作品タイトル不明
120.王都からの移籍組③
モレリアの話が終わると、今度はゲレロとリーダーのルストが話出した。
「お前がカルガーから盾の使い方教えてもらっているのか?」
「盾もですけど、組合員の基本もみんなに教えてもらってます。今は全員で斥候を覚えている所です。エフィルさんも斥候の重要性を別の意味で熱弁してましたから」
・・・・あの卑怯馬鹿は相変わらずかよ。
「アーリット達は護衛依頼以外は、他のパーティと組んで依頼受けてなかったから、討伐の時の取り決めやルール知らねえだろうしな。その点カルガーはクワロがきっちり基本叩き込んだから安心だ」
「お前じゃねえのかよ!」
「俺は盾の使い方と酒の飲み方だけだ」
そう言えば組合員になった時のカルガーは酒も飲めなかったな。それが今じゃガバガバエール飲んで、その辺の組合員じゃ逆に潰されるぐらい強いバケモンになってた。ゲレロのせいだったか!
「あの人小さいのにあの重装備で何であんなに走り回れるんですか?それにあの人の守り全然抜けないんですよ」
走り回れるのは多分タロウ達のせいだな、あの犬馬鹿放っておけば半日はタロウ達と走り回っている。そん時は流石に身軽になっているが、時間が無い時とかは、重装備のまんま散歩行ってるの見たからな。
「最初の頃は体力と筋力付ける為に、常に装備を身に着けておけってクワロから言われてたからだろう。守りについちゃ訓練と実践あるのみよ。あいつは早い段階から俺ら4級パーティ加わって4級相当の魔物や野盗と戦ってきたからな。その辺の連中とじゃ経験が違えよ」
あれ?カルガーって意外に強いの?犬馬鹿の印象が強すぎて、あいつの戦っている所、ほとんど覚えて・・・・・そう言えば・・・地竜の時、ベテラン達と一緒に正面で攻撃受け止めてたな。
「そういう事ですか。納得です。本人聞いても『よく分からないっす。気付いたらこうなってたっす』としか返ってこなかったので・・・」
「・・・・あいつは天才型だからな。人に教えるのは色々下手くそなんだよ」
心当たりがあるのか、ゲレロは何とも言えない顔でエールを口にする。
「そ、それと!カルガーさんと言えばタロウですよ!あの魔物どうやって懐かせたんですか?カルガーさんに聞いても『タロウ達はお利口さんっすから!』でさっぱり意味が分かりません」
おっと、こっちでも天才型を発揮・・・っていうよりカルガー深く考えてねえだけじゃねえの?
「タロウの事はこいつに聞け。ベイルが最初にタロウ懐かせたから俺は知らねえ」
「・・・・あ、あなたが・・・ベイルさん」
「・・・う、嘘。私さっき偉そうな口聞いたけど大丈夫かな」
「に、逃げたいよお」
うん?何だ君たち?俺が誰だか分かってなかったのか?それにその怯えよう誰に何を聞いたんだい?後で詳しく聞かせてもらうよ。
「タロウを懐かせた方法は、ゴドリックとの契約で話すのは禁止されてるから話せねえが、それ以外で答えられる事なら答えてやるぜ。タロウについて何が聞きてえんだ?」
エール奢ってもらってるからな。
「今、王都ではタロウに倣えで色々な貴族、商人、クランがレッサーウルフを懐かせようと日々検証を行っています。ただ、いまだに誰も成功はしていませんが、ワイルドウルフへの進化だけは成功している所がいくつか出ているみたいなんです。けど、このまま進めても大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、そりゃあ駄目だ。先に懐かせねえとそのうちレッドウルフとか更に上位種に進化して大変な事になるぜ」
地竜の肉無しでそこまで進化するかは分かんねえけど、一応進化するって考えておいた方がいいだろう。馬鹿な貴族の中には地竜の肉を手に入れて与える奴も出てきそうだしな。 流石に4級相当の魔物に進化したら檻をぶっ壊して逃げだすだろう。逃げた先は人が一番多い王都・・・被害がとんでもない事になりそうだ。
「って事だリリー聞こえてたな?今の話王都に連絡しといてくれ」
さっきから何か書きながらもこっちに聞き耳立てているのは分かってたぜ。知らねえ連中が来たら職員は見てねえようでも、ちゃんと見ているからな。しかも俺と絡んでいるから何かトラブルが起こるとでも思ってたんだろう。
・・・・
あれ?もしかして俺の方が警戒されていた?俺はコーバスで一番フレンドリーな組合員だよ?喧嘩なんてしないよ。
「やっぱりそうですか。カルガーさんも先に懐かせないと駄目って言っているんですけど、『懐かせ方を知らない奴が何言っている』って感じで相手にされないんですよ。それでなのかカルガーさん新しく三匹のレッサーウルフを飼い始めたんですよ。当然3匹とも懐いてますよ。それを見て、更に検証を進める所と、検証を最初からやり直す所に分かれたんですよ。やり直すほうはいいんですよ、ただ、更に進める所がかなり不安です」
「カルガーが新たに3匹飼い始めたのは絶対わざとだな」
「あいつの性格ならそうするよなあ」
ゲレロと俺もしみじみとあの犬馬鹿を思い出す。
「やっぱりそうですよね?『懐かせ方知らない』って言っているのに懐いているんですよ!『この子達はゴドリックさんの所から貰って来たっす』って言ってますけど、依頼以外でカルガーさん王都を離れた事ないのにこの街まで来れる訳ないって誰もが分かってるのにですよ!」
こいつ・・・ルストって言ったっけ?何かカルガーに振り回されてるのかな?愚痴になってきてない?
