作品タイトル不明
123.オーガ討伐依頼②
「チッ!もう効きませんか。仕方ないです。盾持ちは前に出て下さい!」
ダメ元でシリトラ達が魔法をうってみたが、警戒している盾持ちのオーガにあっさりと防がれる。見た目高そうな盾だから、多分どこかの組合員殺して奪ったやつだろう。
こうなると、もう正面からぶつかるしかねえ。クワロやゲレロ盾持ち達が前に出ると、盾持ちオーガの後ろから槍や石、あとはよく分かんねえ、取り合えず硬そうな物が飛んでくるのでゲレロ達がガードしてくれる。
その隙に盾持ちオーガが距離を詰めてくる。
脳筋オーガの癖に連携がよくとれている。恐らくオーガの上位種がいるな。
「当たり負けとか情けねえ真似するなよ!!!」
こっちに突撃してきたオーガの盾持ちとクワロ達がぶつかった所に、クワロが激励を飛ばす。ゲレロ達は余裕そうだけど、ショータンの所の奴が辛そうだ。
「ここからは作戦通り、パーティメンバーで囲んで下さい。弓と魔法は援護を!」
シリトラの指示が飛ぶ。ここからはパーティが2~3人に別れてオーガ一匹を囲んでボコる作戦だ。ショータンの所は馴れてないから4人で囲むみたいだ。俺?俺はソロだから一人で相手するぜ!狙いはこん棒持ったあのオーガだ!
「ハッハッハー!てめえ!良さげなこん棒持ってんじゃねえか!俺が使ってやるから寄越しな」
「・・・・その言い方・・・野盗と変わらないじゃないですか」
呆れたようなシリトラの声が聞こえるが、気にせず、何度もこん棒で殴りつける。全てガードされるが、それが狙いだ。
「よーし。耐久も合格だ。って事でさっさと寄越せ!」
ここから俺が華麗な技でオーガをボコボコにしようとした所で、シリトラから声が掛かる。
「ベイル。余裕そうですね。もう一匹相手出来ますか?」
「ああ?2匹でも3匹でも余裕だっての!」
「そう、それなら3匹お願いします」
「あ!ごめん、見栄張った!3匹は正直キツイ!2匹でお願いしやす!」
流石の俺でも素の状態でオーガ3匹は無理だ。そこは流石4級相当の魔物だと言っておくぜ。
「そうですか。それなら2匹足止めしておいて下さい」
「別に倒してしまっても構わんのだろ?」
「余裕そうですね?やっぱり3匹にします?」
「調子乗ったっす!申し訳ないっす!2匹でお願いするっす!」
「・・・・・カルガーの真似する余裕はあるんですね」
おっと、これ以上ふざけるのはやめておこう。マジでシリトラから3匹押し付けられるかもしれない。
・・・・でもおかしいな?シリトラって戦いであんまり不公平な割り振りはしてこないんだ。いつもなら『そんなに余裕ならベイルのフォロはーしませんので、1匹だけ相手をお願いします』って言われるぐらいだ。別にオーガと俺達の間に戦力差があるから大変って訳じゃねえ。むしろ、俺達の方が強いぐらいだ。何か考えがあるのか?
「まあ、後で聞くか。おらあ!てめえもこっち来い!俺様が特別に相手してやる!」
こん棒持ちのオーガの相手をしつつ、隙を見て、絶無名を近くのオーガに投げつけてこっちへ引き付ける。こいつはこん棒じゃなくてサビ付いた剣を手にしているから外れだ。
周りを見れば、ちゃっかりトレオンやゲレロ、アウグなんかは良い武器手に持っているオーガ相手にしてやがる。今回は倒したオーガの武器はそいつの物ってルールだからな。意地汚ねえ連中だ。
横なぎのこん棒を後ろに下がって躱し、距離を詰めたオーガがサビた剣を振り下ろしてくるので大鉈使って受け流す。もうね、それだけですぐに俺は分かった。シリトラには余裕とか言ったけど、オーガ2匹を同時に真っ向から相手するの結構大変だってな。
けど、今更無理とか格好悪い事は言わねえ。オーガは基本能筋で武器振り回してくるだけだから、リーチを見切って後ろに下がれば、大抵の攻撃は躱せる。そうやって少しずつ少しずつ後ろに下がりながら、2匹を森の中まで釣ってくることに成功した。
「ハハハ、こっから反撃開始だ!覚悟しろ!」
こん棒の振り下ろしを今度は後ろに下がらず横に動いて躱す。当然躱すのはサビた剣持ちのオーガがいない方だ。こん棒持ちは振り下ろした所を今度は俺を追いかけるように横なぎにこん棒を振ってくるが・・・・ゴン!という音と共にこん棒が止まる。
「はい、馬鹿~。周りをよく見ろ!ばーか、ばーか」
俺に向かってきたこん棒は、周りのデカい木に当たり俺まで届かなかった。これが細い木だったら木ごとへし折っただろうけど、俺はちゃんと周りもよく見て動いてるぜ。煽ってやると、馬鹿にされた事が分かったのか大声で威嚇してきやがった。うるせえええ!
