軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

122.オーガ討伐依頼①

いつものようにフリー依頼に行って、牛を狩って夕方ごろに組合に戻ってくると、この時間なのに珍しく掲示板前に人だかりが出来ていた。こういう時は結構面倒な魔物が出たか、群れが見つかったんで、複数パーティで受ける依頼でも張り出されたんだろう。

「よお!お前ら何してんの?暇人?」

「暇じゃねえよ!」

「喧嘩売ってんのか?」

「真面目に仕事の話してんだよ!」

「失せろ!」

気になったので聞いてみたらボロクソ言われたんだけど・・・こいつら何をそんなに殺気立ってんだ?

人混みを抜けて掲示板の前まで行ったら、その理由が分かった。

『オーガの巣壊滅依頼』

多分これのせいだな。オーガってのは4級相当の魔物で、その巣の壊滅となりゃあ大事だ。そりゃあ、殺気立つ。

「あ!ベイル。丁度いい所に来ました。あなたもこの依頼受けませんか?」

掲示板を眺めていたら、いつの間にか近づいていたシリトラが話しかけてきた。この誘い方だと今回のこの依頼の頭はシリトラ達か。

「別にいいけど、今日依頼から帰って来たばっかりだから、明日出発とかはやめてくれよ」

「今は組合で巣の正確な規模を調査しているので、早くても出発は明後日以降です」

「それならいいや。他の面子は?」

「クワロとロッシュ、アウグ、ペコー、ショータンの所には声をかけてあります」

ロッシュ以外はメンバー10人弱ぐらいだから、50人規模か。4級相当のオーガと言っても結構多いな。

「多いな。巣の規模はデカいのか?」

「複数は確認しているらしいですが、巣穴が洞窟なので正確な数は不明です」

「まあいいや、オーガなら報酬期待できるから予定は空けといてやるよ」

オーガは骨も皮も丈夫だから素材として色んなものに使えるんだ。なんなら爪や牙、角さえも利用価値がある。素材は高値で売れるから報酬はかなり期待できる。使えねえのは肉だけだ。まあ、その分強い。純粋に強い。舐めてかかるとマジで4級パーティでも全滅するぐらいだ。それぐらい強いけど、オーガは基本的に力でごり押しの脳筋スタイルだから、準備さえしっかりすればベテラン3級でも討伐できる強さだ。

それにオーガと言えばこん棒だ。もうそろそろ俺のこん棒も交換しようと考えていたので丁度いい。

「助かります。ベイルのお手並み拝見させて貰いますよ」

なんか意味深な事言ってシリトラはイーパの座る机に戻っていった。俺のお手並みって何度も見て知ってるだろうに、どういう意味だ?

「巣の規模は20匹か。この面子なら余裕だな」

討伐に向かう道中、面子を見ながらぼそりと言った俺の呟きが聞こえたのか、不安そうな顔したショータンが近寄ってきた。

「ベイルさん、軽く言ってますけど僕らオーガと戦った事ないんですよ?」

「大丈夫だって。ショータン達も大分強くなっているからオーガ程度余裕、余裕」

「3級に4級相当の魔物相手が余裕って言うのおかしくないです?」

おかしいか?今回一緒についてきているアウグやペコーの所は何度かオーガ討伐しているから、ショータン達も大丈夫だと思っているんだけど。

「おかしくねえよ。お前らなら十分倒せる相手だ。大体オーガが4級相当ってのがおかしいんだ。どっちかって言うと3級ベテランぐらいだろ。まあ、前に組合長が倒した賞金首はおかしな強さだったけど、あれは考えねえことにする」

近くを歩くアウグが聞こえていたのか会話に混ざってきた。こいつもその当時からいたんだな。

「アウグは組合長が倒した『ナントカ』ってオーガの騒ぎの時、コーバスにいたのか?」

「『二刀』だろ?あん時は俺は3級に上がったばっかりだから、大して目立ってねえんだ。当時は『二刀』と組合長の戦い見てヤベえって思ったけど、今なら多分倒せるぜ」

本当かよ?とは、実際にその『二刀』を見てない俺が言えねえが、当時のコーバスの4級でも無理だった奴を3級のアウグが倒せたのか疑問だ。

「今回はどうせ普通のオーガだろ?楽勝、楽勝」

「アウグさん、そういう事言わない方がいいですよ」

なんかヤバイフラグ立てそうな発言したアウグに『転がった剣』のフェイローが注意する。

・・・・・

そうなんだ。何故か今回2級の『転がった剣』、『蜂蟻撤退』とアーリット達の弟子『華開く』が同行してんだよ。邪魔にしかならねえから、最初反対したんだ、けど組合長がいい機会だから連れてけって事で、ついてくる事になったんだ。

