作品タイトル不明
121.王都組合員の実力
「それって喧嘩売ってるのと同じじゃねえ?」
取り合えず魔法とは言えないから、城に石を投げ込んで逃げるって言ったら、ゲレロのこの言葉だ。こいつは分かってねえなあ。
「バーカ全然違えよ。喧嘩売るってのは基本的に白黒はっきりさせるまで終わらねえ。だから石を王城に投げ込んで逃げるってのは俺からすれば喧嘩売ってる訳じゃねえ。ただの嫌がらせだ。城も犯人特定できねえと拳の降り下し先がねえから、喧嘩にはならねえだろ?」
「うーんとゲレロで例えると?」
「ゲレロとガチで殴り合うか、後ろからバレねえように石投げつけて逃げるかだ。全然違うだろ?」
「何で俺で例えた?もし俺がそんな嫌がらせ受けたら、証拠が無くてもベイルをぶん殴るからな」
何でだよ。モレリアに言われたから例えただけじゃん。それなのに殴るって理不尽すぎねえ?
・・・・いや、ゲレロにそんな事するの俺ぐらいしかいねえけどよ。
実は一番最初に喧嘩した時は、あの後隠れて石投げたんだよ。バレてねえけど。
まあ、もう時効だな。ゲレロももう忘れているだろ。
「で?最後はてめえか?ハーサって言ったか?」
取り合えずこの話をあんまり掘り下げると、ゲレロの記憶が戻るかもしれねえから、話を戻すぜ。
「・・・・・はい・・・じゃなくて・・・まだクタイッシュが・・・・・残って」
「ああ、あいつはティッチに任せたから放っておけ。で、お前はザリアだったな。って事はトレオンだな。あいつどこ行った?」
掲示板眺めていたはずなのにいつの間にか姿が見えねえ。探していると、誰かが教えてくれた。
「トレオンなら訓練場だぜ」
あいつが訓練場なんて珍し・・・くもねえか。多分地面に落書きしながら明日の予想でもしてんだろ。
■
「で、結構早めに3番が動く・・・そうすると釣られて全体が前に行く・・・結構ペースが早くなって前が潰れる。3はスタミナがあるからこいつは残る・・・大外から8が来る・・やっぱり3と8は外せねえ・・・そうなると・・・」
訓練場に行くと、地面に色々落書きしながらブツブツ言っているトレオンを見つけた。他の連中が真面目に訓練やっている中、凄い邪魔っぽい。訓練している奴らが何か言いたそうな顔を向けているが、トレオンは気づいてねえ。
「やあ、トレオン。君に客だよ」
「うわあ!モレリア、てめえ俺の予想を踏むんじゃねえよ!」
「こんな所でやっているからでしょ。邪魔だよ」
「お前らもやめろ!まだ予想の途中なんだ!消すなって!」
俺とゲレロとモレリアで地面の落書きを綺麗に消して地面を均す。訓練場を使ったらきれいに均すルールだからな。守らねえ奴が多いけど、真面目な俺達はちゃんと守るぜ。って言うのは建前でトレオンへの嫌がらせだ。こいつにはこれぐらいしねえと邪魔だって分からないからな。若いのはトレオンが怖くて文句言えねえから、後輩思いの俺らが代わりにしてやったんだよ。
「だったら、もう少し隅っこでやれ。邪魔だ。何でこんな真ん中近くでやってんだよ」
「どうせ、ここでやった方が予想が当たるとかいうジンクスだろ?外す事もあるから関係ねえって何度も言ってるだろ?」
「うるせえ!組合だとお前らが邪魔するから、ここの方が予想に集中できるんだよ!」
「はあー。まあ、どうでもいいよ。それよりもトレオンにお客さん。ザリアの弟子のハーサって言うんだ」
そう言って紹介されたハーサを、トレオンは頭の上から下までジロジロ眺める。そこまでハーサの体に目立つ所は無いけど、体や足を嘗め回すように見ているトレオン。セクハラかな?