「おっと!」
こん棒持ちに気を取られていたら、今度は剣持ちがいつの間にか距離を詰めてサビた剣を振ってくるので、後ろに下がって躱す。ただ、後ろに下がった先にはデカい木があり、これ以上は後ろに下がれなくなった。それを見た剣持ちオーガは追いつめたとでも思ったんだろう、口の中のデカい牙が見えるように笑いながら、剣を横に振ってくるが、大振りになった攻撃を身を屈めて躱す。
本当は後ろの木に剣を打ち込ませて、抜けないようにしたかったんだけど、流石に間合いは把握しているか。
けど躱したことで剣持ちオーガの体が流れた所を体当たりしてその場を駆け抜ける。後ろからビュンという風を切る音が聞こえてきたが、これはこん棒持ちの攻撃。
振り返りながら、俺の体当たりで転んだオーガに油の入った瓶を投げつけ、油に塗れたのを確認したら、森を抜けてみんなの所に走って戻る。俺の後ろには当然怒り狂ったオーガ二匹がついてきている。
「おーい!シリトラ!後ろの剣持ちに火を当ててくれ!当てるだけでいい!」
他の連中も頑張っているみたいで、オーガが何匹か地面に転がっているのが見える。その連中を離れた所から援護しているシリトラが見えたので、大声で指示を出す。
「当てるだけでいいなら・・・」
そう呟きながらシリトラが火球を一発だけこちらに向かって放つが、当然オーガは当たらなければどうとでもないと知っているのか、こちらに向かいながらも火球の射線から少しだけ外れるように動く。
・・・が、丁度火球がオーガの真横に来た瞬間、何も触れていないのに火球が爆発を起こす。
普通火球は何かに当たって爆発するんだけど、シリトラ達は魔法を時限式に出来るという謎の技術を使えるんだ。謎技術って言ったけど、これ自体は出来る奴は出来るらしいんだが、さっきみたいに戦闘中、オーガがこっちに向かってくる速さと、放つ魔法の速さから、何秒後に爆発させるっていう判断を瞬時に出来る奴は、俺の知っている限りシリトラとモレリアぐらいだ。
普通の魔法使いは威力を上げる事を何よりも優先するもんだけど、シリトラとモレリアって魔法を変な方向で極めようとしているよな。
直撃ではなく、真横で爆発したので、オーガにダメージは入らねえが、さっき俺が投げつけた油に辺りを舞う火の粉が火をつけ、オーガが炎に包まれる。流石シリトラ、要望通りだぜ。
「ガアアアアア!!!!!」
炎に包まれたオーガが大声を上げながら、地面を転がり火を消そうともがくと、こん棒持ちが慌てた様子で駆け寄り、土をかけて火を消して助けようとする。仲間を必死に助けようとする、なんとも心温まる場面じゃねえか。
・・・・・
けどな!
「ハハハハハ!てめえは仲間思いのいい奴だ!ただ覚えておけ!戦場じゃいい奴から死んでいくんだよ!」
仲間を助けようとして隙だらけのオーガの頭にこん棒を叩きつける。骨の砕く感触が手に伝わり、ゆっくりとオーガが地面に倒れ込む。
「死んでいくって・・・・ベイルが殺したんでしょう・・・」
シリトラは相変わらず小言ばっかりだ。オカンかな?
