作品タイトル不明
158.解体と天啓
「って事でよお。俺も頑張ったんだ。ゴドリックからもお願いして、俺への報酬がちゃんと出るようにしてくれねえか?」
あれから数日、ようやくゴドリックが帰って来たと聞いて、急ぎ会いに来た。組合長より先に話つけとかねえと、手遅れになるからな。何故かトレオンもついてきたんだけど、こいつ暇なのか?
「ああ、すみません。その件は既に組合長と話がついています」
「なんだとおおお!」
俺はゴドリックが帰って来たと聞いて、即動いたんだぞ。なのに何でもう組合長と話がついているんだ?
「実は帰ってくる途中で組合員の方に捕まりまして、何があったか教えてもらったんですよ。その方達は報酬が早く欲しいから、このまま組合長と話をしてくれって言われまして組合まで連れていかれたんです。そこで、その方達や組合長からベイルさんは報酬も手柄もいらないって言ってたと言われたので、その通りにしたんですが、駄目でした?」
「駄目に決まっているだろう!俺が金を要らないとかいうはずねえじゃん。落ちていれば飛び込んででも拾いに行く男だぞ!」
「そ、それは流石にどうなんでしょう・・・」
とにかくだ。おそらく組合員ってのはアウグ達に違いねえ。あいつら、俺に絶対報酬渡さねえように手を打ってやがった。どんだけ金にがめついんだ。今回あいつらは緊急依頼だったから、保証された報酬の他にサイクロプスの金額に応じて若干報酬に色が付く。けど、結局その程度だ。別に俺が金貰えても貰えなくてもあいつらの報酬に大きく変化なんて無い。それなのに俺へ報酬が出ないように動くとは、あいつらマジで性根が腐ってやがる。
「すみません。そう言う訳で組合との契約でベイルさんに報酬をお渡しする事が出来ません・・・って泣かないで下さいよ。でもベイルさんにはお世話になっているので、個人的にお金じゃないものをお渡しするのなら問題ないでしょう」
報酬がもらえないと聞いて泣き始めた俺を見て、慌ててゴドリックが鞄を漁りだす。そして取り出したのは最近馴染みの琥珀色の液体が入った瓶。
「これ王都でもらったお酒なんですけど、私、あんまりお酒飲まないので、良ければベイルさん貰って下さい」
そう言って渡されたのは、みんな大好きウイスキー。これがあれば、アウグ達アホ共の前でぐびぐび飲んで悔しがらせる事も出来る素敵アイテムだ!わーい!
「い、いいのか?」
「ええ、どうぞ」
「愛しているぞゴドリック!」
「ウイスキー一本でベイルさんの愛は買えるんですね。やっす」
リーゴうるさい!お前のパンツ全部オクロウにあげるぞ!
「そうだ!ベイルさん!庭に木を投げ込むのやめてもらっていいですか!あれ、さっさと処分して下さい」
リーゴの奴、最近、遠慮という言葉を忘れたのか、俺への当たりがかなり強くなってきた。パンツネタで揶揄いすぎたか?