「ただ、恋人のシーワンさんに3匹が懐いているのが、ヒントだと私は考えています」
お!良い所に目をつけたな。ただ、それは懐いた奴のそばで肉与えないと駄目だけどな。最初に懐かせるのとはまた話は別だ。
「お前何か探ってねえか?もしかしてスパイとかか?」
何か怪しい感じがしたのかゲレロが少し威嚇する。言われて見れば何かこいつ探っている感じがするな。
「ち、違います!・・・と言えば嘘になりますね。本当はレッサーウルフを僕も懐かせたいんです。だってタロウは重装備のカルガーさんにエルメトラさん、エフィルさんを乗せても早く走れるんですよ!ゲレロさんは分かると思いますが、僕ら盾使いはどうしても重装備になって移動が大変なんです!だからもし、懐いたレッサーウルフがタロウみたいになったら移動がものすごく楽になるじゃないですか!」
「ああ、うん。お前の言いたい事はよく分かる。特に装備買い替えるとその重さに慣れるまでが辛いんだよな」
鬼気迫る顔で盾使い特有の悩みをルストが言うと、ゲレロも共感できるのか頷きながらその意見に賛同している。
俺は盾使いじゃねえけど、あの重そうな装備で移動は大変だろうなと思った事は何度もある。あるんだけど・・・・
「それじゃあ、カルガーが怒るだろうな」
「何でですか?」
「だってお前レッサーウルフを乗り物にしたいだけだろ。カルガーは違うぞ。タロウ達を家族と同じぐらい可愛がっていて、依頼の時にお願いして手伝ってもらうって感じだからな。多分お前みたいな考えの奴をカルガーは許せねえだろう」
「それでも面倒はちゃんと見ますよ」
「それは当然なんだよ。お前は『道具』、カルガーは『家族』って認識の違いだ。俺は別にどっちでもいいけど、カルガーは絶対そこに拘るぞ」
もしかしたらそうならないかもしれないけど、カルガーはこういう考えだって知っておいた方がいいだろう。
「けどよう、ベイル。飼ってみたら愛着が湧く事だってあるんじゃねえか?」
「そうだねえ。僕らのハウスでも猫飼っているけど、パーティメンバーみたいなもんだしねえ」
「そんなもんかあ?」
「お前だってゴブ一に愛着ぐらい湧いているだろ?」
・・・・確かに。最初は汚いし、臭えし、汚ねえモン丸見えだし、で可愛いなんて思わなかったな。それが懐く・・・っていうか服従するようになったら可愛く思うようになった。多分ゴブ一が狩られたらそいつに復讐するぐらいの愛着は湧いている。オクロウは・・・・あいつにはまだ何の感情も湧いてねえな。
「それならゴドリックの許可が貰えたら、レッサーウルフ飼ってみるか?」
「い、良いんですか??」
「まだ喜ぶのは早えぞ。許可が貰えてからだ。それに考えなしに検証している奴に注意するのがカルガー一人じゃ弱いだろ。2人になれば少しは考えを改めるんじゃねえかと思ってな」
「おいおい、ベイル。お前何か腐ったもんでも食ったか?金も貰ってねえのにお前が人に親切にするなんて明日槍でも降るんじゃねえ?」
「出来ればその親切な所を僕に向けて欲しいんだけど・・・」
「ゲレロ、てめえ喧嘩売ってんのか?俺はコーバスで一番親切な組合員だっての!そんでモレリア。お前何言っているかよく分かんねえ。何でお前に親切にしてやらねえといけねえんだよ。そもそも俺はこいつらの為じゃねえ。タロウの為に動くんだ」
「・・・タロウですか?」
「何でここでタロウが出てくるんだい?」
「もし王都で検証している奴らの所から進化したレッドウルフが逃げたら、大変な事になるだろ。まあ、王都には5級や4級が多いから討伐は出来るだろう。ただ、その後だ。王都内で魔物飼うの禁止とか殺せってなるかもしれねえ。下手したらジロウ達まで殺せってなるかもしれねえだろ?そうならない為にだよ」
「おいおい、お前本当にベイルかよ!本物はそこまで考えねえだろ?気に食わなきゃ誰だろうがぶっ飛ばす。タロウ達を殺せなんて命令来ても無視して国に喧嘩売る。それが俺達の知っているベイルだ」
・・・・・このハゲ・・・マジで・・・・喧嘩売ってんのか?モレリアも隣でうんうん頷いてるんじゃねえよ!
流石の俺でもそこまでしねえよ。魔法を一発王城にぶち込んでから、タロウ達連れて他所の国に行くぐらいだな。