「って事はベイルは戦場じゃ絶対死なねえな!」
「だからしぶとく生き残ってんのか!」
「うるせえ!トレオン!ゲレロ!真面目に働け!!それに俺は5年連続『コーバスで一番いい奴選手権』でナンバーワンに選ばれてんだ!死なねえのは単純に俺が強いからだよ!」
ったく、俺はノルマの2匹は倒したぞ。うん?燃えたやつ?大鉈をたった今、首に叩き込んだから死んだ。
「何?その選手権?どこでやっているの?」
「聞いた事ねえぞ?ベイルの頭おかしく・・・あいつは元からおかしいか。妄想の中で選ばれてるとかそう言う所だろ」
モレリアもアウグもこっち気にしてねえで真面目に戦え。
「そんな訳ねえだろ!俺の常宿で毎年やってんだよ!」
「また範囲狭いなあ」
「あ!俺分かった!年に一回だけベイルが宿の連中に酒を奢るって聞いたぞ!てめえ!そん時にそのふざけた選手権やってるだろ!」
ペコー何で知っている?奢った奴らには言わねえように口止めはしていたはずだ。知られたらこいつら喜んで嫌がらせにくるからな。
「・・・・・・・・・」
「おいおい!こいつ黙りやがった!図星だぞ!」
「てめえがっつり賄賂送ってんじゃねえか!そんな選手権無効だ!無効!」
「姑息だなあ」
「おい!次はいつその選手権やるんだ!組合員全員で参加してやるから教えろよ!」
「それよりも組合で『コーバスで一番姑息で卑怯で悪人なソロ組合員選手権』開催しようぜ」
「おい!アウグ!てめえそれ限定的過ぎるだろ!そんな選手権無効だ!」
マジでそんな選手権開催したら満場一致で俺になるかもしれねえ。大体なんでソロ限定なんだよ!
「もうあなた達真面目に戦って下さい!!」
ほらー。シリトラ母ちゃんが怒ったじゃねえか。
「そんな怒んなよシリトラ。後は消化試合だ」
ゲレロが言うように周りを見ればオーガはもう残り数匹。ベテラン連中が見守る中、3級のひよっこ?達が頑張っている所だ。これならもう終わりかな?
「うちのリーダーなんて酒飲んでるぜ」
「「「「「「はああああああ???」」」」」」
トレオンの驚きの発言に流石の俺達も目が点になる。
「てめえ!ロッシュ!ふざけんなよ!何で、もう飲んでんだよ!」
「任務中に酒飲むとかありえねえだろ」
「真面目に働け!」
「その酒俺らにも寄越せ!」
「何で酒持ってきてんだよ!!」
気付けば木の上に登ったロッシュが枝に横たわり水袋から何かを飲んでいるので、全員から非難の嵐だ。こういう時だけいつもバラバラの皆の心が一つになる。
「何でさー?もう僕のノルマ終わったからいいじゃないかー。ひよっこ達が必死になって戦っている姿を見ながら飲む酒!うーん!たまんないねええ!!」
「ふざけんなよ!」
「降りて来い!その酒飲みつくしてやる」
「クソチビ!てめえぶっ殺すぞ!」
「石投げろ!石!」
誰かの号令でみんなでロッシュに石を投げるが、隣に座るユルビルが盾で守る。こいつも酒飲んでやがる。お椀みたいなものを片手に持ち、ロッシュから酒注いでもらって美味そうに飲む姿に思わずみんな手を止めてゴクリと喉を鳴らす。
「ロッシュうううう。頼む!一口だけ飲ませてくれねえか?」
「俺も頼むぜ、さっき石投げなかったの俺だけなんだぜ」
「いやーアウグ、嘘は良くないよ。一番多く投げてたじゃないか。あ!僕は投げてないからね。お酒頂戴」
「いやーごめんねー。このお酒二人分なんだー。君たちのは無いよ」
おいおい!どこかのスネ夫みたいな事言いやがったぞ!それを聞いた俺達は再び怒り出してロッシュ達に石を投げ始めるんだけど、ユルビルが盾で防いで全く当たらねえ。このドワーフ邪魔だ!