「ふーん。ザリアの弟子か。何級だ?」
「3級です」
そう言えばこいつらの級を聞いてなかったな。3級だったんだ。
・・・・その割には3級組合員特有の・・・なんていうか・・・強いっていうか・・・生意気そうな・・・ふてぶてしいっていうか・・・そんな雰囲気があんまり感じられねえ。雰囲気的には2級上がりたてのペーペーって感じなんだよ。
「話を聞くより実際動き見た方が早いな。おい、ハーサ。まずは動きを俺に見せてみろ」
「はい。それでは行きます」
嘗め回すように見ていたセクハラトレオンは、次は動かせて見るようだ。気付いていないハーサは素直に従ってトレオンに向かって走り出す。
・・・・・
へえ。結構早いな。
俺が思っていたよりハーサの動きは速かった。あんまりエルフの斥候って見ないからエルフがこんなに速く動くのなんて初めて見たな。
・・・・ただなあ。
「・・・凄いな」
「・・・これが王都の3級」
訓練を見ていたゲレロとモレリアが無意識に言葉を漏らす。
「「・・・・酷すぎる」」
俺も思った。
「やめだ。やめだ」
トレオンも呆れた様子で動きを止めると、ハーサがかなり困った表情で立ち止まる。一緒についてきているエゲルもルストも何ですぐに止めたか分からず戸惑っている。
仕方ねえ。特別に俺が教えてやろう。
「ハーサ。もうちょっと胸を意識して動かせ。後は尻だ。もっと良く振れ」
「・・・・・は、はい・・・うん?・・・ど、どういう事でしょう?」
「分かってねえのか?さっきからトレオンはお前の胸と尻を楽しんで・・・・・うぎゃあああああ!目が!目が!!」
話している途中で、顔に何か液体をかけられた。その次の瞬間目に物凄い痛みが走り、刺激臭が鼻に広がる。・・・いきなりの事で我慢できずに俺は目を抑えて大声で叫び、地面を転がる。
「おい!ベイル!てめえふざけた事言うな!」
「と、トレオン!・・てめえ、刺激薬投げたな!信じられねえ!!」
刺激薬・・・ハッカみたいな植物とレモンみたいな酸っぱい植物の液を混ぜ合わせて作るアイテムだ。『香辛料爆弾』と違って液体だから当たった奴にしか効果がねえが、当たれば俺みたいに効果抜群だ。・・・分かりやすく言うと液体ムヒを顔面にいきなりぶっかけられた感じだな。
「信じられねえのはてめえだよ。俺は動きを見てただけだっての!お前みたいに常にエロい事ばっかり考えてねえんだよ!」
「嘘だ!ハーサ!トレオンの好みはあんまり胸がデカくなくて尻の形がいい女だぞ!お前はピッタリ当てはまってる!エロい目で見られてるぞ!気を付けろ!」
「・・・・・ええー・・・」
「だから!見てねえって言ってるだろ!」
「さっきハーサを嘗め回すように見てただろ!」
「あれは装備や筋肉の付き方を見てたんだよ!モレリア!この馬鹿どうにかしろよ!」
「・・・・うーん。仕方ないなあ」
■
「ハーサって言ったか?お前本当に3級か?今まで何と何回戦った事がある?」
「・・・え。戦ったのはスライム、ゴブリン、レッサーウルフと数回です」
「・・・・・ゴブリンとレッサーウルフはパーティで一度に最大何匹相手にした?」
「どちらも2匹同時に相手したのが一番多いです」
「・・・・・・・」
おいおい、マジかよ。3級にしては経験が足りなさすぎるぞ。だからトレオンのフェイントにも簡単に引っかかったのか。しかも動きが直線的で読みやすくて2級上がりたてみたいな動きだったぞ。
「王都が温いって本当だったんだな」
「けどアレじゃあ、他所の街で通用しねえぞ」
「王都ならあの腕でも護衛依頼があるから大丈夫なんじゃない?」
「あれ護衛になるのか?荷物持ちか野宿準備要員にしかならなくねえ?」
「・・・・・・・・」
俺もそう思うぜ。なんならいない方がマシもある。
・・・・・・
俺も会話に混ざりてえ・・・・
けど、モレリアが持っていた口輪嵌められて喋れねえから混ざれねえんだ。しかも外されないように後ろ手に手枷まで嵌められてんだ。
・・・・モレリア何でこんなん持ってんだろうなあ?いつも持ち歩いているの?