「処分していいのか?あの魔物ゴドリックが喜ぶと思って持ってきたんだけど?」
「魔物??あの木が?」
「スイングツリーって魔物だ」
「へえ、話には聞いた事ありますが、見た事はありません。ちょっと見に行きましょう」
流石、魔物馬鹿、話聞いたら速攻で動き出した。
「ふーむ、これ死んでますね」
庭に行き、スイングツリーを色々調べた結果、ゴドリックが下した答えがこれだ。
「死んでいるのかよ!折角ゴドリックが喜ぶと思って持ってきたのに、無駄だったな」
「多分栄養がなくて枯れたって所でしょう」
あー、放り込んだだけで、リーゴ達には何も言ってなかったわー。リーゴ達もこの魔物知っているもんだと勝手に思っていた。見れば根っこに絡まれて干物になった何かの腕が見える。多分あれ、道中に餌で上げていたオークとかゴブリンの腕だな。
「すみませんが、このスイングツリーは薪にするので、ある程度の大きさまで切ってもらっていいですか?」
「はあ?何で俺達が?」
「面倒だから外に捨てるでいいだろ?それならやってやるよ」
「ウイスキーあと2本あるんですけどねえ」
「よっしゃあ!俺達に任せておけ!」
「薪割りなんて組合員にとっちゃ朝飯前よ!」
って事で、ウイスキーに釣られて俺とトレオンは、スイングツリーを解体していく。助手にゴブ一がついて、ジロウ達は切った木を運ぶ係だ。パンツの山で幸せそうに寝ていたオクロウはゴブ一に蹴り飛ばされて、一緒に薪割りを手伝ってくれる。ゴドリック家の魔物全員で何かするなんて初めての事らしく、ゴドリックが何やら観察している。
「おい、ゴブ一、これ見てみろ。伝説の剣!格好いいだろ?」
木を切っていたら中々良い感じに切れたので、ゴブ一の前で掲げて自慢してみせる。
「ギャ!ギャ!」
それ見て、ゴブ一も似たような枝を見つけてきて、俺の真似して掲げて見せつけてくる。
「おお!ゴブ一も良い剣拾ったじゃねえか!よし、これで魔王トレオンをぶっ倒すぞ!」「ギャア!ギャア!」
「ベイル!遊んでねえで真面目に働け!木の枝振って喜ぶなんてガキじゃねえんだぞ!」
あーあ。トレオンの奴ノリが悪いなあ。ちょっとは遊び心ぐらい持とうぜ。気分が萎えたので伝説の剣を放り捨てて、また解体に戻る。そうしてしばらく真面目に作業していると、
「ベイル、これ見てくれ。これぐらい反ったシミターとか格好いいと思わねえか?」
そう言ってトレオンが見せたのはすんげえ反り返った枝。こいつ人の事言えねえじゃねえか!
「反り返り過ぎだろ。正面に構えたら剣先が自分の方向いているじゃねえか。そんな危ないもん使えるか!」
「そうかー」
俺がそう言うと、トレオンは名残惜しそうに手に持つ枝を放り捨てる。
そこからはまた解体作業だ。そうしてある程度目途がついた所で、聞き覚えの無い声が聞えてきた。
「んまー。奥様。二匹増えていますよ」
「あらー。本当だわ。あれは何て言う魔物かしら」
見れば塀が一部鉄格子となった高い場所から、こちらを覗くデブとガリの中年ババア。服装から恐らく商人の嫁だろうと推測する。鉄格子の場所はオクロウの性病判別場所で、あそこの鉄格子からパンツを投げ込んで判別してもらう。
「おい!ばばあ!誰が魔物だって!ぶっ殺すぞ!」
「ベイル、やめろって、相手すんな」
取り合えずふざけた事言ったババア2人を脅すが、塀の向こうにいるって安心からか、全くビビってねえ。
「んまー。何て口の悪い」
「チンピラですわ。『チンピラ猿』という魔物ですわ」
「誰がチンピラだ!ババア、俺達は見世物じゃねえんだ。さっさとどっか行け!・・・・うん?もしかしてお前ら性病判別に来たのか?ハハハハハ、てめえら移す相手いねえからやっても意味ねえだろ。逆に性病になった方が、そのデカい態度も大人しくなるから一石二鳥じゃねえか」
「んまー。この猿、口が悪すぎます」
「顔が性病みたいな奴に言われたくありませんわ」
顔が性病みたいって酷くねえ?流石に今までそんな酷い事言われた事ねえ。俺の繊細な心は傷ついたぞ!