一応、戦いには参加しない荷物持ちとしてって事で俺らは納得した・・・・んだけど・・・後ろからゾロゾロとついてこられると落ち着かねえ。

「ほら、今の動き多分何か意味があるのよ」

ねえよ。ただ魔物の糞が落ちてたから避けただけだ。

「一番前のクワロさん。ずっと盾を構えて、常に警戒しているぞ」

違うぞ。あれは蜘蛛の巣を盾で防いでいるだけだ。それにかなり先にロッシュ達が先行しているから一番前じゃねえ。

「ペコーさんを見ろ。ああやって移動中でも食事して時間を無駄にしない所は参考になる」

あれはペコーが食い意地はってるだけだ。あいつ以外誰も食ってねえだろ。

・・・・・・・

こいつら勝手に俺らの行動を良い風に勘違いしているけど、大丈夫か?間違っているって教えるのも面倒だから、みんなほったらかしだけど・・・。

「だからよ。ショータンさんとニッシーさん。俺ら4人でかかっても相手にならねえ。マジでパねえのよ。強いし、恰好いいし、優しいし、いい匂いするしでアーリットさん達の前に2人に会ってたら、俺はあの2人に弟子入りしてたね」

・・・・・

よし!ホモ野郎はショータンとニッシーに狙いを定めたみたいだ。2人とも聞こえてきたのか何とも言えない顔してんな。

「2人とも懐かれてるじゃねえか」

「クタイッシュですよね?・・・・うーん、懐いてくれるのは嬉しんですけど・・・」

「なんか妙に距離が近いというか・・・馴れ馴れしいというか・・・」

2人とも分かってねえみたいだな。気付いた時には手遅れかもしれねえけど、まあ、俺が安心して寝られるように、頑張ってあいつのヘイト?稼いでおいてくれ。

「そういう距離感の奴もいるだろ。いきなり肩組んできて馴れ馴れしい奴」

「まんまベイルさんですよね?でもベイルさんとはちょっと違うっていうか・・・・何か品定めされているような感じがするんですよね」

それ、多分品定めされているぞ。このままだとショータン達は、いつかパクリと食われるかもしれねえなあ。

「一応、酒とかに薬とか入れられねえように気を付けろよ」

先輩からのありがたい忠告だ。聞いておいた方がいいぜ。

「この辺りを拠点にしましょう」

適当に雑談していたら、シリトラが少し開けた場所で足を止めて、みんなに声をかける。

ここを拠点に荷物や荷馬車を置いてオーガの巣に向かう事になるから、全員荷物を置いて身軽になり、装備の点検を始める。

「もう、このまま向かうのか?」

「いえ、流石に丸二日移動で疲れているでしょう。それにもうすぐ日も暮れますから明日にしましょう。ですが、念の為、明日ここの見張りの人は夜は交代で巣の監視をしてもらいます」

まあ、いつも通りだな。って事で俺達は野営の準備を始める。

「トレオンの所は誰が夜の見張りなんだ?」

「マーティンだ。コインで決めた」

飯を食いながら隣のトレオンに聞くと、何とも適当な答えが返って来た。

適当だなあ。まあ、トレオンのパーティはベテランばっかりだから誰がやっても同じか。ゲレやシリトラ、アウグの所は3級の新入りにやらせるみたいだ。新入りって言ってもコーバスで揉まれてきた連中だから、仕事はしっかりやるだろう。ショータンの所は2級の若い奴か・・・まあショータン達が選んだなら多分問題ねえな。

問題があるとしたら・・・・・

「オーガとか見た事ねえ。やっぱり見た目やべえのかな?」

「俺は王都で見た事あるぞ。かなりデカくてごつかったぞ」

「オーガ倒せたら4級の実力あるって、周りからも一目置かれるのかな?」

そう、組合長が寄越した見学者連中だ。何故か明日の戦いに興奮して、盛り上がっている。遠足気分は結構だけど、勝手がわからずポカやらかしそうなフラグがビンビンに立ってるんだ。こいつらの出番は巣を全滅させてからの荷物持ち要員だって事をしっかり分かってんのかな。戦闘中はいつでも離脱できる位置で見てるように、シリトラがしつこいぐらい注意してたけど、この様子じゃ忘れてそうだ。

まあ、ポカやらかしても俺達ならどうとでもなる。最悪こいつらが死ぬだけだ。

「それでは出発します。居残り組のリーダーはマーティンですから、指示には従って下さい」

翌朝、全員準備完了した所で、シリトラから最終確認の声がかかる。毎回思うけど、居残り組は楽そうでいいなあ。マーティンとか絵描きながら、余裕そうにしてやがる。俺も一回はやってみたいけど、ソロだと駄目らしい。それに今回はオーガ相手に、ちょっとやりたい事があるので、居残り組にされても困るんだけどな。

「こん棒眺めてどうしたベイル?」

俺がこん棒を眺めていると、ゲレロが近寄ってきた。今日はいつもと違ってガチ装備だ。背中にデカくて重そうな盾を背負っているし、毎回思うけど、それで移動は辛くねえの?