「そんなに酷いですか?」
「ああ、酷すぎる。ザリアは何教えてんだ?」
「ルスト、てめえも腕前を見せて見ろ」
「じゃあ、僕はエゲルかな。魔法はさっき見たからいいや、体術みせてよ」
・・・・・
「おい、ルストもかよ。お前ら本当に3級か?あからさまなフェイントに引っかかりすぎだ」
「うーん。エルは何を教えてるんだい?体術は全然じゃないか」
目が見えてねえけど、ゲレロとモレリアの呆れた声が聞こえるので、他二人もかなり弱いみたいだ。
「この実力だと、こいつらすぐに死ぬぞ」
「組合長に報告した方が良くない?」
「だな。流石に『こいつらが死ぬの分かってて放置した』って、バレたらカルガーにまーたどつかれちまう」
「「「・・・・・・」」」
「ああ、お前らも色々言いたいだろうが、まずは組合長に相談しに行くぞ。文句はそこで聞いてやる」
トレオンのその言葉でみんな訓練場からゾロゾロと組合に向かう足音が聞こえる。
・・・・・・・
・・・・
一人残される俺。
おーい!俺を置いていかないでくれ!!!
「・・・・・・・」
叫んでみるが、口輪嵌められているから声でねえ。痛くて目も開けられねえから追いかける事も出来ねえ・・・・心眼?使えねえよ!
困っていると、何処かのパーティが訓練場にやってくる音が聞えてきた。
「それじゃあ、今日も頑張って・・・・頑張・・・」
「・・・・・『筆頭』何してるんだろ?」
「馬鹿!やめろ!聞こえたらどうする!」
ああ、戸惑うのも分かるぜ、口輪と手枷嵌められて目を閉じた俺が、地面に座り込んでるんだもん。俺の目の前に木皿でも置いたら、盲目のちょっと変わった物乞いにワンチャン見えるかもしれねえ・・・・いや、見えねえか?
「それにモレリアさんが近くで凄い笑っているから、何かの遊びだろ?」
「・・・まあ一人ジェリーする人だからなあ」
おい!ちょっと待て!モレリアが近くにいるのか?トレオン達と一緒に組合に行ってねえの?しかも俺が困っているの見て笑っているだと?
