなり珍しい魔物ですよ」

ニシアの指差す先には、根っこに絡まれたゴブリンの腕が。いつの間にか細い根がゴブリンの腕にいくつも潜り込んでいるのが見える。気持ち悪いいい。

「開拓村で『森から泣き声が聞こえた日は森に入ってはいけない。入れば戻ってこれない』って話がありますが、その原因はこいつですね」

「ふーん。売れば高いのか?」

「いえ、普通の木と変わらないはずです」

そうか、折角ジロウ達が持ってきてくれたけど、使えねえって事か。一応珍しい魔物みたいだからゴドリックにプレゼントするか。