「こいつ使ってもう大分経つから、そろそろ交換するか考えてるんだよ」

「お前、それ前にオーガからぶんどったやつだろ。交換ってまーた、オーガからぶんどるつもりかよ。普通に買い替えろよ」

「金が勿体ねえだろ!オーガから奪えばタダだぞ。だからこうやって文句言わずに参加したんだ」

「普通はそういう理由で討伐に参加しねえよ」

俺はするんだよ。よく考えれば組合員になってからメイン武器は全部魔物か野盗から奪ったのばっかりだ。だって武器高えんだもん。たまに武器屋を冷やかしに行くけど、目ん球飛び出そうなぐらい高いこん棒とか売ってたりするもんな。そんな高い金出すぐらいなら魔物から奪った方がマシだ。組合員でこん棒使っている奴は少ねえが、人型の魔物は結構な頻度でこん棒持っているからな。

「もうそろそろですから、お喋りはここまでです」

ゲレロにこん棒の良さを話していたら、シリトラに注意されちまった。

「ゲレロもようやく槍からこん棒に変える気になったが仕方ねえ。話の続きはまた今度な」

「変える気ねえよ。毎回思うけどベイルのこん棒推しは何なんだ?」

「2人とも!静かに!」

あーあ、シリトラに怒られちまった。そんなに睨まなくても、オーガの巣が見えてきたからもう黙るっての。

「見張りは2匹か。どうする?」

「気付かれずに処理したいので、私とモレリアの魔法で仕掛けます。ミーカ外した時のフォローを。側面に回り込みますので、正面のクワロ達は合図を出したら気を引いてください」

これが上手くいけば、洞窟から出てきたオーガをまた不意打ちで倒せるからな。それに洞窟が巣の時は中では可能な限り戦わねえってのがセオリーだ。ゴブリンでさえ待ち伏せする知恵があるんだ。オーガなんか岩投げてきたり、洞窟崩して逃げ場を塞いだりしてくるらしい。まあ、魔物は逃げれば追いかけてくるから、ゴブリンならともかくオーガは巣の外まで釣って倒すのが組合でも推奨されている。

しばらく待つと配置についたのかシリトラから合図があったので、クワロがその辺の石を拾ってオーガの近くに投げる。当然石に気づいた見張りのオーガ二匹は不思議そうに近づいた所をシリトラとモレリアの魔法が頭を消し飛ばす。

相変わらずの威力だ。普通魔法耐性も高いオーガを一発で倒すなんて中々出来るもんじゃねえ。モレリアが言うには一発に出来る限り魔力を込めて威力を高めてるんだと。

普通の魔法は一発の範囲が広ければ広いほど威力があるって言われてるんだけど、モレリアは一回に出せる魔力が少ない分、魔力をしっかりコントロールして無駄を無くし効率を上げて一発の威力を高めてるとか説明してもらった。

他にも一発の威力が大きいって言っても、同時に複数個の魔法を一つに見えるように打ち込んでいるだけとかも言ってたな。聞いてもよく分かんなかったから、『才能無い奴の負け惜しみしか聞こえねえぞ』と言ったらめっちゃ怒られた。

そんな事を一瞬思い出しながら、頭の無いオーガが崩れ落ちていく姿を黙って見守る。

これならまだ気付かれてねえから、次に出てきたオーガも不意打ちでいけるな。とか考えていたんだ。他の連中も同じ事を思っていたはずだ。

・・・・・

けどなあ。

俺が思った通り見学組がポカやらかしやがった。

「うおおおお!すげええ!」

「オーガだぜ!一発ってマジかよ!」

「信じられねえ!あの魔法威力どうなってんだ!!」

大声で喜ぶ見学組の馬鹿3人をアウグ、ペコー、イーパがそれぞれ殴りつけて沈黙させるが、遅かった。

巣穴の奥から怒りの感情が籠った叫びが響くと、更に複数の叫び声が洞窟から聞こえてくる。

「ったく。面倒くせえなあ。もうちょっと数減らせたのによお」

「戻ったら組合長に文句言わねえとな」

「だから俺は反対したんだ」

「文句言ってないで準備を!」

「はあーあ。面倒くさいなあ」

みんな口々にボヤく視線の先には、盾を構えたオーガ達が、洞窟から飛び出してくるのが見えた。