下手に立つと転ぶかもしれねえから、座ったまま足をバタバタして、モレリアに猛抗議する。
「あー、はいはい。何が言いたいんだい?もう終わったから口輪外してあげるよ」
俺が猛抗議すると、目の前からモレリアの楽しそうな声が聞こえてきた。こいつマジでいやがった。俺が困っているのを見て楽しんでやがった。信じられねえ。
「プハ!モレリア!てめえ!人が困っているんだから、さっさと助けろよ!」
「ハハハ、静かなベイルが珍しくてねえ。ついつい眺めていたよ」
口輪を外された俺はモレリアに怒鳴るが、モレリアは全く堪えた感じがしねえ。むしろ楽しそうな雰囲気だ。人が困っている姿を見て楽しむとは何て性格の悪さだ。
「そんなん珍しくねえだろ。俺は寡黙な男だぞ」
「・・・・寡黙って言葉の意味をみんなに聞いて回った方がいいよ。それより組合に戻ろうか。まだ目が痛むだろう?僕が引っ張っていってあげるよ」
「お?マジ?お前がそんなに優しいなんて珍しいな?」
「何を言ってるんだい?僕はコーバスで一番優しい女組合員だよ」
「・・・・・・・・・・」
優しさで言えば、モレリアは女組合員の中でも確かに優しい方だと思う。ミーカとか何が気に入らねえのか男にはすっげえ厳しいからな。その点こいつは相談事は暇なら乗ってくれる。
ただ、コーバスで一番というと、多分口うるさいシリトラだな。
「うん?何か異論があるのかな?今度は口輪嵌めて放置されたいかい?」
「そんなわけねえだろ。ちょっと考えてただけだって。うん、モレリアがコーバスで一番優しい奴だな。って事で俺を組合まで連れて行ってくれ」
そうだろう、そうだろう。とご機嫌なモレリアに手を引かれて組合に入ると、今度は無神経な連中が無遠慮な言葉を投げかけてくる。
「おいおい、ベイル?どうした?目をやられたのか?」
「お!って事は引退か?ようやくコーバスが静かになるぜ」
「俺もモレリアに介護されてええ」
「ベイルはもう終わりだな。頼むからこのまま静かに死んでくれ」
「こいつこうなっても最後まで人に迷惑かけそうじゃねえ?」
「だな、死ぬまで牢屋にぶち込んでおいた方がいいな、ティッチ呼んでくるわ」
・・・・・・・
こ、こいつら・・・・俺が今からここで組合にいる連中ぶん殴っても文句ねえよな?
目が見えねえけど、手近にあった机を持ち上げて声のした方にぶん投げる。直後、組合に怒声や悲鳴が響くが知ったことじゃねえ!
「てめえら!喧嘩売ってんのか?おら!かかってこい!目が見えねえけどてめえら雑魚ども相手にゃ良いハンデだ。ぶっとばしてやる!」
「ふざけんな!」
「やれ!やっちまえ!」
「この馬鹿!今日こそ殺せ!」
もうそこからは大騒ぎだ。取り合えず目が見えねえから、触れたもんを掴んで適当に投げるか、殴られた所を捕まえて、殴り返してぶん投げるしか出来ねえ。それでもしばらくそうやっていれば、ようやく静かになった。
「・・・はぁ、はぁ・・・・おらああ!もういねえか?・・・いねえ?・・・・俺の勝ちでいいな!分かったら二度とふざけた事言うんじゃねえぞ!」
「ベイル、君何で目が見えてないのにあれだけの数を相手にして勝てるんだい?」
「モレリアか?そりゃあ、俺様が強いからよ!」
「でたらめすぎますよ。っていうかあれだけ殴られてるのに何でそんなにピンピンしているんですか?どれだけ打たれ強いんです?」
「その声・・・ニッシーか。こいつらに殴られた所で組合長に比べたらカスみたいなもんだ。全然効かねえよ」
「・・・・ええー。俺、ヒビットさんやハイーシャさんに殴られた時は一発で気絶したんですけど・・・」
今の連中の中にヒビットやハイーシャもいたのか。結構強い奴がいるなあと思ったのはこの二人だったか。
取り合えず喧嘩は終わったので床で転がっている連中を手探りで漁るが・・・・金目のもん持ってねえ。こいつら目が見えてねえ俺相手でもちゃっかり財布誰かに預けてやがる。
そうやって漁っていると、どこかの扉が開く音が聞こえ、そこからゾロゾロと人が出てきた気配を感じた。しかもその集団にトレオンがいたらしく呆れたような声が聞こえてきた。