「ふざけんなよ。誰が性病だ!体だけじゃなくて心まで性病に侵されてる奴に言われたくねえよ!」
「んまー。何て失礼な猿なの」
「存在が爛れている猿がさっきから失礼な事ばかり。あなたはどこのどちら様かしら?」
「ああ?俺か?コーバス組合員のベイルだ!てめえら顔は覚えたからな!月の無い夜は気を付けろ!」
「ベイル、それ悪人が言う言葉・・・・まあ、悪人とそう変わらねえか」
トレオンうるさい!俺はババア達と今話をしているんだ・・・ってあれ?見れば、ババア達の顔がさっきより青ざめている。
「こ、コーバスの組合員」
「下半身裸でヘンな儀式を行うと噂の・・・」
いや、誰だそんな噂流したの!色々混ざってるぞ。それにコーバスの組合員で一緒くたにするのやめろ!
「きゃあああああ!」
「ごめんなさーーーい!!!!呪わないでー」
そうして俺が何か声をかける前に2人は大声で叫びながら走り去っていった。何だろう。口喧嘩には勝ったけど、心に残るモヤモヤは・・・。
「トレオン。俺は勝ったぞ」
「いや、勝ったか?まあ、勝ったと言えば勝ったか。代償は大きそうだけどな」
ババア達に対して興味無さそうなトレオンは真面目に木こりをしてくれていたので、ほぼほぼ終わりかけだ。そしてその薪を離れた所にいるジロウ達に向かってポイポイ投げて、それをジロウ達が咥えてゴドリックに指定された場所に置いていく。なんか器用な事してんなあと思った次の瞬間、
天啓!!!!
俺の頭に物凄いアイデアが閃いた!こいつはヤベエ。俺天才かもしれねえ。いや、その前にトレオンが出来るかどうか確認しねえと。
「トレオン、ちょっと待て!お前その薪を何個同時に操れる?」
「ああ?言っている意味分かんねえんだけど?」
分からないなら実際に見てもらおう。俺は薪を3個持って上にポイポイ投げてみせる。俺には3個が限界だ。
「ああ、そう言う事か。何個出来るかなあ」
そう言いながらトレオンは5本の薪を投げて上手にジャグリングする。こいつ俺が睨んだ通り、ジャグリングの才能を持って生まれた天才だ!
「薪じゃなく、もうちょい小さければもっと出来そうだな」
トレオンのその言葉に俺は歓喜の叫びをあげる。
「おおおおおおおおおお!!!!」
「うわ!何だよ、いきなりビビらせんな!」
「トレオン、俺はお前を信じていた。ボールにしようなんて今後思わねえ。俺が世界一のジャグラーにしてやる!世界にお前の名前をペカらせてやる!」
「おい!途中何か不吉な言葉が聞えたぞ。それに最後ペカらせるって何だ?頼むから騒ぎになるような事はやめろよ」
そんな心配そうなトレオンの声は俺には届いていない。何故なら俺はついに見つけたんだ。最後の1人をな!
ジャグラートレオン!
カラーリングゲレロ!
ジェダイモレリア!
ついに3人揃った!これで俺が紙芝居している脇と後ろをこいつらで固めれば完璧だ。付け入る隙も無いぐらい完璧な布陣だ!
そうだ!帽子!おひねり入れる用の帽子を買わねえと!普通の帽子じゃ入りきらねえからとんでもなくデカい帽子だ。あとは衣装!ゲレロは塗ればいいけど、トレオンとモレリアは衣装も買わねえと。やべえ、稼がねえと金が足りねえ。
「おい!ベイル!何考えてるか知らねえが真面目に働け!」
おっと!そうだった。ウイスキーの為にもうひと踏ん張りしねえとな。って事で大道芸の事は街に帰ってから考える事にして、ちゃっちゃと作業を終わらせた。
「ふう、終わったな。お前らも手伝ってくれて助かったぜ。ベイル、今度こいつらに肉でも奢っとけ。俺も金は出すから」
「分かってるよ。俺は受けた恩は必ず返す男だ」
流石にこれだけ手伝って貰ったら、トレオンに言われなくてもジロウ達にも肉をあげるつもりだ。今度買ってこよう。