「おいおい、また喧嘩か?お前ら大人しく・・・・ってベイルか」
「トレオン!てめえどこにいやがる!まだ痛くて目があけられねえんだぞ!ぶん殴ってやるから覚悟しろ!」
マジでこの目の痛みどれだけ続くんだよ。トレオンマジで許さねえ。
「あーはいはい。エール奢ってやるから、そんな怒るなって」
「お!マジで?それじゃあ許してやるよ!」
「軽っ!」
「エールで許してくれるんだ・・・」
その声エゲルとルストか?タダ酒ってのはどんな酒よりも格別の味がするんだぜ。そこが分かってねえから、お前ら吊るされたままだったんだぞ。あの時は誰かにエール奢ればすぐに助けてもらえたんだ。
「なあ、トレオン、この目の痛みどんだけ続くんだ?」
奢ってもらったエールを飲みながら、トレオンにこの目の痛みについて尋ねてみる。俺はこの刺激薬使わねえから良く知らねえんだ。ソロは仲間を気にしなくて範囲も広い『香辛料爆弾』一択なんでね。
「丸一日痛みは続くが、水で洗い流せばすぐに効果は無くなるぞ」
「何だよ、それなら早くいってくれよ。モレリア、水くれ」
モレリアに頼むと、頭の上から大量の水を浴びせられる。
「お!本当だ!もう痛くねえ」
言われた通り水で洗い流すと目の痛みは無くなっていた。これは魔物相手なら使えるけど、人相手なら対策知ってる奴がいるかもしれないから使えねえな。
周囲がびしょ濡れになって何か言いたそうな給仕の姉ちゃんに、モレリアの分までエールを頼んだ後は、員証を暗い顔で眺めている3人に話しかける。
「お前ら暗い顔してどうした?」
「2級に落ちた」
「コーバスに移籍するなら2級からやり直せって」
「組合長が・・・」
員証を見せてもらうと確かに3にバツがついている。ってことはこいつら『1落ち』って事か。その程度なら別によくある事だから気にしなきゃいいのに。
「ハハハ、お前らそんなよくある事で落ち込んでんのか?」
「よく無いですよ!ベイルさんには他人事でしょうけど、実際に落とされた事ないから、そんな笑っていられるんですよ!」
ルストがすげえキレだしたんだけど、そんなに俺怒られるような事言ったか?
「ルスト、君は誰に言っているのか分かっているのかい?」
「そうそう、こいつはベイルだぜ。こいつの二つ名は多分お前らでも聞いた事あるはずだ」
ルストがキレだすと、何故かモレリアとゲレロが得意げな顔をする。2人とも俺の員証の事を言ってるんだろうけど、別に偉そうにするもんでもねえだろ。っていうか2人とも関係ねえだろ?
「おい、ベイル、お前の員証見せてやれ」
だから何でトレオンまで得意げな顔してんだ。別に自慢できるようなもんでもねえし。
「別に気にしてねえからいいけどよ。お前らが得意げな顔してんのが納得いかねえな」
文句を言いながらも、員証を3人に見せてやると・・・まあ、驚くよな・・・初見で驚かねえ奴はいねえもんな。これ見せると商人から100ジェリー貰えるんだ。
「うっそー。これ何?何級?え?え?」
「これ絶対ウケ狙いのネタでしょ?ふざけないで下さい!」
「・・・・バツが多い・・・っていうかバツしかない」
ふざけてないんだよ、ルスト君。悲しい事にウケ狙いの小道具でもないんだ。真面目にこれが俺の員証なんだ。ちょっと汚いよね?あと、ハーサちゃん、バツしかなくないよ、よく見てごらん。最初の「1」、「2」と最後の「3」にはバツついて無いでしょ。
「お前ら信じられねえだろうが、これはマジでベイルの員証だ。こいつは有名な『3落ち』・・・今は『4落ち』なんだ」
「増えてる!!??」
「コーバスにいるとは聞いてましたけど、もう体ボロボロで戦えないって噂では・・・」
「誰だよ。そんな噂流している奴は、この通り俺はピンピンしてるぜ」
「悲しいことにな」
「ああ??トレオンてめえ喧嘩売ってんのか?」
「ね?元気でしょ?」
何だよ、トレオンとモレリアのこの連携の良さは?お前ら仲良しか?
「す、すみません。いくつか質問があるんですけど、いいですか?」
「おう、いいぞ」
何でゲレロがそこで答えるんだよ。ハーサが質問したい相手は俺だろ。
「え、えっと、今は・・・3級で合ってます?」
「合ってるねえ」
だから何でモレリアが答えるんだよ!
「これ見ると4級から一度2級まで落ちているように見えるんですけど・・・」
「そうだな、こいつ4級上がると、依頼人ぶん殴ったり、指名依頼すっぽかしたりで、すぐに3級に落ちるから、まともに4級にいた事ねえけどな」
トレオン何でそんな俺に詳しいの?こいつ俺のストーカーじゃね?
「2級まで落ちたら生活大変じゃなかったんですか?」
「ああ、ベイルはそん時フリーの討伐依頼しかやってねえから、別に生活は何も変わってなかったぞ」
ええー。何でゲレロまでそんなに知ってんの?俺の生活こいつらに監視されてる?
「フリーの討伐依頼って出会った魔物倒してその素材売る依頼・・・と言っていいか分からない依頼ですよね?王都周辺じゃほとんど稼げない依頼ですよ」
「そりゃあ、王都じゃ組合員も多いから稼げねえけど、コーバスは周りに森があって魔物も多いからな、普通に稼げるぜ。まあパーティなら普通に依頼受けた方が稼げるけど、ベイルはソロだから適当に出来るこっちの方が性に合ってるんだ」
今度は近くで話を聞いていたアウグが混ざってきて答える。だから、お前ら俺の何なの?何で俺への質問なのに俺に答えさせてくれねえの?
「3級から2級に落ちた時は何があったんです?」
「この馬鹿が組合で喧嘩している時にヤバイ道具使ったんだよ。そん時は組合が阿鼻叫喚の嵐だ。俺らベテランでさえドン引きだったぜ。こいつは頭がおかしいから降格で済んだが、場合によっちゃ一発で除名だから気を付けろよ」
今度はいつの間にか復活してエール片手に持ったヒビットが答える・・・・もう、マジで何なん?しかも言い方!!
ハーサ達がマジキチを見るような目で俺をみているけど、別にヤバイ道具とか使ってないからね!ただ腐れ花の液体を振り撒いただけだから!
「や、ヤバイわね・・・流石エフィルさんの先生」
おいおい、エゲルちゃんよお。あの卑怯馬鹿と比べねえでくれねえか?あいつより俺の方がまだマシだよ。
「だから『1落ち』程度で悩まなくてもいいよ。むしろベイルみたいに話のネタにするぐらいでいかないと組合員は続かないよ」
なんかモレリアが良い感じで話しを纏めているけど、俺って降格をネタにした事あったか?
・・・・あったな。思い返せば降格したの大声で笑い話にしてたの何度もあったわ。だからこいつら俺に詳しいんだな。
「そ、そうですね。2級に降格したと言っても依頼内容は王都の3級と変わらないので、良かったと考える事にします」
「そ、それじゃあ、早速依頼受けに行こうか」
「そうね。無くてもフリーの依頼受けましょう」
「そう言う訳で皆さん、色々ありがとうございました」
そう言うとルスト達はしばらく掲示板を眺めた後、特に依頼を受けずに組合から出て行った。多分、適当に外ブラついて出会う魔物倒しに行ったんだろう。シレっとトレオン達新入り調査隊の面子が後をついていったが、俺は面倒だし、そこまでする義理はねえから、このままここでダラダラするぜ。
「あいつら普通に出て行ったけど、もう一人、口の悪いのがいたよな?あいつはどうなった?」
・・・・ああ。そう言えば、そんな奴いたなあ。
後日あったルスト達に聞くと、やっぱりティッチ・・・というか兵士達を怒らせて、牢屋にぶち込まれていたらしい。